206 “ J ” the Phantom thief
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[貴方たちへの気持ちさえも、薄れてしまうほどに。彼女の声は私の心をとらえてしまったみたい。 軽くなった髪へ指を通して、月の光を受ける赤を見つめる。迎えに来てと、彼女は言った。盗んでと彼女は言った。 それが何時になるかはわからないが。どんな石ころを盗んだ時よりも、私の心は踊っている。
あの赤を、あの陶器のような白い手を 再び取ることが叶うのならば]
( 貴女が手を伸ばしてくれるなら )
私は、自由になれるのかしら
( 愛という檻から、解き放たれるのだろうか )
[机の宝石を横によけ。私は一枚の紙へ、文字を綴る]**
(84) ryusei_s 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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[消えた時と同じように付いた明かりは。>>80 天井をぼんやり見上げた記者の目に、 まともに入り込んでしまって。 その眩しさに二、三度瞬きをした。
掌を叩く、乾いた音が鳴り響く。>>80 音の元を目で辿れば、薔薇の名を冠した美しい娘。 何か話しているようだが、この場所からは遠く。 その鈴を鳴らすような凛とした声を、 拾うことは出来なかった。]
(85) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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…………、
(86) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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[遠い遠い世界。 娘と夫人の交わしている言葉が耳に入らずとも、 近付いて聞きに行くことはせずに。 嗚呼、やはりあなたは高嶺の華。 住む世界が違うのだと、太く長い 線を引いた。
そうして、視線を巡らせた先。 数刻前と変わらぬ美しい赤がそこに鎮座していた。
"怪盗Jが盗みを失敗した。" "予告状は本物だった。" "停電は唯の偶然で、予告状は偽物。"
"怪盗は、こんなパーティに来ていなかった。"
色んな考えが、ぐるりと回って。 辿り着いた結末に、自嘲するような笑みを浮かべる。]
(87) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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( 嗚呼、こんな記事では、 あなたに見て貰うことすら叶わない。 )
[ミセスラングフォードが所有する クイーンハートのお披露目パーティーが 開かれた旨を書いた記事は、 紙面の隅の隅にひっそりと乗る事だろう。 誰かの目には留まるだろうが、記憶には残らない。
怪盗がいないパーティーなど、 これ以上長居する理由はない。 帰って大人しく上司に叱られるとしよう。]
(88) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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…… あぁ、ミズ。 どうか見なかったことにしてくださりませんか?
[格好がつかないので、と恥ずかしげな笑みを向けて。>>74 眸に溜まった星を落とさないように、 数度瞬きを繰り返して閉じ込めた。 床を鳴らすヒールの音は同じなのに。 エプロンと襟を外しただけでどうしてこんなに、 雰囲気が変わるのだろう。 其れはまるで、魔法が解けた様。]
(89) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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[差し出されたハンカチーフには礼を述べながらも、 受け取ることはしなかった。 返せないものを受け取る事など、できない。
自らの手で魔法を解いたあなたは、 どこへいくのでしょうか。 王子さまを待つだけの莫迦な乙女とは違う、あなたは。]
(90) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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[耳元に唇を寄せたあなたは、 どんな表情をしているのだろう。 腰まで降りた、 美しい亜麻色の髪を一房掬い上げて、口付けを落とす。
うつくしいひと。意地のわるいひと。 そんな事を言われては、 攫ってしまいたくなるというのに。**]
(91) かの 2017/01/12(Thu) 23時半頃
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[ 薔薇と女王が相対する世界。 彼方と此方側では、世界が違う。 太く深く刻まれし溝を越えるには、 些か恐怖さえ抱いてしまうもの。 ]
…… 見なかったことに?どうして、
[ 彼の視線は、まるで集る虫と同じ。>>87 光を取り込む虹彩は、一度閉ざされ、 なにも見えぬ筈の床に落ちましょう。 瞬けば、弾け飛んでしまいそうなお星さま。 流れ星に祈るのは、 …… 。 ]
(92) ゆら 2017/01/13(Fri) 16時半頃
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[ 小さく、小さく、呟いて。 ハンカチーフに刺繍されている薔薇の花は、 くしゃりと僅かに、歪みましょう。 迎えに来れないのではなく、 鼻からそのつもりなんてなかったのでしょう? 噫、此れだけ近付いていてよかったわ。 揺れる瞳も、昏い眸も、 貴方に見られることはないんだもの。 ]
でもね、─── … 貴方じゃあ、無理だわ。 “ アレ ”も、“ ソレ ”も、 手に入れることなんて、出来やしないもの。
[ 私と、貴方の間に引かれる線さえも、 越えることのできない意気のない貴方、では。 落とされる口付けに、>>91眸を細め、 彼の胸の中心を、指先で軽く突きましょう。 ]
(93) ゆら 2017/01/13(Fri) 16時半頃
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[ 目を惹く素晴らしい記事が書けたのかしら?>>87 あの美しい花の目に止まっていたのかしら?>>88 私、貴方たちのキューピッドになるつもりは、 …… ─── 甚だ、なくってよ? ]
…… 貴方が、怪盗だったなら良かったのに。
[ とん、と彼の肩を押して離れましょう。 己の毛先を軽く指先に絡ませて、 僅かに微笑めば、私は会場の闇に紛れるのです。 黒は、すべてを覆い包み隠すのが上手ですから。 僅かに覗きかける黄色さえも。 *]
(94) ゆら 2017/01/13(Fri) 17時頃
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[ ──『タイスの瞑想曲』
その名の通り、歌劇「タイス」で タイスが瞑想する時に流れる曲
ゆったりとした時間の中で揺らぐ心を徐々に束ね、 その道に向かおうという決意…
美しい旋律は暗闇だからこそ一層と その情景をしっかりと心に描くことができる
最後は優美なテーマ高音のハーモニーで 静かに消えていく その余韻が消えるまでは弦を下ろしたりしない ]
(95) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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[ ────パチン
余韻消えるのとほぼ同時に明るさが戻り、 聞こえてきたのは手向けられた拍手の音>>80
暖かい賞賛を向けてくれる先には、 品の良さそうな女性の姿。 一瞬視線が交われば口角を結んで一礼を。
頭を上げると同時に、ハッと思い出したように隣の ≪ 彼女 ≫ へ目を遣る。
それはさっきまでと変わらず… むしろ暗闇に包まれていた分、 此方を見ろと輝き続けていた ]
(96) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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なんで………
[ ふと、先ほどの拍手の女性を見つめる。 何の迷いもなく自分の演奏を
“ 演出 ”
と言い切った彼女。 むしろそれ以外のなにものでもないと 言わさんばかりに…
受けた違和感。 何故なら自分はこの演奏が
“ 演出ではない ”
ことを知っているから ]
(97) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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[ ≪ 彼女 ≫ は今でも、 何者かも分からない怪盗の手元ではなく、 自分の手の届くところにある。これだけは事実。
──────
そんなことならあの暗闇で 自分が彼女を攫えば良かった
──────
苦虫を噛みながらゆっくりとその輝きに手を伸ばす。 1度目も2度目も寸前で、 触れることすらできなかった、
『麗しの女性』 ]
(98) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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ふっ……………ははっ……
[ 思わず笑いがこみ上げると同時、 その手を引っ込める
どうしてだろう、 これまでに感じた昂揚感、何にも代え難い執着心 そんなものたちがすっかりと薄れてしまっている
ポッカリと空いた心に流れ込んだのは 今も耳に残るメロディー 毎日幾らでも演奏をしているのに、 こんなにも自分で自分の心を揺さぶったことは 初めてだ。
彼女の美しさは変わらない それだけれど、今はもっともっと、 心が音楽で溢れている ]
(99) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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[ もう一度キョロキョロと探すのは、 曲をリクエストしてくれた彼女。 その黒髪が扉を潜るところが見れただろうか?>>36 ]
(100) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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[ この曲を選んでくれた 「ミーシャ」
そして、
暗闇をプレゼントしてくれた 「怪盗J」
そんな “ 2人 ” に、
感謝を込めて もう一度 ≪ 一番の宝物 ≫ を抱き締めた ]**
(101) papico 2017/01/13(Fri) 18時半頃
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[瞳に溜まった雫を星と呼ぶのなら、落ちる涙は流れ星。 自らが落とした星に祈りを捧げるなんて、なんと滑稽なのだろう。 下を見ても落ちたはずの星は何処にもなく。
星に願いを。 あなたのしあわせを? いいえ、俺が寂しくないように。 さみしさでしんでしまわないように、祈りを捧げよう。 例え、あなたに笑われようとも。 それが、叶わぬものと知っていても。
閉ざされ、床に落ちた虹彩。>>92 あなたは何を祈るのだろう。]
(102) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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[小さな小さな呟きに、あなたが手にしているハンカチーフの薔薇と同じように、くしゃりと顔を歪めましょう。 女王を求めていなかった、それは確たる事実。 花の心 とは。何を/誰を意味するのだろう。
あなたは俺に迎えに来ては欲しくなかったのでしょう? 怪盗ではないただの記者なんて、興味はないのでしょう。 "女王の心"すら手に出来ない俺は、あなたには必要ない。]
(103) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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そう、あなたの云うとおりだ。 俺では、何を手にすることも出来やしない。
あなたを迎えに行くという、 約束すら守ることができないのですから。
(104) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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[ひとつ、線を引こう。 ここからこっちは、俺の場所。 だから、あなたも。 あなたも、入ってこないで。
軽く突かれた胸の中心。 其れは、拒絶だろうか。]
貴女が怪盗なら、俺は ―――
(105) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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[目を惹く記事が書けずとも、 誰の目に触れることができずとも。
嗚呼、俺は今 酷く歪んだ笑みを浮かべているのだろう。 手に一房持っていたあなたの髪を、 名残惜しそうに掌から逃がす。]
(106) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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…… 俺が怪盗なら、 貴女を迎えにいけたのに。
[押された肩に残る、彼女の温もり。 酷く軋む心臓に気付かないふりをして。 去りゆくあなたに微笑みを返す。>>94 誰の王子さまにもなれやしない、莫迦な記者は。 何にも染まる事の出来ない、哀れな白。
夜の闇に溶けて、なおも白く光る影を ひとは 星 と呼ぶのだろうか。**]
(107) かの 2017/01/13(Fri) 20時半頃
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[真昼のそらのしたを、 宵闇に月が浮かぶそらのしたを。 今日も記者はひとり、駆けよう。
宇宙船が出現したそらを 幽霊が棲む館を 紅茶が美味いと評判のカフェを 可愛い猫の集まる野原の集会場を
誰かの目に留まる、素敵な記事を書きましょう。 それを誰かが/あなたが見つけてくれたなら。 きっとそれだけで、充分なのだと。 沢山の線に囲まれた紙面の中。 それが記者にとっての居場所。
手帳を取り出して、ペン先を当てる。]
(108) かの 2017/01/13(Fri) 21時頃
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[ 今日もまた。真白い頁に 手癖の強い文字が踊る。 **]
(109) かの 2017/01/13(Fri) 21時頃
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[ 夫人が頷くのを見れば、娘は満足げな表情で ひらりとドレスの裾を揺らし背を向けます。
演奏家の彼には悪いことをしました。 素晴らしい演奏を、“ 演出 ”だなんて。 けれども、一度ついた嘘は取り消せません。 ……取り消すつもりも、ありません。
娘は再び彼を見つけると、>>97 片目を瞑り、赤い唇に指を立て、 ]
( Shhh... )
[ 妖しい香を纏いながら、 こっそりと、娘は柔らかに微笑みました。 今は、今だけは、 真実は光の中へ隠しておいてほしいのです。 輝く星が、見つからないように。 ]
(110) choro 2017/01/13(Fri) 22時頃
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[ いつか再び彼の演奏を耳にすることは叶うでしょうか 今度はそう、──── 光の下で。 ]*
(111) choro 2017/01/13(Fri) 22時半頃
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[あのパーティーから幾日たっただろうか。 深夜、とある屋敷に一枚の紙を届ける。
シンプルな白い紙に、青い字が綴られた、予告状]
(112) ryusei_s 2017/01/13(Fri) 22時半頃
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Mr.ローズ
今宵、あなたの花園から
星と共に最も美しい薔薇を一輪 お迎えにあがります
─ J ─
(113) ryusei_s 2017/01/13(Fri) 22時半頃
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