89 アウトブレイク〜WerewolfSyndrome〜
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ナユタは掃除夫 ラルフに投票した。
チアキは掃除夫 ラルフに投票した。
クシャミは掃除夫 ラルフに投票した。
ラルフは水商売 ローズマリーに投票した。(ランダム投票)
トレイルは掃除夫 ラルフに投票した。
マドカは掃除夫 ラルフに投票した。
ローズマリーは掃除夫 ラルフに投票した。
露蝶は掃除夫 ラルフに投票した。
パティは掃除夫 ラルフに投票した。
ミルフィは掃除夫 ラルフに投票した。
ラルフは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?
現在の生存者は、ナユタ、チアキ、クシャミ、トレイル、マドカ、ローズマリー、露蝶、パティ、ミルフィの9名。
―5月6日、早朝―
町役場前には昨日よりも色鮮やかな顔写真入りの告知が貼られていた
『殺人容疑及びWWSへの感染を認めたため下記の者を処刑した事を報告する
――ラルフ・ブロムベルグ――』
『及びブロムベルグの証言により感染容疑濃厚としてトレイル・トイの身柄拘束を予定
容疑者を発見したものは速やかに機動隊への報告を願う』
(#0) 2013/07/29(Mon) 00時頃
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―5月6日深夜、総合病院の一室―
[一瞬――その意味が理解できなかった。『トレイル・トイを感染容疑者として追っている』
分かってはいると、思っていた…思い込んでいた。こんな日いつか来るのだろうと、でも、それはどこか遠い未来の話で――頭が働かない。傷が、痛む。
何をするべきか、何をしなくてはならないのか。 自由に動かない頭と身体が恨めしい。 報告の為訪れていた隊員を押し退けるようにしてベッドから身を起こす。引き止める声が聞こえたが振り払う。 熱と痛みで覚束ない足元が恨めしい。走り出したいのに、ままならない。 壁伝いに病棟を歩く。 外へと――町へと向かって]
(0) 2013/07/29(Mon) 00時頃
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―回想・5月5日早朝、チアキ宅前― >>3:98>>3:99 [悲鳴にも似た告白を、ただ黙って背を宥めながら聞く。吐き出せるものは全て吐き出してしまえばいいと、こんなにも堪えていた彼の想いを、受け止めたいと。 肩口が温い水で湿ってゆく。 何故もっと早くに気付いてやれなかったのだろう。胸の内に苦く満ちる後悔を、もう二度と繰り返すまいと強く誓う。 失くしてしまった暖かな家族の形を、自分が与えられるとは思わないけれど、差し出せるものは全て差し出したい…だから、いつかもう一度、笑って欲しい]
……チアキ、俺が…いるから 俺なんかじゃ足りないの、分かってっけど、…でも、
[泣きすぎて枯れた声に緩く首を振った。感謝される事なんて、一つも出来てはいない。チアキに与えられたものはまだ返せてはいないから]
(1) 2013/07/29(Mon) 00時頃
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―5月6日深夜、市街地―
[トレイルの住むアパートの住所は調査済みだった。BOOメンバーの所在地を調べた際に興味半分、住民票を引き出したから。
まだトレイル感染容疑の住民への発表はされていない、そう聞いた。 出来れば彼が追手に気づく前に接触したい。
チアキだけを守ると、そう誓ったけれど、本当にままならない。 彼の力が必要なのだ。 それに…叶うならば少しの猶予を――彼の命にも。
身体が重い。痛みは酷く全身から脂汗が滲み出る。歩みは遅く目の前も霞んでくるけれど――ポケットへと手を差し入れて昨日の内に書き殴ったメモを握り締めて浅く忙しない息を吐き出し、止まりかけた足を前へと進めた]
(2) 2013/07/29(Mon) 00時半頃
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―回想・5月5日午後11時、裏路地―
>>3:108
[彼女から言われることに、聞きたくないと首を振る。だが止まらない言葉に、ふつふつと溜まっていたものが涙とともに決壊し、彼女の両手をつかみ溢れ出る。]
…いや。 貴方が動かないなら、私も動かない。 貴方を大事だと思う人が、貴方にそんなことをされて喜ぶと思っているの!? クーだって皆の大事な人なのよ!
[だって、私は喜べなかった。そうやって遠ざけられる度に悲しくて寂しくて。 『私を一人置いていかないで』 本当は、そう言いたいのかもしれない。もう出し尽くしたと思っていたのに、涙が溢れて止まらない。彼女の顔も見えなくて、下を向き必死に止めようとするが止まらず、どうしようもなくて両手で顔を覆う。]
私は、貴方が死ぬのも、食べられるのも見たくない…お願い。
[「そんな無茶はしないで」その言葉は形になっただろうか。彼女にとって大切な人が1人じゃないのは分かっている。これは我儘だ。でも、死んでほしくないのだ。]
(3) 2013/07/29(Mon) 00時半頃
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―5月6日深夜、市街地―
[──『そいつ』を、食い千切り、踏み躙る事はできなかった。その事実に、腹が煮える様な苛立ちは増し、同時になぜか脳髄の隅で何かが小さな溜息を落とした。本当に小さな、…何かに安堵するような、それでいて、この『どうしようもないクソ溜め』に、また一人、今度は自らの手で招き入れた事への嘲笑にも似た──、
食い千切れなかった。餌にはできなかった。それだけ理解できれば、それ以上その場に踏み止まる理由もなかった。 一瞥すらせず、新たな産声を上げるだろう『仲間』から背を向け、口唇に付着した血液を手の甲で拭い、緩りと舐め取る。…その甘美なにおいには、確かに後ろ髪は引かれていたのだが]
(4) 2013/07/29(Mon) 01時頃
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>>2 [夜闇に紛れ、己の狭い根城への道を歩む。だが、足取りに隠れ潜むような気配はない。まるで昼日中の繁華街を歩むような、己を虚飾し、敵など恐れぬと言い放とうとするかのような、そう見せる為のような緩とした大股の歩み。
口端に薄く残った血雫を隠そうとすら、最早せずに。それでも、夜が…病への人々の恐れが己を護ってくれたのだろう。誰に見られる事もなく、辿りついたアパートの入り口に近い壁際、確かに見覚えのある背を見止めた瞳が、…ゆっくりと瞬き、薄まった]
──、…………ここで、何、してんだ。…クソ犬コロ。
[沈黙。暫しの間の後、止めていた足を再度緩と彼の元へと…彼の数歩先に距離を取った位置までと踏み出しながら、長い──溜息のような呼気と共に、声を放った]
(5) 2013/07/29(Mon) 01時頃
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―回想・5月5日早朝、チアキ宅前― >>1 [小さく震えた…、ゆっくりと身体を離して真っ直ぐに瞳を見据える]
ナユタが…生きていてくれるなら…それだけでいい。もう、俺にはナユタしかいないって思ってたけど、そんなの関係無く…
[ナユタの上着へ手を伸ばす。触れるのに躊躇いを見せ、それでも正気を保ちたいと自分を照らす光に縋り付く。伝えたい言葉があった、一生言わないでいるつもりだった言葉。どうしようもなく、今、それを伝えて置きたかった]
俺が俺で居られる間に伝えさせて
………好きだよ。小さな頃からずっと好きだった。
[自分勝手に伝えてしまった事に上着を掴む手が揺れる。暗闇が近付いて来るのが分かった。もう少し後一言だけ、…願う想いは唇を滑らせる]
…ナユタは…俺が…守る、から…
[辺りを覆う黒の中、一筋の光に向かって告げると…意識を手放した]
ー回想終了ー
(6) 2013/07/29(Mon) 01時半頃
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―5月6日深夜、市街地― >>5 [一歩、踏み出す足が鉛のように重い。痛みに喘ぐ息を整えようと、手近な石壁に額を押し当て呼吸を繰り返した。自覚出来る程に熱の上がった身体に、夜気に冷えた無機質な感触が心地良い。 息を継ぐ度に頭へと響く耳障りな呼吸音の中、遠く静かに響く足音に、顔を上げた。 たった数日ぶりなのに、おかしいくらい懐かしく思える彼の姿。夜目にも鮮やかに口角を彩る赤に、ああ、と、ただそれだけを思った]
――あんたの事、待ってたんだよ、トレイル つーか、怪我人なんだから、もっと労れ…ッつーの
[傷を固定する包帯で釣り上げた腕の上から一枚シャツを羽織っただけの姿は、己の状況を相手にも伝えるものだろう。
右手のみで身を起こし、無造作に身体を捻る。壁に掠った肩の痛みに目を眇めながらも、努めて軽く、右手をひらりと振ってみせた――強がりのように]
(7) 2013/07/29(Mon) 01時半頃
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―5月6日 深夜 市街地―
>>7 [夜闇の中、遠目には明瞭には見えなかった、彼の姿。明らかに負傷を抱えた体をこちらに向け直す格好に、瞬間眉根が寄り、──ッハ、と嘲るような呼気を漏らして表情を崩した。薄ら残っていた血液に、今更気付いたように舐め取り、唇端が皮肉気に上がる。ほんの数日前、彼に向き直ったその時から何も変わらぬように]
…俺を? 熱烈な告白でも、してくれんのかい? ──怪我人が、こんな時分にまず何してんだ、っつーな。…、良い『餌』だぜ?……ナユタ、
[数歩、離れた距離。それ以上を己から詰める事はしない。耳上の頭皮に、浅く埋めた指が髪を掻き。名を呼んで、彼を見遣った瞳をゆっくり細めさせ。犬歯を見せつけるようにして、嘲笑った]
帰れ。今すぐにだ。 テメェの大事な奴らの所に、ケツまくって逃げ込んじまえや、クソ野郎。
(8) 2013/07/29(Mon) 02時頃
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ー回想・5月5日14時過ぎ、第二封鎖線配給所付近ー >>3:101 [ナユタが撃たれた、という情報を聞くとマドカは目を見開いた。]
ナユタ君が撃たれた!? 無事なんすか…!?
[チアキを見る限り、事態は一刻を争うようだ。彼は進行方向を気にしており、今にも走り出しそうな表情を浮かべている。]
私も連れて行ってください!
[チアキは断らなかった。マドカは急いで、自転車の後ろの席に横向きに座ると、片手をチアキに回し、もう片方の手で荷物が落ちないよう、しっかりと抱でだきこんだ。
マドカの脳に兄の姿が浮かぶ。昨晩、薬と食料を与えておいた。あまり遅くならない限りは持ち堪えるはずだ。
ナユタが重症だった場合も、これがナユタに会える最後のチャンスになってしまうかもしれない。マドカ目をぎゅっと閉じる。いや、大丈夫だ。ナユタはきっと軽症だろう。そのときはナユタの安全を確認してすぐ帰ればいい。マドカは不安を誤魔化すように、荷物を強く抱きしめるのだった。]
(9) 2013/07/29(Mon) 02時半頃
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―回想・5月5日早朝、チアキ宅前― >>6 [腕の中の震えと離れてゆく温もりに微かに眉根を寄せた――けれど、目前にある瞳に映る色を確かめるように、顎を引いて彼の目を見返す。こんな風にチアキを見詰めた事は、多分初めてだろうと思いながら]
…馬鹿…、なんだよ…それ、
[惑う指先の上からそっと掌を重ねて撫でた。いるだろ?友人も、同僚も…明るいお前を慕う人間だっているだろうと、思う心の中、否定する声も聞こえる。 多分、そんな事ではないのだろうと]
…………チアキ、俺…、……お前は、どうなったってお前だ、って、変わっても、変わらなくても、俺にとってチアキは、チアキだ、
[告白の言葉は意外な程にストンと、胸の中落ちた。 知っていた、様な気もする。チアキの向ける好意が友情とは異質な何かだという事、そこに付け込んできた事も。 ――そしてナユタ自身の中にも少なからず独占欲がある事も。 チアキを守りたいと言った少女を想う。その時胸に芽生えたあの嫌悪感を。名前をつけるにはまだ形を持たないその感情を]
(10) 2013/07/29(Mon) 02時半頃
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[俺もだ、と安易に伝えれば嘘になりそうで、彼の望む言葉を返せない自分が不甲斐ないから、せめてもと、今ここにある思いを口に乗せ、揺れる手を支えようと重ねた掌を肘まで滑らせた所で――彼の身体がぐらりと傾いだ]
――ッ!チアキ!?
[不意に崩折れる身体を片手で引き上げ胸元へと凭れ掛からせて、改めてその疲労の色濃い顔を見詰めた。 一人で抱え込んで――多分泣けもしなかったのだろう、と。幼い頃からそうだった。本当に辛い時程涙を見せなかった。
守りたいのは俺なんだ、と伝える事は出来なかったけれど、誓いは胸の中にある。 背を抱き膝裏を掬い上げて意識をなくしたチアキの身体を抱き上げる。多分、これが、俺が背負うべき重みだと、痛いくらいに想う。
足を踏み入れた室内は昨日同様に寒々しい。この部屋でチアキは一人何を想っていたのかと、切なく込み上げる雫が彼の顔の上へと数滴、溢れた]
(11) 2013/07/29(Mon) 02時半頃
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チアキ、行ってくる――必ず戻ってくるから お前を一人になんか、しないから
[ソファへと脱力した身体を横たわらせた後も、離れがたい思いを振りきれずに膝を付き彼の傍らでその顔を見詰める。窓から差し込む陽光しがまるで急かすかのように明るさを増すのが憎々しい。
苦しげな呼吸がやがて穏やかな寝息に変わった頃に、漸くナユタは立ち上がった。もう一度だけ、と彼の顔を見下ろし、そのまま屈みこんで顔を寄せ、涙の跡の残る眦にそっと唇を掠めさせる。 無性に触れたかった。 その想いに名前をつける事は、まだ出来なくても――触れたかった]
―回想終了―
(12) 2013/07/29(Mon) 02時半頃
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―5月6日 深夜 市街地― >>8 [今の『彼』と会話したのはたったの一日、それだけなのにうんざりする程見慣れた表情に、何故だか笑いが込み上げてきた。肩が揺れる度に傷口が痛む、けれどそれすらも構わないと小さく声を立ててナユタは笑った]
愛してるぜ、トレイル、って? あんたのそういう所、嫌いじゃないって思えてきた ――……だろうな…感染者『トレイル・トイ』 夜が明けたらあんた、お尋ね者になるんだとさ……だからその前にあんたに会っておきたかった
[傷口を庇いながら壁から身を起こして一歩、彼の元へと足を踏み出す。 剥き出された犬歯には未だ薄く朱が残っていたのに、不思議な程に恐怖は感じない。威嚇のようなその表情と裏腹に距離を置いたままの彼は、これ以上ない程に彼らしく思えたから]
ふざけんな、何の為にクソ痛ぇの我慢してこんな所までお前の顔見に来たと思ってんだ つーかな…あんただって『大事なヤツ』なんだよ 死なれたら困るんだ、覚えておけ、このクソ野郎!
(13) 2013/07/29(Mon) 03時頃
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[例え守れはしなくとも…それでもその死は耐え難い。 やっぱり自分は我儘だと胸中で自嘲しながら叫びを叩きつけ、煽るような言葉に――その癖自分を襲う気配もない彼に苛立ちを抑えこむ事が出来ず、右手でその胸ぐらを掴み上げた。
負傷した肩が引き攣れて、痛い、耐え難く疼く。定まらない足元とふらつく身体、けれど瞳だけは真っ直ぐと彼の瞳を見据え]
…頼み事があるんだ あんたにしか頼めねぇ
(14) 2013/07/29(Mon) 03時頃
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ー回想・5月5日14時過ぎ、第二封鎖線配給所付近ー >>9 …分から、ない…
[ゆるゆると頭を振る。不安の波に飲まれそうになるのを必死に耐えた]
うん…、スピード出すから振り落とされない様にしっかり捕まってて。
[自転車の後ろが軋んだと同時に腰に回された小さな手。その手の温もりに僅かに冷静さを取り戻した。振り返らずに少女に言葉投げ掛ける]
……、
[それから言葉発せずに町中を自転車で擦り抜けて行く。今朝の出来事が脳裏を過ぎった。守るって…言ったのに…、悔しくて情けなくてハンドルを持つ手に力が込もる。
暫くして目的の病院前に着くと受付で聞いた病室へと向かった。少女と共に病室の前まで来ると扉をそっと叩く]
(15) 2013/07/29(Mon) 03時半頃
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―回想・5月5日14時過ぎ、総合病院の一室― >>15 [思索を続ける程にすぐには動けない身は疎ましく――気付けばうとうとと微睡んでいたらしい。浮遊する意識を引き上げたのは小さく響くノックの音だった]
――……どうぞ。好きに入って貰って構わねぇよ
[病室の周囲は隊員達が見回りをしている手筈。不審者ではないだろうと思い至って眠気にぼやけた声を返した。
殺風景な部屋の中にはパイプ椅子が一脚と古びたサイドテーブルが一つ。それに備え付けの冷蔵庫。空になった点滴台がベッドの左側へと置かれるのみ。
右肘をマットレスへとついて上体を起こすと、肩へと走る焼けるような痛みに眉を寄せた。やはり鎮痛剤の効き目は十分ではないらしい――傷が予想外に深くまで皮膚を抉っていたから、というのもあるのだろうが。 詰まる息を吐き出して痛みを散らし、来客に備えて枕を背に入り口へと視線を向けた]
(16) 2013/07/29(Mon) 03時半頃
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―5月6日 深夜 市街地―
>>13 [やおら響いたのは──微かな笑声。不可解さに、思わず口角から作る笑みの形が薄れて、緩りと顰めさせた顔を一瞬、息を吐き出すように俯かせ]
──冗談じゃねェぜ。嫌われた方が、随分『マシ』だ。
[感染者。…彼の口が紡いだその言葉に、漸く薄ら口端に笑みを引き戻し。半眼を、ねめつけるように、…見るからに無理を隠せない癖して、己の元へ踏み込む彼へと送って]
──アンタの顔見た時点で、予想はしてたさ。ラルフの野郎が、…やりやがっただろうっつーのもな。 会って?このクソうぜえ『化け物』風情を、アンタがぶち殺してやるとでも?──
[相手の。傷をおしてまで己に会いに来たと言う青年の、本心までは推し量れずとも、察する事ぐらいは己にとてできた。その上で、彼を突き放し踏み躙る言葉を、ゆがめた口元から吐き捨て……胸倉を掴まれたのと共に、思わずに少し口を閉ざした]
(17) 2013/07/29(Mon) 04時頃
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>>14 [眼前近くにまで迫る双眸、──微かに、敏感になった鼻腔を擽る傷口からの…血の気配。 意図せず震えた唇が開き、ナユタの顔傍、彼に喰らい付きそうに揺らぎ、…目端に力が揺れ篭り、唇を己で噛み締め、顔を背けた。呼吸が震え、どのような衝動の中でも消えきる事のない理性が己を嘲笑う。 両腕を伸ばしかけ、しかし無意識が彼の傷への躊躇いを生んで、右腕だけが半端な位置に落ち。左掌が、青年の右肩をきつく掴んで]
──ッ、…。 ふざ…けてんのはテメェだろうが、クソナユタが! 喰い殺すぞクソがっ!嫌なら、とっとと──、…、……なん、だよ。…頼みごと、だ?
[この上で。…何をできるとでも言いたいのかと。苛立ちで、今は理性を保たせ、歪ませた双眸がナユタを見返し、腕の力が僅かにゆるんで]
(18) 2013/07/29(Mon) 04時頃
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―回想/5月5日15時頃 町役場前広場―
[配られた町会便りの号外、投票用紙を握ったまま辺りの人間に紛れるように広場へと辿り着く。身に纏うのは今日も洋装――黒のロングスカートに少しゆったりとしたシャツ。 女装に別段拘りはない。穏便に入手出来たのがほぼ女性物だったというだけの話、と知人に合えばそのように嘯くだろう。
改めて紙面に乗る名前を視線でなぞる。 店で掃除をしてもらった時の何気ない会話と共に、商った薬がぼんやりと脳裏に浮かぶ。 彼に渡した薬が彼の目的に沿ったのか、効果として満足を与えられたのか……それを確認する術は、ない。
投票が始まってから、自分は何も選択していない。 ただ状況により決められているであろう、明日の処刑者の名前を紙に書いているだけ。だからこそ何かに苛まれる事なく過ごせているのかも知れない。
――自分も、結局我が身が可愛いだけなのだ。
記名を済ませた投票用紙を箱に入れた帰り道、誰も居ない路地を歩みながら独りで自嘲気味に口角を吊り上げた]
―回想終了―
(19) 2013/07/29(Mon) 09時半頃
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―回想/5月5日夕方 「三元道士」店内―
[店に戻り着替えと化粧を直した後は、店を開けた。 感染症に対しては知らぬ存ぜぬを繰り返し、半ば追い出す様に薬の処方を断る。 胸はざわついたものの数をこなしていくうちに段々と、そのざわつきも気にならなくなってきた。――疲労は溜まるが。
自らの指定席である長椅子に座して密やかに溜息を落としている所に扉が開かれればゆるりと視線を投げた。 可愛らしい少女。何処か既視感を覚えてじっとその顔を見つめる。そんな自分の視線を意に介す事無く真っ直ぐ此方に歩み寄り、薬包を差し出されれば首を傾げながらそれを受け取る。 それは数日前にナユタへ処方したもの――否、「拾ったガキ」と言っていたか>>1:109。それを持っているという事は、目前の少女がその拾われた子供なのだろうか。 と、彼女の声を聞いたところで漸く以前来た少女と今の少女が結び付く]
マドカ、だったカナ?ナユタのトコの子で合ってル? ンー…マドカはあとこノ薬は飲まなくテ大丈夫ヨ? 強い薬だかラ、飲みすぎモ良くないシ、ネ。
[妙に真剣なその瞳に何かを感じない訳ではなかったが、柔らかく笑ってやんわりと拒否を示して少女の顔色を窺った]
(20) 2013/07/29(Mon) 09時半頃
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─回想/5月5日深夜2時 「三元道士」─
[光を見ていた瞳は直ぐに闇に慣れる事も出来ず、光から遠い彼>>3:107も、何処かぼんやりと闇に紛れて見えて。ただ変わらない挑発的とも取れる笑みは、自分が知る相手と変わりが無い様に見えて]
……それハ食べられテって事?ワタシがそう簡単ニ食べられソウに見えル?美味しそウかモ知れなイけド♪ …マ、何処かノ誰カさんガ古風な事ニ、熱烈な恋文ヲ置いてッテくれタからネ。どんな奥ゆかしイ人なのカ見なイと死ねナイと思ってネ。
[言外で自分は感染者ではないと示しながら、くつくつと喉奥で笑ってから、にまりと更にその笑みを濃くする。常の応酬を半ば無意識になぞりながら、解り切った差出人――書置きの本人を視界に据えて]
トーイに言われたクないヨ。何処カの国でハ勝手に家に入ったラ撃ち殺されてモ文句は言えなイ、ってトコもあル。 ……無用心だヨ、トーイ。それとモ穴を増やされルのガお望ミ?
[降ろしていたもう一方の手を持ち上げて眼前の青年――その眉間に狙いをつける。ばん、と銃声をやる気の無さげにも真似て、示指の先にある彼の顔を眺める。徐々に闇に慣れていく瞳孔は彼の表情も少しづつ捉えていく]
(21) 2013/07/29(Mon) 09時半頃
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―5月6日未明 「三元道士」、自らの私室にて―
[店内の家具とは対照的にこの地へ来てから用意した簡素な家具、その中の椅子に座って机へ向かい静かにペンを動かしている。手元には一冊のノート。元々纏めていたもの>>1:98を改めて新しいノートに写し、5月1日からの日記――自分が聞いた情報や関わった人物について細かく書き示してある。 其処に昨日を書き留めていく。大した成果も無くただ疑心に苛まれる人々の様子を記していけば、改めて現状を認識して自然と表情は翳る。
日記を書き終えれば、一度だけ最初から最後までページをぱらぱらと送り。最後のページ、切り取られた一枚の名残に暫し視線を止めた後にノートを閉じて。そのままそれをビニール袋に入れて冷蔵庫の中、引き出しの一番底へ置き湿布薬等をその上に乗せた。
言伝はしたものの、彼が見ても結局何も意味は無いかもしれない。それでも自分が死んだその後、あの弱い青年が生き残る為の力になりたかった。 自分が発症すればこの準備も全て無駄になるのだが、保険は多いに越した事はない。
そうしてまた独り、暗い店内で蝋燭だけを供にして夜を過ごす。 ――鍵は、かけない]
(22) 2013/07/29(Mon) 11時半頃
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三元道士 露蝶は、メモを貼った。
2013/07/29(Mon) 12時頃
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─回想/5月5日 深夜2時 薬屋「三元道士」─
>>21 [耳孔を密やかに擽るような笑い声が、心地好い。──こんな、全てが嫌になる夜でも。 己の生きていた、…この為だけにも『まだ』生きるに値するとそう、どこか感じていた筈の「現実 」のにおいを確かに嗅いで、頭の芯が、眼球の奥底がざわつく。瞬きを一度、そして視線が彼の元を逸れ、小さくも眩しい灯りに向かった。己が刻み見せた表情は変えようとはせず、しかし笑んだような形は薄らと剥がれ落ち]
…、アンタに、会いたかったんだ。
[掠れた低声が、呼気のような呟きになって落ちた。ああ、と微かな溜息が、自嘲に零れ、顎を思い出したような仕草で煽るかの如く、上げ見せ]
──…見えねーな。喰われたって、簡単におっ死ぬタマじゃァねえだろ?…なァ、 「俺を殺す準備」はできたか?
[恋文。その示すものは明らかで、己も瞬間緩りと…尖る犬歯を、まだ白く、そこには血色を刻んでいない歯を覗かせて僅か笑いを引き戻し見せた。囁きの問いは、どのような意味で彼が捉えても、…構わないと]
(23) 2013/07/29(Mon) 12時頃
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…すぐには逝けねー穴なら悪くねェよ。 アンタが開けてくれんならな。
[痛がりなのだと、嘗て言った言葉を彼が覚えていたかは知らない。『撃たれた』眉間、両目の上から掌で覆い。口元の表情はそのまま、再度の溜息がひっそりと落ちた]
──ああ。…来るんじゃ、なかったわ。 …ヤっちまいたくて、…仕方がねェ、……
(24) 2013/07/29(Mon) 12時頃
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―5月6日深夜、市街地― >>17 どうだか でもまあ、愛してるは冗談だとしても、俺はあんたが好きだよ
[軽口というには真摯な表情浮かべて、ぽつりと呟きを落とした。
嫌える筈など、なかったのだ。変わろうが変わるまいが、彼は彼でしかなく――憧れた『お兄ちゃん』はいなかったのだとしても、それでもナユタの気持ちまでもが幻だった訳ではないのだから。 上着を鷲掴む指先を微かに震わせて、解き、彼の胸、心臓の位置へと掌を押し当てた]
…あのクソ野郎、なかなか良い性格してたみてーだな……なんつーか、ご愁傷様、なんて話じゃねーのもわかってるけど …………人だって、俺は言った筈だ あんたは只の人間だよ、トレイル
[触れた掌の下、確かに息づいているであろう心臓は、変わらず人の物だと――。 自らを化け物と称する男に覚えた一抹の切なさをやり過ごそうと、奥歯をきつく噛み締めた]
(25) 2013/07/29(Mon) 12時半頃
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