267 【突発】Sanatorium,2880【RP村】
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[ ───── しょくぶつさん には分からないってさ。]
[ かのじょ の なまえは
それでよかったんだっけ。 ]
だけどそれより、
床に散らばって広がった藍色の星の…
女の子のくちびるが崩れていく寸前の囁きを、
僕は拾いあげてしまった。
スープと砂の付いたシルバースプーンよりも先に。
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崇められて 信じられて 預けられて 頼りにされて せんせい≠ニいう肩書ひとつで ひとびとの視線の色が変わるのを よくよく身に染みて感じていた僕は 時に悪い白昼夢を目にしたりもする。 >>47 ──── 彼に、海の生き物の体温を 丁度、教えた頃だったろう。
(116) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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女の子が■になる■だ。
シルバーが雨の落ちるより強かに
床に降る音が妙に耳に残っていた。
肩に掛けられた羽織がずるりと落ち
砂時計の容器が決壊していたように
彼女の命が床に降り積もっていく■。
命は容易く風に吹かれる。
いつか亡霊が囁いていた、
星の欠片は無残な塵芥と化して
空を流れることも出来ないまま
掬っては零れる命砂になるだけ。
外に飛ばせばどこまで飛ぶだろうか
僕はそんなことを考えていて
他の同僚たちのように、箒や塵取を
持ってくる■■などまるでなかった。
ホルマリンに漬けられたもの一つ
崩れてなくなってしまっただけの
吹けば消えるような思いが過っていた。
遠くでシーツに腰掛けた、■■が
窓辺の景色を眺め、見上げながら
硝子越し 反射光 うつした唇に
■■めいた言葉を吐き付けている。
弾けたスープの残骸が、
まるで蜘蛛の巣のように絡んでいた
僕はそれに気付けなかった。
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被検体が増えてから、幾つの季節が巡ったか。 >>49彼の小さかった背丈がもっと低くなり、 肘掛にするにも心許無くなるまでに、 そう時間は掛からなかったかもしれないが。
(117) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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■ まるで■されたがる魚のように 彼は■たい棺の中か、■蔵庫の中で■■たいと 僕の色眼鏡のなかでは■願するように 伝えてくるものだから、 僕は■■半分に、冷たい■を差し出した。 外で眠れば雪が体を冷やすだろう。 ■■を海に投げるような提案をしなかったのは 僕にもそれなりの■■があったからに違いない。
(118) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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■たい■の居心地は如何だろうか。 クーラーボックスに釣った魚を 保存するようだと、僕は思っていた。 熱の通さない、彼の背丈に合った箱を置いた。 雲のすきまから差し込む陽光を当てない為に 外界の光を強く遮断するカーテンを掛けた。 水辺も、水の入ったコップもないのに、 どこからか泡沫が上る音が聴こえたのは 遠くの海で小波が揺れていたからだろう。
(119) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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『 釣った■を保■しているようだった 』 いつかにして 僕は漸くあのときの気持ちを そのような言葉で吐露していたはずだ。
(120) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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僕が担当することになった被検体-153 彼の名前は覚えていない。 なにかの拍子に呼ぶときも 僕より小さな背に向けても 数字で呼びつけていた。 僕は患者の名前を呼ばない。 僕が担当する被検体に名前はない。
(121) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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「 魚だと思っていたのに 次は硝子にでもなるのですか。 」
(122) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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>>51罅の入った彼の腕に、 気休め程度の包帯を巻きながら 僕は問い掛けていた。 人から乖離していく被検体たちのこと 僕は少なからず知っているつもりだ。 だからこの言葉は、 常套句とも言えるだろう。 ・・・
(123) 2019/06/13(Thu) 16時半頃
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* * * *
(124) 2019/06/13(Thu) 17時頃
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白昼夢の延長線上で
僕はそのように、153に問い掛けていた。
医務室へ向かう背を 星砂となって朽ちた彼女に
騒ぎ、喚く被検体たちを後目に…時に体に纏って。
彼の病状≠ヘ覗ける範囲に確認出来ていたか?
僕は淡藤色の絵の具に白を垂らしたような
春には遠い色の瞳を 向けていた。
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■であった筈の出来事は ピントを合わせたようにリアルに被さる。**
(125) 2019/06/13(Thu) 17時頃
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「 何、 覚えてないのかい?
──── 病気じゃないだろうね。 」
( 病気かどうか、 なんて誰にもわからず、
少年は唯、茫然と流れ行く人を眺めていた。 )
( 「 このひとたちは何を言っているんだろう。 」)
( 「 いないものを おぼえているか なんて
……きくほうがわるいんじゃない?」 )
・・・
( 確かに 記憶の奥深くを敢えて探るのなら、
ひとのかたちさえ為していなかった ─── )
[ わらってみせた。 ]
[ しょくぶつ、に、片足突っ込んだおんな! ]
「 ……こんなにも冷たい僕は、
きっと氷からつくられた硝子でしょう。 」
星になって…砂と崩れたおんなのこから
医務室に向けてどんどんと遠ざかりながら、
せんせいにそうやって笑いかけました。
コツ、コツ…と床をたたく靴底の感触が、
いつもより鋭敏に全身に行き渡ります。
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