88 めざせリア充村3
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……わたし…が……願った……から。
[おかえりを言いたかった。それだけ。
その願いは確かに叶って、
そしてその願いが「今」の「研究所」を生み出した。]
………みぃちゃんは…わるくない。
[落としたことか、実験のことか。
“あの時”あの場にいなかったことか。
ぺたりと頬に手をつけて。
笑ったように、見えただろうか。]
[小さな手が頬に触れる。
これは紛い物の手。
偽物の手。
それでも、それは伸ばされる。]
……俺も、共犯だろう……?
[掠れた声で答えながら。
感情の浮かばないポプラの顔を覗き込む。]
[そうやって守られて。
あの時だって彼女はそう言った。
自分がいれば止めれただろうに、と
そう後悔する己に。彼女はそう言って。
それから、何度も言い聞かせるように。
まるでそれが事実であるかのように。
本当は、彼女の方こそ何も悪くないのに。]
……ぃ
[ギリと奥場を噛む。
細いポプラの手を掴む。]
[いっそ折ってやろうか。
もう、心を揺らされないように。
彼女と同じ色の髪も
補色になっている瞳も
ぜんぶ。目の前から消してしまったら。
――きっと、何も考えずに狂えそう。]
[腕にかかる圧力を検知する。
人の力でどうこうできる強度ではないが、
内部で鳴る警告音は無視をして。]
……みぃちゃん。
[ただ、紡ぐ。
今も昔も、同じように。]
……なあ、教えてくれ。
お前はどっちなんだ?
――カリュクスなのか。違うのか。
元に戻るのか。
俺はいつまで待てばいい?
俺が死ぬ前にお前は、目を覚ますのか……?
[聞いてはいけないことが。
ぽろぽろと口から零れる。
危うすぎる均衡。
よくもこんな長い年月もったものだ。]
――「みいちゃん」と呼んでいいのはカリュクスだけだ。
[指先を、ポプラの細い喉に。
これを壊したところで彼女は
死ぬことなんて絶対にないだろうけど。
この長い年月で己の心に根を生やした
この存在を心から消し去ることは出来るだろう。]
――答えるな。
だから代わりに、そう呼ぶな。
[ポプラにはそう告げる。
まだこれを壊すわけにはいかなかったから。]
……俺は
[腕をつかむ力を緩めて
喉に当てた指も離して。
いつものようにポプラを抱き上げて。
ただし声の温度は低く。]
俺は、籠の鳥でよかった。
カリュクスを失うぐらいなら――
[ただもう一度あの紅を見つめたいだけなのに。
その望みはこんなにも――遠い。]
[答えようと開いた喉に指先が添えられる。
力はほとんど込められていない。
悲鳴のように突きつけられた通牒に、
機械の顔の内側で嘲った。
あの時の願いは、叶えてはいけなかったもの。
この擬体は、望んではいけなかったもの。
一番望んでほしかった人に、
誰よりも何よりも、疎まれている。]
[抱えられ、ミナカタの望むとおりに無言のまま。
腕の中で低い呟きを聞く。
彼の望みはまだ、叶えられなくて。
これからも、叶えられるかは知れなくて。
自分の望みは悪循環ばかりを招いて。
それでも、自分はまだ動いている。
階段をのぼれば、
地下への入口ともども、揺れる感情に蓋をする。]
[片手で抱きかかえれる身体。
本物の彼女よりずっと、ずっと軽い。
それでも迎えてくれてうれしかった。
同じ言葉で「おかえり」をくれて
本当は、よくできた紛い物などと思っていない。
カプセルの中ずっと目覚めない彼女のほうが
今では人形のように思えてしまう。
嗚呼――そんなことを言ってしまったら
ポプラの中に居るカリュクスをどれだけ傷つけるだろうか。
擬体の中にまで入って待っててくれた男は
もう己を待ってもいないし、必要ともしておらず
作り物の中にいる存在を]
[だから名前を呼ばない。
呼べば本当にカリュクスが過去になってしまう。
それを何より恐れて
その後に彼女が目覚めることを何より恐れて
愛しく――憎い擬体を抱えて
階段を上って地上へと。]
――な、ぁ
[掠れた声での囁きは。
絶対にポプラの耳でも拾えないだろう。]
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― 実験室 ―
[実験室へと入れば、 そこに集っている子供達を見て。 外見上は、ほぼ変わらない姿に安堵する。 見えない部分での変化はきっとあるのだろうが。
口はまだ閉じたまま。 最後に目覚めた二人にかかるミナカタの声>>20を聞く。]
(21) あけひー 2013/07/06(Sat) 15時半頃
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[ミナカタに抱かれたまま、 ソフィアに頭を撫でられる>>27。
頑張ったねというように、 できたらその頭も撫でようと。
チアキの様子がおかしいことには気づいたが、 一時的な混乱によるものか恒常的なものかはまだ判ぜず。 今はただ静かに子供達のやりとりを見守る。]
(35) あけひー 2013/07/07(Sun) 01時頃
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[投げられた問い>>77に翠を細める。]
……そう…よ。 [こくり、と頷きひとつで全てを肯定する。 反抗もせずに諾々とあの悪夢を作ったのは事実で、 弁明も謝罪も自らには相応しくない。 この場にいる誰にでも、自分を恨み、壊す権利はある。
続いてどんな言葉を向けられたとしても、 視線は外さないつもりでライジを見上げた。]
(78) あけひー 2013/07/07(Sun) 17時頃
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[途中で全部切り落としたくなる程度には 悪趣味なものだったかと。
それが一番ずるくて卑怯だと分かっていても、 問いにはただ沈黙を返すしかなく。
戻ってきたのは、軽い爪弾きだった。 少し頭を後ろにのけぞらせて。 それが区切りと分かれば、頭を垂れただろう。]
(80) あけひー 2013/07/07(Sun) 17時半頃
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― いつかの未来 ―
[あの実験の後あまり人前に出なくなったのは、 被験者達のカウンセリングを行う上で 悪影響を与える可能性があるという上の判断と同時に、 もうひとつ別の意味も持っていた。
「悪夢」の実験に関わった者達がいなくなり、 新しい被験者が送り込まれ。 また、平坦で陰鬱な日々が続こうとしていた。
消灯時間の訪れより先に、ミナカタの診察室を訪れる。]
(333) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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――みぃちゃん
[呼ぶ名前はあの悪夢以来、 ミナカタの願い通り、一度も口にしなかったもの。
ミナカタは振り向いただろうか。 何か言葉を発しただろうか。
けれどこちらが紡ぐ音は、揺らがない。]
(334) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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……カリュクスはもう目覚めない。
だから……もう自由になっていい…の。
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その全てを説明する気はなく、 ただ自由の選択肢を提示する。
ミナカタはどうするだろうか。 喜ぶだろうか、悲しむだろうか。 ……それとも聞かなかったことにするだろうか。]
(335) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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――お前も、死ぬのか?
[だから淡々とした温度のない声で尋ねるのは違うこと。
元になったカリュクスが目覚めない、ということは。
そのまま――ポプラの「自我」にも関わってくる。]
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[もともと死に掛けた脳と体だった。 ひとつの世界の構築は、 作り手の脳にも膨大な負荷をかけていて。
仮に今後肉体が回復しても、 完全に乖離した意識はもう肉体には馴染まないと、 上は肉体の破棄を決定した。
カリュクスは死ぬ。 残るのはカリュクスを「データ」としたなにか。]
(339) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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[ミナカタの問いに、ことりと首を傾ける。 今まで境界を彷徨っていた天秤があるべき片方へ傾くだけ。]
そう……ね。 だから……みぃちゃんへ……お別 れ 。
(340) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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―ー 『今までありがとう。長い夢を見させてくれて。』
……ポプラ。
[呼ばなかった名前を、そっと呼ぶ。
瞬きはまだあるだろうか。
彼女が彼女ではなくなる前に、言葉を紡ぐ。]
お前が好きだよ、ポプラ。
[子供達に惜しみなく愛していると愛を注ぐ男が
誰にも一度も告げたことがない気持ちを。]
お前が好きだ。
今まで側に居てくれてありがとう――
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[本当はあの日にお別れするはずだった。 幸せな夢を見させてくれた。 だけど、もう夢は終わるから。
最後の再生データが終わる。 全て終わったあとに残るのは、 セキュリティ制御統括電脳としての、ポプラだけ。]
(344) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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最後に聞こえた言葉に、 「ポプラ」はゆるりと微笑んで。
消灯時間の訪れと共に、その存在は消滅する。
後はミナカタが何を話しかけても、 ことりと首を傾けるだけ。*]
(345) あけひー 2013/07/10(Wed) 00時頃
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