171 獣[せんせい]と少女
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わたしが笑ったら、 エフせんせいもまた、笑ってくれる?
[エフ先生に治してもらった時、 わたしが笑顔なのは痛いのがなくなったのもあるけど。 わたしが笑えば、エフ先生もつられて笑ってくれるから。
けど。山雀を埋めた時は、笑えなかったから。 わたしの記憶の欠片の先生は、あの時の変な顔のまま。
まるで、鏡のような先生を。わたしは。 あの時のままには、したくない。]
(297) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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わたしは、 もっとせんせいに笑って欲しい。 もっとせんせいに撫でて欲しい。 もっとせんせいのことが知りたい。
(298) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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[澄んだ蒼い目で、先生を見つめる。 命の折り返し地点を越えて、 くすみはじめた色は、ちょうど昼下がりの空の色。
この色が、沈んでしまうまで。]
エフせんせいと、一緒に行きたい!
[気持ちのままに紡いだ言葉が、 吹き抜けた風に乗って、昼下がりの畑に響いた。]**
(299) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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[聞き返してくる、エフ先生の声。>>318]
わたしは、エフせんせいがいい。
[だからもう一回。黒い先生の目を見て繰り返す。 なんとなくまだ続きがあるような気がするのに、 エフ先生の口からそれは出てこない。]
……だめ、かな。
[ちょっとだけ、不安になる。 けど。]
(356) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[ユージン先生と聞いて、蒼い目を丸くした。>>319 そうだ、どうしよう。 また慌てだしてしまいそうなわたしを止めたのは、 今度こそ聞こえた、言葉の続きと。]
────うんっ!
[わたしが驚かそうとした時みたいに笑う先生の顔に、 ぱっと笑顔になってエフ先生に抱きついた。 エフ先生が、わたしだけの"せんせい"になる。 そのことがとってもとっても、嬉しくて。]*
(357) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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……ひゃっ! ユージンせんせい?
[いつから、そこにいたんだろう。>>301 ユージン先生の声にびっくりして 抱きついていた手を放して、振り返る。]
あのね、ユージンせんせい。 わたし…───
[エフ先生と行きたいって、言わなきゃ。 でも、ユージン先生の方がちょっと早くて。 わたしのさっきの声が聞こえちゃったこと、 わかってしまった。
ユージン先生の風が、通り抜ける。林檎が落ちる。 ぶわっと小麦色の髪を巻き上げる風はやっぱ優しくて ほんのちょっとだけ、さみしさが頬を撫ぜた。 蒼い空に弧を描いて飛んできた林檎を エフ先生と一緒にわたしも受け取って。]
(358) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[美味しそうな林檎に、わたしは笑顔になる。]
ありがとう、ユージンせんせい! うんっ。いっぱいいっぱい笑顔にするよ!
[ユージン先生の手が、ちょっと上がって。 そのまま下ろされる。 そして、ユージン先生の少女を迎えに行く背中に、 わたしは一歩だけ前に足を踏み出した。]
(359) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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あのね、せんせい!
わたしね、今のせんせいを見て こわいっておもう人は、いないと思う!
それでも、もしこわがらせちゃったら…… そのときは、昨日してたみたいに "ごめんね"って謝ればいいんだよー!
[きっとその気持ちは、今の先生なら伝わると思うから。 ちょっと小さくなった背中に、わたしの声は届いたかな。 届かなくてもきっと、誰かが ユージン先生にそれを伝えてくれるって。信じてる。]*
(360) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[ユージン先生の背中を見送ってから。 エフ先生の隣に戻ってくれば、 仏頂面に戻ってしまったエフ先生。>>320 ちょっとだけがっかりするけど、 ずっと笑ってにこやかなエフ先生も、想像できない。
でも少しずつ、 わたしが笑う時、一緒に楽しいって嬉しいって思って 笑ってくれるようになったらいいな。]
せんせい、林檎一緒に食べよう!
……あ。 もうせんせいって呼んじゃ、だめ?
[盟約したら、"従者"になるんだっけ。 おねえちゃんも、オズワルド先生を名前で呼んでた。 すぐに変えなきゃいけないのかな。 林檎を持っていない方の手を伸ばして、 エフ先生の空いてる手をぎゅうっと握った。>>321]*
(369) 2015/10/12(Mon) 20時半頃
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[目くばせする先生の目は、もう落ち着いていて。 いつものように、とても優しい。>>392 握り返してくれるあったかい手に、嬉しくなる。]
呼びたいように……?
[じゃあちょっとだけ、 おねえちゃんの真似をしてみようとして。]
エフ……せんせい。 へへ、やっぱせんせいって呼ばないと落ち着かないや。 これまで通りでも、いい?
(423) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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[落ち着かないのが半分。 残りの半分ははずかしいような照れるような くすぐったさに胸の辺りがふわふわする。 これをなんて言えばいいかわからなくて、 今は笑って誤魔化しちゃおう。]
せんせいも変えなくていいけど。 たまにでいいから……クリスって呼んでほしいな。
[コリンみたいに。仲良しの呼び方で。]
(424) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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[林檎を持ったまま手を引かれて、並んで歩き出す。 隣で授業中みたいな、ちょっと硬い先生の声。>>395 落ち着いている、いつもの先生。
真面目にお話する先生は、贔屓するように見えないけど それってわたしが特別ってことかな。 だったら、嬉しくて笑顔がこぼれる。]
わたしね。 むずかしいこと考えるの得意じゃないし、 がっこうを出ていくのも、おしまいがくるのも。 そういうものなんだって思ってて。
わたしは誰と並んでがっこうから出てくのかなって、 ずっとぼんやりとしか考えてなかったんだ。
[がっこうの中でゆっくり流れる時間に、 ぼんやりしたまま"とくべつなひ"を迎えてしまった。 どんくさいわたしが誰かを選ぶなんて思ってなかった。]
(439) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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でもさっき、エフせんせいがいいって言ってから。 エフせんせいが、わたしだけのせんせいになるって そう思ったら、とっても嬉しかったんだ。
せんせいがわたしだけ見てくれるならもっと嬉しいし、 これから、いっぱい構ってほしい!
[そうして山雀みたいにおしまいを迎える時は、 先生の手の中にいたい。 なんとなくだけど続く言葉をそっと飲みこんだのは、 先生の今の顔を変えたくはなかったから。]*
(441) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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旧知の友よ、同胞よ。
我が主が、旅の幸せを願って守りを編んだ。
暇あらば発つ前に、手渡すことはできるだろうか。
喚ばれれば、何処へでも鷲が飛ぼう。
そうでなければ、まなびやの出口で待っている。
貴殿達と、唯一の主へ
私達も此処に居た思い出を贈らせて欲しい。
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― 物見小屋 ―
[階段を上がれば、気持ちい風が髪と服を攫う。>>408 あの日みたいに見下ろした裾野の街は、賑やかで。>>#1 もうすぐあそこに行けたりするのかなって思うと 心がわくわくと飛び跳ねた。 先生の隣に並んで座り林檎を齧ろうとして、 向けられた黒い瞳に、開けた口をそのまま閉じた。]
なぁに、せんせい?
[蒼い目をきょとりとする。 またあの、真剣な顔だ。きっと大事なことなんだろう。]
獣の姿の、せんせい……。 どうなるかわからないって、 どういうこと?
(447) 2015/10/12(Mon) 23時半頃
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[がっこうでは先生はみんな いつもわたし達と同じような姿してるから。 モスキュート先生だけちょっと違うけど、 エフ先生の元の姿も、上手く想像なんてできなくて。]
せんせいって、獣だとどんな姿をしているの? どうなるかわからなくても…… わたしは、わたしの知らないせんせいを、 もっと知りたい!
[教えてくれるかな。 わたしはまた、せんせいの言葉が理解できるまで 時間がかかるかもしれないけど。
元の姿になった先生に驚いて、林檎を落としちゃったのは たぶんもうちょっと後のお話。]*
(450) 2015/10/12(Mon) 23時半頃
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……、クラリッサへと、伝えました。
[獣にしか使えない響きを、短く返す。
と同時に、何か自分からも贈り物が出来ないだろうかと考えた。
贈り物になりえるようなものは、なかなか思いつけないけれど**]
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― 昨日のおくりものと、3分の魔法 ―
[昨日の朝食後。 アヤワスカの声が食堂に響いたんだ。>>284
なんだろうと首を傾げていれば アヤワスカの傍にはモスキュート先生。>>328 パティシア先生も近くにいたのかな。]
………わぁ! きれい!
[真っ白なドレスに歓声を上げる。 たまに書庫でモスキュート先生の周りを>>0:18 ふわふわしてる綿毛を集めたみたいに、真っ白な。
くるりとその場で一回転すれば、裾がふわりと広がって すぐにドレスは消えてしまったけど。
次々に変わるみんなの、色とりどりのドレスに 拍手をするのも忘れて蒼い目を輝かせていたんだ。]
(463) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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アヤワスカ、ありがとう! わたしも大好き!!
[アヤワスカを、ぎゅうと抱きしめるけど。 贈り物をしたアヤワスカのドレス姿は見ていない。 ヒナコもミツボシも、そのことには気づいたみたい。 どうにかならないかな。 モスキュート先生を振り返ったら、音がして。>>331 今度は6人全員揃っての魔法の時間が、 もう一度やってきた。]
(464) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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[ミツボシからのおくりものに合わせて、>>456 お花のおひめさまみたいなヒナコが呼ぶ声>>374 わたしはドレス姿のアヤワスカの手を取った。>>422 こういう時は、なんて言うんだったかな。 前に読んだ本のせりふを思い出して。]
……一曲おねがいできますか、おひめさま?
[わたしもドレス姿だけど、いいよね。 くすくす笑いながら、 ドレスの裾を広げて、くるくる。くるくる。 みんな大好きって抱きついて手を取って、 3分の夢のような魔法は、わたしの宝物になったんだ。]*
(465) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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ミツボシと星を見に行くことにした。まあちゃんと伝える。
[事前報告である。
いやしかし、贈り物か。
厨房で何かを残してもいいのだけどそれこそ野暮になりそうだ。
また、旅に荷物は多いよりは必要なものがあればそれでいいと考える自分からすれば…。]
……分かった。
必ず、向かおう…。
[応えて…。
少しだけ…、昨夜見た、ミッシェルの白い髪を、思い出す。
恐らくはもう…残されてはいない、時間…。
なぜこうも…少女たちの命は、短いのだろうか…。]
出口だな、わかった。ありがとう。
お守り……すごい喜ぶだろうな。
[簡潔な返事の後。
さっき、忘れられた家の端に、落ち葉で言葉のようなものが書かれた跡があったのを見つけたのを思い出して。
そんなことをしそうな、器用な風使いなんて…1人しかいない。
そのあとの言葉は…口下手だけれど、心からの感謝の言葉。]
……ありがとうな。コリンを励ましてくれて。
― 少し前 ―
……なんだ、バレたか。
[ くつくつ、と喉鳴らし。彼等が手を取り合って
「忘れられた家」の扉をまたぐとき
脇から入り込んだ風は、落ち葉の文字を吹き飛ばす。
くるくる、くるくる、つむじ風。
橙、山吹、焦茶に紅、まだ温かい秋の色。
風の遣い手の腕が鈍っていなければ
彼らの旅立ちを祝うように、
ちらちらと舞う秋色のライスシャワーが
ふたりの周囲を彩ったはず。*]
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[口ごもる先生に、身を乗り出してしまう。>>518 ユニコーンって一度本で読んだことがあったはずだけど すぐには思い出せなくて。
どんな姿をしてるって書いてあったかな。 確か、あれは──── ]
────…エフ、せんせい?
[ぼとん、と落ちた林檎が床を転がる。>>523 目の前に現れた姿にびっくりしすぎて瞬きもできない。]
(547) 2015/10/13(Tue) 22時半頃
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[だって、先生のいつもぼさぼさな髪は真っ黒だし。 目だって真っ黒だし。 不精髭まで生えてるし、ってそれは関係ないかもだけど だって、だって、だって。
今、わたしの前にいるのは 頭から尻尾の先まで、眩しいくらい真っ白できれいな馬。 ううん、その額に折れた角がある──ユニコーン。]
ほんとうに、せんせい………?
[頭の中に響いてくる声は、落ち着いた先生のもの。 わかってても、すぐには信じられなくて。 わたしの方に踏み出す蹄にびくっと肩が跳ねて 近付いてくる鼻先にぎゅうと思わず目を瞑ってしまった。
甘えるように擦り付けられた鼻頭はちょっと湿っていて 啼く声が物見小屋に響く。 かかる吐息に、ドキドキと騒がしい心臓をおさえて ゆっくりと目を開いた。]
(548) 2015/10/13(Tue) 22時半頃
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お守りか…。
昨日のアヤワスカといい、みんな本当に
良い子たちだね。
オズウェル君の手を煩わせるでもないよ。
僕らみんなそちらへ向かうのだから。
僕は、クリスマスと行くよ。
[聡明な鷲の声に返ってくる言葉に
それぞれの少女がそれぞれのせんせいを見つけ
それぞれの主人がそれぞれの従者と契約を交わしたと悟る。]
ユージン君。
よかったよ、君の少女はやっぱりコリンじゃないと、ね。
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[頭の中に響く声。>>533 真っ白な睫毛が揺れて、 優しくて深い紺色の瞳がわたしを見つめる。
"少女"のわたしは、知っている。]
ゆるします。 わたしが、わたしの"おしまい"を迎えるまで──
[伸ばした手で、真っ白な毛並みを撫ぜ 蒼い目を細める。 それからほんの少し身を乗り出して、 湿った鼻先にゆっくりと、くちびるを 押し当てた。]
(556) 2015/10/13(Tue) 23時頃
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[小さく囁いてから、くすぐったそうに笑って。 今度はその首に抱きついて、白馬に頬ずりした。 がっかりなんて、とんでもない。
まだ心臓はドキドキしてるし、 ひなたぼっこしすぎたみたいにぽかぽか頬が火照る。]
大好きだよ、せんせい!
[やっぱり、すぐには主になんてなれなくて。 今度は物見小屋いっぱいに響くくらい 大きな声と笑顔で告げたんだ。]*
(559) 2015/10/13(Tue) 23時頃
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