278 冷たい校舎村8
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[ぱち、と辰美は瞬いた。 聞こえてきたのは、「僕」の声だった。>>191
昨日ぶりのその声に静かに聞いて、 戻っていく様に>>192]
……男前だわ、颯真。
[辰美は強く右手でサムズアップした。
それ以上の解説をしている暇は多分、ないので 氷室の掛け声が聞こえたなら>>183 辰美もまた、こらえていた衝動を抑えず、 扉に蹴りを入れるだろう*]
(194) 2020/06/23(Tue) 00時半頃
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[死ななきゃ、と、彼女は言う。
――冗談じゃない、と辰美は唇を噛んだ。>>200
仲良くしていた親友、という言葉に、 ふっと思い浮かぶのはCG研の光景だ。 あそこで何かあったのか。
そう思考する前に、 三人で扉を蹴り破った。]
(206) 2020/06/23(Tue) 01時頃
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――葉野、
[走る。 狼のよう、というのであれば 獲物が逃げるよりも早く。
鬼のよう、と言われるのであれば 逃げる子を逃がすつもりもなく。
辰美は手を伸ばす。 踏み台に足をかけたまま硬直した葉野紫織の、 ……その右腕をつかんだ。>>204]**
(207) 2020/06/23(Tue) 01時頃
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[ぼろぼろと葉野が泣いている。 颯真が差し出したハンカチすら受け取らず ぼろぼろと泣いている。
辰美はそれを少し困ったように見下ろして、 お前な、と、小さくため息をついた。]
怒るったって、 みんなお前を心配して怒るんだって。 離れていくとか、嫌いとかじゃなくて。
(218) 2020/06/23(Tue) 18時頃
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……だいじょーぶだよ。 どうしても許せねえってやつがいたら 俺が一緒に謝ってやるし。 …………だめか?
[ちょっとくらい叱られておきなさいよ、と思いながら 辰美は困った顔をして、 泣く少女を見下ろしていた。**]
(219) 2020/06/23(Tue) 18時頃
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見捨てるかよ、ばーか。
[ぽふり、と辰美は葉野の頭を撫でた。>>224
縋りつくような言葉の一つ一つを 嬉しいと思ってしまうのは、 可笑しい感覚ではないと信じたい。]
(226) 2020/06/23(Tue) 20時半頃
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お前は嘘つきのくせに嘘つくのが下手で ちょっとわがままなやつだけどさ…… 嘘ついて逃げたら、逃げんな、って追いかけてやる。
ダメな方に進もうとすんならやめろって叱るし、
それでも頑張ってんの、ちゃんと見てる。
お前と楽しいこと、 これまでも、これからもしたいって思ってる。
(227) 2020/06/23(Tue) 20時半頃
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……なあ、葉野。 俺はお前に生きてほしいよ。
帰ってこい。
[共犯者の1人は、 紫色の怪物を見つめ返し穏やかに笑った。
ようやく彼女の右腕を放すと、 逃げ出さないように気を払いながら、 ぽふりぽふりと、優しく葉野の頭を撫でていた。*]
(228) 2020/06/23(Tue) 20時半頃
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……1人くらい、怖いのがいたっていいだろ? お前のまわりにはさ。
[オオカミ少年は村人たちを嘘で困らせた。 だけれども、最初から怖い狼が近くにいれば 嘘をつこうなんて思わないんじゃないか。 …………というのは、0点だろうか。
颯真の方が優しくできるだろうし、 辰美は辰美のできることで彼女を引き留めたい。
親孝行と言われて辰美は軽く肩を震わせた。 笑った、ようだった。>>235]
(239) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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そーだぞ。長生きして孝行してくれ。 案外寂しがり屋だからな。俺は。
[最後にぽんぽん、と頭を撫でて、 葉野が2人に投げかける言葉を聞いている。]
(240) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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[――帰る。と彼女が言う。 その目をこすり、現実への帰還を口にする。 辰美はこくりと頷き、ぽそりと葉野に耳打ちをした。]
(241) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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じゃ、葉野、氷室、颯真。帰るぞ。 帰るまでが文化祭です。 みんな待ってる。
[仏頂面に戻ってそういって、 葉野の歩調に合わせて、帰ろうとするだろうか*]
(242) 2020/06/23(Tue) 22時頃
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あ? だれがワカバヤシだよ
[ボケたつもりが一切ない辰美>>245は 「?」と言いたげに連城を見たが、 漂う安堵のムードに小さく肩を竦めて とっとと帰ろうぜ!と元気よく言う声と 穏やかに「帰ろう」という声>>248に頷いた。]
[積み上げた虚構から、現実へ。 ―――出口はどこだっただろう*]
(249) 2020/06/23(Tue) 22時半頃
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……まあ、八階くらいなんとかなるだろ
[な、と男たちを見るが、 そういえば彼らは文化部と帰宅部ではなかったか。 まあいいや、と辰美は思い直す。
動物の作品群を一瞥する。 金糸雀。羊。豹。子鹿。牛。 馬。梟。魚。熱帯魚。狼。 美しいそれらに目を細めて、 こういう形なら、虚構も綺麗だな、と思いもした。
歩いていく。長い廊下を。きっとそこから先を。*]
(255) 2020/06/23(Tue) 22時半頃
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――昇降口――
[氷室が一気に階段を下りていく。 辰美はそれを目を細めて見つめた。
光が漏れる昇降口は、 確かにここからの脱出口。>>257 つぎはぎだらけの虚構の城の終焉だ。 帰るのは嘘じゃないと葉野が言う。>>256]
ならいいんだ。 そら、みんなで出ようぜ。並んでさ。
[一人だけ先に帰るなんてずるいだろう? 辰美は言いながら、葉野に歩調を合わせて 光さす方へと歩き出す。]
(262) 2020/06/23(Tue) 23時頃
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[ふと、光に飲み込まれる一瞬、 葉野の声が聞こえた気がして、
辰美はそれに――――、目を閉じた。]
(263) 2020/06/23(Tue) 23時頃
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[楽しかった。笑えるくらい楽しかった。
……そんな感想は、どうにも能天気に過ぎるだろうか。 まあいいだろう。思うだけなら自由だ。 咎めるものも、いやしないのだし。]
(264) 2020/06/23(Tue) 23時頃
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…………ありがとう。
(266) 2020/06/23(Tue) 23時頃
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[去りゆく場所に零せた言葉は、それだけだった。*]
(267) 2020/06/23(Tue) 23時頃
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