105 CLUB【_Ground】
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あ、あはい、フーです。
[漸く口が動いた。 実際にすれば数分間であっただろうが体感では9分くらい固まっていた気がする。 歩み寄る虎に返すのは滅多に使われない敬語。 敬語というかなんというか、ではあるが。]
(@0) 2013/12/23(Mon) 02時頃
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だあああああ―――― イッ!
[男よりも大きな体に抱きつかれる。 対して鍛えてもいない身体と、熱の出始めたそれは容易く傾ぎ 虎を道連れに床へと倒れこんだ。 頬にざりざりとした感触、舐められているらしい。 後頭部を少し打ったが、そんなことよりも。]
お ま え な あ !!!!
[金褐色の目を見つめ、上げた声は大きく。]
目隠ししろって言っただろうが! お前、おま、ほんと!
[部下に「まだ目隠し外すな」とか言った面目などあったもんじゃない。]
(@1) 2013/12/23(Mon) 02時半頃
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フランクは、ゲッホゴホ、ごほ!!!
2013/12/23(Mon) 02時半頃
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―広間―
[端末に届く声。それを確認して、配膳口から手を出した。 狭く作られた配膳口は、こうして壁際に立てば覗きこんでも顔の見えない高さ]
ヤニク、
[食事を待つ他の動物たちもいない。モニター越しの客の目もない。 ただ触れたさで伸ばす両の手]
(@2) 2013/12/23(Mon) 02時半頃
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[駆け寄る気配。重なる手。 ずっと端末から聞こえていた不安げな声とは真逆の、穏やかさに満ちた声]
ヤニク……、
[壁に額つけて目を閉じて、手に触れる感触だけに意識を注ぐ]
(@3) 2013/12/23(Mon) 03時頃
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びゃっ、じゃねぇんだよ!
[一瞬色々と忘れて叱り付けてしまったが。 目隠しをちゃんとしているかどうか、確認を怠った男自身にも非はある。 虎ばかりを責められたものでもなく。]
…たく、ゴホッ、げほ!
[はあ、と息を吐いたらまた咳が零れた。 抱きしめられ、起き上がらせようとオロオロしだす様。 少しの間、無言で見上げて。]
ぐっ、く ――――くく、は ははっ!
[天真爛漫なこの動物に、笑いを誘われた。]
(@4) 2013/12/23(Mon) 03時頃
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[暫く、それは珍しく笑って。 その間に咳が何度も出たが、咳も笑いも止まるのに時間がかかった。]
絶対呼ぶな、呼ぶな、まていいな!マテ!
[この現場を目撃されるだのと恐ろしい単語が聞こえ、慌ててマテをさせ。 静まれば起き上がり、床に座る。 手を伸ばし、乱暴に頭を掻き混ぜた。]
ったく、もー…楽しいつか、お前が笑かしたんだよ。 どうしてくれんだ、ペナルティと減俸のクリスマスプレゼントじゃねぇか。
[溜息を見せる。 顔は笑っていて、その溜息が悪いものだとは感じないだろう。]
(@5) 2013/12/23(Mon) 03時頃
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あー…。
[訪れるのは笑いと共に。 上書きしてしまった、そのプログラムの愛。 工場での事件、ぼんやりと意識の奥底に男の顔が眠っていたことなど知らず。]
――――――。
[そして、愛玩動物(ペット)として接してやれても 求められるような“愛情”は与えてやれないということ。 少し困った表情は苦笑となって落ちる。]
困った。
[ポケットに入れた紙切れが、小さな音を立てた気がして。]
(@6) 2013/12/23(Mon) 03時頃
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[本当は、もう一度尋ねようと思っていた。 自分のしようとしていることが、本当に間違っていないのか。
けれど、もう、]
好きだよ、ヤニク。
[何より先に溢れ出る想い。 愛しい頬を両手で包み、少しでもその表情を読み取ろうと]
(@7) 2013/12/23(Mon) 03時半頃
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大丈夫だよ。 死にゃしねぇし、ただの風邪だ。
[摩る背中に母指球が柔らかく何度も擦れた。 頷くのを見れば内心本当に一安心だが、後で何を言われたもんだか。]
言っとくが食いもんでも玩具でもねぇぞ。 むしろ全く逆のもんだ、あと貰うのは俺。
[そんなプレゼント熨し付きでお返ししたいが。 こうなってしまった以上どうしようもないことである。 寄ってくる顔があまりにも輝かしい瞳で、溜息を重ねた。]
(@8) 2013/12/23(Mon) 03時半頃
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あー、まあ、苦しい。
[どう説明すれば理解するか、考えが廻る。 無意識に掻いた首筋には、二年前の発端になった銀もなく。 その過去にも顔向け出来ない。]
いいか、よく聞けよ?
[話し始める口振りは、ほんの少し重く。 お陰で小さな音に変わる。]
(@9) 2013/12/23(Mon) 03時半頃
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[頬を、耳を、擽るように撫でながら、ヤニクの弾む声に耳を傾ける。 ずっと聞いていたい。寂しさや不安に沈む声でなく、ずっとこんな、明るい声をさせていられたら]
(@10) 2013/12/23(Mon) 03時半頃
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[溢れる想いのままに、言い募る言葉。 それに返される、まっすぐな言葉。
一度同じように、ここで聞いた時には動揺してしまったけど。 今、ようやく、その言葉をきちんと受け止めることができる]
(@11) 2013/12/23(Mon) 03時半頃
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[頬に触れ、手を重ね、そっと囁き落とす言葉。 まるでプロポーズだなと、心の裡で思いながら]
今すぐ、じゃねぇんだけど。 そうするための手続きをきちんと踏めば、大手を振ってお前を迎えることができる。
だからそれまで、お前が待っててくれるなら……**
(@12) 2013/12/23(Mon) 04時頃
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“好き”っつーのはな。
[説明が困難で、なにをどう言えばいいのかが難しい。 選ぶ言葉が酷く理不尽になる。 無意識にポケットに伸ばした手が、中の紙に触れた。]
もっと知りたいだの、逢いたいだの、話したいだの。 触りたい、声が聞きたい、瞳を合わせて。 もっといじめた――――…、っごほ。 まあ、だから、そういうことであってな?
[アホか、と内心自分自身にツッコミを入れるかわりに空咳で誤魔化し。]
例えば近付きたくて、離れたくなくて、 手を握るだの、キスだのセックスだのに至る。
(@13) 2013/12/23(Mon) 04時半頃
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そういうのを、お前に思ってやれねぇ。 俺にとってお前は“愛玩動物(ペット)”だ。
[なるべく軽くも重くもならぬよう吐き出した。]
俺はもう誰のことも、“好き”にはなれん。 そういう風にプログラムされてる。
[こういえば理解してくれるだろうか。 多少の嘘が混じるのも仕方ない。 決してプログラムなどではないが、男の頑固な性質ゆえか。 過去は捨て、感情は殺してしまった。 そう思い込まなくてはと。]
(@14) 2013/12/23(Mon) 04時半頃
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ただ、そういう意味での“好き”じゃない、別の“好き”なら お前にはずっと思ってる。
[愛玩動物たちへ、部下へ、ここに買いに来る客へ。 一人一人形は違えど。 そして表面上に、それを出すことは殆どないが。]
お前が、そうだな。 フェネックや蛇、シマリス、狼、鶯に思うような“好き”に近い。 普遍的なあー…っと。
特別じゃない、ってことだ。
[襟足を掻き毟る。 申し訳なさ満載だ、こればかりは。]
お前は、特別じゃない“好き”で 特別な“好き”には、してやれない。
(@15) 2013/12/23(Mon) 04時半頃
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お前を迎えるとすれば、それは恋人としてじゃない。 “愛玩動物(ペット)”だ。
[それでもいいかと訊ねることさえ出来ない、これは決定事項で。 先に上げた動物たちや、もしくは研究員、客の誰かに 虎自身が“好き”だと特別思ったものがあったとしても。 濃青を金褐色にしてしまったのは、男の烏羽色の瞳。]
そういう、ことだ。
[謝るのも違うと、いつも以上に言葉を選んだ。]
ただ、世話はちゃんとしてやる。
[その先は虎の耳にだけ届くように。]
(@16) 2013/12/23(Mon) 05時頃
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[腕を伸ばし、虎の頭を引き寄せる。 重なる影、唇に触れる感触。]
よし。 ――――よし、じゃねぇぇぇぇ!
[当分、いや一生悩まされる事象だろう。 しかし虎が納得さえするのであれば 男の日常の中で、捻くれたものも真っ直ぐになるのかもしれない。 気苦労は絶えなさそうだが、それもまた。]
報告と、始末書と。 サミュの申請…あー…、かけあってやるっつったけど ペナルティ軽くとか無理かもな。
[虎ブル、もといトラブルに転がった問題処理からはじめよう。]
(@17) 2013/12/23(Mon) 05時半頃
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[先ずは虎をどうにかする必要があるわけだが。 生憎、研究所に住み込みという名の篭城生活を続けた男にとって家と呼べるものがない。 研究ルームに直接虎を連れ立った先、部下たちはどんな顔をしただろう。 事情を説明し、何を言われても返す言葉なく。 虎を適当な場所に寝かせ、書類の山の中から始末書を取り出した。
始末書の提出、上からの厳重注意。 ついでにサミュの申請も出して、それだけはなんとか円満に 次週受け取りをする事で成約を取り付けた。 てんやわんやの一週間、息つく暇もない。
一週間の間に世話をすることも、勿論。 その手は寮にいる時よりほんの少しだけ優しく。
ポケットの中の紙切れ、そこへ連絡をするのは *もう少し先*]
(@18) 2013/12/23(Mon) 05時半頃
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測量士 ティソは、メモを貼った。
2013/12/23(Mon) 08時頃
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─凍える夜(一週間前)─
[受け渡しの邪魔をしないよう、 チアキの部屋を離れた後、 ティーはシーシャの部屋でおサボり中だった。
ベッドの上で毛布を被って横になり、 子供用の辞書をめくる。]
(@19) 2013/12/23(Mon) 09時頃
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[あい(愛) アイ(呉)(漢)
[訓]いとしい めでる かなしい おしむ
1 かわいがりいつくしむ。 思いこがれる。いとおしいと思うきもち。 2 あるものを気に入って楽しむ。 3 大事なものをはなしたくないと思う。おしむ。]
(@20) 2013/12/23(Mon) 09時頃
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[あい。
文字を目で追いながら 唇で音をなぞってみる。
子供用の辞書に書かれたそれは やけに簡潔で、シンプルだ。
もっと一途だったり、かけがえないものだったり ふかい、思慕をあらわすものだと思っていたし、 きっと大人用の辞書にはそう書かれている。]
(@21) 2013/12/23(Mon) 09時頃
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[寝台の上でころころしているうちに、 いつの間にかイヤホンマイクは外れていて、 フーからの通信を聞き逃した。
たぶん、逃げたい、という気持ちがあったのだろう。 濡れていない毛布の海は とろとろとした眠気を連れて来て、 抗うべきなのだろうが、ティーはそれに抗わなかった。]
(@22) 2013/12/23(Mon) 09時頃
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[あいと愛。 簡素と複雑。 子供と大人。
シンプルだったものに あれこれと余計な意味を足して なんだか貴重で尊いもののように思わせるのは そうあれかしと大人が望むからなのか。
あさい眠りにたゆたうティーの脳裏に 四文字のアルファベットがゆらゆらと揺れていた。]
(@23) 2013/12/23(Mon) 09時半頃
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[まどろみはじめていくらも経たないうちに、 ティーは目を覚ます。
社会人はそうそう逃避してばかりもいられないのだ。
まばたき二つのあと、ティーは飛び起きた。
やばい、減俸。]
(@24) 2013/12/23(Mon) 09時半頃
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[誰もいないと、という先入観で見れば、 動かない毛布の山はただの毛布の塊でしかない。
住人の去った部屋をモニターで見るフーに ティーのサボりが気付かれなかったのはそういうことだろう。]
(@25) 2013/12/23(Mon) 09時半頃
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[端末を見れば、 客の帰宅を告げる店員からのメールが入っていた。
胸の奥でなにかがさらりと零れ落ちる音がする。 毛布の海から眼鏡を拾い上げ、かけた。
透明な硝子レンズは、 なにもかもを氷の下に閉じ込める。
虚(から)っぽだった場所が、 虚(から)っぽに戻っただけ。
ただ、それだけ。]
(@26) 2013/12/23(Mon) 10時頃
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[多分、サボった罰に掃除のひとつも命じられるだろう。 言われる前にやってしまおうと、 自分で乱した毛布をたたみ、 辞書や、他にも床に落ちているものがあれば、 それもきちんと棚に戻した。
ホレーショーの部屋へ向かうフーと すれ違わなかったのは幸いか。
気は向かなかったけれど、 チアキの部屋へも向かう。 指先が扉に触れるのに、わずかだけ時間を要した。]
(@27) 2013/12/23(Mon) 10時頃
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─凍える夜─
[部屋の中央に、 一冊の画用紙と色鉛筆が並んで置いてある。 その横に、切り離された一枚の白。
入り口で、そこまでを認識して、足が止まった。]
…──。
[踵を返して部屋を出ようかと迷う背を、 まだ記憶に新しいチアキの声が押した。
「あとで、見てね!」 かれはそう言っていた。 約束した、とも。
きっと一生懸命描いたんだろう。]
(@28) 2013/12/23(Mon) 10時頃
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[距離が近づくと、 真っ白な画用紙はやっぱり真っ白なままで
あれ?
と思ったけれど、 もっと近付いたら、二枚重なっているのに気づいた。
何も描かれていない真っ白な画用紙の下に、 チアキの尻尾の色と同じ色の 茶色い色鉛筆で書かれた、 ちいさな文字の、おおきな手紙。
拾い上げて、 一番上に書かれた自分の名前を読んで、眼鏡を外した。]
(@29) 2013/12/23(Mon) 10時半頃
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