193 ―星崩祭の手紙―
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[星によって滅びゆく自分たちが 星に願いを託すなど、 なんと滑稽な話だろう。
それでも人は願いを託す。 空に輝く無数の星に 空へ飛ばす手紙の流星に 腕の中の、小さな“星”に]
( 愛する人が、笑顔である世界を )
[どうか、どうか────…]
(144) choro 2016/07/23(Sat) 01時頃
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[ “朝日”を意味する俺の名と “夕日 ”を意味する彼女の名。
夕と朝、二つの間にあるのは夜の星。
先の見えない暗闇のなか、 俺たちに光をくれたその子に
── xing ──
遠い空の果てで、 “ 星 ”の意味を持つらしいその名をつけた。]
(145) choro 2016/07/23(Sat) 01時頃
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[足を床につけ、ヒトとワタシ達に近づく。 その間、ヒトは身に着けていた鞄に手を突っ込む。]
『お祭りの前に、これを。』
[碧と翠のワタシに渡された見知らぬもの。 三つ目はないのかと、ヒトに訝しげな視線で訴えると、 ヒトは肩が竦めて曖昧な表情を作った。]
(146) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[渡された透明なカプセル。 銀色に金色が施されたものをワタシ達は開く。]
『ああ、Bの持ってる方から見た方がいい。』
[助言を受けて、ワタシ達は覗き込む。 4行目まで、目を通せばそれは何であるかは解る。 碧のワタシの肩を揺らして、喜びを伝えた。]
(147) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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手紙、ちゃんと届いてた!
[届いてた、届いてたと反響する糸の意思。 ワタシ達の声が届いてことが嬉しく、笑い声が部屋に響いた。 ワタシの手は手紙に伸びる。 次の文章が早く、読みたかった。 最後まで読み終え、満足げにワタシ達は笑う。 赤青緑の鶴が、透明な鶴に変わったことも、なんだか嬉しかった。]
(148) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[次は、翠のワタシの番。 カプセルを開いて、ワタシ達に見えるように手紙を開く、番。]
きりん?
[知らない単語がでてきたので、ヒトにじいと視線を注ぐ。 後で、きりんの折り紙を作るという言質をとってから、 その後の文章に目を落とす。 ワタシ達は、らいじの言葉に、しんの言葉に返事をしながら読み進める。 全て読み終わった後、新しいカプセルをヒトにねだる。]
(149) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[殻を割る、という行為を、 ヒト達は意味を持って捉える、らしい。
復活、という意味でも。]
(150) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[ヒトとワタシ達は、おまつりが行われる部屋まで歩く。 舞う蝶と銀色のカプセルを携えて。 ワタシはワタシ達に手を引かれ、ヒトの背中を見ていた。 たくさんのヒト達がいる部屋は、薄暗いけども、 今までに見たことないほど色に溢れていた。 中心に据えられたもの。 様々な色を当てて、光る楕円形に加工されたそれはワタシ達のものだった。]
『綺麗だろ?』
[ヒトはそう言って、笑った。]
(151) aki_nano 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[淡青色の硝子の、淡い光を放つカプセルは、壊れないようそっと手に持ち開いた。
同時に流れ出す詩は、数日前にこの星に届いた時から何度も何度も再生した声色と同じで、誤ってカプセルを開いたかと目を丸くする。
しかし手に持つそれは確かに自分の星のものではないそれで、くしゃりとまるめられた便箋には署名はなかった。]
(152) ameya 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[宇宙プランクトンの大移動。 宇宙を駆ける星の様は、 君の興味をまた奪い去る。]
また、 何処かで。
[君は、宇宙に七つの色に輝く 手のひらの大きさのカプセルを放つ。]
(153) hitoyo_ 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[君は、外へと駆け出してゆくのだ。 それは外の星を求めるかのように。 私には見向きもしない。 白い箱はただ、そんな君の背中を嘲笑う。 君の微かな反抗は、白い箱も承知の上だ。]
星、 僕は、この可哀想な星を、 この白い世界を、呪うよ。
[君がこの白い箱の中に閉じ込められて、 どれだけの月日が経ったのだろう? 白 は、緊張を神聖な場所を与える。]
(154) hitoyo_ 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[遠くの星が大きく輝いた気がする、と。 君は呟いていた。 それは、既視感のあるもの。 君の願いは、君の叫びは、君の聲は、 無情な神に、握り潰された。
宇宙が閉じられると共に、 君の世界も鎖される。]
(155) hitoyo_ 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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………………………La Belle Terre、
[其れが、私の名。 君がくれた最期の言葉。]
(156) hitoyo_ 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[私は、芯の奥から震えた。 耐えきれなくなった私は、霧散する。 さよなら、私の大好きな君。 さよなら、私の大切な親。]
( さよなら、君の白い世界。 )
[終幕せしは、私と君の物語。]
(157) hitoyo_ 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[この空には たくさんの星があって たくさんのひとがいて その数だけ 想いがある。
優しい彼女の探し人は見つかっただろうか 声を持たぬ彼は、家族に想いを伝えられただろうか 星を生む彼は、名前をつけてあげられただろうか 折り紙のあの子たちはハナを見られただろうか シンがこっそり手紙を送った相手は、読んでくれただろうか 俺たちを覚えていてくれると言った彼女は、 まだ、歌っているだろうか]
(158) choro 2016/07/23(Sat) 01時半頃
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[星崩祭は今日で終わり。 もう、俺たちの想いが届くことはないだろうけれど 崩れゆくこの星から、 君たちの幸せを、願っているよ。]
(159) choro 2016/07/23(Sat) 02時頃
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“ シン ”
パパは、お前が生まれてくれて ほんとうに ほんとうに しあわせだった。
(160) choro 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ それから きっと。 男の家には、星を抱いた水槽と、写真が増えた。 贈り物として増えたものは、 動画再生機に、ディスクに、 この暗闇の星でも淡く光る植物。 ]
(161) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ 星に住まう民の想いが届いたのか 小惑星は宇宙プランクトンの波に飲まれ その速度を緩めます。
けれど、軌道がそれることはなく たしかに まっすぐと 彼らの星へ。 それは数日後か、数ヶ月後か、 数年後かもしれません。
広い宇宙に片隅に浮かぶ小さな星が崩れる様は 誰の目にもとまらないかもしれません。 けれども、おそらくきっと、 “ 星 ”の最期は美しいのでしょう。]
(162) choro 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[その昔、宙にはいくつもの種族が暮らしていたという。 文化も見た目も違うその種族は覇権を求め、常に醜い争いを続けていた。 数え切れない数の命が喪われ、遂に怒り狂った神は粛清を決意した。 大波を起こし悪しき世界ごと滅ぼそうとしたのだ。 我らが星にもその波は迫り、絶望に打ちひしがれる民より、1人の娘が立った。 神よ、愚かなる我々に、どうか、今一度のお慈悲を。 我々は必ずや、今度こそ正しき道を歩んで見せます。 神は応えた。 ならば見せてみよ。 その誓い、違えたならば、2度はない。 途端、宙を覆う波は消え去った。 命を救われた民は、その娘を巫女と崇め、慎み深く暮らし始めた。 民が道を踏み外そうとした時には、神は宙に波を起こし、その者たちを戒めるのだという。]
[そんな、お伽話。 この星が沈むより以前の神話。 その原理が解明されて久しい現在でさえ、畏怖の念を思い起こさせるほどに。 それは、圧倒的な光景だった。]
(163) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ もしかしたら。いつか。
機械仕掛けの踊り子を写した一枚が。 "海"で祈る彼を写した一枚が。 水の中の星々を写した一枚が。 崩れる星を写した一枚が。 散った星の残る空を写した、一枚が。 そうでなくても。 彼女が望んだ外の世界が写る一枚が。 男と少女の部屋にある日が、来るのかもしれない。 ]
(164) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ 世界が終わる、最期の時 どこか遠く、歌が聞こえた気がした。 ]
(165) choro 2016/07/23(Sat) 02時頃
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「本当に行くんだね。」
はい。 もう、独り立ちには遅いくらいですけど。
[寂しくなるねぇ。 そう言って、院長の女はため息を吐いた。
やりたいことがある。 彼女がそう告げたのは、ほんの数週間前のことだった。 世紀の祭りが終わり、誰もがその余韻に浸っていた頃。 彼女は突然、ホームを出ることを決めた。]
そんなに遠くじゃないですから。 仕事もあるし、時間ができたら寄りますよ。
[妹を抱き抱え、微笑む彼女の瞳は、真っ直ぐと前を見つめていた。]
(166) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[本当に小さな、一間だけの家。 彼女と妹の、新たな生活の場。 少しだけ場所をドーム中央に寄せて、彼女たちは居を構えた。]
[窓脇に置かれたのは、小さな硝石の器。 内包された花は、星の光を浴びる度、ちらりちらりと瞬く。]
[食卓の中央には、光籠と同じ材料で編まれた四角い容器。 至極大切に包み込まれたその中身は、3日目となる、夜空の欠片。 立派な惑星に育ったそれは、ただ静かに崩壊の時を待っている。]
[そして、部屋の隅に置かれた棚の上。 あの祭りの間に届いた全ての手紙とカプセルは、そこに、収められていた。]
(167) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[狭い玄関から、彼女は部屋を振り返る。]
ステラ。
「なぁに、お姉ちゃん。」
……なんでもないよ。 行ってくるね。
[そう言って、彼女はにっこりと、万感の思いを込めて笑った。]
(168) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ステラ。
私の妹。]
(169) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ 男は今日も、声の代わりに思いを残す。 ] [ 何時かまた出会う、空の向こうの彼女のために。 ]
(170) mayam 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[返信用の銀色のカプセルは、跳ねるような声音が聴こえてきそうな、黄金糖のような女子と、そして今しがた、入れ替わりに文を書き終えた、水面のような歌姫からのもので、初日に祈った、可愛いコに届きますように、という願いは叶えられたようだ。
長い時間を掛けて、不慣れな文字を綴って返事を書き終えると、体感、もう夜が明けたくらいか。もっともこの星の空はいつも明るい。
何もかもが柔らかい色合いの空、草、花、苔、甘い香りのするような空気。 それはこの星に辿り着いた探索者たちの肺を少しずつ侵して、今こうして地に立っているのはひとり。
軽い咳はもう習慣のようになっていた。]
(171) ameya 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[魚型のカプセルを、人魚の溜息のようなカプセルを、宇宙へ放つと、その指先の向こう、銀に100の階調を持たせたような、地から宇宙へ泡立つような、宙を覆い尽くすプランクトンが、全て星の移動する。
背筋が粟立つような光景に立ち尽くしながら、西の果ての星でひとりそれを見上げる。
不思議と寂寞は感じなかった。
いつまでも見飽きる事のない波の崩れのなか、また青い草むらに、ひとつ、また宇宙に放ったカプセルが戻って来ているのを見つけ、プラントに戻ること無くその場で開いた。]
(172) ameya 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[そこに広がったのは、星降る舞台。星が波打ち崩れるような宇宙に下に広がるステージ。景気のいい声が重なって自分の名を呼ぶ。
澄んだ、もう聴き慣れた歌姫の声に合わせて舞う踊り子の姿。まるで自分の為だけに繰り広げられているかのようなステージに、瞬きも惜しいとばかりに見入る。
また再び、どこかしら自慢気な声に重なって、踊り子がこちらに近づくと、唇の動きだけで自分の名を呼び映像は終わった。
そうだ。こんなにも届く声が大事だと思えたのは、xxx年に一度の祭りを西の果てでひとりで送ることになりながら、隔絶に打ちひしがれずに済んだのは、あの波が。淡桃色の空の向こうに天鵞絨の様に広がる宇宙から、遠くて近い声を連れてくれたから。
それはまだ読まずにいる踊り子の手紙と同じ思いで。]
(173) ameya 2016/07/23(Sat) 02時頃
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