190 【身内村】宇宙奇病村
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[小さなデブリ同士がぶつかり合って粉々になる。 船体の反対側に、宇宙のゴミが広がった。
老人が次に気づいた時。 小さなデブリに小さな体が跳ね飛ばされたか、船体からぷかりと浮きあがっていることに気がついた。
鈍くなった動きの目玉が視界を巡らせれば、命綱がちぎれている。 辺りは細かなゴミだらけ。
次第意識がはっきりしてくる。 不幸中の幸いと、いっていいのか悪いのか、老人は生きていた。
しかし。
船体に戻ることは、最早出来ないことに気がついた。]
(113) 2016/05/19(Thu) 23時半頃
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― 食堂兼レクリエーションルーム ―
[キャラ付けなどとうっかり零してしまった事はともかく。 ミツボシの回答(>>91)に頷く。]
……オーケー。 いまミッちゃんは、学習の結果として「そうすべきだと思うから皆の役に立ちたい」という基準を持ったAIを持ってる。 そのミッちゃんの知性を借りて、この船のAIの根性を叩き直してやろうと思う。 だから、力を借りるよ。
ヤンファお姉様が言ってた通り、気負う必要は無いけどね。 大丈夫、痛くしない。優しくする。
もう少しだけ休んだら、すぐに準備するから待ってて。
(114) 2016/05/19(Thu) 23時半頃
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― → 自室 ―
[自室に戻り、その「準備」をしている最中だった。]
[実験室のアシモフ同様、船外活動の様子は声だけ拾っていたのだが――
それが、途切れた。(>>111)]
(115) 2016/05/19(Thu) 23時半頃
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[エスペラントの途切れた通信と、ワクラバの慌てた声が聞こえる。 宇宙でのトラブル、それは最も忌避すべき、最も不安を起こすもの。 実験室でデータを眺める手を止め、顔を宙に向けた。手が震える。]
……エスペラント老?
(116) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[通信を試みる。ノイズにまみれていたが、どうにか使用可能であるようだった。
聞き取りにくい音声で、老人は、漆黒の宇宙に浮かびながら、皺嗄れ声で言った。]
病葉さん 無事か
(117) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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― 自室 ―
[エスペラントとワクラバとが船外に出てしばらく。 このそれなりに大きな船の外周を見て回るのだ。それなりの時間がかかるだろう――しかしてモニタも何も無い状態で、ただ二人の反応を待つ、というのも少々手持ち無沙汰なものだった。 イースターが席を立つ折り、ワレンチナもそれに倣って自室へ向かった。
セーフモードで薄暗い部屋の中、ワレンチナは個人端末を開き、椅子の背もたれに身体を預け、爪を噛んでいる。 何か打ち込みかけては止め、また爪を噛み――を、しばらくの間繰り返した。
その間も皆と同様に、船外からの音声通信は開きっぱなしにしておいた。 そして。]
(118) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[全身のバネと推進剤を駆使して、船体を回り込む。眼前にはデブリの霧が広がっていた]
先生!!どこだ!? いま、救助にむかう!
(119) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[ワクラバから通信がかえると、エスペラントは心底ほっとしたように、はははと笑った。]
このきりでは もうみえんか デブリにひかれた 耄碌したもんじゃ
無茶はするなよ 諦めよ
皆 聞こえるか すまんなぁ わしゃあ こりゃあ……
戻れん なぁ
[船が少しづつ小さくなっていく。]
(120) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[ノイズ。そうして、その先の無音。 ワクラバの声。]
――先生?
[反射的にそう呼ぶ。急激に心臓が早鐘を打つ。 何事か打ち込みかけていた端末を無意識のうちに閉じる。 椅子から立ち上がりかけた姿勢で、見えない筈の音声通信を目で追うように、視線を動かす。
叫ぶようなワクラバの声。 唐突な空恐ろしさに襲われて、ワレンチナは力が抜けたように再び椅子に沈み込んだ。]
(頼む。これ以上、そんなこと。やめてくれ。お願いだよ)
[震える指先が、前髪をくしゃりと掻き上げた。]
(121) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[デブリの霧の中、遠方へと漂う見慣れた姿があった]
まて!いくな…! いくんじゃねぇ!!
[ワクラバは『月』に手を伸ばした]
……『親父』!!
(122) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[極力欲を絶ち生きた老人は、生き方のおかげか。 ごく、素早く、諦めた。
時間はいくらかありそうだ。 この防護服の酸素が尽き、この脳が止まるまで。
それまで、存分に「己が何たるか」を思考することが出来る。]
(123) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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[ふと、脳裏に彼の顔がよぎる。
そこで、ワレンチナの意識は――静かに、途絶えた。]
(124) 2016/05/20(Fri) 00時頃
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