88 めざせリア充村3
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[右腕が痺れる。 籠を持続させるのはもう限界だろう。 逡巡を引き伸ばした末、 息を呑み、唇を引き結んで、 妹を包む籠へと向かい一歩踏み出す。
この鳥籠を解いてやる事は出来ない。 それが、たまらなく悲しかった。
ゆっくりと右手に拳を握ると、 それをきっかけに籠は小さく狭くなり リッキィを強い光と痛みで追い詰めようと。]
リッキィ、
やっぱ俺……お前の兄ちゃんはやめらんねぇ。 すげ………………苦し、…、
[結局は、情けないダメな兄の顔で、 妹の生命を奪う光で、彼女を、包み込んだ。]
(153) 2013/07/02(Tue) 22時半頃
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――オスカー!? [風が切る音がした気がした。 次の瞬間には、オスカーが叫び、声に火を出そうと繋いでいない手で火の塊を出した瞬間]
[トンッ―――]
[強い力で体を押し出され―― 後ろへ後ろへと押し出されて、そのまま壁にぶつかる。]
―ぽたり、ぽたり ぽたり、ぽたり―――
[液が地面に滴り落ちる音。 見慣れた、赤い 紅い血が、鉄の臭いがして服を赤に染める]
(154) 2013/07/02(Tue) 22時半頃
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[リッキィは、弟妹たちの中でも、 ひときわ手のかからない子だった。と思う。 少なくとも俺にとっては。
もっとワガママ聞いてやれば良かった、 もっと甘やかしてやれば良かった、 もっと愛せば良かった、 もっと愛していると伝えれば良かった、 もっと一緒に過ごせば良かった、 もっと、 もっと、
こんなふうになって尚、 兄と呼んでくれる声に、 押し殺していた心を撫でられて。
息も出来ないくらいに苦しい。]
(155) 2013/07/02(Tue) 22時半頃
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ぅ…ぁ… [そこにはオスカーはいなくて、左腕だけが残る。 一体、何が―、何が――。 頭がぐるぐる、オスカーが、オスカーが、いない。 どこ?どこに?]
[オスカーの姿は私が先ほどいた場所の所にいて。 襲撃者の声が聞こえ、逃げろと、遠くへ逃げろと、オスカーの声が聞こえる。 逃げればいいのに、足が動かない。 動けない。]
[ザッシュ――]
[そして傍に居た襲撃者がオスカーの喉を貫いた。 目の前で、殺される。]
(156) 2013/07/02(Tue) 22時半頃
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オ…スカー?
[手を離す。 何か口を動かしてるのが見える。 ごろんと、左腕が地面に落ちて立ち上がる。 襲撃者は刀を再び構えてこちらへと歩いていくのが見えた。 そして―― 魔女は囁く。]
おいで、(狼さん)"火焔"――
[火の塊は燃える狼となって、襲撃者の腕を噛み千切った。 刀を転がる音を掻き消し、叫ぶ襲撃者の声がこだまする。 腕は狼の口の中で炭となり、ぼろぼろと床に落ちた。 叫びを楽しげに聞きながら、刀が転がったソレを拾う。 狼がさらに牙を向こうとして、やめろと示すと足元へとやってくる。]
(157) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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[ぴこぴこと耳を動かして喋る子を撫でながら、 自分の天幕へ。 寝台に背中をあずけて、帽子うさぎを膝に乗せる。]
ありがとう、ぜひ。 だけどできたらコーヒーの方がいいかなぁ。
[どこかお調子者じみた音に返す。 ――そういえばチアキって紅茶党じゃなかったっけ?
あたしの時計は動いてるよ。 あなたのキングはすぐに怪我をしちゃうから。
うさぎを通してチアキが聞いているかもしれないが、 帽子の上に顎を乗せてうさぎ相手にお喋りを。 喋っていないと、秒針が進むのがやけに遅く感じたから。]
(158) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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ねぇ、君。さっき、誰の要望だって言っていたのかな?
[ニコリと笑うが、目が笑ってない。 名前を言わなければ火焔に、もう片方の腕を噛み千切って炭化させて。 それでも言わなければ――― さらに足を、右、左、火焔に噛み千切って炭化させる。 まだ言わなければ刀を目に突き立てて、目を抉り取る。 ぐりぐりと、ぐりぐりと。かき回して抉り取る。 もう片方も抉り取る。
ようやくチアキどのと、声を聴けた声には、致命所以外、もう切れる場所がなかった。 焼いて火を塞いで出血をふさいだから。 ――とても、長い地獄を味わえたことだろう。]
(159) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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う、ぐ……っ………!
[鳥篭が小さくなっていく。 痛みと熱はあっちこっちに広がっていって、やがて痛みさえも感じなくなってしまって。 いたい、痛いと訴えてしまいそうに、声を上げそうになるのを必死で飲み込む。 それでも、少しだけ声は漏れた。 光が、強くなっていく。 眩しいくらいの、目があけていられない程の光。 それでも、兄の顔を見続けようと必死に目をこらす。
……光の中で、苦しがっている兄の声が聞こえた。 音の方へ手を伸ばす。触れられた、だろうか。]
(160) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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[すっっと目を細める。 ゆっくりと微笑み] そう…ありがとう。つらかったでしょう? もう大丈夫。
私の可愛い――赤猫が慰めてくれるわ。
[にゃぁっと鳴き声がした気がした。 そして襲撃者は赤い炎に包まれた。]
(161) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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………う――――よ、―――兄。
[……少し前までは、ミナカタを殺した事を許せなかった。 だからライジ兄の安否をどうでも良いと蹴ったし、兄を目の前にしても強くあろうと。そう思っていた。 それでも心の奥底では、生きていて欲しいと、兄妹の関係であり続けたいと。 口には出せなかったけれど、嬉しかった。安心した。 だから、]
大好き、だよ、愛し、て、た。
[いつかの兄のように笑って、頬をなでようとして。小さな小さな声で伝えようとした。
…………光が収まれば、糸が切れた人形のように膝からバサリと地面へ倒れこんでゆく。 金色は、頬を涙で濡らしながら、笑っていた。*]
(162) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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[ずっと名前を付けてなかった、狼と猫。 名前を付けると、意思をもつかもしれない――そんな不思議な理由で付けずにいた。
狼―火焔は補給部内部のトンネルにいる人、人間を噛んでいく。 近づく者はすべて、腕や肩、足、など噛まれて噛まれたところから火が尽きて、全身へと燃えていく。 一方猫―、赤猫は気まぐれに荷台へ飛び乗り、飛び乗った荷台を燃える尾で、燃える毛で放火する。 たちまち、トンネル内部は火の海になるだろうか。]
(163) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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[具現化持続の限界を迎えつつある光は 端から綻び、夜に溶けていく。
崩れる光はか細い糸のようになっても 苦しげな声を漏らすリッキィを抱き続ける。
伸ばされた手を引き、 痛みと熱しか与えない光の膜越しに リッキィの小さな身体を強く抱きしめて。
頬を撫でてくれる手に、 言葉に、声に、肯いて。]
愛してる。
ずっと、これからも、 ………生き続ける限り、ずっと。
[腕の中で崩れる身体は確かに支えて、 光の失せた闇の中、ひどく掠れた声で呟いた。]
(164) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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―ハッターラビット―
コーヒー?残念、席がないよ。
[盗聴機能もなければコントロールする意思もないうさぎは、ぱたぱた耳を動かして]
いやいや、時計は止まったよ。最高級のバターだったんだがね。
[悲しげに首を振ってみたり]
キングが怪我をしたって?怪我がキングをしたって? ふうむ、猫が燃えると、燃えるが猫というくらい妙な命題だ。
[鼻をくひくひ]
ところでソフィアちゃん、コーヒーは炭で淹れてはいけないらしいよ?
[ひげをぴくぴく]
ついでにキングは現在不感症なので痛みはないらしい。
(165) 2013/07/02(Tue) 23時頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2013/07/02(Tue) 23時半頃
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[遠くに行ってしまったのは届かないからいけなかったが。 燃やすものは燃やして、燃やすものがなくなれば2匹は戻ってくる。 2匹に頭を撫でてやると、火を吹き消されたように、姿がふっと消えた。]
(166) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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―――――。 [何もなくなって、何もなくなった。 何もかも。 今ここにあるものも。 ゆらりゆらりと、オスカーの亡骸へと近寄る。
掌から花びらを、ひらりひらりと落とす。 落として、オスカーの肌を少しずつ焼いていって。 そして、ぐちゃりと音を立てて肉辺を掴む。]
(167) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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ぐちゃくっちゃ、ぐっちゃ、ペチャゴキッ、ベキっ、 [嫌な音が響く。]
グチャ、バギッ、ガリガリ
[砕く音が響く]
ジュウゥゥ… [焼く音]
べっちゃ、クッチャ、ガツガツ、グチャ [何か、食べる音――。]
(168) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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[光が消えてしまえば、 焼け野が原には暗い夜が落ちた。
青の残兵が数人この場から逃げ去ったが、 それを追うつもりは無く。 リッキィの…愛しい妹の身体を抱いて、 長い時間、その場で打ち拉がれる。
軋む。 胸の奥が。 頭の芯が。 ギシギシと、ギシギシと。]
(169) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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ごくりごくり、ズルズル
[何か飲む、啜る音がしてようやく音は止まる。]
(170) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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それは残念。
[コーヒーの話。バターの話。 マッドラビットの話に耳を傾ける。 炭でコーヒーを淹れた覚えなんてないけども。
ひくひくしている鼻をつつく。 うさぎはいつまでこの形でいられるんだろう。]
痛みを感じなくても痛いんだよ。
[帽子を指先で軽く弾いた。]
(171) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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…っは、あはははははははは ねぇ、オスカー聞こえる? 聞こえるよね、一緒にいるんだもの。
ねぇオスカー
ずっと一緒よ?
死んでも、ずっと―――。 [血塗れの手で残った左腕を抱いて、嬉しそうな笑みを浮かべるモニカ。 手の甲に頬ずりして、嬉しそうに]
今度は私が、食べちゃうね。 たまにはいいでしょ?
[にぃっと笑い]
いただきます―
(172) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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−補給部内部− [トントン トントン]
[トンネル内部を歩いていく。 来た道をゆっくりとゆっくりと戻る。 靴の音だけ響く。 1人分だけの靴音が。
赤い紅い花びらが燃えて、散らしながら、ゆっくりと歩いていく。 やがて見えてくるだろう。 先ほどきた王国の拠点が。 外はすでに夜――。]
(173) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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…夜か。 [夜はいい。 火が目立つから。
青い軍服を紅く染めた魔女はゆらりゆらりと、拠点へと目指して、花びらを握りしめて取り込んでいくだろう。]
(174) 2013/07/02(Tue) 23時半頃
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[ようやくリッキィを腕から離し、 地面に横たわらせ。
痺れる右腕で呼ぶ落雷の光で、 肉体を焼いて無へと帰す。 その雷鳴は夜の静けさ割って響く。
閃光が失せた後に残るのは、灰。 一握の灰を、 持っていたすべての錠剤と併せて飲んで。
赤の防衛線の内側へは戻らず、 ふら、と荒野を歩み出した。*]
(175) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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[黒いコートをクローゼットに戻して、包帯はほどいてしまって
ヤニクの灰を志乃のうさぎの横に置いたとき
駆け込んできたのは、二人の兵士だった]
(176) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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…………。
[顔をあげる。 外の気配が落ち着かない。
外の様子を窺いに立ち上がる。 うさぎは、塩の塊に戻っていた。]
(177) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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[二つの報告が、その日の夜チアキに伝えられた。
雷神抹殺の失敗と、補給路の被害。 千枚刃の死亡と、裏切り者の抹殺。
リッキィと、オスカーの死
それを、部隊長は。 眉ひとつ動かさずに、聞いていた]
…………
[そうして、響いたのは 二発の銃声]
(178) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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...e .. 6 .n..d..66 ―― . ...ad.
[風が止んだ。鐘の音が消える。 ジジ、と乾いた音が罅割れた電子版から漏れた。]
(179) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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『Code 16,and Code 66 ―― Dead.』
[また数が減る。
それはこの実験が、
もうすぐ終わりを迎えることを意味すると同時に。
それだけ続いていることを意味した。]
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またじゃないか。
[部下が退室していないのに、静かになった独りの天幕内。 頬杖をついたチアキは、呟く]
(180) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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……あは、あっははは、
あー……、おっかしい。 ほんっっっと、可笑しいなあ……!!
なんでさ、なんでこんな、こんなことになるのかなああぁあぁ!!!!
(181) 2013/07/03(Wed) 00時頃
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