76 ─いつか、薔薇の木の下で。
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―中庭―
[粘ついた覚醒。 口の中だけが乾いていて、漂う空気は甘く湿っている。 重なる身体の重さと、瞳に飛び込んだ満月の光を感じて、 一つ舌を打った]
[月の光の下暴かれた白い身体。 漂う薔薇の香気は、きっと以前なら噎せ返ってしまっていたであろう程に濃い。 身を起こし、眠ってしまった後輩をそっと抱く]
…馬鹿、なのは。 俺か。
[鈍く湧き上がる罪悪感が、苦い陶酔を呼び覚ます。 見上げた枝に、綻んだ青い蕾を見つけた。 緩く金の糸に指を通し、額に唇を落として顔を離す]
(5) 2013/03/29(Fri) 15時頃
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[眠る後輩の乱れた服を出来得る限り整えて。 自らはシャツのボタンを留めるのもそこそこに、 伸びた枝先に触れた。
傷ついた枝葉の先、蕾を抱く葉を指先で撫で]
俺も、愛してるよ。 『お前』は、良い夢をくれるって分かったから。 もっと見せてほしい。 そして、咲いてくれ。これ以上ないくらいに。
[月光に照らされ咲き誇る薔薇は美しいだろうと思う。 穏やかな愛しさと酩酊を滲ませながら、しばらく薔薇を見ている。 眠る彼から、もう答えが与えられることはないのだろう。
ならば、誰が?**]
(6) 2013/03/29(Fri) 15時頃
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病人 エリアスは、メモを貼った。
2013/03/29(Fri) 15時頃
――――あ。
[穴が。
心に空虚な穴が、開いた。
それは薔薇を通じて、彼の眠りを察した故か。
そしてその空白に、待っていたと言わんばかり。
薔薇が一気に根を張った]
っは……
[黒薔薇が、咲くために欲する。
熱い、熱い吐息が、漏れ]
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…………フフ。
[耳元で嗤うその声は、恐ろしく妖艶で。 ノックスの白い肌に唇を一つ、落とし]
ねえ、少し……疲れたから…… どこかの部屋で、休もう?
[クスクスと悪戯っぽく笑いながらしなだれかかり。 空いている部屋の一つへ、誘うだろう。 今は主のいないその部屋で。 ベッドまで手を引いて]
(7) 2013/03/29(Fri) 20時半頃
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ねえ……寂しいんです。 足りないんです。
[ベッドサイドに腰を下して。 潤んだ瞳がノックスを見つめる]
足りない、の…… だから。 ……埋めて?
[部屋の中には、既に眩暈がするほどの薔薇の臭気に満ちていた。 口元は弧を描き、赤い舌が唇を潤す。 抵抗されなければそのままベッドの中へと、誘い]
(8) 2013/03/29(Fri) 21時頃
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ねえ。頂戴。 私を埋めて。 私の空白を、貴方で。
[薔薇を通して知る彼の眠り。 心の空白に根を張った黒薔薇は、其処に大輪を咲かそうと栄養を欲する。 それは彼を求めるヤニクの心とも同調し、更に強く膨れ上がる]
[響く衣擦れの音。 薄暗い部屋の中、未だ情事の跡が色濃く残る肌が露にされていく]
…………来て。
[いつからか、その瞳に既に理性はなく。 欲望に溺れた色がノックスを見つめて。 心を埋める為。薔薇を咲かすための熱をひたすらに欲した]
(9) 2013/03/29(Fri) 21時頃
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…はい。
[熱に浮かされたまま、従順な人形のように頷き。 相手に手を引かれ、部屋の中へ。 招かれたそこが、誰の部屋かは理解していなかっただろう。
そして寝台の上に座る相手の言葉をじっと聞いていた。 ]
…埋め、る?
そうしたら貴方の心を救えるんですか?
[ゆるりと首を傾げ、ヤニクを見つめた。 誘われるように相手との距離を詰めるのは、薔薇の香りの所為か。]
(10) 2013/03/29(Fri) 21時半頃
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病人 エリアスは、メモを貼った。
2013/03/29(Fri) 21時半頃
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[はだけられた服から覗く褐色の肌を眩しそうに見ながら、恐る恐る胸の近くに触れる。 手越しに伝わってくる鼓動に何処か安心している自分がいた。
もっと触れたい、という思いに突き動かされて、彼の身体に触れていく。 それは拙くぎこちない動きだっただろうが。]
―俺はこういうの、よく分からないから…どうしたらいいか、教えて?
[熱に浮かされた蒼い眼を相手に向けながら、緩く首を傾げてみせる。 −それは、まだ何も知らない者の素直な求め。]
(11) 2013/03/29(Fri) 21時半頃
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……。 いくら薔薇の傍ったって…寝冷えしないとも限らない、よな。
[しばらく呆然としていたが、 サイラスを横抱きに抱えて中庭を出た。 体裁にこだわる方ではないが、 息をしている様子を見降ろす方が安心できたから。
現実感の無い酩酊感の中に、時折虚しさがよぎる。 妙に日常じみた世話をこの期に及んで焼いてしまう自分がおかしい。
記憶の端にひっかかっている、ガラスの割れた音。 違うと良いと願ったが、それは 都合のよすぎる願いなのだろう。
起きないことは分かっていても、 起こさないようにゆっくりと。 一歩一歩足音を響かせて、彼の部屋を目指し廊下を歩いた]
(12) 2013/03/29(Fri) 21時半頃
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んっ……いいよ。 私が、全部。教えてあげる。
[薄く、微笑む。 その表情に普段の面影は残っていない。 まるで同じ顔をした別人のようで]
ねえ……キス、して。
[軽く引き寄せて、首の後ろに手を回し。 まるで恋人にするように甘く強請る。 一度唇が触れ合えば、魂までも貪るかのように 深く捕らえて離さない]
(13) 2013/03/29(Fri) 22時頃
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おやすみ。 …朝が来たら、ヤニクにも宜しく。
[サイラスを寝台に横たわらせる。 同居人の姿はなく、少々複雑な思いで部屋を出た。 何にしろ今更ではあるのだが。
扉は少し開けたまま部屋を出る。 溜息を吐き、自室まで戻って。
トレイが、ない。
認識したか、しなかったか。 反射的に踵を返し――]
(14) 2013/03/29(Fri) 22時頃
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…。
…馬鹿は俺だ…
[厨房の、近く。 散らばったガラス片に、灰色の瞳が映る。 髪をかき上げ、水滴の散るそれを拾い上げ、低く呻いた。
中庭の月は明るかった。 薔薇の樹は其処にあった。
ガラス片を床に叩きつける。高い音が夜の闇に響く。
乱れたシャツのまま、 廊下の闇をあてもなく歩いた]
(15) 2013/03/29(Fri) 22時頃
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春になれば…… 夢は解ける?みんな、目を覚ます?
[冷静に考えれば、それはとても気の遠くなる話。 静かな廊下に響く高い音も、それを鳴らしたであろう人のこともぼんやりとしか頭に浮かばない。 その笑みから、逃れられない。
残像が揺らめく脳裏に、中庭で重なる影が浮かんで、消えた]
(16) 2013/03/29(Fri) 22時半頃
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ん、分かりました。
[相手に求められれば彼の頬を両手で包み込み、額にそっと唇を落として。 熱い息を吐いた。そして次は唇を重ねる。]
[最初は触れるだけだった口づけは次第に深く、貪るようなものに変化していく。 翻弄されながらも、自らも求めていった。]
(17) 2013/03/29(Fri) 22時半頃
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多分ね。
…春は目覚めの季節だもの。
[小柄な身体を抱き上げて、向かうのは月明かりに照らされた庭]
みんなで夢みれば、きっとすぐ咲ける。 だから、君を頂戴?
[古いベンチに降ろすところまでは、手つきは優しかった。]
(18) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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[交し合う口付け。 口腔から薔薇の毒は侵食していく。 回れば身体は昂ぶり思考は鈍り。 深い快楽の海へ、堕ちて行く]
ん……ァ……
[室内に響くのは淫らな声。 肌のぶつかり合う音に、体液が立てる水音。 重なり合った影。 空虚さを埋める為。 花を咲かせる為に。 蜜を、栄養を欲していった]
(19) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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そうすれば、皆目覚める ……そうだよな?
[常ならば、頭を撫でたり戯れにでも抱き上げたり、そういう子ども扱いとも思えることは全力で拒否していたのに。 今は大人しく、逃げ出した中庭へ。
そうすればもう、薔薇の香りに、頭の片隅ですら自由にはならない]
……うん、 あげるよ
(20) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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[彼が頷くと同時、嵐の如く襲いかかる。 深く唇貪りながら服を裂き、露わになった肌を撫でていく冷えた指。
薔薇の毒を染み込ませるように、丹念に施す愛撫。 いくつもの花弁を、彼へと刻んで。]
だから、抱いて。
君で、奥まで満たして。
[指先を彼の熱に絡めて、散らされたばかりで痛々しく爛れたままのところへ導いた]
(21) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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[どこをどう歩いたのか。
ふと、窓ガラスに映り込む己の姿に立ち止まった。 首筋に散った赤い花弁に、今更気がつく。
伸ばした指はうっとりとそれを辿り。 指先が掠める度に、甘い息が洩れる。
確かに愛されたのだと実感する度に。 自我が緩々と蔦に縛りあげられるような錯覚を覚えた]
(22) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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[最初はただ、相手に求められるままに動いていた。 −これだけが彼を救う道なのだと。 この行為は正しい事なのだと。
やがて薔薇の毒が回っていけば、自らの快楽をも求めていき。]
は…、せんぱ…っ。
[そして薔薇が望むままに、花を咲かせる為の養分を与え続けた。]
(23) 2013/03/29(Fri) 23時半頃
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もっと……ねえ、もっと欲しいの。 たくさん頂戴。 貴方をもっと、もっと……!
[まだ足りない。満たされない。開いた穴は埋まらない。 幾度と裡に熱を得て、快楽に震えても。 渇望は留まる所を知らない。 薔薇の欲に肉体は悲鳴をあげる。 それでもなお、求め続けて。 その狂宴は、限界を迎えた身体がその意識を手放すまで続く**]
(24) 2013/03/30(Sat) 00時頃
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[彼の、薔薇の欲に抗うことはできない。 ただ流されるまま暴かれ、高められた。 慣れない行為に息はあがり、やがて導かれた先へと、ただ熱を帯びた瞳で頷いて]
ごめん、な
[掠れた声で呟いて、あとはもう、熱に浮かされるまま]
(25) 2013/03/30(Sat) 00時頃
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……ッ!!
[貫かれ引き裂かれれば、揺れて乱れる長い髪の間から、恍惚と苦痛が交互に覗く。
押しとどめようとしながらも、離さないように縋り付く。 精気に満ちるたびに中庭の木々はさわさわとざわめき、 次第に綻ぶ新芽。蕾の色は次第に深く。]
(26) 2013/03/30(Sat) 00時頃
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君も、咲ける?
[新たな薔薇の気配に、葉擦れの音は囁く。
囚われた宿主の悲鳴も嘆きも力尽くで押さえ込んでクスクスとわらった
エリアスは、窓の前、ため息は甘く。**
2013/03/30(Sat) 00時半頃
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[揺れ動く紅い瞳は蠱惑的に煌めく。 胸に残された傷痕に吸い寄せられるよう唇を押しあてて。
薔薇は喜んでいる? ヴェスパタインは?
嗚呼、この香りに心まで塗り替えられそうで]
ヴェ、ス……!
[薔薇の名前は知らぬから、目の前にいる彼の名を呼び、薔薇の糧になるよう、熱を吐き出した。 縋るよう絡めていた腕に力を込めて、今はただ、全ては薔薇の為に]
(27) 2013/03/30(Sat) 00時半頃
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病人 エリアスは、メモを貼った。
2013/03/30(Sat) 00時半頃
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……ぁあ!!
[精気注がれて、びくんと身体が跳ねる。 力入らぬままにもがいて、オスカーを突き放した。]
逃げ…ッ!!
ダメだ、このまま、じゃ…!
[少しだけ取り戻した正気は、彼を逃がそうとして。
苦しげに自分の胸を引っ掻き、もう片方の手は宵闇色の瞳に爪を立てようとする。]
このままじゃみんな、薔薇に、食われ……
(28) 2013/03/30(Sat) 01時頃
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[離れようとする彼に手を伸ばす。自らを傷つけようとするその手を止めようと]
駄目だよ、ヴェス もう止まらないよ
……ほら
[綻び始めた蕾に向ける瞳は恍惚に揺れる]
咲かなきゃ…… もう、目覚めない
(29) 2013/03/30(Sat) 01時頃
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[限界を迎えて意識を手放したのは、どちらが先だっただろうか。
月明かりの下、上体を起こすと、まだ意識を失っているように見える相手の頬に唇を寄せて]
先輩…。 俺、役に立てました?
[行為後の倦怠感は、薔薇の作用がなければこんなものではなかっただろう。 初めて行為を覚えた身体はそれすら知らず。
むせ返るような性と薔薇の香りの中、蒼い目を細めて微笑んだ。]
(30) 2013/03/30(Sat) 01時頃
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[立てた爪は瞼を傷つけて、それでも抉ることは叶わず。]
…ぁ、あぁ…… 俺のせいだ。 俺が…シリィにひどいことして、 ラスにも、オスカーに…も………
[赤い涙を流しながら、冷えていく身体が震える。 微かな声で詫びながらも、精気と生気は吸われていって。]
(31) 2013/03/30(Sat) 01時頃
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ヴェスパタインは、赤黒く濁った眼差しで、淡く笑む。**
2013/03/30(Sat) 01時頃
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やめろ、ヴェス
[視界に入る、薔薇ではない赤。 虚ろに潤んでいた瞳に束の間光が戻る]
そんな赤、いらない そんな言葉もいらない
[腕をひけば、生気の吸われた彼の手は、瞼から離れるだろうか。先よりは強引にひいて]
俺を責めればいい ……止められなかった、俺を
[細い腕で精一杯包み込めば、触れあう、まだ熱の残る肌。再び理性は薔薇に飲まれ、紅い涙へと唇を*寄せる*]
(32) 2013/03/30(Sat) 01時半頃
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ノックスは、ヤニクの隣でまどろむ。**
2013/03/30(Sat) 02時頃
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