158 Anotherday for "wolves"
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― 回想:二日目 夜 ―
[ …………――ざあ、と木々がざわめいた。 その中に一つ、幼い頃共に登った木がある。]
[夜の森の中、濃く、血の匂いが馨る。]
[崩れ折れた体を受け止めている。] [消えゆく体温をその手で感じている。] [淡い笑みに気づく事は勿論無かったが、>>+3:37
村医者は、やがてはその背に手をそえ、 共にずるりと座り込んだ。]
………どうにかできるわけ、ないだろ……
[血のにおいの中、小さく呟いた。 集会のあとのグレッグの言葉を思い出す。]
(+10) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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「…ルパートとスティーブンはさ、 ずっと…このままなの?」
もう、とっくに、とっくにさ……。
[そう簡単に戻れたら、八年の月日なぞ経っていない どうしようもないことだと、村医者は思っていた。]
( 君の大事な妻を殺した ) ( 君の娘を 君の目の前で突き飛ばした ) ( 君の平穏を壊した )
[ ――いつも、傷つけてばかりだ。 投票前の彼がぶつけてきた静かな怒りを思う。]
( 酷いやつだろう。君は僕を思うまま殺してよかったんだ。爪で牙で言葉で。臓腑を抉り、心を八つ裂きにして、かまわなかったんだ。)
(+11) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[ だが、振り返ればこの有様は何だ。 どうして自分「が」彼を殺しているのだろう。
縋りつくことすら 「それで許してくれ」と言っているようで、 できはしなかったのに、それが間違いだったのか。
――彼が自分に殺されたがっていた事など、 悟っていて尚、そう「誘った」事など、知らぬ儘。]
[何故彼は昔の呼び方で この自分を呼んだのか>>3:32]
(+12) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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―――――――、…………!!!
[空を仰いだ。 雲母の如く黒い空を。
潮騒を奏でる森の中、 旧友の亡骸の背を搔き抱き、 一つ、消え入りそうな狼の遠吠えが響き渡る。
頬に流れた銀色を、蒼褪めた月だけが見下ろしていた。*]
(+13) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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― 3日目、そして、 ―
[本に埋もれて死ねるなら。 きっと、彼も本望だったのだろうとは思う。
――実際は森の中、 狡猾に仕組まれた罠の餌食になるのだが。
ジョスランが伝言を受け取ってくれたので その背を見送り――>>39]
[ シャボン玉のような聲が聞こえた。 ”それ”が何を意味していたのか、 今となっては、わからないままだ。 ]
(+14) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[ 最初はただの衝撃にしか感じられなかった。 どうやら悪い予感は的中したらしい。 ああ、やられたなと知覚するには どうにも深く眠りすぎていたようで、 胸が十字架で貫かれる瞬間すら 意識は酷く曖昧だった。 ]
(+15) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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( 痛 い、
あ、あ
やめ、
あ あ 噫 )
(+16) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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( …………、 )
( ……朝飯、
何にも作ってないな。 )
(+17) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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[ 轟、と炎が唸る ]
[ 体が焼かれていく。悪臭がする。 酷い痛みを感じながらも動けずにいる。 ぐらり、祭壇付近の壁が一つ落ちた時]
[男の男としての意識も また 燃え落ちた。*]
(+18) 2015/05/17(Sun) 18時半頃
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― 未明 ―
[ 祭壇を中心として、教会が焼かれていく。]
[ 十字架を突き立てられた骸が一つ ゴミのように――事実、ゴミなのだ。 無残に転がっている。]
[ まるでそれは悪魔の処刑のよう ] [ 赤々と燃えあがり夜を煙らせる炎は、 さながら、愚か者に下された―― ]
……罰でも与えたおつもりかい? ……はははっ。
[ 一つの影が、教会を仰ぎ嘲り笑った。 ]
(+19) 2015/05/17(Sun) 19時頃
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[ そこには真っ黒な影が立っていた。
目も口も鼻も無く、 スティーブン・イングロットのシルエットを象るような影。 胸に十字架を突き立てられたからか、 そこから、もやもやと僅かに白色が滲んでいた。
生前と違う形があるとすれば、 時折揺れる尾と耳らしきものだろうか。 それは揺らぎ、霧散し、また形となって揺らめく。
その姿は狼男のようで、悪魔のようにも見えた。]
(+20) 2015/05/17(Sun) 19時半頃
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[黒焦げの骸の傍で嘆く青年の傍に、歩み寄る。]
起きないよ。 もう子供でもないだろうに、情けねえなあ。
[触れられぬ掌は「殺してやる」>>37と 泣き叫ぶ彼の頭をそっと撫でる。]
( それとも……情けないのは僕のほうか。)
( 触れられないんじゃあなあ )
[――やはり。誰かの涙を拭う役は、 自分にはできないようだ。 そっとその背に背を向けて佇めば、 壊れたステンドグラスの向こうに虚ろな空が見えた]
[口だった場所から、 虚ろな声が告白のように零れる。]
(+21) 2015/05/17(Sun) 19時半頃
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死は救済だったんだ。 罪を背負って尚も生き続けていた…が――
[手を広げる。相も変わらず影の色は変わらないが ルパートを殺した時と同じように、 手は鉄錆の匂いに満ちていた。]
あるべきところへ、裁かれるべきところへ逝ける。 もう、黙って針の筵に立たされるような事も無い。 あるのが終わりか、更なる責め苦かは知らないが。
[だからあの時、「道連れにしてやる」と言った彼の エンジェル・ブルーの双眸が。 村医者には、”天使”のものに見えていたのだ。 視線を落とす。]
酷いだろう。 だからさ――復讐なんて、考えてくれるなよ。 君は君の道を行けばいい。
(+22) 2015/05/17(Sun) 19時半頃
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[この背を、追う事は、どうか やめてほしい。]
[――託したガーネットを思う。]
…………噫、そんな事を考えていたから、か。 こうして、ここで。
何にもできないのが、 そんな…への「罰」なのかもしれないなァ……?
[けらり、と自嘲気味に笑えば、 影の尾はゆらりと揺れた。
――ジョスランの姿が見えた。>>48 少しドライなところはあるが、 今のヨハネスに声をかけてくれているだけ有難い。 >>61否定したがるような言葉に、笑う。]
……はは。ドブにでも捨てておけ。 そこの黒焦げのゴミなんてさあ。
(+23) 2015/05/17(Sun) 19時半頃
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[笑って、影はローブの裾らしきものを翻し 逃げるように教会を歩き去る。
少女の姿は>>50見えただろうか。 マーゴットに銀の薔薇を与えたという少女。]
( 罰を与えようとするなら、きっと…… )
[思って、笑って、その場を歩き去る。 向かう先は己の自宅。**]
(+24) 2015/05/17(Sun) 19時半頃
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― 回想:3日目 ―
[体温を無くした自分より小さな体を 静かに見下ろす琥珀色の目は、 レンズの向こうで見せる感情を曖昧にしながら 戻ってくるサイラスの姿を捉える。>>79]
「……すまねぇ、先生」
( マーゴットを頼むと、言ったじゃあないか、 )
[理不尽な叱責を向けようと口を開きかけて その瞼が赤く腫れていることに気づく。 力なき蒼い目。
きっと、彼が一番悔しかったに違いないのだ。]
(+28) 2015/05/17(Sun) 23時頃
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…………。
[何か声をかける前に足早に歩き去っていく サイラスの姿を見送る。 マーゴットの体の重みを感じ、眉根に皺を寄せた]
…………辛かったな、君も。
(だけど、 酷でも
この娘が、 土に埋められこの世を去る瞬間までは ……君に、見届けてほしかった )
[それは父親面した男のエゴに他ならず 村医者は息をすいこみ、吐き、空を仰いだ。
……吹き荒ぶ風が、泣き声のように聞こえた。*]
(+29) 2015/05/17(Sun) 23時頃
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― →自宅 ―
[コツ、コツ、コツ。]
[音が響く。]
[コツ、コツ、コツン]
[喧騒の中を、縫うようにして村外れの方へと。 教会の方で騒ぎが起きているせいか、 村医者の住居のあたりは、閑散としていた。
がら、と――いつものように 戸を開くまねをしたが、実際は開いていない。 見えていないかのように そのまま自宅へ足を踏み入れた。]
(+30) 2015/05/17(Sun) 23時半頃
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[――昨日は何をやっていたんだっけ。 そうだ、クラリッサに頼んでいた草を そろそろ取りに行かないとと考えていた。
このまえ化膿止めもあげてしまったから ストックがない。作らねば、と考えていた。
次第に昇りだす朝日に、照らされる室内。 机に転がる仕事道具。 本に挟まれた栞の場所。 壁の染み。 猫が飛び出していったであろうベッド。
そういったものが静かに朝陽に照らし出される。
何一つ、変わりはしない。]
(+31) 2015/05/17(Sun) 23時半頃
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[朝食を作っていない。 どうせ、いつ帰ってくるかもわからないが まあ、ひもじいのは嫌だろうからな――と 鈍く光る包丁を取ろうとして]
[ ――どんどん、と扉が叩かれ開かれる。]
「スティーブン先生!」
なんだい
「教会の火事で――」
ああ、あそこで死んでるの僕なんだぜ。 笑えるだろ
「……くそっ、いないのか!こんな時に!」
……怪我人は……?
(+32) 2015/05/17(Sun) 23時半頃
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「薬屋に――」
( …………、 )
なるほど。こりゃあ、悪趣味だ。
[ 包丁に触れる。 銀の刃は、影を傷つけることすらなく。
確かに「ここにいない」という 現実を、影につきつけていた。]
(+33) 2015/05/17(Sun) 23時半頃
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[くる、とローブの影を翻し、自宅を出た。
再び歩いていく。 村の中央にある教会から燻る煙。 空に溶け込めず、穢い色をしているように見えた。
道中、金色の髪が見えた。>>101 その隣に立ってみる。]
………。
[眼鏡のような影を直す仕草。 それから、笑うように肩を揺らし、 拳を一度握って震わせた。 「生きてたら一発ぶん殴ってる」とでも言いたげに。]
(+37) 2015/05/18(Mon) 00時頃
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そんなんでどうする。 大丈夫、 大丈夫。 ……君は強いよ。サイラス。
[その拳を解いて、サイラスの背をとん、と叩いた。 どうにも、彼が一連の犯人だと思えない。
――否、そもそもこの影は、生きていた頃から あまり強く人を疑えぬ性質では、あったのだが。
何はともあれ。 今は一人たつ彼の背を、応援するように再度叩いて またどこかへと歩いていく*]
(+38) 2015/05/18(Mon) 00時頃
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[ ざららら、と潮騒のように草葉が舞う。]
……やっぱり、出られない か。
[ある程度まで進むと、足が引き戻される。 肉体はないのに痛みを感じるように。]
――見届けろ、という事、なのかね。
[ きな臭い匂いと共に、歩きだす。 アネモネが揺れていた。]
[風に乗って届く声。>>158>>160
盗み聞くつもりはなかったが いつのまにか墓の近くに来てしまっていたようだ。 少女の咽び泣く声が胸に痛い。]
(+50) 2015/05/18(Mon) 03時頃
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(君のお母さんもお父さんも、 殺してしまった…な)
[村医者はルパートの無実も何も、知らないから 何がどうなっているのかもまた知らないが。 向けられた刃のような言葉を思い出している。]
「さっき聞こえた、投票の話。 もしそんなものをするんだったら
わたしは先生が死んだらいいと思う。」
……人を呪わば、穴二つってな。
[それが皮肉なのか自嘲なのか、 影自身にもわからなかった。 ただ、もやもやと白く、胸に燻るものに そっと手を当てて、空を仰ぐ。]
(+51) 2015/05/18(Mon) 03時頃
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( ……そもそも、どうして…… )
[「裏切り者」の人狼は、人を殺す禁を犯し その上、同族まで殺してまわっているのだろう。
――投票にて過ちを正せと、最初に言ったのは自分だ。 それが裏切り者たちを刺激することになって 教会に火災を起こさせ、 (あの時はそういえば、呼ばれていた気がするが。 死んだショックからか、上手く思い出せなかった。) 無関係な人々までも巻き込んだ とするなら。]
…………はァ。 馬鹿らしい……。
[……この体では、ヤケ酒も飲めはせんのだ。]
(+52) 2015/05/18(Mon) 03時頃
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[死んでも尚色々と苛まれる事に 改めて自分の罪の重さを自覚しながら、 疲れ果てたかのように影は、再び森へ。
少し開けた場所に出ると、 幼い頃登った木の根に座り込む。
風に蒲公英の花が揺れる中、 影は、無い瞼を静かに閉じた。*]
(+53) 2015/05/18(Mon) 03時頃
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― まどろみの中 ―
[ うつら、たゆたう意識。 ] [ 誰かが咽び泣く声が聞こえた。]
( マーゴット。 そうやってすぐに泣くんじゃない。 )
( ……マーゴット。 )
[暗闇の中、白い手首をぎゅうと握って、 抑えようとして、>>+4 その幻影は男の手をすりぬける。]
[――そうして、響き渡る泣き声に耳を塞いだ。]
(+81) 2015/05/18(Mon) 20時頃
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[ それはラディスラヴァの嗚咽に聞こえた。 それはメアリーの「やめて」という声に聞こえた。 それはグレッグの「叔父さん」という声に聞こえた。 それはサイラスの萎れた声に聞こえた。 それは「ヨハネス」の血を吐くような叫びに聞こえた]
(泡を吹かせるのは此方のほうだったが) (置いて逝く方も悔しい事を、君は知らない。)
[ そしてまた、それはあの日背を向けた友>>0:456の 声無き泣き声のように、聞こえた。]
(+82) 2015/05/18(Mon) 20時頃
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( ……キャサリン。) (僕は、どうすればよかったんだろうか)
[彼の涙を拭うものは。 ただ。妻のたおやかな白い指先であるべきだった。
――奪ったのは自分だ。医者の顔をして 何一つ守れはしないこの自分だ。]
(……泣いているのは、誰ですか。) ( 心の痛みに効く薬はありませんか。)
[噫、患者が沢山いるのに、 男はそれを救う術を 一つも持っていなかった。]
( 必要なのはきっと誰かの温もりで そしてそれを与えるのは、 自分の役目では ない。 )
(+83) 2015/05/18(Mon) 20時頃
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