270 「 」に至る病
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── 眷属を迎えた日 ──
[結局、その日。 男が目を覚ましたのは、大型犬が今日の朝の散歩を諦めてふて寝を始めた頃だった。>>0:657]
にやけた顔で、よく寝てたぞ。 身体の具合は?
……なんて、聞くまでもなさそうかな。
[よほどいい夢でも見てたのか。>>0:643 寝室から起きてきた男を、リビングのソファから呆れ顔で振り返り。読みかけの本に、青いガラス栞を挟みこんだ。]
べつに、好きに呼べばいい。 あとあんたの名前も、覚えてる。
[サクラだろ、と。 今や部屋のあちこちに咲くそれを口にしかけたら。 見越したような男の声に遮られた。]
(81) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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…………べつに、いいけど。
[向けられる視線をじっと見つめ返しながら。 今は起きてる男の名前を、言い直す。]
蒼佑。
[願うとおり呼んだなら、また。 あの表情を見せてくれただろうか。*]
(82) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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── そうして、月日は流れ ──
────蒼佑。 この部屋、好きに使ってよかったんだよな?
[僕は今、引っ越しの真っ最中だった。
借りていたのは、元々古かったアパートメントだ。それが更に年月を経て、最近じゃ老朽化からの雨漏りが深刻化。 僕は湿気から本を護るため、とうとう引っ越しを余儀なくされた。>>0:665 大量の本と、一匹の大型犬を連れて。
示された部屋のひとつに、箱を運び込みながら。 ふと、壁に見つけた日焼け跡が目に留まった。]
(83) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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…………。
[引っ越しの手を止め、跡をそっと指でなぞる。
これまでも幾度か、招かれて訪れたことのある蒼佑の家。 ここが独り暮らしには広すぎることは、知っていた。 僕の知る限りこの家に蒼佑以外の気配はないけれど。蒼佑以外の「誰か」が居た痕跡が残っている部屋のひとつが。 これからは、僕の仕事部屋になる。]
(84) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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「ひとまず、紙が詰まった重い箱を部屋に運び込んだなら。 荷解きや整理は後回しに。]
おい、蒼佑。 ドッグフードはどの箱に入れたか覚えてるか。 あとソラのお気に入りのクッションも。
[蒼佑が眷属になって、早いもので。 一世紀と少しの時間が過ぎていたけれど。 僕らの見た目は、時間を止めたように、あの日から変わらないまま。
でもあの時居た「モモ」は、天寿を全うしてとうに土に還り。そうして僕は、次の犬に新しい色の首輪を着ける。 悪戯っ子の「ベニ」、甘えん坊の「フジ」、人見知りの「コン」、好奇心旺盛な「アサギ」。 モモより後に飼った犬達は、僕に血を分けることなく。皆、年老いて土へ還っていき。
そして今、水色の首輪を着け。 空腹を訴えるように足に飛びついてくるのは、まだやんちゃ盛りの「ソラ」だった。]
(87) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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[蒼佑が眷属になってからというもの。 調子のいい軽口と手土産を連れた、数日置きだった来訪が毎日の日課になり。>>0:663 僕の「食事」のための二人きりの時間と、いくつかの決め事が新たにできた。>>0:664
けれど、それだけ。 僕の知る限り、蒼佑という男は変わらなかった。 事前の本人談の通り、多趣味で毎日充実した日々を送っているようだったし。 互いの仕事に干渉をしないのも、今まで通り。
そこに、僕が知るような、”依存症”の片鱗は見られないままだったから。
少しずつ、少しずつ。 舌に残る蜜の甘さが増してるような気がしても。 確信が持てずに、まだ黙っていた。*]
(88) 2019/10/08(Tue) 22時頃
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[蒼佑の家に引っ越して、数日経ったか。
最大の難関である大量の本をどうにか片づけ終えれば、そのうち図書館と化すのではないかという有様となった新居だが。 日焼け跡の残る僕の新しい仕事部屋は、まだなんとなく落ち着かなくて。気分転換にノートパソコンをリビングまで持ち出して仕事をしていると。 くい、とズボンの裾を引っ張られ、タイピングの手を止めた。]
どうした、ソラ。 手紙? 持ってきてくれたのか、ありがとう。
[足元に置かれた封筒を拾い上げたなら、見上げてご褒美を待つソラに、蒼佑が出掛ける前に用意していったおやつをあげて。 送り名を見れば、封を切る。]
……もう定期検診の時期か。
[事務的な案内文を受け取るのは、これで幾度目か。>>1 そして蒼佑はこれまで、問題なくクリアしている。>>63]
(99) 2019/10/08(Tue) 22時半頃
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[今回もまあ問題ないだろうと、「おつかい」の行き先を確認すれば。]
……ジャーディン。
[蒼佑の部屋を埋める本の背表紙で見たことのある名が、そこにあり。>>95 僕は無意識に、眉を顰めていた。
持つよう渡されたスマホは、自室の机に放置したまま。>>64 メッセージの受信に気づくのと、送り主の帰宅と。 さて、どちらが早いだろう。*]
(100) 2019/10/08(Tue) 22時半頃
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[手紙を眺めること、しばらく。]
……あ。もうこんな時間か。
[出掛ける前、聞いていた帰りより少し遅い。 そこでようやく、文明の利器であるスマホの存在を思い出す。仕方ない、取りにいくか。
渋々立ち上がれば、玄関の開く音がして。>>113 吠えるソラの声に振り返った時には、伸びてきた太い腕に捕まっていた。]
──うわっ、 なんだ!?
[ずれた眼鏡が痛い。 少しぼやけた視界の中、苦しさに腕をべしべし叩き。 ようやくできた少しの隙間から、ぷは、と息を吸い込んだけど。 抱きしめる腕はまだ、強いまま。]
(162) 2019/10/09(Wed) 01時頃
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うっ……スマホは……、 今思い出して取りにいこうと、思ったところで。
[なんだろう。様子が、いつもと違う。]
(163) 2019/10/09(Wed) 01時頃
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[仄かな花の匂いと、汗のにおいが混ざって鼻先を掠め。 うっすら痕の残る首筋に、こくり、と思わず唾を飲みこんだ。]
……、蒼佑?
[刺激される食欲と同時に。 そわり、と言いようのない感覚が首裏を這う。 予感と不安がないまぜになったようなそれに、戸惑いながら。]
蒼佑。くるしい。
[蜜の味に慣れた喉が、疼く。 でも決め事が頭を過ぎれば、咬むのは躊躇われて。 小さく首を振れば押し付けられた肩口に、額をすりつけた。*]
(164) 2019/10/09(Wed) 01時頃
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[少し早い食事は、誤差の範囲かもしれない。>>177 他の吸血鬼はどうか知らないけど、僕は特別行儀がいいわけでもない。 これまで日課のように蒼佑が訪ねてきては定期的に与えてくれてたから、ひどい飢えに襲われることもなかっただけで。
むしろ僕に言わせれば、律儀なのは蒼佑の方だ。 健康を保つために運動したり、料理のレパートリーを工夫したり。吸血時間を測ろうとしたり。
でも、こんな風に。 蒼佑から「食事」を迫られたことはなかった。]
(294) 2019/10/09(Wed) 23時頃
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……やだ。 今は…………食べたい気分じゃない。
[咬む躊躇いを口にしたなら。 いつになく焦りを帯びたその声に、びく、と小さく身体が震えた。>>178
────”依存症”。
これまで確信が持てなかった病の進行。 いつから、そうだった? いま、一体どこまで進んでいる?
混乱しながら僕は、熱い肌に誘われるよう開きそうになる唇を懸命に引き結んで。 ふるふると首を小さく振れば、擦れた咬み痕から甘い甘い蜜のにおいが溢れて、目がくらむ。]
(295) 2019/10/09(Wed) 23時頃
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───……っ ちがうそうじゃない、
[聞こえた小さな囁きに、縋るように蒼佑の服を掴み。 僕は必死に、頭を横に振った。]
(296) 2019/10/09(Wed) 23時頃
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そういう意味じゃないんだ…… 言葉足らずなのは、わかってる。けど。
……僕は今、蒼佑を咬みたくない。
[もし僕が、いま咬んでしまったら。
脳裏に浮かぶ「彼女」の最期に、蒼佑が重なりかけるその想像に、気づけば小さく身体が震えていて。 ぎゅう、と服を掴む指先に力が籠った。*]
(297) 2019/10/09(Wed) 23時頃
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[僕を抱き締めていた腕の力が緩んで。 引き剥がされるように、温もりが離れていく。>>318 急に寒くなったように感じる腕を、何気なくこすりながら。]
…………。
[蒼佑は、納得してくれたんだろうか。 ずれた眼鏡を直し、見上げた表情からはとてもそうは思えなかったけれど。 今、それを言及するのはやめた。
ドアの影からこちらを窺っていたソラに気づけば、手招きして。両手で柔らかい毛並みを撫でれば、少しほっとしながら。]
(358) 2019/10/10(Thu) 01時頃
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ああ、そうだ。 いつもの「おつかい」の手紙がきてたんだ。 勿論、行くだろう?
[テーブルの上の手紙に気づいたらしい蒼佑を、振り返らないまま。さらりと決定事項のように告げる、「定期健診」。 さっきは少しばかり複雑な気分になった行き先が、今は少し有難い。]
今回の行き先は、「ジャーディン・ヴィラドメア」。
ファンだって言ってたよな。 ついでにサインをもらってきたらどうだ。
[蒼佑の部屋の本棚に並んでいる、作家のひとり。>>256 僕も小説家としての名前は兼ねてから知っていたけれど。 世間には所謂「薄い本」というものが存在することは、暇つぶしがてら蒼佑の本棚を漁らなければ知らなかっただろう。
それは、たくさんある蒼佑が好きなもののひとつで。>>316 たくさんあるはずの、依存先のひとつだから。]
(359) 2019/10/10(Thu) 01時頃
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……わかった。 僕はもう少しここで仕事をしてる。
[ようやく顔を上げて蒼佑を見たけど、視線は合わないまま。 工房に向かうのだろう背中を見送ろうとして。]
蒼佑。あんたは今も…… いや、やっぱりなんでもない。
[今も、長生きしたいんだよな?
言いかけたその言葉は、躊躇いで飲みこんだまま。 出て行く背中が見えなくなれば、カラカラに渇いた喉の疼きに、ひとり顔を顰めて。 深く、ため息を吐き出した。**]
(360) 2019/10/10(Thu) 01時頃
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