272 【R18RP】十一月と、蝶が奏でる前奏曲
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――こころの部屋――
[意識がふっと浮上した直後に 昨日一日のことを思い出す。
大丈夫かな。ちゃんと「今日」にいるかな。 不安で目を開けたくなくてそのまま転がれば 誰かにぺしぺしと肩を叩かれた。]
あっ、お、おはよ! こころ! もう起きる時間? ありがと〜。
[もう着替えたこころに急かされながら ボーダーのニットとジーンズを履く。 髪を結うのはもうちょっとあとでいいや。]
(26) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[大和はもう起きてるのかな。 昨日はちゃんと寝れたかな。 ……うん、思い出してしまったね?]
ううう……顔合わせにくい……。
[ぼふっと荷物に顔を埋めて うんうん唸ってたらこころが戻って来る。 とっても怪訝な顔をされたけれども そうだよね、私も多分そーなるよ。]
(27) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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――ダイニング――
[朝食の準備が終わって食べだす頃に ようやく大和が顔を出す。>>25
ちょっと眠そうな顔はかわいいな〜。 ……いやいやいや、ちょっと待って私。 ううん、「かわいい」はセーフかな?]
お、おはよ。
[ぐるぐる考える私の横から こころが大和の恰好に注意をしている。 大和らしくていいんじゃないかなあ。]
――……っ、
[恰好を見ていたら視線が合って ドキッと心臓が鳴りだしちゃったから 慌てて顔を伏せて、トーストを口に入れた。]
(28) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[結局、朝ご飯の間は 昨日の夕食の時以上に大和と話せなかった。
というか! ちらちら! 見ないで欲しい! 視線が何度かあってそのたびに顔が赤くなりそうで 頑張ってかわそうとしてるのに! なんで何度も視線があっちゃうのかな!]
たっ、食べ終えたので 片づけ手伝いますね!
[普段の1.5倍ぐらいのスピードで詰め込んで 片づけを手伝うのを名目にして席を立つけど どうしても大和の方を見てしまった。
……何度も視線が合うのは 私が見てるせいだってわかってるよ。 顔を、手を、見るたびに 昨日言われたことを思いだしちゃうの。>>1:324]
(29) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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――こころの部屋――
[朝食後、もう一度どこを見るか話していれば こころがたくさん買い物したがるものだから。]
もー、荷物重くなっちゃうよ。 え? 大和が荷物持ちだから平気?
[確かに三人で買い物に行くと 重いものは大和が持ってくれることが多いけど。
大和もどうして私たちについてきてくれるんだろう。 友達とか、もっと、そう、彼女とか……。
大和に彼女がいたっていなくたって 私には全然関係のないことなんだけどね! 彼女がいるのに私たちの買い物に付き合わされるのは ほら、かわいそうかなって!]
(30) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[黙った私をこころがつつく。 これぐらいなら世間話…だよね? 自問自答しながら、ちょっと声を落とした。]
大和、ついてきてくれるけど。 一緒に行きたい彼女とかいないのかなぁ……。
[つんつん、としてたこころが手を止めて ぐいんって私に顔を近づけてきた。 近いよ!
思わず背をのけぞらせたけれど こころの手に頬を掴まれぐにぐにされる。]
ちょ、いひなりにゃにゃよ!
[むにーんと頬をもう一度伸ばされてから 満足したのかこころは笑顔になって もう一回言って? と言ってきた。 なんで〜!」
(31) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[繰り返すとすごくわざとらしく聞こえる私の質問に こころはにっこり笑って、もったいぶって返す。]
え、いるの? ……いないの、もー。
[変にためるからドキドキしちゃったじゃない。 いない、って言われてほっとしたのは 気がつかない振りをしたい。させて。]
じゃあ、ほら、好きな人とか…… ……えっ。 好きな人、いるの。
[好きな人ぐらい居るかもって思ってたのに 具体的なことは全然考えていなかったの。 だから「居るんだよ」ってこころに言われて 強張った声が出てしまった。]
(32) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[誰なの、って聞きたいけど。 そんなの聞いてどうしようっていうんだろう。
だって大和は幼馴染だし 私が護ってあげる可愛い弟分だし
それ以上なんて、きっと大和も困るよ。 だいたい好きな子がいるんだから。
――やだな。 知らない子に それも多分年下に 嫉妬なんてしたくないな。*]
(33) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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――玄関――
[髪の毛はこころがまとめてくれて 何時もの位置で結んだところに 白いぽんぽんがついた髪飾りを貸してくれた。
ポシェットの中に必要な物を入れて こころと一緒に玄関先へ行く。 履くのは足にピッタリあうスニーカーで 何かあったらすぐに走れるように。]
こころ、大和はまだ? バスの時間が、……
[玄関に出てきた大和は 何時もと全然違う格好で>>0:209 なんだか――とても、かっこよく見て 目を丸くして凝視しちゃったんだけど バレていませんように。いませんように。*]
(34) 2019/11/07(Thu) 23時頃
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[紺の襟シャツにオフホワイトのセーター 何時ものジーンズじゃなくてスラックス。
パーカーにジーンズの大和はどうしちゃったの。 こんなかっこいい格好しなかったじゃない。
……誰のためにそろえた格好なのかな。 そんな気合が入った格好 今日、着ちゃっていいのかな。]
ば、バスは大丈夫だよ。 寝癖も、だいじょうぶっ!
[首をかしげている大和は>>40 幸いそれ以上は突っ込んでくることもなく 先にバス停に向かっていく。]
(42) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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[時間はちょっと余裕がなかったので 慌ててバスに乗って、こころの隣に座る。>>40 大和の隣は無理ですよ。ナイナイ。
大和が後ろに座って姿がみえなくなったので ようやく平常心を取り戻せたのに こころが体を寄せてきて小声で話しかけてくる。
「今日の恰好、かっこいいでしょ?」
そう聞かれてしまえばさっきの姿を思いだして じんわり顔が熱くなった気がした。]
かっ…かっ、かっこいいよ。 こころが選んだの?
[朝のやり取りを思い出していれば にやにや笑っているこころにまたツンツンされて ぼそっとつぶやかれた言葉に私は思わず突っ伏した。 本人に言うのはハードルたかいよぉ!]
(43) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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――ショッピングモール――
[モールはもう人でごった返していて はぐれないように私はこころの手をつなぐ。
バスから降りて大和と合流して どのお店から回ろうか打ち合わせてたけど 何度か大和を見ても視線は合わなかった。
……どころかそらされた。露骨にそらされた。>>41 やっぱり朝、私が避けちゃったからかな。 昨日こころにも言われたのにな。]
あ、あのね大和 先にこころの靴をみていいかな。
[やっぱり視線は合わないままで。 みぞおちのあたりが捕まれるような 胸にぽっかり穴が開いたような 上手く言えない気持ちになった。]
(44) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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[大和は好きな子がいるんだよ。 私に付き合ってくれているのは 幼馴染で、こころの友達だからだよ。]
[寂しい時は我慢しなくていいって言ったよ。 手でも肩でも胸でも貸してくれるって。 ……いま、ちょっと寂しいよ。]
(45) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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[こころがここにいてくれて 大和も記憶の中の通りに笑ってくれていて それで十分、十二分なはずなのに。
私はどんどん欲張りになってしまって 自分勝手なことばかり考えてしまう。
ああ、でも――もうちょっと 可愛い恰好で来てたらよかったな、なんて。
……ううん、それどころじゃないんだって。 ここは人が多いから安全だとは思うけど 何が起きるかわからないんだから。 しっかりしろ私。気を抜くな私。]
(46) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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[散々試着を繰り返しているこころは さっきから何度も上着をかえて鏡の前に立っている。
さっき見た靴といいスカートといい なんだかんだ一番楽しんでいそうで 嬉しくてふふふって笑っていたら 大和が近くに立っていた。
ちらり視線を向ければ視線はそらされなかったかな。 たまたまなのか、違うのかはわからないけど 視線が合ったってことが私に勇気をくれる。]
あのね、大和。
[周囲の騒がしさにかき消されないように 私はもうちょっとだけ大和に近づいた。]
(47) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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今日の大和、かっこいい。ね。
[――……言ったらとても恥ずかしくなって カァッと顔が熱くなるのを自覚しながら 慌てて顔を伏せたけど、 赤い耳はきっと見えている。**]
(48) 2019/11/08(Fri) 00時頃
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七星拳 ナツミは、メモを貼った。
2019/11/08(Fri) 00時半頃
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[真っ赤であろう顔を隠したくてしかたない。 でも隠したら顔が赤いのをばらしてしまうから 大和に気がつかれていないことを祈りながら 必死に視線を床に固定していた。
だって顔を上げて大和をみちゃったら もう絶対にごまかせないじゃない。 だからダメダメ。このまま。
…だって何も大和が言わないんだもん。 変だって思われたのかな。思ったよね。 あんまりかっこいいね!なんて言ってた記憶はないし。]
(137) 2019/11/08(Fri) 22時頃
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[こころが私を呼んでくれないかな〜! そうしたら不自然にならずに離れられるのに。 なんで声かけないのよ〜。 いつもすぐに「どっちがいいかな?」って聞くのに。
心の中でやつあたりをしていたら ぼそっと大和の返事が返ってきた。>>131]
えっ やっ、あの
[そう言う返し方をされると思っていなくて (どういう返しも想定していなかったんだけど) 何にも返事が思いつかない。
今の大和にはパーカーにジーンズが似合うと思うし 大人になった大和は今日みたいな恰好はすごく似合うし 別に同じ格好をした他人がかっこいいとは思わないし…!
ねえ、これって恰好の好みになってる!? 返事としておかしくない?ダメ!?]
(138) 2019/11/08(Fri) 22時頃
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[軽くパニックになった私は 大和が別の話題を出してくれたのに気づかず>>132 バッ!と顔を上げて勢いのまま返してしまう。
私は完全に忘れていたんだな。 大人になったつもりで忘れていたけど 私は考えたことぜんぜん隠せないタイプだよ。]
(139) 2019/11/08(Fri) 22時頃
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や、大和ならなんでも好きだよ!
(140) 2019/11/08(Fri) 22時頃
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[口から飛び出した言葉にびっくりしたのは 誰よりなにより私自身だった。
好きって。ううん間違ってはない。ないよ。 恰好が。恰好がだよ。主語大事だね! そうそう、主語がなかっただけ。
あわあわしながら、必死に誤魔化しを試みたけど]
………ぃ、ゃ まって 違 いや違わないけど ちがう! 恰好が! 大和ならどんな格好も好きだなって… ……ぅぅ……。
[――…逆効果でしたね。
もう喋らせたくない口をふさいで、 私はその場にしゃがみ込んでしまった。*]
(141) 2019/11/08(Fri) 22時頃
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[ううう、消えたい。 かっこいいなって、ときめいただけなんです。
このころの大和はちゃんと傍にいてくれて それってとっても私にとって嬉しかったなって。 改めて実感しちゃっただけなんです。
大和の影響って私にはとても大きかったなって だから離れたら寂しくなったんだなって 気がついただけなんです。
ちょっと不安定になっているところで 物理的に体温とか感じちゃって 弱ってる心がぐらついただけなの!
そう、そのはず、そのはず。 私が大和を 好き なんて そんな]
(159) 2019/11/08(Fri) 23時半頃
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[……そうなんだけど!
今さら過ぎる新しい気持ちに キャパシティーなんてとっくにオーバーだよ!
今まで付き合ったことのある人たちとは 向うからアプローチされて流されるばかりで 嫌いだったわけじゃないというか 私なりに好きだったつもりだったけど。
星見菜摘 24歳(精神年齢) こんなふうになるのは初めてです。]
(160) 2019/11/08(Fri) 23時半頃
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[脳内で変なナレーションを流して 必死に現実逃避をしていたら 腕をぐいっと引っ張られる。>>157
肩が抜けそうなぐらい強く引っ張られたけど 私の腕を引っ張る大和は足早で あっけにとられている間にあっという間に店の外。
――外、とはいえさっきのお店の中は 大きなガラス張りの窓のおかげで丸見えだけど。 通路を行きかう人たちの姿はなくて 冷たい空気が赤くなった頬を撫でていく。]
だ、だいじょうぶ……。
[離された手をさっと背中にかくしてから ちょっと痺れかけた指先を動かす。]
(161) 2019/11/08(Fri) 23時半頃
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[どう言い訳しよう。いや、さすがに無理では。 きっと怒ってるよね。力が強かったし。 そもそも大和には好きな子がいるのに 私の気持ちとか知っちゃったらめんどくさいよね。
やだなあ、これで避けられちゃうのかなあ。 前もあんなに寂しかったのに もっと寂しい気持ちになっちゃうのかな。
想像してじんわり鼻の奥が痛くなり 慌ててぶんぶん首を左右に振っていると 私の前に立ったままの大和に話しかけられる。>>158]
(162) 2019/11/08(Fri) 23時半頃
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[大和の声は怒っていそうではなくて おそるおそる彼の方を見る。
同じぐらいの背丈の彼はちゃんと私の方を見て 真剣な声色で、私の言葉の真意を確認してきた。>>158
これはこのままちゃんと伝えて 玉砕しろって思し召しなのかな〜……。 大和がはっきりさせたがるのも、よくわかる。 なにせ大和には好きな子がいるわけで……ん?]
調子に乗るって…?
[大和の言葉の意味が今一つわからず 私は首をかしげてしまう。
でも、そう言うってことは めんどくさいとまでは思われてないのかな…?*]
(163) 2019/11/08(Fri) 23時半頃
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[避けられちゃうのも距離をとられちゃうのも嫌だな。 私のわがままなのはわかっているのだけど 大和が笑っている近くには居たいな。
そう思いながら大和の答えを待てば なんだか複雑な顔をしていた彼が すすっと視線を横に逸らした。>>176
これ、やっぱり困らせてるよね。 可能なら全部忘れてほしい。]
(183) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[ぎゅっと両眼を閉じかけた私は 予想外の言葉を聞いてぱっちり目を開ける。>>176
う、うん? えっと? 確かに大和は弟だと思ってたけど 今は男の子なんだってわかっているよ。>>1:331
ちゃんと男子なんだなって そう…見て…いるので……]
あっ、う、う、ん。 み、みてるよ。あの。
[その前の発言とつなげれば 大和のいわんとすることがわかった、きがして 私は再びボフッと顔を真っ赤にした。]
(184) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[横に流れてしまっていた視線は いまは私を見てくれているかな。]
そんなこと言うと 私こそちょーしにのっちゃうよ……。
[昨日の夜のことといい ――だって専用って言ったから。
ひょっとして「大和の好きな人」って もしかして、もしかするのかなって ドキドキするのを止められなくて。
いまなら昨日みたいに手を握れるかなと そっと右手を差し出しかけて]
(185) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[大和が突然声を張り上げた先には 大きな袋を抱えたこころがいた。>>177
このタイミングで……! と思ったけれど やっぱり、いろんな意味で助かった〜……。]
こころ、今月は貯金するんじゃなかったの? 先月も散財したって言ってたじゃん!
[私もちょっぴり大きな声で言って こころのほうに歩いて行こうとすれば 大和がぼそりと、心臓に悪いことを言う。>>181]
う、うん、帰り……。
[帰り、と言われて茹ってた頭がちょっと冷静になった。 私の目的を忘れちゃだめだ。 こころを助けなきゃいけないんだから。]
(186) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[にまにま笑っているこころは、袋を大和に押し付けて 私の手をぎゅっと握ってきた。
至近距離で顔を覗き込んでから 「乙女の顔だね♪」なんて言われてしまったので たぶんぜんぶばれてる。すごい。こころすごい。]
(187) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[こころを引っ張ってモールの中に戻れば みんなで代わる代わるいろんなお店をみたかな。
ふと目についたのはショーケースの上に飾ってある 細い鎖に金属の星がついているネックレス。>>0:176
なんだか強い既視感があったけど どこだったのか全然覚えてないなあ……。
可愛いけど社会人の私ならまだしも 高校生が気軽に買う値段じゃなかったから こころが近くのイヤリングを見てる間だけ眺めて そのまま立ち去った。**]
(188) 2019/11/09(Sat) 01時頃
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[私がこのショッピングモールにいる間に こころが、事件に巻き込まれていたから あの後、私はここには来づらくなっていた。
でもこころと手を繋いで回るのは とても、とても楽しくて。 それでも事件が起きたと思われる時間帯まで 残るのは絶対に避けようと こまめに時間は確認していた。
こころが、ここは外せない!って主張した パンケーキのお店の列に並ぶ間 さっと大和がいなくなって>>195 いやな予感がしたころにひょっこり戻ったから やっぱりモール内は大丈夫なんだなって。
――私は自分の勘を軽んじてしまったんだ。]
(271) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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――逢魔時――
[こんなはずじゃなかったって こころの手を握りならが私は後悔していた。
こころが乗ろうとしていたと思われる時間より ずいぶん早くバスの列には並んだんだよ。 でも思っていたよりずっと混んでいて>>197 周りも何となくイライラしているような空気だった。
……バス停、こんなに混んでいたっけ? 例えば――本来別々だった私たちが三人で来たように 何かが少しずつ食い違って 誰かの違う未来の結果だったのかもしれないけど。]
こころ、離れないでね。 一緒に帰るんだからね。
[何度も何度も念を押す私にこころは笑って はぐれないでね、って手を繋ぎなおしてくれた。]
(272) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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[二人が「次はここに行こう」とか 「未来」の話を語っているけれど 私はうまく会話の中に入れないまま 周囲に警戒し続けるのにも疲れてきたころ、
私の手を握っていたこころの手が緩む。]
まって! だめ!!
[路地の方に視線を向けていたこころが ふらりと列から離れようとしたから 私は理由を聞かずその手を引き止める。
ぶわって沸いてきた冷や汗が背中を伝って 指先まで血が冷えた。]
(273) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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どこ行くの、列から出ちゃうよ!
[ダメだよ、と繰り返せばこころは困った顔をして 体調が悪そうな人がいるから、と教えてくれた。>>198 路地の方にふらふら歩いていく人は 壁にもたれかかって確かに体調が悪そう。
心配そうなこころだったけれど 私が手を握っているから路地へは行かない。 それでも冷や汗はなくならないけど こころが離れないなら、きっと、大丈夫。]
ね、大丈夫だってば。
[助けたいって思ってるのはわかるけど でも、それでバスに乗り遅れたり 犯人に捕まってしまったのかもしれない。
それなら行かせるわけにはいかない。]
(274) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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バス逃しちゃうし、きっとお店の人が気がつくよ。 バスに乗るとき運転手さんに言ってもいいし
[代案を必死に伝えていれば 大和がさっと荷物を置いて走っていってしまう。>>198
そうか、私が大和にこころを頼んで 様子を見に行ってもよかったな。 そう思いながら大和の背中を見送って――]
(275) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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[――ずっと、不思議だったの。
どうして路地の奥が事件現場だったのかなって。
警察も私たちも連れていかれたのだろうって (だってあそこには何もないから) そう思っていたし、私も今までそう思っていたけど。
こころを連れ去った犯人の目撃者がいなくて 事件の解決はできなかった――けれど。
もしかして こころは 自分から 事件現場に向かったの?]
(276) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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[それなら いま
そっちへ向かっている 大和は――……?]
(277) 2019/11/09(Sat) 20時半頃
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[持っていた荷物をこころに押し付ける。 目を丸くしたこころの肩を掴んだ。]
ここで! 絶対ここに居て! 追いかけてきちゃだめ!
[見たことがないであろう私の剣幕に こころは何を思ったのかな。 でも今は説明なんてできなかった。]
こころ、こころ。
[最後に抱きしめて、だいすきだよって。 本当はそう言いたかったけれど それは私の自己満足でしかないよね。]
(278) 2019/11/09(Sat) 21時頃
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[私は身をひるがえして人ごみを飛び越え 最短距離で大和の後を追う。
はやく、はやく、もっと早く。 部活をしっかりしていたこの体は 七年後の私よりずっとずっと足が速い。
だから――私は間に合ったかもしれないし 思い至るのが遅すぎて 間に合わなかったかもしれないけど。]
……大和ッ!
[叫んだ声に、彼は反応しただろうか。*]
(279) 2019/11/09(Sat) 21時頃
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[私の知っている「事件現場」を通り過ぎる。 そのさらに向うには当時は空地があったはず。
路地を通り抜ければ薄暗い空地に 大和の背中が見えた。>>286 まだ大丈夫、と安心したのもあってか 私は彼の注意を削ぐという迂闊な行動をしてしまう。
その結果――その結果がこれだ。 ふらふら動く謎の人物が何かを大和の肩に刺した。>>287]
(301) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[ ――こいつだ。 こいつが、こころを。
そして今、大和を。 ]
(302) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[ぶわっと全身の血が泡立った。 拳を強く握りこんでから、私は駆け出す。
新たな乱入者に気がついたのか、人影は私の方を向いた。 フードの内側には妙なマスクをかぶっているけど>>284 そんなの今の私にはどうでもいい。]
おっ、ま、え、が‼
[腹の底から叫びながら私は駆ける。
人影につかみかかろうとするけど さすがに直線的すぎたのか 相手は数歩ひいて私の攻撃を避けた。
何とか片手だけでも あるいは大和を刺した武器だけでも取り上げようと 私は欲張って手を伸ばしたのが徒になる。]
(303) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[突っ込んだ私はそれなりに速度があったから 綺麗にかわされて空中を半回転し 受け身もうまく取れず地面にたたきつけられた。
直接頭を打つのだけは何とか避けられたけど 肩を打ったのか指先まで強く痺れて 立ち上がりが遅れてしまう。
それでも何とかあがいて体を回そうとすれば 焼けるような痛みが左腕に走る。]
ぐっ… ――っ、ぁ゛っ……!
[ぐり、と何かが肉の中に押し込まれる。 目の前が真っ赤になったけれど 大丈夫、耐えられない痛みじゃない、大丈夫。]
(304) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[私は右腕を伸ばして私に刺さっている武器を それを持っている先の相手の腕を掴む。 ぎょっとして身を引いてももう遅い。
人に刺しても自分の腕を掴まれない距離が欲しければ 槍でも持ってくるしかないんだからね!!]
………スゥ
[握力も腕力もそれほどいらない 大事なのは重心の移動。それだけだ。]
(305) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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――ハッ!!
[呼吸に合わせ、腕を掴んだまま地面にたたきつける。 私の体重はそれほどではないだろうけど 自重でそれなりにダメージにはなったはず。
すぐさま手首をひねって武器を奪おうとして 私の腕に刺さりながら抜け落ちていく武器を 私は確かに自分の目で見てしまう。
――ナイフじゃない。錐のような武器でもない。 これは――細長い まるで 爪みたいな……]
(306) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[……暗器ってこんなやつだっけ? 見覚えのないものに混乱しながら 手から叩き落せないことに私は呆然として。
――向うが跳ね除けて走り去ろうとすれば それは許してしまうかもしれない。*]
(307) 2019/11/09(Sat) 23時頃
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[完全に関節を抑え込んでいたはずなのに ありえないほどの膂力でもって 私の体は押し返される。
ブン!と振り回される武器が目の前に迫っても 上手く動けなかった私は何かに引っ張られて その場でぐるっと回転した。]
――ぅ、っ。や、大和! 大和、大和、大丈夫!?
[起き上がる頃にはもう人影はいなくて 追いかけたい気持ちもあったけれど 私の腕を掴んだものは明らかにぬめりを帯びていて。]
(329) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[薄暗いとはいえ明かりがある場所だから 私の目は怪我をしていないはずの私の腕が 真っ赤に染まっているのに気がついてしまう。
私の血じゃなくて――大和の血だ。>>309]
どこっ、どこ刺されたの!? まって、やだよ、大和、ねぇ……!
[私はこころが笑っている未来が欲しかったの。 何だってするって思っていた。 どんな犠牲だって払っていいと思っていた。>>0:271
でもそれは「私は」だ。 犠牲を払うのは、私だ。私であるべきだった。]
(330) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[震える手で大和の怪我を確認しようとして 彼がつぶやいた一言に青ざめる。>>312
あんな人がバスの列に突っ込んだら そこに――そこに、こころがいるのに。 動くなって私が言ったから、そのままそこに]
(331) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[ヒュッと喉が鳴って私は立ち上がろうとしたけれど うっかり怪我をした腕を支えにしようとして 今さらの激痛に顔をしかめながら膝をつく。
私を引き留めるように電話の音が鳴って 大和が出たから必死に袖を引いたけれど 変わることもスピーカーにしてくれることもなく 彼が話をする横でじりじり喉が焼ける心地になる。
こころを助けたかったの。 だからって大和が代わりになれなんて思ってない。 でも――いまは、とにかく無事でいて欲しい。]
(332) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[しばらく黙って通話をしていた大和は ゆっくり私のほうをみて、しっかり頷く。
『ちょっと菜摘どうしたの!?』
スピーカーから聞こえてきた声に 私はへにゃりとその場に座り込みそうになる。]
こ、こころ、大丈夫ね、何ともないね? お店の人に急いで警察と救急車、呼んでって頼んで 急いでって!
[何とかそれだけ口にできたけれど 私もそんなにうまく話せたわけじゃなかった。 それより隣でぐったりして痛そうにしている 大和の方が気になってしまう。>>315]
(333) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[しゃがんで頬とか触ってみるけど 血の気はちゃんとあるし意識もしっかりしてるし 流れる血がどんどん広がっていることもなくて むしろほとんど止まっているようだった。
大丈夫、って聞いたら 全然違う答えが返って来る。>>316]
なんで。逃げるわけないじゃない。
[押し当てられた頭をそのまま抱き寄せて 私は大和の呼吸を感じながら目を閉じる。]
……違うの、違うんだよ大和。 謝るのは私の方なの。
[やっぱりモールには来るべきじゃなかったし せめて大和には打ち明けておくべきだったし もっと注意するべきだったよね。]
(334) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[上手くやればもっと、どうにかできたのかな。 大和に怖い思いや痛い思いをさせず 上手に全部なかったことにできたかも。
ああ、それでも。]
ねえ、大和。
[どこからか音が聞こえる。 それは私が昨日聞いた音。>>0:271
帰り道に言うって言ってくれた「続き」は>>181 どうやら間に合わないみたい。 だから私は大和の髪にそっと鼻を触れさせる。 血の臭いの向うに、ちゃんと大和の匂いがして 小さく吸い込めばなんか安心できた。
うん、大丈夫。]
(335) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[ここから先はどうなるのか私は知らない。 私がどうなるのか、私はよくわかってないの。
だからもしかしたら明日の私は 今の私ではないかもしれないし それどころか消えてしまうのかもしれないけど。
それでいいんだ。 だって私は目的を達成したんだから。]
(336) 2019/11/10(Sun) 00時半頃
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[もしも今の私じゃなくなったら 私が大和のことを好きなこと 忘れちゃってるかもしれないけど。
――そんなのたいした問題じゃないよ。 だって私は、あなたが傍に居てくれるなら
何度でもあなたを好きになるから。]
(337) 2019/11/10(Sun) 01時頃
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[もし大和がすぐに返事をくれていても 私の耳に届くことはなかった。
かわりに世界が止まったようになって 昨日会った男の人が もう一度私の前に立っていた。>>308
その人は特に感情を見せることもなく ただ私に、一つ問いかけをする。
「戻った暮らしはどうでしたか?」
私はにっこりと、笑ってみせた。**]
(338) 2019/11/10(Sun) 01時頃
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