76 ─いつか、薔薇の木の下で。
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[遠くに感じる薔薇の意識。
ブレンダに憑いていたときと僅かに違うその感覚]
…あぁ、君は、新しい体を…?
ハジメマシテ……は、おかしいかな……。
[笑う声は薔薇の香りと共に届く。
薔薇が飲み込んだ快楽に中てられたように
うっとり呼びかけた*]
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ん……ぁ……
[室内に響く甘やかな声。 互いに所有の印を刻みあう。 抱いて、抱かれて、貪りあって。 僅かな痛みと、極上の快楽]
サイ、ラス、さんっ……
あい し て、る
[掠れた声で囁いて。 意識は快感の海に沈んで行く。 闇に落ちた意識に、薔薇は密やかに根を下す**]
(14) 2013/03/28(Thu) 08時頃
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…ふふ、ごちそうさま。
でも、ちゃんと咲くにはまだ足りないんだ。
君は、どうするの?
[約束などしらばっくれるつもりで、ひそやかに問う]
咲けるまでもらうだけ。
…あの子たちが悩むのも、見てて楽しい。
お前が足りないなら、分けてあげるよ。
ブレンダに憑いていた時は全然足りなさそうだった。
そうだね……
こいつ、何も知らないから……とてもいい色の精気が絞れそうだ。
罪悪感は、とてもとても赤い。
[風に揺れる葉のさざめきのように笑って。]
…いいよ。おいで。
[赤い意識の中、手を伸ばす
…けれどまだ、薔薇が誰に憑いたのかは知らない。
だから廊下でしなだれかかってきた彼に
わずかに驚いた顔をして見せたのだけど]
[薔薇を抱き上げたまま、足はどこに?
礼拝を行う、礼拝堂。
ステンドグラスに、薔薇のレリーフ。
夜のガラスに刻まれた薔薇は、深い深いぶどう酒の赤。
主の像の前、また銀の髪の薔薇に深く不覚口付けを何度も交わし、
床に引かれた赤い絨毯に押し倒す]
…薔薇は、どこ?
[そっとその手を胸元に這わせる。
首筋に、鎖骨に。赤い華をつけながら]
[緋色の床、金と銀の髪がまた交じり合う。
吐息と香気、精気と熱気。
厳かな空間に、淫らな影が二つ。
ヤニクとでは満たしきれなかった欲は
さて、ロシェで満たすことはできるだろうか
胸の奥がうずく。サイラスが泣いているのだろうか。
ヤニクを傷つけてしまうことに。
けれど蒼い眼の薔薇にそんなもの、関係あるわけもなく]
[どれだけの時間、交わっていただろう。
サイラスが押さえ込んでいた薔薇の意識は
予想以上に欲を求めていたらしく。
ヤニクとの情事で痛みを持った体でも
ロシェに対して求めるものはとても熱い。
気遣いなんてまるでない、ただただ求めるのみ
全て吐き出して、ロシェに体を預けた後、とげを含んだような声でささやいた]
…ヤニクには手を出すなよ。約束、だから。
[何故蒼薔薇はそのようなことを求めたのだろう。
約束なんてあってないものなのに。
薔薇自身、口にしてから苦笑をもらし。
そしてゆっくり彼から離れ、またそこから影を消す**]
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好き、好きです…… 愛し、て、います……!
[深く深くまぐわって交わって。 身体の奥に彼の熱を受け入れて。 それはあまりにも甘美で、脳は蕩け。 甘い夢の中へ何処までも落ちて行く。 その結果、薔薇が彼を完全に支配してしまったとも知らず]
[幸せな夢から覚めた後。 部屋には一人。 最愛の姿は無く。 そして、微かに宿す、薔薇の香り]
(43) 2013/03/28(Thu) 21時頃
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ん……
[気だるげに重い身体を起こす。 まだ情事の痕は色濃く残り、甘い香りに混じり性の匂いが部屋を支配していた。 だけど、足りない。いない。彼の姿が無い]
……どこ? どこに……
[怖い。 彼と離れるのが、酷く恐ろしい。 それは間もなく訪れる渇望の一端か。 とても空虚で、足りなくて、埋めたくて]
どこ……
[衣服を身につけるのもそこそこに。 肌の痕も隠しきれぬ乱れた姿で廊下へと]
(44) 2013/03/28(Thu) 21時頃
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ノックス、さん……?
[ふらり、ふらり。 まるで夢遊病者のように廊下を歩く。 その瞳はまだ何処か夢見心地。 薔薇に蕩かされているその最中]
いないん、です……
[衣服に伸ばされた手に、そっと手を重ね。 指先で手の甲をなぞり弄ぶ]
何処に……何処に行ってしまったんでしょう。 ねえ、あの子を、知りませんか?
[微笑を浮かべ首を傾げる。 その笑みはいつもと違い、何処か淫靡で]
(60) 2013/03/28(Thu) 23時頃
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さっきまで一緒だったのに…… 一つだったのに…… いなくなってしまったんです。 彼がいないと、私……
[潤んだ瞳がノックスを見つめる。 息が触れるほど顔を寄せ]
……寂しいんです。 ねえ、一人にしないで下さい……
(64) 2013/03/29(Fri) 00時頃
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……本当、ですか?
[一人にしない。 その言葉に、嬉しそうに笑う。 何処か色を含んだ笑顔]
ね……少し、だけ。 一緒に、いてくれませんか? いいでしょう……?
[ノックスの白い肌を、褐色の指が滑る。 頬を包んで、顎をなぞり、首筋を伝い。 甘い甘い囁きを沁み込ませるように、 耳朶に舌を這わせて言葉を紡ぐ。 その吐息は、薔薇の香りを孕んで。 芽吹くまで、あと幾ばくか**]
(70) 2013/03/29(Fri) 00時半頃
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[薔薇が求める精気はどこまで銀の薔薇に通じただろう。
蒼薔薇が人をあいしてることに変わりはない。
それは花が本来咲く意味なだけ。
蒼目の猫は大事な人にその薔薇を根付かせたけれど、
きっとそれも、その人にあいされたいが故]
[いくら交わっても、いまだ満たされぬ。
渇きはいまだ癒されぬ。
後戻りできぬ痛みと後悔に、引き裂かれた魂はとめどなく血を流したけれど、
それでも、春の訪れにはまだ遠い。]
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