151 宇宙船は旅浪者の夢を見るか?
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[アーサーの身体は控えめにいって猫によく似ているが 何も翼を持つものすべてに牙を向くわけではない。 トリに対しては、いつも傍にいる飼い主のことを記憶することが難しいほど、ある意味では一途に本能が向かうが、同じ学科のフィリップが連れている鳥については、それほどでもなかった]
……まぁ、あれだ 飛べない鳥は、ただの鳥だ
[回想からの独り言を、部屋の扉(に設けられた専用口はアーサーにのみ反応して開くようになっている)を潜り抜けながら残し、自室にたどり着いたアーサーは]
―――――……にゃぁ
[思わず動物のような声を出してしまうほど集中して、レポートをやっつけた。 推敲もそこそこに、送信を選択。端末を閉じる前にいくつかのメールチェックを済ませ、やがてふわふわクッションの上で丸くなった]
(87) 2015/03/01(Sun) 21時半頃
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[アーサーは胸をはって廊下を行く。 自室を出て、居住区を抜けて、四つ足を威厳をもって歩いていく。 尻尾はゆらゆら、機嫌は上々。 レポートを終えた今は、自分への褒美に甘いものでも欲しいところだ。
ひとまずは、よい景色でも眺めようかと、近くのコモンスペースへと鼻先を向ける]
(112) 2015/03/02(Mon) 00時頃
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[実年齢はともかくとして、アーサーはもうすぐ卒業を迎える学年に在籍している。本来はもう1年此処にいて、時を待つ予定であったが、事態は変わった。 もうすぐある卒業式では、晴れて門出を迎えることとなった]
……ふぅむ
[思えば、このヘスヒデニスでの生活も色々あった。 喋る猫、という不愉快極まりないレッテルを貼られ 実験体にされそうになったり、 ただひたすら撫で回されたり 声帯が見たいと捕まえられそうになったり 実験体…………]
嫌なこと思い出した
[首をぶんぶん振ると、コモンスペースに誂えられたベンチへと飛び乗った]
(114) 2015/03/02(Mon) 00時頃
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― コモンスペース ―
[名を呼ぶ声に、宙に向けていた視線を下げる。 耳をひくりと動かして、眼光鋭いままアーサーは口を開く]
なんだ、アオイ 実験室を出れたのか
[生徒として在籍していることは知っていたが 実験室でしか顔を合わせたことがないため、 彼女はあそこを出れないのかもしれない、と考えていたようだ]
何、宙をね 此処からの眺めも、もうすぐ見納めかと思うと 俺はひげの先が地面につきそうだよ
[わかりにくい例えは宇宙言語学科としてあまり褒められたものではないが、言葉通りに、心なしかひげをしんなりさせて アーサーは、まあ座れ、とでも言うように、ベンチの空いたスペースを尻尾でぱしん、とひとつ*叩いた*]
(150) 2015/03/02(Mon) 21時頃
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ひげが下がるのは、悲しかったり怖かったり 何かマイナスの感情の時だ
[前足でひげをちょいちょいと直しながら真面目くさった顔でアーサーは続ける]
今回に限っては ……そうさな 「哀愁」という言葉を、君は理解できるかい
[アオイの方を向くと、問いかけと同時に首を傾げる。 この個体の表情筋は、なんとも行動可能域が狭すぎる、と常日頃考えているアーサーは、いつだって少しばかりおおげさな言動で会話するのだった]
なんとなーく、悲しい、ってことなんだけど さ
(157) 2015/03/02(Mon) 22時半頃
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……いや、実験体にされるだけの生活だったわけでは
[思わずこぼしながら、顎のあたりに前足をやり、今度は考えるように宙を見上げた]
なんとなく、だよ なんとなく 嬉しい気持ちも勿論あるさ いや、そっちのが大きい。すごく
[此処を出れば、生活は一変する。 文字通り、視界が開ける予定なのだ]
でもね、 いろんな人がいてさ 此処に来なきゃ会わなかった人もいてさ たとえば君は、ほんの少しの心残りもないのかい?
(161) 2015/03/02(Mon) 23時頃
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あおい ……
[彼女が自らを呼称するのと違う響きがした。 その微妙な違いがわかったのは、ひとえに普段から鳥とトリの違いを聞き分けているからに他ならない]
それが君のオリジナルか
まぁ、そうさな 心残りは別にないならないでいいんだが、な ……あると楽しい。それだけだ
[ベンチの上、落ち着く体勢を探して試行錯誤しながら アーサーは慎重に言葉を紡ぐ]
(166) 2015/03/02(Mon) 23時半頃
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変わらないものなどないよ 君の周りも、あの星々もね
勿論、その変化に気づくかどうか 受け取るかどうかは、個々に委ねられる
[また少し、言葉が難しくなったと自覚する。 いつもそうだった。 小難しい顔をして小難しいことをいう。 そのせいで単位を落としたことも、一度や二度ではない]
もし数年後に再会したとして、 君も俺も、変わっていないことなど ありはしないと ……ううむ
[自覚しても、言葉はすべる。 無理やりに飲みこんで、あくびをかみ殺すような真似をした。 実際は眠くないが、これも動物の処世術というものだ]
(169) 2015/03/02(Mon) 23時半頃
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ほう、クローンは変わったら駄目なのかい
[とうとう香箱を組んで、アオイを見上げる。 この体勢はいかにも猫らしくて気に食わないが、落ち着くのもまた事実だ]
俺の故郷ではそうでもないよ 子を成せずにクローンを作る奴もいたがね
奔放に育てたはずが、どうにも似てきやがる、と笑っていた
[横切りざま、手を振ってくる姿に、ゆらり尻尾を振りつつ さて、とアーサーは少し意識して息を吸った。 そうして声を落とし、内緒話だとでもいうような悪い顔で――アオイにそう見えるかはともかく、がんばった――囁いた]
俺はな、元の姿に戻るのさ だから、絶対、同じではないぞ?
(177) 2015/03/03(Tue) 00時頃
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[横切っていった姿を目で追えば、さて新たな影がこちらを見て首をかしげている。 つぶやいた言葉は幸いアーサーの耳には届かなかった。 届いていたらアオイとの会話の最中でも "猫ではない!!"と叫んだに違いがないのだから。
その姿に瞬いた時、アーサーの脳内に埋め込まれた端末が ぴかり、とメール着信を知らせるため明滅した。 さっきから何度も光っている。 帰ってから確認しようかと思っていたのに、気が散って仕方がない。 もう少し待て、と答える者のない独り言を心中呟く。
メールの内容は、課題に関する回答かもしれないし 待ち望んでいる、XDayを知らせるものかもしれない。 それ如何によっては、アーサーがこの艦を出る日も、もしかしたら早まるかもしれないのだ――]
(179) 2015/03/03(Tue) 00時頃
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だから俺は猫ではないと常から言っているだろう
[心なしかドヤ顔で言うが、その言葉をまともに受け取っていたものはあまりいないであろう。喋る猫だからな、というのが関の山だ。
続くアオイの言葉には鼻を鳴らし、 尻尾を身体に沿わせるようにして引き寄せた]
その考えが君を形成しているというのならば それでいいのだろうよ
それに俺は、"あおい"を知らない アオイしか知らない ……もっと言うなら、君のこともろくに知りやしないがね
(183) 2015/03/03(Tue) 00時頃
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そう吹聴してまわることでもないからな
[それでも勿論教員には知っているものもいるだろうし 隠しているつもりもない。
アーサーとは世を忍ぶ仮の姿……というわけではないが、不可抗力にて元の姿は修復中である。それがもうすぐ完了し、同時にこのヘスヒデニスでの生活も終わる。 それだけの話であった。 勿論、この身も元々自然の中より生まれ出でた猫ではない]
俺が、そう思っているからかもしれん
ブレてもいいだろうよ 常に一貫した存在など、たとえプログラムであっても俺は好かん
[そういって、アーサーはベンチから飛び降り、アオイの足元に歩み寄ると、彼女を見上げた]
(186) 2015/03/03(Tue) 00時半頃
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君より長く生きている、それだけだよ
[言葉を失くしたアオイを見上げ、アーサーは短い舌で人間で言うところの襟元あたりを整えた]
女の子を困らせるのは本意ではない ……俺は喋りすぎたようだ
少し、考えてみるといい 心残りを作るには、今からだって間に合うし 探せば、実はさ そこらに転がってるかもしれないよ
[最後ににぁ、と一声鳴くと 尻尾をくるん、と巻いて背を向けようとする。 少し喋りすぎたかもしれない、と考えるも それもきっと"哀愁"という感情の仕業なのだろう**]
(194) 2015/03/03(Tue) 01時頃
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[アーサーは歩く。 キャットウォークなんて用意されていないヘスヒデニスで ヒトと同じ道を、尻尾をふりふりゆっくりと歩く。 アオイとの会話は、アーサーの心に新たな心残りを残していった。
せっかくの出会いを、もったいなくもそのままにしてはいないか、と]
ひげの向くまま、気の向くまま〜……ってね
[名を知る人たち。 好きなものを一個は言える人たち。 癖をひとつは言える人たち。
―――名も知らぬ人たち]
(232) 2015/03/03(Tue) 23時半頃
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