171 獣[せんせい]と少女
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いっつもそう。 ブローリン、自分のことになると、 ごまかそうとする。
[じっと見てれば、気付くよ。 ブローリンの指が強張ったこと>>250]
わたしはブローリンのことを知りたいの。 ブローリンの力になりたいの。 嫌ならイヤだって、いってほしいの。 ブローリンが嫌なこと、したくないもの。
[目からは拭いきれないくらい、涙が零れる。 だって、哀しい。だって、くやしい。]
(280) fumifumi 2015/10/20(Tue) 21時半頃
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わたしが子供だから、誤魔化すの? わたしじゃあ、ブローリンの力にはなれないの?
[そういって、わたしは泣いた。 静かに、声を押し殺して泣いた。
右手には、ブローリンの服を握ったまま。 いじわるなブローリンの服の裾なんて、 皺ができちゃえばいいんだ*]
(281) fumifumi 2015/10/20(Tue) 22時頃
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[>>313困らせてるのよ。 そんな言葉は、嗚咽に埋もれて消えてゆく。
誤魔化されるのは、いや。 無理をしているのかなって、 かなしくなるから。
指先から、服の裾が離れる。 屈んだブローリン>>314の表情は、 わたしの視界が滲んでしまっているからか、 うまく、見えないのだけれど。]
(326) fumifumi 2015/10/21(Wed) 00時頃
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わたしは、ブローリンと一緒に居られれば、 それでいいの。それだけで、幸せなの。
[きらきらの魔法は、とっても好きだ。 使うことが出来るなら、 どれだけ素敵なことだろうとも思う。
―― でもね。]
ブローリンが笑顔になれない魔法なら、 わたし、なくてもいい。 それに、もう、魔法は十分もらっているもの。
[わたしは涙を拭いて、小さく笑った。 一緒に歌をうたうことや、夜更かしの方法。 彼が教えてくれた、素敵な魔法。]
(327) fumifumi 2015/10/21(Wed) 00時頃
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[冬の夜が怖いと言ったから。 わたしは背伸びをして、ブローリンに囁いた。
昔してくれたように、抱っこは……できないけど、 ぎゅって抱きしめてあげよう。 眠れない夜は、歌を歌ってあげよう。]
ブローリンが怖いものは全部、 わたしがパクッて食べてあげる。
[すっかり水分がなくなった、 黒いりんごをわたしは齧った。 ブローリンのこわいものを、食べちゃうつもりで。]
(328) fumifumi 2015/10/21(Wed) 00時頃
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………… 。
[まずい。 そう言葉にすることは無かったけれど、 ぎゅっと顰めた眉で、わかるだろう。]
冬が怖いなら、使わない。 冬じゃあなくても怖いなら、 冬じゃあなくても、使わない。
ブローリンと、一緒に笑っていたいもの。
[ひと齧りしたおいしくないりんごは避けて、 わたしは言った。 無理はしなくて、いいんだよって。
…… 口の中は、枯れたりんごで苦いまま*]
(329) fumifumi 2015/10/21(Wed) 00時半頃
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わたしのこわいものは、 ブローリンがいつだって、 食べてくれているじゃない。
[>>341わたしは笑いながら言った。 わたしが怖いときはいつだって ブローリンが一緒に居てくれるんだもの。
いつもありがとう。 これからも、よろしくね。
そう言ったわたしは、 ブローリンのほっぺに唇を押し付けた*]
(364) fumifumi 2015/10/21(Wed) 01時半頃
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―ある夏の日のこと―
[だーれだ、なんて。 わたしの掌が、ブローリンの視界を遮る。
わたしとブローリンしか居ない部屋だから、 すぐに当てられてしまったけれど>>349]
ね、ね。ブローリン、おなかすいた。 おいしいクッキー、また、たべたいなぁ。
[いつかの冬の日から。 ブローリンが笑ってくれることが増えた、気がする。
そうして笑ってくれると>>350 わたしもとっても嬉しくなって。]
(365) fumifumi 2015/10/21(Wed) 01時半頃
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[それだけでいいの>>339 あの日、わたしは頷いた。
―― 本当に、それだけで十分だった。
だって、キラキラの魔法を使わなくたって、 こんなに楽しくて、幸せなのだから。]
あ、ブローリンの瞳の色とお揃い。
[昔よりも伸びたわたしの髪の毛は、 白と黒を混ぜたようないろ。 お揃いね、って笑ってみたけれど、 そこには別れへの不安があるの。]
(366) fumifumi 2015/10/21(Wed) 01時半頃
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ずっと、だいすき。
[きっと、まだ、別れまでは時間がある。 大丈夫、って自分に言い聞かせて。 ソファに座ってるブローリンのおなかに、 ぎゅってだきついた。
暑いって言われてしまいそうだし、 わたしも暑いけれど。
なんだか、くっつきたくなったから*]
(367) fumifumi 2015/10/21(Wed) 01時半頃
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―ある秋の日―
[>>380ブローリンと旅するうちに、 わたしはたくさんのものを見て、知った。 良いことばかりではなかったけれど、 それも、きっと。せかいのひとつ。
あれは安いね、これは高いわ。 そんな話が出来るようになったのも、 ブローリンが色々と教えてくれたおかげ。]
なぁに?
[>>382頭上から小さな言葉が降ってきたから、 わたしは視線を上にむけた。 必死に弁明する様子がなんだかおかしくて、 わかってるよ、なんて。笑いが込み上げてくる。]
(388) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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うん。
[聞きたいこと。 笑みを浮かべたまま、 問いの内容を促そうとして。
その声が妙に真面目なものだったから、 わたしの表情は、不思議そうなものになった。
黒かった髪は、今や白の色のが強い。 りんごのように赤い自慢の瞳が、 色あせていないことには、安心したけれど。]
(389) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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…… ううん、おかしくないよ。
[椅子を引く音が、部屋に響く。 わたしはブローリンの右隣の椅子に腰掛けて、 机に肘をついた。]
でも、むずかしいねぇ。
[椅子に座っても、 足が揺れることがなくなった。
昔より幾許か伸びた背でも、 ブローリンとの目線は、 近付いた気がしないのだけれども。 だって、とっても背が高いんだもの。]
(390) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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いきること、かしら。
[たぶん、ブローリンが聞きたいのは、 こういう話じゃあないんだろうな。 そう思いながら、言葉を紡ぐ。]
いきて、しぬ。そして誰かの糧になる。
[わたしたちみたいに。 なんて、声には出さなかったけど。
でもね。わたしは話を続ける。]
(391) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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死は命の終わりって聞くけれど、 わたしはそうは、思わないわ。
誰かがわたしの事を覚えていてくれる限り、 わたしの命は、そのひとと共にある。 覚えていてくれるひとが居なくなったその時に、 ほんとうの死を迎えて、命を失うの。
[モスキュートせんせいの、 受け売りだけど>>1:184>>1:185
あの時はすこし難しかった話も、 いまでは理解できるし、そうであったらいいと思う。
(392) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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…… だから、せんせい。 わたしのこと、ずっと覚えていてね。
[それは、呪いのような言葉。 自分でも酷い言葉だって思うもの。 彼より先に死ぬわたしを、 わすれないで、覚えていて、だなんて。
でも、忘れてほしくはなかった。 一緒に過ごした日々を。 楽しかった事も、哀しかったことも。
楽器も教えて欲しいって、 ワガママを言ったような、些細なことも>>384]
(393) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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[せんせい、なんて久しぶりに甘えてみたけれど、 ブローリンと呼ぶことに慣れてしまっていたから、 なんだかおかしな気分だ。 前はせんせいって、呼んでいたのにね。]
…… なんてね。
ブローリンが忘れちゃいそうになっても、 忘れられないくらいの思い出、 作ってあげるんだから。
[そう遠くない未来、訪れるであろう別れ。 もっと一緒に居たいのになぁ。 そんな呟きは、口の中で飲み込んだ*]
(394) fumifumi 2015/10/21(Wed) 17時半頃
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―秋が訪れるよりも前―
[>>376ええー、はやく遊びたいわ! そんな文句も、 準備運動を怠って溺れた人の話を聞けば、 ごめんなさいってきちんと準備運動をした。
結ぶほど邪魔でもない髪は、 まえに、ブローリンが切ってくれた>>375 あのときは、あついって言われちゃったけど、 暫く離れることがなくって。 離れてから、暑いねって一緒にわらったのだっけ。]
ありがとう、素敵な王子様。
[>>377気取った物言いをするものだから、 わたしもお姫様のように、 スカートを持ち上げる素振りをみせて。 そっと、手を重ねた。]
(395) fumifumi 2015/10/21(Wed) 18時半頃
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[その日は、たくさんのことをした。
砂で作ったお城は、 完成したあと、せーの、って二人で崩した。 貝殻で作った笛を海に戻して、 誰かが拾ってくれるかな、なんて笑った。
揺れる小船の上で海に手を伸ばしたら、 船がぐらりと揺れたものだから、 あわてて手を引いて、もとの位置に座った。
――あと何回、 ブローリンとこの季節を過ごせるのだろう。
地平線に沈む夕日に照らされながら、 ブローリンの手をそっと握った*]
(396) fumifumi 2015/10/21(Wed) 18時半頃
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―かくれんぼ―
[>>423明日は星を見に行こう。 珍しく、わたしが誘うのではなくて、 ブローリンが誘ってくれた日。
わたしはひとり、歌っていた。 明るい月の下、お星さまを見上げながら。
困らせたいわけじゃあなかったけれど、 わたしのことを、見つけてほしかった。 もう、わたしの髪の色よりも濃い、 灰色の、きれいな瞳で。]
ら、ら ―――― 、
[かくれんぼなんて、 がっこうに居たころ以来だけど。 きっと、ブローリンはわたしを見つけてくれる。]
(443) fumifumi 2015/10/21(Wed) 22時半頃
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Twinkle, twinkle, little star...
[口ずさむのは、大好きな歌。 ちいさな歌声を、秋風がさらってゆく。
ひとりだと、やっぱりさみしいね。 ブローリンが隣に居てくれたから、 歌うことがたのしいんだ。
こうしてひとりになってみて、初めてわかった。]
(444) fumifumi 2015/10/21(Wed) 22時半頃
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[>>427草が揺れるおと。 振り返れば、そこには待っていたひとが居る。]
…… みつかっちゃった。
[ねえ、ブローリン。
あなたはこの寂しさを、ずっと抱いていたのかな。 あなたと共に旅をした少女が居なくなったとき。 わたしが抱いた寂しさよりも、 ずっとずっと、寂しかったのかな。
わたし、死ぬことはあまりこわくないけれど。 ブローリンとの別れが、とてもこわいの。 旅立ちの日の不安とは、比べ物にならないくらい。]
(452) fumifumi 2015/10/21(Wed) 22時半頃
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きっと見つけてくれるって、おもってた。
[ブローリンとお別れをするとき、 わたしは、泣かないでいられるかなぁ。
ほんとうに、最後のさいごだもの。 笑って、だいすき、っていって。 お別れしたいのだけど。
そういえば、昔も、そんなことを思っていたなぁ。 いまも昔も考えることは同じなのねって、 ちいさく、わらった*]
(455) fumifumi 2015/10/21(Wed) 22時半頃
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…… 美味しかったですよ、ミィ。
[ 残された囁きは、交わした約束のとおり
寸分違わず叶えられる。
それが摂理、それが約束。
それが……
( 噫、なんて 真綿のような甘い呪い。 )
此の存在を”呪い”と言った幼子は
あの小さな手を喪ったとき、何と喩えるのだろう。]
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ブローリン、こどもみたい。
[わたしは笑った。 笑わなくちゃあ、泣いてしまいそうだったから。
くしゃりと浮かべたへたくそな笑み。 いつからか隠すことのなくなった彼の瞳を、 見つめるわたしの瞳はゆれる。]
わたしたち、おそろいね。
[手を伸ばして、ブローリンを抱きしめる。 わたしも同じ気持ちなのよ、って。 平気そうにしていたいのに、 そう言った声は、ふるえてた。]
(518) fumifumi 2015/10/21(Wed) 23時半頃
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[彼が、わたしだけのブローリンになってくれたら、 どれだけ素敵なことだろう。
でもきっと、それは難しい。 だって、わたしが彼の前から姿を消したら、 いつかはまた、彼の傍には少女が居るだろうから。
……せめて、いちばんになれたら、いいなぁ。]
しかたないなあ。 ブローリンのこわいのは、 わたしが食べてあげるって、言ったものね。
[>>503わたしと同じ、へたくそな笑み。 濡れているその頬に、唇を落としたあとで。]
(522) fumifumi 2015/10/21(Wed) 23時半頃
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As your bright and tiny spark♪ Lights the traveller in the dark♪
[いつだって、あなたの道を照らしてあげるわ。 あなたがわたしの道を、心を照らしてくれるように。 わたしがあなたの星になって、輝き続けるの。]
(524) fumifumi 2015/10/21(Wed) 23時半頃
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[そして―― 最期のときも、わたしは歌った。
いつもと同じように、大好きな歌を。 いつものように声は出なくて、 ちいさな、ちいさな歌声だったけれど。
すこしでも、 この歌声がブローリンの心に残りますように、って。]
(527) fumifumi 2015/10/21(Wed) 23時半頃
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[―― 君は何者なんだ。
ブローリンが時々わたしに問うたこと。 結局、その答えは最期まで告げぬまま。
わたしはミツボシよ。 あなたのお星さまになりたかった、 ただのミツボシ。
ねえ、ブローリン。 わたしはあなたのお星さまに、なれたかな?*]
(538) fumifumi 2015/10/22(Thu) 00時頃
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