270 「 」に至る病
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霊
全
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( ”――――約束を果たして” )
( ”……約束を” )
[――……]
(7) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃
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[つきん、と頭が痛んで目が覚めた。 そろりと目を開ける。精と汗、甘い血の匂いがして くらくらと眩暈がする。
少し呻きながらセイルズは時計を確認し 朝餉を作るより前の時間であることを悟ると 抱きしめていたミルフィからそっと体を離し
少し迷って、その頬を 軽く抓った。]
…………ミルフィ。 起きなさい。 ミルフィ。
[今日が休日であれ平日であれ はやめに風呂に入っておかねばならない
……ベッドを見下ろしてそう思う。]
(8) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃
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[セイルズは何度か、彼女に呼びかけたが 疲れのせいか、それとも起こし方が下手なのか ミルフィの目は開かないまま
呼吸をしていることはわかっていたので セイルズは少し眉を顰めて 彼女の寝顔に顔を近づけた。]
起きないと………
[唇と唇が触れ合いそうな距離で呟く。 そのまま彼女がおきてくれるなら、 おや、と片眉をあげて意地悪そうに笑うだろうし
起きなければ、その形のいい鼻が抓まれるだけだ**]
(9) さねきち 2019/10/14(Mon) 15時頃
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[ふる、と震える瞼が、開く。
紅茶色の瞳に亜麻色の髪。 唇は春の色めいて赤く
そこにいるのは、確かに”娘”であるはずなのに 浮かべようとした笑みが違和感に消えうせる。]
……、君、は……
[誰だ、というかすれた声はカーテンの揺れる音に消えた。 朝を迎えて間もない薄暗い部屋の中。 一人の女を見下ろす男の表情は、固まっている。]
(34) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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………… ……………どうして、
[窓に結露が張り付く時のような肌寒さに セイルズはぶるりと背を震わせた。
狂ってしまった娘が生み出した二人目の人格か、 それとも本当に――本当に、”彼女”なのか、
冷静に分析しようとする頭が追いつかない。 ただ、聞き覚えのある甘い声、見覚えのある妖艶な微笑みに 激しく痛む心臓を押さえ、拳を握る。]
(35) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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(僕が君を呼び戻してしまったのか? ――今更化けて出るならどうして死んだんだ、 ……違う、……どうしてこんな、 おかしいとは思っていた、思っていたんだ、けれど
――…………嗚呼、)
(36) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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僕を…………
…………許さないでくれ、クラリッサ。
(37) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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[震える男の手指が、小さな女の指を掴んだ。 繋ぎとめておきたいのはどちらか。 ――わからないまま、ただ祈りと恐怖に身を震わせて、]
(38) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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[――…………、]
…………5分といって15分は経ったよ。ミルフィ。
[結局、風呂にも行かず、 さりとて彼女の体を抱きしめて寝なおすこともできず ただ体液でべたついた体でベッドサイドに座った男は 少しげっそりした表情でミルフィを一瞥した。
ああ、良かった。元に戻った。
そう思ってしまう自分が憎らしかった。 かつて愛した妻が戻ってくるのを素直に喜ばず 愛しい娘が娘のままでいる様子にほっとする。]
(39) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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[――……それでも、不気味に思う気持ちはあったが 首元の噛み跡を確認して、>>23 まるで子犬のように飛びついてくる>>24娘を見て 何もかもが吹き飛んでしまった。
ぺたり、と合わせる肌の感触が心地よく はあ、とため息をついて、その頭を少々雑に撫でる。
それから、たどたどしい口調でおねだりする娘の その表情を覗き込んで]
まったく、遊びのように言う。 僕からすれば大変なことだったんだが?
[つん、と額を人差し指で押してから、 肩を竦めて笑った。 ……愛らしい子。そう思いながら]
(40) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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……また、今度、な。
…………さて、 レディなんだから、ちゃんと体は綺麗にしないと。
[そのまま形のいい唇にキスをすると、 娘が抱きついてきているのをいいことに、 そのまま抱き上げて風呂に向かう。]
(41) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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[その最中。]
ミルフィ。 ……さっき、寝ぼけて起きてなかったかい?
[セイルズはじっとミルフィの顔を見つめて ぽそりと問いかけた。*]
(42) さねきち 2019/10/14(Mon) 23時頃
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…………、ばかな事を聞くんじゃない。 …………………気持ちよかったよ。
[頭を撫で見下ろす娘は、 いつもどおり子供らしい彼女なのに
その小さく愛らしい唇から情事の事がこぼれ出るので セイルズは100年ほど感じていなかった照れを思い出し 少し顔を背け、ぼそりと答えた。>>46
昨日は―― ちらつく妻の影を振り払って思い出してみれば 相当獣のような振る舞いをしたはずで
その記憶を娘に賞味される前に 恥をかくすように彼女を抱き上げた。 ミルフィの乱れる姿はしっかり思い出しながら。]
(50) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃
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……おはよう、クラリッサ。
[問いかけても「何の話?」と問われるので セイルズは「なんでもない」と返す。
ママ、と挨拶したミルフィの視線の先を一瞥し、 クラリッサの写真と目が合って、 セイルズは一瞬、表情を翳らせたが]
ああ、一緒に入ろう。 服を着なおして入れ替わりで入るのは きっと無理だろうしね……
[全く、無茶をしたものだと昨日の自分に思う。
せめて風呂に入ってから事に及べば 無駄に服にまで汗が染みなかっただろうに、と。
どうせシーツも服も洗濯するのはセイルズ自身なのに 馬鹿なことをした、と。]
(51) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃
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[じめじめした思考は 上機嫌なミルフィの表情で消し飛んでしまう。 風呂場の入り口に彼女を下ろすと、 扉をあけて、「おいで」と手を引き彼女を導いた。]
さすがに大人二人は狭いね。
……ほら。背中、きれいきれいしますよ。
(52) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃
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[けだるげに呼びかける。 投げかけるのは、彼女が六歳だった頃 たまに親子感で交わされた幼児語であった。
何の事はない。 伴侶として共に風呂に入るのが気恥ずかしいので 相手を子ども扱いしているだけである。
あの頃よりきっと増えた洗顔料や、 シャンプーの類を見下ろして 結局昔から使っている洗剤を手に取ると 娘用のボディスポンジを泡たてて、彼女の背中を流した。]
(53) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃
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…………、
[首裏や背中をひとしきり洗ったところで セイルズは彼女の体を見下ろして何かを言いかけ ――……口を閉ざし、咳払いを1つ。]
……前とか、足の間は、ちゃんと自分で洗うんだよ。 見てない。見てないから。
[はい、とボディスポンジを手渡して目をそらす。]
(54) さねきち 2019/10/15(Tue) 00時半頃
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―― 朝餉 ――
…………近いうちに、ママの命日が来るんだ。
[そういう話を切り出したのは、 きっと風呂から出て、 休日である事を確認してから洗濯機を回して 昨日冷蔵庫にしまったパスタを温めていた頃合だった。
”いつもどおり”きっちりと服を着込んだセイルズは 娘を前に獣に成り果てた男とは遠く
紅茶を淹れながらおもむろにその話題を切り出して 娘をちらりと一瞥し、再びカップに視線を戻した。] 例年通り僕は会いにいってくるから 帰りは夕方になるけど――……
[君も来るか、と言いかけて、口を噤む。 静寂が食卓に落ちた**]
(60) さねきち 2019/10/17(Thu) 00時頃
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―― 朝餉 ――
そう…………
[落ちた呟きを拾って>>61 セイルズはこくりと頷いた。 自分自身のコップに珈琲を淹れようとして 娘から出た言葉に、少しだけ手の動きを止める。]
……かまわないよ。
[数秒の沈黙を挟んでから、再び頷いた。 半ば望んでいたことなのに、 彼女の口から行きたい、と切り出されると 少しだけ不安になってくる。]
(64) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃
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[――――二人を混同しないであげて。と 白い眷属に言われたことを思い出す。
妻と娘にとって自分はどう映るのだろう。 二人目の眷属を迎えたことは。 ……妻はきっと怨んでいるだろう。
そんな事を考えながら、セイルズは食卓についた。]
優しい子だね、君は。 彼女を……家族だと思ってくれるなら、 祈ってあげてほしい。
[微笑みながら、そうしてほしいと添える。
食前の祈りは相変わらず捧げない。 捧げどころを失った想いだけが燻っている。*]
(65) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃
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―― 命日 ――
……けっこう古い墓地でね。 彼女が眠るのは、新しく敷地が増やされた場所だが
[十字架の墓が立ち並ぶ墓地へ 娘を伴って出かけたのは、それから少し経った日の事だった。
蒼い草原の上にいくつも灰色の十字架が立っている。 誰かが誰かの墓に花を供えているのが見える。
セイルズは墓地の入り口から少し歩いた場所 立ち並んだ墓の一角へ向かうと]
(66) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃
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会いに来たよ、クラリッサ。
[本来悼まれるべき家族に悼まれず 一人の男に添って、100年を生きた女性の名を呼ぶ。]
今日は娘も一緒なんだ…… ずいぶんと、君に会わせていなかったけれど
[呼びかける間も、十字を切ることはなく 乾いた風が、墓地を駆け抜ける**]
(67) さねきち 2019/10/17(Thu) 08時半頃
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――命日――
……ありがとう。
[乾いた指先を、娘の小さな頭に伸ばした。 そのままいくらか撫でて 白い薔薇と墓石に目を落とし思考をめぐらせる。
生まれた年と、死んだ年。 それから名前だけを刻んだ小さな墓がそこにある。
クラリッサ・ローズブレイド。 きっと順風満帆な人生を送っていれば 一人の令嬢として生を終え、 もっと”家族”に囲まれて弔われていたはずの女。
殺したのは、他ならぬセイルズだ。 愛を言い訳にして何度も何度も毒を盛り 気を狂わせて殺してしまった。]
(79) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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[かわいそうに。という嘆きと、 いまだ燻る「あいしている」のやり場がないまま ここに祈ることもなく通って約三十年。
愚かにもセイルズは同じ轍を踏もうとしている。
長年添い遂げた妻の後を追うこともできずに ただ生を長らえて 幼い少女を生かすといいながら 自由に生きる尊厳を奪った。
…………いとし子には 反抗期も成長に伴う別離も存在しなかった。 彼女の意思が芽生える前に殺したようなものだ。]
(80) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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[二人も殺したセイルズに、よもや祈る神などなかった。 残り100年か200年の命を抱えて きっと行くなら地獄だ。
――――けれども、その前に]
(81) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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馬鹿な僕の独り言として聞いてほしいんだが… ……1つだけ、聞きたいことがあったんだ。 ここに君を連れてきたときに。
[優しく呼びかける声は、 父が娘に呼びかけるようであり あるいは夫が妻に呼びかけるようでもあった。
セイルズは亜麻色の髪から手を離す。 ”彼女”から視線をそらし、 灰色の空を見上げた。]
(82) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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初めての夜にね。 目覚めた君を起こそうとして 君は、いつもどおり起きなかった。 あと5分、って…………いつもどおりに。
けれどその時の君は目を開けて、 僕を夫のように呼んだんだ。 『――呼んで、』って、……30年前みたいに。
(83) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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[視線を落とす。 紅茶色の目を見た。
風にさらさらと流れる髪も、揺れる瞳も なにもかもが似ていて見分けがつかなくなりそうになる。
吐息ばかりの笑いがこぼれた。 惑いながら、 きっと知らなくてもいいことを知ろうとしているのに 伸ばす手をやめられないのは職業柄か]
僕が言っていることがわからないならいいんだ。 いいんだが……
(84) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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…………君は一体誰なんだ。 ミルフィ? それとも、クラリッサ?
(85) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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[問いかけながら、セイルズはどこかで 「何をいっているの」と笑う娘の声を求めている。
その都合のよさを内心でせせら笑う間にも、 墓地には湿気た風が吹き込んだ。*]
(86) さねきち 2019/10/17(Thu) 21時半頃
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[色の失せた枯れ草を、風が撫でていった。]
(117) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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[振り向いた彼女は、 セイルズが見たこともない表情を浮かべていた。
大人びた妖艶な微笑に一瞬見蕩れ、 それから、不穏に震える心臓を押さえ込むよう、 ぎゅ、と己の手を握り締める。]
どちらでいてほしい……?
[瞬き、鸚鵡返しに呟く間にも、 彼女は自分の可能性について語る。 曰く、二重人格。曰く、幽霊。
持ち札に触れてから「どちらでもいい」とカードを捨てて セイルズに近づき、その唇を奪ってみせた。]
(118) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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……、っ、――――、
[セイルズは或る名を呼ぼうとしてそれを留め、 諾々と接吻を受け入れた。 意図しないのに慣れたように体温を上げさせられるのが 少しばかり恐ろしく、軽く肩を掴んだが
銀糸が伝う。荒い呼吸を吐き出す。 二人の間にまた風が入り込む頃には セイルズは少し紅くなった己の頬を煩わしそうに拭い 「彼女」が語ることを、やはり黙して聞いていた。>>104]
(119) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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[彼女は自分を病の具現化だ、と語る。 お前が血を啜る度に 私はこの娘の表面に出てくるのだ、と。
そして”どこで見たのか”、”誰かに似た”微笑を浮かべて セイルズをじっと見据える。
セイルズはそこでやっと、 少し皮肉げに、……寂しげに笑った。]
(120) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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……そうか。 よかった。
信じてもいない神がいたら ……。妻を追い出す羽目になったら どうしてくれようかと思ったが
[目を伏せる。それから腕を伸ばし――]
待ちなさい。
[「さよならね」と告げた「女」の腕を掴んだ。 そうして身近に引き寄せる。 紅茶色の瞳を覗き込んだ。]
(121) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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どちら、と聞くなら答えを聞いていけ。 君は、怯えた、ただの女の子だ。
ひとりになる事を怖れて 愛されるものに擬態して それでも足りなくて怖いから狂っていく
……たったひとり、僕の娘だ。
[あたし、もう、ひとりでいなくていいの?>>0:200
思い出の中の少女が不安そうに首を傾げて 抱きついてくる姿を思い出しながら セイルズはそう語る。
愛しているわ、といいながら愛して、と強請る姿は 依存症末期の患者にもよく似ているが どちらかといえば、一人ぼっちの頃の娘に似ていた。]
(122) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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[……馬鹿な子。内心でひとりごち もっと馬鹿なのは僕か、と自嘲する。 いまだ神の国は遠く死者を蘇らせはしない。 わかっていた。わかっている。
終わってしまった物語の続きを 夢見ることは望んでいないのに その可能性を考えた自分を、嫌悪しながら 繋ぎとめるのはあくまで「娘」の方だ。]
(123) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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この考えが間違っていてもいいさ
……君がその通り「病の具現化」だというなら 僕は君ごと―― ミルフィ、君ごと 全て受け止め、愛して……償うまで。
君がその通り、「病の具現化」だというなら…… 本当に昔を知っているなら 僕を死で縛れないのは知っているはず 繋ぎとめておけ。ちゃんと。 ……僕が君を愛せるように。
(124) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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[セイルズはそこまで言うと、 彼女の頬に触れ強引に上を向かせた。
こんなものはただのあがきであって 何の救いにもならないことはよく知っている。
それでも、衝動は体を突き動かし
――――――彼女の呼吸を奪う。深く。熱く。]
[ ――……暗転。 ]
(125) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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…………。 なんでもないよ、ミルフィ。
[呼びかけられ、セイルズは穏やかに微笑み、 彼女の頭を撫でた。]
雨が降りそうだね。 今日はもう帰ろうか。 また、来年ここにくればいい。
[そういいながらも、白い薔薇を一瞥する。 揺れる花弁に目を細め そこに妻の姿を幻視し、苦笑した。]
(126) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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( …………馬鹿だよなあ、 笑ってくれ。クラリッサ。
君の代わりも、彼女の代わりも、 どちらも居はしないのに )
(127) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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[踵を返し歩きだす。 湿った風が墓地を吹きぬけた。 灰色の空からはそろそろ雨の気配がしてくる。
セイルズは空を仰いで、 そこにありもしない天国を見ると そっと、娘の手をとった。]
……ミルフィ。 また今度天気のいい日に、一緒に出かけようか。 随分一緒に買い物してないだろう?
「君」が好きなものを、教えてほしいんだ。
(128) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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( 君ごと愛して全て背負おう。 僕は吸血鬼である前に、君の父親なのだから ) **
(129) さねきち 2019/10/18(Fri) 01時頃
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そうだね。
[灰色の空を見上げてセイルズは小さく頷いた。
季節は巡り、望まないのに はじまりと終わりを連れてくる。
自分の生に自分で幕を下ろせたなら、 きっとこの手を握ることもなかっただろう。 そう思えばこそ、 セイルズはミルフィの手を握ったまま歩く。]
(143) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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……ははは。 遊園地に水族館に、動物園か。 ああ、全部行こう。
[彼女が挙げた場所のなんと子供らしく愛らしいことか。 洒落たレストランでも美しい場所でもなく 家族の思い出がつきものの場所に行きたがる。
そのことにセイルズはどこか安堵して 笑い声をあげた。
それから唇に触れた感触に瞬き、 ……片眉をあげて照れたように頭を掻くが]
(144) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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残念だが知っている。だからパパ以外で。
[意地悪をするようにそんな事を尋ねる。
――そうはいっても、 彼女は明け渡してはくれないかもしれないが。
少し考えてから、ため息をつき、再び口を開いた。]
ミルフィが好きなもの…… 好きなこと、あるいは嫌いなもの。
……食べ物の好き嫌いは知ってるし 僕の授業に来ると眠そうだから 歴史が好きじゃないのも知ってる。
そういう ママの真似じゃないところ……
(145) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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僕は、やはり好きだと思ったから
(146) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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[誰かの代わりだと思わせて、 彼女の心を殺した回数よりも多く 彼女のことを知りたいと思う。
指先を伸ばすと、 セイルズは指の背でミルフィの頬をつついた。]
墓参りで確認したかったんだ。 最近あんまり似てきたから…… ……でも、
ママはママで、君は君だ 君は、ママじゃない。
……だけども君はやっぱり、何があっても僕の家族だ。
[何か吹っ切れたようにセイルズは微笑み ミルフィの手を握る。――留めるように強く]
(147) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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……愛しているよ、ミルフィ。
(148) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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(例えば君が狂気に負けたとしても 小さな祈りも届かないとしても 君の最期まで全てを
……いずれ地獄に落ちるまで )**
(149) さねきち 2019/10/18(Fri) 20時頃
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ああ、全部……全部だよ。
[彼女の手を繋ぎなおす。 思うことを打ち明けて 黙ってしまった娘と、家に向かって歩いていく。
こつりこつりと革靴の底が地面を叩く。
頬につめたい感触が走った。 見上げれば、きら、と 糸がきらめくように雨が降ってくる。]
(178) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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……そうだね。 傘がないから、急いで帰ろうか。
体が冷えてしまう前に。
[雨に降られながらセイルズは手を伸ばす。 ミルフィの頭をそっとなでて、 彼女の目じりから頬までを一度だけ、 指の背でなぞった。
"泣かないで”と言おうとして 何も出ない、不器用な父親めいて。
頭に、顔に、広い背に、雨は降りしきる。]
(179) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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"I'm so happy to be your daddy, my love."
[浮かべるのは穏やかな微笑。 返した言葉は、いつもの決まり文句。
それ以上を語らずに二人だけの帰路を歩く。 大切に娘の手を握ったまま*]
(180) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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―― 独白 ――
[永遠のようで一瞬な 愛しい年月の中で、日に日に、娘を病が蝕んだ。 二重人格、あるいは依存症そのものが ミルフィを支配し、彼女の生活を塗り替えていく。
妻と同じ年嵩で見た目の年齢が止まり 大学の研究を手伝うようになって いつも、隣にいてくれるミルフィ。
僕は何をしてやれるだろう。 父親として、家族として、 そしてこんな僕の生に巻き込んでしまった償いとして どうしてあげられるだろう。
……考えて考えて、考えたあげくに、 僕はやはり、最初に出した結論しか選べなかった。]
(181) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[起こる全てを、彼女の全てとして受け入れ、愛すること。]
(182) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[蠱惑的に誘って、「愛して」と両手を広げてくる>>162 そんな彼女――依存症を愛しながら思う。 依存症に乗っ取られている時の娘は、 妻に似た表情を浮かべながら、いつも寂しそうにしている。
"You'll never ever, never ever, never be happy without me."
そういう言葉が彼女の口からこぼれるたびに、 「もちろん」と笑ってその唇を塞いだ。 彼女の望むまま愛して、血を啜った。 それは例えるなら、死ぬ前の晩餐に似ていた。
気を失うまで抱いて愛しているうちに、時々、 僕は自分が誰を愛して抱いているのか解らなくなってくる。 そういう時必ず、「ミルフィ」と彼女の名を呼んで、 頭を優しく撫でた。
僕自身が誰のためにそう在るのか、 そうすれば思い出せたから。]
(183) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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……ミルフィ。
[気絶してしまった彼女の髪を撫で梳いていると 時折、依存症が抜けた娘が目を覚ますことがあった。 そんなとき決まって、彼女は『あたしも』>>163と 僕にすがり付いてきた。]
ミルフィ。おかえり。 ……しょうがない子だ。
[僕は彼女を抱きしめて、その肌に鼻筋を寄せた。 心が少し入れ替わってしまっているだけで 同じ彼女。同じ体なのに 僕はそんなとき決まって、「おかえり」と口にする]
(184) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[恋しさと苦さ、娘を失いたくないと叫ぶ心を 「しょうがない子だ」と 彼女を受け入れるふりをして誤魔化して、 怖がる娘に微笑みかける。
そういう時の僕がうまく笑えていたか、自信がない。
たぶん、読み聞かせするときのように 声を穏やかに繕っていても 彼女を抱きしめる腕の震えと強引さは、 誤魔化せなかっただろうが。]
(185) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[カレンダーについた赤い丸を見る。 季節は巡る。今年も、あの日がやってくる。]
(186) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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―― 夢 ――
[最近、頻繁に夢を見る。
僕と君は、手を繋いで歩いている。 灰色の空の下を。
君の体には随分と噛み痕が増えて 君を彩る服も化粧も、随分君が好まないものになった。 『ママ』に寄せた格好で、ぎこちなく笑っている。
もう何日も、君は君ではなかったから 久々の外出になる。]
(187) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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今日は、好きなところに連れて行ってあげる。
[僕は笑ってそういう。――動物園、水族館、遊園地。 研究ばかりしていては息が詰まるから 史跡や図書館、博物館以外の場所を どこでもいいよ、と選択肢を示して 君の興味がある場所へ赴く。
少し大きくなりすぎた君を抱き上げることだって 甘いデザートがある店にも行って 弱ってきた胃腸に鞭を打つことだってする。]
沢山遊んだなあ、ミルフィ。
[そうしていくつも思い出を積み上げた後に、 夕暮れを見上げて帰路につく。 僕が作った夕食に、甘すぎる君のデザートを添えて 二人で食卓を囲んだら、 月が窓から覗く頃、僕らは眠る準備をする。]
(188) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[夢の中の僕は、まだ君を抱かない。
ただ古びたアルバムを持ち出して 全てがデジタル化されたこの時代に わざわざ現像して、色の褪せた古い写真を―― 半透明のページに綴じられたそれらを、 君と一緒にたどっていく。 あんな事があったね。こんな事もあった。
そうしてアルバムが最後のページに差し掛かる頃 僕は君の服に手をかけて]
[初めての時のように愛して、]
[――首筋に、深く牙をつきたてた。]
(189) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[真っ白だったシーツが真っ赤に染まっていく。 僕は止めずに尚君を腹に収める。
君の血。君の涙。君の全てを。 君が君でなくなってしまう前に。
君の体はどんどん冷たくなっていく。 かつて抱きかかえて町を歩いた体が 弛緩して、重くなっていく。
僕はずっと君の名前を呼んでいる。 口の中に広がる幸せの味に嗚咽しながら 君を最後まで食べつくして
その瞳を、優しく閉じてあげる。 その髪や頭を撫でてあげる。
愛している、と言いながら。 ――――……………君が狂う前に、]
(190) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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『お目出度い人ね。 ――そんな夢物語、あるわけないじゃない』
(191) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[声が降る。
ざあざあと雨が降っている。 妻が死んだ日と同じ服を着て、 僕は夜のリンディンに立っている。
目の前には、白い幽霊が居る。 真っ白な顔をした妻が僕を見つめ、 妖艶に、そして恨めしげに微笑んでいる。 化けて出て尚、美しくも恐ろしい、白薔薇に似た僕の妻。
降る長雨の中、シャツが体に張り付く。髪が体に張り付く。 ……体が冷えていく。
彼女は雨に打たれながら僕を見据えると、 すっと暗闇の中に姿を消した。 僕は思わず手を伸ばして、一歩、二歩と石畳を踏む。]
(192) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[雨が降っている。
濡れた革靴が黒い水溜りを踏んだ。
雨が降っている。
遠く、サイレンの音を聞いた。
雨が降っている。
散らばり、ひしゃげた、――の体を覗き込んだ。]
(193) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[膝をついて君の名を呼ぶ。 答えは返らない。誰も応えない。 ただ、雨の音だけが聞こえている。
僕はただただ首を横に振って、 眠り姫のように目を瞑る君の赤くなった髪を撫でる。]
…………ねぼすけな子だなあ……
[白く冷たい頬に手を伸ばす。 目覚めのキスになんかならなくとも 笑いながら泣いて君の体を抱き上げた。]
(194) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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解って、いるよ。 許されないことだと。 救いなどないほうが自然だと。
けれど、どうあっても…… 僕は、この子の最期までを
…………すまない
[妻か、君か、誰に謝りたいのかわからなかった。 解らないまま、もう息をしない君の唇を塞ぐ。
――――甘い匂いが鼻をついて、]
(195) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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"... I'm so happy to be your ... ."
(196) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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―― ある誕生日に ――
[――――……]
[今日は仕事がない日だからと、 ベッドに埋もれて惰眠を貪っていると 隣で起き上がる気配がして、少しだけ手を伸ばした。
さらり、流れる髪の柔らかさだけを感じてまた眠る。
なんだか酷い夢>>187をみて再び目を覚ます頃合には、 甘い匂いが階下から立ち込めていて、 僕は例年、行われたそれにひどく安堵しながら、 一定のリズムで階段を降りていった。
投げかけられる言葉に僕は目を見開いて>>169
笑顔を咲かせた愛しい娘と、 精一杯の努力の証が見えるケーキを見て 本当に嬉しくなってしまって、微笑む。]
(197) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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お祝いしてくれるのかい? はは……ありがとう、僕の可愛い娘。
[神に感謝など捧げないが、 いつもどおりの砂糖の多いケーキを 僕は大層喜んで
共に過ごした年だけ増えたロウソクが ケーキを埋め尽くしていくのを 圧巻だな、と思い見つめていた。
覚悟を決めてブラック珈琲を淹れる。 それから、切り分けられたケーキを食べる前に 彼女の名を呼んだ。
顎に指先を添えて、 唇を寄せるのは首元……ではなく、頬。 ついたクリームを思わず舐めたのは さっき見た酷い夢のせいだろう。]
(198) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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クリームがついているから間違えたよ。 [笑って冗談を吐き肩をすくめた。 それから食卓につく。]
……ミルフィ。 今回は砂糖をどれくらい使ったんだい?
[僕は律儀にそんな事を聞く。 もちろん、その後の言葉に繋げるために。]
食べ終わったら、買出しに行こう。 君の紅茶にいれる砂糖がないだろう?
[言いながらちらりと窓の外を見た。 蒼い空。きらきらと差し込む朝日に目を細める。]
(199) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[いずれ終わりがくるとしても いずれ地獄に落ちるとしても……
君がいるなら、きっといつまでも僕は幸せだ。
だから――どうか、 限りある生で、君の命がはじまりから終わりまで 「しあわせでした」と言えますように。
最早祈る神も何もないけれど それだけを願って、甘すぎるケーキを咀嚼した。**]
(200) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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……ははは
[肩を竦めて笑った。>>229 仕方のない人ね、と言われてほっとした。
いつもどおり君は 砂糖を全部使ってしまったというから>>230 僕は先んじて買出しに行くことを提案する。
使い古したデートプランだが、 君は喜んでくれるようだ。
無邪気に苺も買おう、という様子に目を細めて それから2人だけで誕生日を祝う。
もう何回目かもわからない誕生日に 君のケーキを食べられる事を喜びながら 珈琲片手に、君の話を聞いていた。]
(259) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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ああ、そうだね。 行こうか。
おいで、ミルフィ。
[僕はそういって彼女に呼びかけると 昔のようにとはいかないが、 彼女の手をとって歩き出した。
風にさやさやと街路樹の葉が揺れて 石畳には蒼い影が落ちている。 晴れ渡った空の下、僕と君は歩いていく。]
(260) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― 遠い日の思い出 ――
……ミルフィ、疲れちゃったのかい?
[僕は買い物袋を片手に下げて、 とぼとぼと歩みが遅くなってきた君を見下ろした。
無理もない。 積まれた食材を見ただけで目を輝かせはしゃいだし 嬉しそうに砂糖や苺を買い物カゴにつんでは 「あたしが!」と一生懸命お手伝いをしていたから 体力も持たなかったんだろう。]
(261) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[君が買い物カゴを持っていた関係で あんまり重くない買い物袋を 僕は、手から肘に吊り下げる形にして 「おいで」と君に声をかけた。
君の体を抱き上げれば 暮れた空をカラスが飛んでいく。 ぎゅ、と力がこもるのを感じて 胸いっぱい広がる愛しさに、僕は笑った。]
……帰ろう、ミルフィ。 僕らの家へ。
………………眠ってしまったのかい?
(262) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[穏やかな笑い声が聞こえなくなって 君の体温がぽかぽかと暖かくなった頃 僕は静かに、そう尋ねた。
返る答えは、沈黙のYes。
僕はくすくすと笑って、君を抱えたまま家に戻る。 鍵をあけるのに苦労しながら君を落とさないように 寝室のベッドまで運ぶと その丸い額をなでて、口づけた。]
おやすみ、可愛い子。
(263) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― 夕 ――
[ベッドに寝かせた君の髪をなでて、 夕食の用意のために 自室から出ようとしていた頃のことだった。]
……おかえり、ミルフィ。
[僕はうまく笑えていただろうか。
泣きながら抱きついてくる君を 優しく抱きしめ返す。]
(264) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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いいんだ、……いいんだよ。 君がケーキを作ってお祝いしてくれた。 僕には、それだけでも十分。
[ぽん、ぽん、と背中をなでた。 どうにか泣き止んでおくれ、と優しく呼びかけた。
君は夢の内容を話す。 遠い遠い昔の、六歳の頃の夢を見た、と。
――……ああ、それは、もしかしたら 僕らが、……もしかしたらだけれど 一番幸せな時期の、思い出かもしれないな。
壁にかけられた古い似顔絵を見て 僕はそう思って苦い味を飲み込むのだけれど>>243 次の瞬間には、君の呼びかけに呼び戻されている。]
(265) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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ミルフィ。 ……僕も、僕もね 君が僕の娘で、とても幸せだ。
だから……………
[繋ぎとめて、と言われて僕は少しだけ言いよどむ。 セックスをして、吸血してしまえば きっとまた君の病は進行する。
君を失うのが恐ろしくて、 僕は「駄目だ」といいそうになる。 「どこにもいかせたくないんだ」と縋りそうになる。]
(266) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[……でも、君はそれを望んでいないから。]
(267) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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…………
[僕は君の体を強く抱きしめる。 そうして優しくベッドに押し倒した。]
……繋ぎとめるよ。
君がもしも……もしも…… ”あの子”に負けて消えてしまいそうになったら
その前に、パパのお腹に隠してあげる。 大丈夫だよ、ミルフィ。泣かないでおくれ。
(268) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[僕は、ちゃんといつもどおり笑えていたかい? ……そうだね、やっぱり、自信がないな。
唇の震えまで抑えて、人差し指の背で君の涙を拭う。 そして君に読み聞かせをするときのように 優しく笑って、唇にキスをする。]
(269) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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"I'm so happy to be your daddy, my love."
(270) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[いつか眠りにつく君が、 穏やかに笑えていますように。
願いながら、僕は君を愛すだろう。 愛によって全てが終わる日まで。
……その血も。涙も。笑顔も、]
( ”You are mine, my love." )
[――――いずれは、そう胸を張って言おう。
孤独に至る病を抱えながら 僕らは本当の家族になる。*]
(271) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― ――
[曇天に黒いカラスが舞っていた。
クリスマスが近づく町はどこもかしこも飾り立てられている。にも関わらず、天気のせいか、降り始めた雨のせいか、どこか灰色だった。
町を歩く人間たちは皆家族や恋人を連れている。 冷たい空気を、互いの微笑みで暖めて灰色の町並みを歩いていく。
その人ごみの中で、黒いコートを羽織った男があたりを見渡した。 足しげく通った店にも、友人が住んでいた家にも、知った顔の1つもないことを理解すると、納得するように歩いていく。]
(272) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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「ママ、パパ、サンタクロースが来たら ぼくあれが欲しいなあ」
「いい子にしてたらきっとくれるわ」
「おいおい、いつもいい子にしてるじゃないか、なあ? クリスマスを待ちなさい」
「え――、僕待ちきれ……、わ、ごめんなさい!」
(273) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[町を歩く親子連れがプレゼントについて語り合っている。
はしゃいだ少年が父親に振り返ろうとして、前方を歩いていた男にぶつかり、咄嗟に謝罪を口にした。
男は黙って微笑むと、彼の頭からずり落ちた帽子を被せなおして、何かを呼びかけた。聞き取れなかった少年がぱちくりと瞬きをする。 ――直後。]
「……、誰と喋ってるの?」
「ほら、そんなにふらふらしてたら危ないぞ」
「えっ、――うん、……」
[両親の声が聞こえ、少年は不思議そうに首をかしげた。 そうする間にも、黒いコートの男は雑踏に消えていく。広い背を雨に濡らしながら、家族連れの中をひとりで。]
(274) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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「雨が降ってきたわ。――さあ、帰りましょう。 私達の家へ」
「うん!」
[微笑を交わし、人間たちはそれぞれの帰路につく。
結露に曇った窓の向こう。 クリスマスツリーを室内に飾り、 暖かな料理がテーブルに並ぶ場所へ。
それら全てを祝うように、 あるいは厳かに祈るように
柔らかな雨の中で、リンディンの鐘が鳴っていた。]**
(275) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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