279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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[宇宙をいく船の中で、 小さく青石洗剤が擦れる音がある。]
(+2) 2020/09/02(Wed) 20時頃
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[それらは、夜に入っていた洗濯機を壊され 負荷に耐え切れずに変色したものだった。
それらは、部屋に来たものに拾い集められ 談話室に運ばれた。
それらは、一度 浮遊種と言われる者の手にとられ また、別の義体の少女に受け渡された。]
(+3) 2020/09/02(Wed) 20時頃
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[それらは、一晩、談話室においてあっても 清掃ボットに片づけられることはなかった。]
(+4) 2020/09/02(Wed) 20時頃
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[それらは、青色洗剤と呼称される存在に 生命があると定義した場合、 「死体」と呼べるものであったが
その青石洗剤らは、 ヒト種に近いものと同じ扱いは受けなかった。]
(+5) 2020/09/02(Wed) 20時頃
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[青石洗剤の「死体」は、 片づけられるべきもの、 遠ざけられるべきものとしては 扱われなかった。
それは、やはり、「人」と姿があまりにも 大きく異なるが故であっただろう。]
(+6) 2020/09/02(Wed) 20時頃
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[その結果として、集められた動かぬものは、 浮遊種や少女と、共にあることになった。]
[もはや、その選択をした理由は 「心」は、青色洗剤に届くことはないけれど。]
(+7) 2020/09/02(Wed) 20時半頃
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[いくら、そこに身体(いれもの)が存在しようとも、 変色した小石に、何かが届くことはない。
元々、翻訳を通さなければ、 小石にとっては、 理解不能の存在だった。
そして、翻訳機能は失われている。]
(+8) 2020/09/02(Wed) 20時半頃
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[誰にとっても、正しく意思なき「物」が、 そこには転がるだけだった。]
(+9) 2020/09/02(Wed) 20時半頃
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[ある意味でそれらは、人扱いされないことで この船の中で役目を果たす機会を 与えられた、ともいえるだろう。
"寄り添う"機会を。
その身体は「遺品」になった。]
(+10) 2020/09/02(Wed) 21時頃
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[それは、もはや意思を持った存在としての 対等な扱いとは言えないだろうけれど、
洗剤になることで、健康を守れるように 香りを出すことで、精神を安らげられるように。
話さなくなったことで、 以前との差異を比較できるものになった。 比較することで、「失われた」ことを 認識することができるものになった。]
(+11) 2020/09/02(Wed) 21時頃
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[結局意思を伝える術のないモノを どう使用するのかは、 結局のところどこまで行っても、 断絶を隔てない、生存者たちにしか できないことだった。]
[もはや説明もできない青石洗剤の死亡理由を推測し、 それを、推理のてことして誘導に使うことも。]
[その行いを否定することも肯定することも、 もはや、転がるだけの石には不可能なことだった。 伝達の方法は、もはや失われている。]
(+12) 2020/09/02(Wed) 21時頃
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[そこには、ただ、 断絶だけが確かなものとしてある*。]
(+13) 2020/09/02(Wed) 21時頃
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