241 The wonderful world -7days of KYRIE-
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[6人目は、アイツの友達だったらしいもう片割れ。 アイツが勇気を振り絞って学校に行った日、 覚えた言葉で交わした挨拶を、鼻で笑ったという。 そして、それを皮切りに、……アイツの悪夢が再び始まった。
だから、思い知らせてやっただけ。 縛り上げた体を川に投げ落として、溺れさせ、息絶えたのを確認して。 僕の教育指導は全て、終わったはずだった。
殺すべき者は、……アイツの世界にいてはいけない奴らは、 もう誰も、いない。]
(0) 2018/05/23(Wed) 01時半頃
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[アオイは、もう一度学校に行きたいと言った。 辛い思い出しかない場所に、無理に行く必要はない。 そう諭してみたが、どうやら友達との約束があるらしい。
なら、学校に行っても二度と馬鹿にされないような、しっかりした言葉を教えてやる。 どんなことを言われても、綺麗な笑顔で挨拶を返してやれ。 きっと奴らは目を丸くするぞ。
……僕にやれるだけのことはやった。 だからあの日、満足して送り出すことができた。
大学での講義の帰り、下校するアオイを迎えに行ってやろうと、 向かった先で見たのは——
何もかもを消し去りたくなる、やるせない景色。]
(77) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[もうすぐ、アオイの誕生日だった。 プレゼントは何がいいかをまだ決めていなかった。
何が欲しい? ……再び、狭い部屋に引きこもってしまったアオイに、問いかける。 彼女は、何も答えてくれなかった。
だから僕は、僕の考えうる限りの、最高のプレゼントを与えることにした。]
(78) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[——それが、僕が罪人になるまでの全ての事実。]
(79) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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— 回想:殺人先生の末路 —
[6人目を殺した後、そのままアパートの自室に戻って眠りについた。 頭に血は上りっ放しで、興奮はもう抑えられない。
6人のガキの命を奪ったのだ。 これまでの人生を生きてきて、その重みを知らないわけがない。
さて、これからどうするか。 逃げる? ……特にプランはない。 目的を達成した今、もう捕まって処刑されても悔いなどない。
実家にいる家族のことなんて顧みることもない。 とっくに崩壊していた家庭だ、息子の罪の飛沫がかかろうが、知ったことじゃない。]
(80) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[じゃあ、自首するか。 ……でもその前に、アオイに最期の挨拶をしに行こう。
アイツを結局幸せにしてやることができなかったこの僕が、 唯一してやれたプレゼントを、報告してやろう。
驚かれるかもしれないが、まあ仕方ない。 もうこの世にアイツを苦しめる奴はいないんだ。 それを知れば、少しずつ前を向けるようになるだろう。……なるといいが。 ……やっぱり、アイツにこれ以上何も教えられなくなるのは、心残りか。
ごちゃごちゃと考えていたら、朝になっていた。]
(81) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[ピンポーン。
……チャイムが鳴った。]
なんだよ。 ……まさか、もう嗅ぎ付けたのか。警察。
[遅かれ早かれバレることだが、いくらなんでも早すぎないか。 訝しみつつも、もし突入してこようものなら申し開きも何もするつもりはなくて。 好きにしろよと投げやりになったものの。
いくら待っても、それ以上の音が聞こえない。]
(82) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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なんだ……?
[玄関のレンズを覗く。……誰もいない。 悪戯か、聞き間違いか?
恐る恐る、警戒しながらドアを開いて——]
(83) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[目に飛び込んできたのは、赤黒く染まった7つのゴミ袋。]
(84) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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……は?
[少しの間、心臓が止まっていた気がした。 ドアを開けた先、足元に、7つの袋が整然と並べられていたのだ。
その赤黒い色は、……人を殺しすぎて僕の目がおかしくなったんじゃなければ、 血のような、いや、血液そのもののような、生々しい色。 そして、色に伴う、気のせいじゃない、ここ数日で嗅ぎ慣れた、吐き気を呼ぶ濃ゆい臭い。]
なんだ、これは。
[理解ができない。なんだこれ。それ以上の感想がまとまらない。 中身を覗けば、そこには、人間をバラバラに砕いた破片のようなものが詰まっていた。
そして、切り取られた“顔”も——。 その袋の中身が、誰だったのかを教えてくれるかのように。 一緒に詰められていた。]
(85) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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ありえない。……ありえない。
[袋の中身を次々と開けて、確かめる。 気が狂いそうになっていた。
1つ目も、2つ目も、3つ目も……そして、6つ目も。 僕がしっかり視界に刻んだ、忘れられやしない、 この僕が直々に殺してやったガキ共の顔がそのまんま、入っていて!]
ありえないありえない、ありえない……!
[僕が殺したガキの死体は、埋めるか、川に捨てるかで、雑に処理をした。 それをわざわざ拾い集めたりもしないわけで、 だからこれは、……なんだ?]
(86) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[それに、そうだよ。 僕が殺したガキは6人なわけで。 僕への当てつけにしても、7つあるのは意味が分からない。
7つ、あるのは……何故?
心臓が凍り付いたように冷たいのに、体が熱くて苦しい。 どうして、こんなに嫌な予感がするんだ。
7つ目の袋。それに手をかけて、開けようとしたら、 本能が何かを警告するように震えて、
……それにムリヤリ逆らって、僕はその、7つ目の袋の中身 を ]
(87) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[バラバラに砕かれた、腕や、脚、 血まみれになっている、全身——
それはまるで、四肢をもいで壊された人形のようで、
なあ、なんで
お前の顔がここにあるんだ、 アオイ]
(88) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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————————。
[恐怖で叫び声を上げようとした、その前に。
その冷えきった血まみれの頭部を抱えて、 儚いほど軽い、その重さを離さないようにして、
ただ、ただ、どこまでも遠くへ走る。
逃げる、走る、どこまでも遠くへ、逃げ続けた。]
(89) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[——アパートの部屋の前に、ゴミ袋に詰められた死体が放置されており、 それらはいずれも、行方不明になっている子供7人とDNAが一致。
警察は、逃亡したと見られる黒牧 奉一を、犯人として断定する方向へ。 指名手配犯として顔を名前を公表し、その足取りを追うこととなった。
これが、5年前の事件の一部始終。]
(90) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[問1、アオイは誰に、どうして殺された?
問2、僕は誰に、どうして殺された?
問3、その犯人は、今どこにいるのか?]
(91) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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[ここまでを、先生からの宿題としよう。
……答えは、僕が教えてほしいぐらいだ。*]
(92) 2018/05/24(Thu) 01時頃
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