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ワレンチナ! 今日がお前の命日だ!
【人】 哲学者 エスペラント― 2日前 / 動力室廊下 ― (3) 2016/05/18(Wed) 01時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[すぐさま助けに行ってやることは不可能だった。 (4) 2016/05/18(Wed) 01時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[ワレンチナは、早口にヤンファへ更に言葉を伝えようとしていた。通信が途切れ、ワレンチナと目があう。 (5) 2016/05/18(Wed) 01時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[エスペラントもワレンチナに倣い、シルクに呼びかけてみる。 (7) 2016/05/18(Wed) 01時半頃 |
『じゃあ……もしも僕が、男の子になったら。
きみはずっと、僕と一緒にいてくれるの?』
[目の前には、瞳に涙を溜めた恋人がいる。
彼女は何も言わずに、ただ肩を震わせている。
ワレンチナは眉尻を下げ、諦めたように微笑んで見せた。]
『うん……いいよ。大丈夫。……さようなら。』
[言って、席を立つ。彼女は声を立てずに泣いた。]
(泣きたいのは僕の方だ――
先に好きだと言ったのは、君の方じゃないか。
今さら。今更だ。
"やっぱり女の子同士で付き合うのは間違ってた"だなんて。)
[幼い頃から、女の子らしいものを欲した事がなかった。
かといって、嫌悪もなかった。単純に、それよりも好きなものが多かっただけだ。
学会の重鎮を両親に持つエリートで、かつ性別を感じさせないワレンチナは、幼い頃から周囲の少女達にこう持て囃されてきた――『王子様』。
そんな王子様に初めての恋人ができたのは、14の時。相手は取り巻きの一人だった。女同士。けれどもそんなことは障害でない。今日日LGBTは珍しいものでもなんでもないし、社会的にも認められている。しかし、最初は遊び半分だったワレンチナが彼女に対して幼いながらも真剣な愛情を抱き始めた頃、夢見がちに目を潤ませていた少女の表情には、逆に陰りが射し始めた。
二人の付き合いは、そう長くは続かなかった。]
[初めての恋人と別れた後、ワレンチナはしかし再び女性と付き合った。そうしてまた、ダメになった。
そうして、その次は男性の恋人ができた。ワレンチナは自身が女性であることの喜びを、初めて感じることができた――が、それなりの時間を共に過ごした後、どこにでもありがちな理由で、彼とも別れた。
そうして悩み、次はまた女性、男性、女性、男性……。
そんな事を繰り返すうちに、ワレンチナは性別というものを気にしなくなった。
僕が女だろうが男だろうが、僕はただ、恋をする。男にも、女にも。遊びと割り切った関係さえ持つ。
それでいい。それが僕の、『在るがまま』の姿なのだから。
そうして、長いことそのようにして過ごしてきた。
自由に、飄々たる『王子様』として。]
[そして。
突然投げかけられたシルクの言葉は、ワレンチナの深く柔らかな部分を緩やかに刺した――最も、それが奇病の感染した瞬間であるということに、ワレンチナは無論気がつくことはない。
けれども、何れにせよ。
『もし、ボクが男の子になったら』。
『交際相手もしくはそれに類するものに』。
それはワレンチナにとって、一番古く、消えない傷をなぞる言葉だった。未だ幼かった自身の、それでも真剣だった初恋において、戸惑いと葛藤とを打破せんと溢れた、祈りのような言葉だった。
それを投げかけた、男でも女でもない――それ以前に、まだほんの子どもだったシルク。
けれども、そうして。
ワレンチナは、無意識にシルクの事を『彼』と呼んだ。]
(馬鹿馬鹿しい)
[想像してしまったのだ。弾かれるように。
他種のパートナーを得る事で性別を決定し繁殖するボムビークス種、そのシルクが自身を女性のパートナーとして選び、成人し、自分と子を成す。その未来を。]
(あんな、子ども相手に)
[無論、これまで生活を共にしてきた期間の中で、シルクを異性として意識したことなど全くなかった。
自身と同じように、曖昧な性を生きるボムビークス種。その若き天才児の選ぶ未来がどういったものか、ただ単純に楽しみだった。名も知らない花の生長を見守るような、そんな心地だった。けれども。]
(僕は、期待したのだ。
自分の性について、浅ましい期待を。)
[胸が痛かった。この痛みは何のための痛みか?
しかし妙な事に、思考は非常に冴え冴えとしている。]
[ワレンチナは、溜まった涙を振り払うように瞬きをした。
金の睫毛に小さな水球がまとわりつき、やがてふわりと宙に放たれてゆく。]
(このやりきれない気持ちをどうしたらいい?)
(シルク、君のことを。自分自身のことを)
(ひとり。誰かひとりだけに、吐露するならば)
(相手は、そう――――)
【人】 哲学者 エスペラント― 機関室 ― (28) 2016/05/18(Wed) 22時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[次元航法装置のことを、エスペラントは「雪竇さんの抜け道」と呼ぶ。 (30) 2016/05/18(Wed) 22時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[かつては船医が人間を冷凍して積み荷のように扱ったものだが、次元航法が確立され多くの船に普及して以降、解凍による失敗率――つまり死亡率が高すぎるあまり、現在では滅多に行われないどころか、法的に禁止されていることも多い。 (34) 2016/05/18(Wed) 23時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[次元航法装置も、あの火災と同じくAIの用いた嘘であればよかったのだが、残念ながら、嘘ではないようだった。 (51) 2016/05/19(Thu) 03時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[未知の宙域Ma=havari=plam系惑星Pavr=opetyでの調査。 (52) 2016/05/19(Thu) 03時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[Pavr=opetyから出発の後は、船は次元航法に向けて順調にエネルギーをためていた。 (54) 2016/05/19(Thu) 03時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント― 廊下→食堂 ― (65) 2016/05/19(Thu) 13時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント― 食堂 ― (74) 2016/05/19(Thu) 17時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[それから目玉はトレーにプリンキューブを積み上げた疲れた顔(といっても鼠の表情だが)のアシモフを向き、 (75) 2016/05/19(Thu) 17時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[質問もそこそこに、すぐに話題はワクラバの貰った手紙の話しになる。シルクも寝入りに忍びないような気持ちになっていたのでは、気の毒な事だ。] (76) 2016/05/19(Thu) 17時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント …… (77) 2016/05/19(Thu) 17時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[ミツボシの発した問。 (81) 2016/05/19(Thu) 19時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[そこでイースターの説明とアシモフのツッコミに笑い声をあげ] (87) 2016/05/19(Thu) 20時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント 恥ずかしい、という機能を使わず言えたとしよう。 (88) 2016/05/19(Thu) 20時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント わしの聞くイースターさんのキノコ好きが、 (89) 2016/05/19(Thu) 20時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント あんたさんの二つの「ここにいます」が (90) 2016/05/19(Thu) 20時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント ほうかほうか。ちょうど良い。 (93) 2016/05/19(Thu) 21時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント― 船外活動準備室 ― (96) 2016/05/19(Thu) 21時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[歯抜けじじいは、はははと笑った。] (98) 2016/05/19(Thu) 22時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[船外活動ユニットも昔に比べて随分性能が上がり、便利になったものだとエスペラントは着るたびに思う。 (99) 2016/05/19(Thu) 22時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[外には黒漆桶の宇宙が広がっていた。] (100) 2016/05/19(Thu) 22時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント― 船外 ― (105) 2016/05/19(Thu) 23時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[一つを発見したのはワクラバ。 (106) 2016/05/19(Thu) 23時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[もうひとつを発見したのはエスペラントである。 (108) 2016/05/19(Thu) 23時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[すぐさまエスペラントは、目の前にある光景を、ワクラバに映像として受け渡す。 (110) 2016/05/19(Thu) 23時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[老いた脳で、慌てて外蓋を閉めたのはどうにか間に合った。 (111) 2016/05/19(Thu) 23時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[小さなデブリ同士がぶつかり合って粉々になる。 (113) 2016/05/19(Thu) 23時半頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[通信を試みる。ノイズにまみれていたが、どうにか使用可能であるようだった。 (117) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
【人】 哲学者 エスペラント[ワクラバから通信がかえると、エスペラントは心底ほっとしたように、はははと笑った。] (120) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
(――これは吊り橋理論か?ワクラバ。
そうでないなら単純な情けか。それとも好奇心か?
どちらでもいい。投げかけたのは僕の方だ。
そうして君は応えた。それだけ。結果論でいい。
『王子様』はもう居ない。
ほんとうの自分の心に――言わば本能に従ってみれば。
僕は、女という名のけだものだったのだ。
それを認めさせてくれ。
どうか無事に帰ってきてくれ。今夜、僕の元へ。
僕が今――祈るのは、そればかりだ。)
【人】 哲学者 エスペラント[極力欲を絶ち生きた老人は、生き方のおかげか。 (123) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
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