212 冷たい校舎村(突)
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[>>172 そしたらサ、入間まで泣いてンだ。 さっき上履き投げた時の勢いは鳴りを潜めて。
綺麗だった、って。あの電飾。 俺の世界の欠片が。
そんな風に言われるなんて、 思ってもみなかった。けど、 「どうしたいの」って言われて。
それから“みんな”を順に見た。 もう泣いてない那由多と、 怒ってる通と、泣いてる入間と]
(195) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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俺は ―――― ……
[その続きを言っていいのか。 まだ悩んでた時に「違う」って>>179 強く否定する声が聞こえて、視線は目の前の通に戻る。
去年の事とか、文化祭の時とか、 言われて、思い出す。
俺は、間違えないように生きようとしてた。 こーいう時は、笑っちゃいけないとか、 こーいう時は、どんな事言った方がいいかとか、 周りの人間見て、真似して]
(196) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[でも、そーだな、確かに通の言う通りだ。 あン時の俺は、ただ、 俺の意思で通と仲良くしたかったんだよ。
真剣そうに話す通に、 俺はまた、眉を下げて、笑った]
……通、案外怖ェこと言うなァ。
でもアンタならやりかねねェって、 今なら思うわ。
[死に近いって意味なら、ここも地獄も同じだろ。 実際、こうして殴られてるし、言われてるし]
(197) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[ ……この手も、離してくれそうにねェし ]
[殴られる直前に掴まれた胸倉はまだそのまま。 なァ、こーいうのって 殴ったら離してくれるモンじゃねェの?
なんて、思ってたんだけどサ。 不意に、視界が滲んできて、手の甲でそれを拭う]
あれ、なんで俺……。
[泣いてんだ?って、 泣いた事なんて、今までなかったのに、 なんでだって、思うけど、 その時、ふいに入間が聞いてきて、>>187]
(198) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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……かも、なァ。
[ずぅっと笑ってたつもりだったけど、 どこかでずっと生きづらいと思ってた。
仲間外れにするような目が、嫌で。 みんなにそんな目されるのが嫌で。
だから隠してたのに。 最期だから話したのに。
話したからには帰らないつもり、 ……だったんだけど。
入間の言葉に、顔を歪める。>>188>>189]
(199) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[俺は、自分が不完全だから、 人になりたいだなんて大層な事願ってた。
でも、ホントはさ、 それでもいいよって、ただ誰かに言って欲しかった。 でもそれが無理だって思ってた、のに、]
(200) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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アンタ、案外男前だなァ。入間。
……いいのかよ。俺、帰ってもさァ。
知らねェぞ。 俺、アンタたちに平気で 物騒な物、向けられる人間だってのに。
[滑っていったはずの包丁は もうどこにあるか分からない。 多分、雪に埋もれちまったんだろうな。
早くこいつら帰して、 俺はここに残るって気持ちと一緒に。
訳も分からず滲む涙を拭いながら、 俺はまだ、拗ねた子供みてェな台詞を吐くんだ]*
(201) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[ この場所が何であるかって。
俺は「最終確認」だって、誤魔化した。
本当は、違うんだ。
突き放して欲しかったんだよ。
だから本当の事は黙ってた。
本当は ―――――― ]
[ 最期に、みんなに会いたかった。
こんな場所でも、もうここしかねェから。
たったそれだけの事だったんだ ]
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[羨ましかったんだよ。アンタらが。
ちょっと悪戯しただけで怒ったり、 ぼろぼろ泣いたりする那由多が。
パンケーキバカスカ食って怒って、 人の胸倉掴んで火山みたいに怒れる通が。
笑ってばっかじゃ疲れないかって、言って、 人のために怒れる入間が]
(202) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[ ……あーあ。やっぱ俺、怒らせてばっかだなァ ]*
(203) 2017/03/19(Sun) 14時半頃
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[差し出された右手と那由多を交互に見て、 俺も多分、那由多と同じよーな顔してた。
「どうしたいの」って入間が言った事。>>172 そんなの最初から答えは決まってた。
“みんなと一緒に居たい” たったそれだけの事って思われるかもしれねェけど、 俺にとっちゃ難しかったんだよ。
でもサ、アンタらがそんな俺でも いいって言ってくれるなら、赦してくれるなら、]
[ 俺は、]
(206) 2017/03/19(Sun) 16時半頃
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…… クッセェんだよ、バカ。
[言葉とは裏腹に、 下手くそな笑みを浮かべながら、那由多の右手を取った。
いつか、取られなかった右手の代わりに。
それから、まだ掴まれたままの通の手を 左手で掴んで、立ち上がる。
あーあ。ズボン濡れちまったよ。 アンタのせいだぞって、笑って、 それから、三人を見た]
(207) 2017/03/19(Sun) 16時半頃
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…… 帰るよ。俺も。
じゃねェとこの会計様が 地獄の果てまで追って来そうだからなァ!
[ナハハって、笑って、 ああ、なんか久しぶりにちゃんと笑えた気がする。
吹きすさぶ雪風は相変わらず冷たいし、 ズボンも濡れて冷たいけど、 掴んだ手は暖かくて、それだけで大丈夫だと思えた]
(208) 2017/03/19(Sun) 16時半頃
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…… ありがとな。
[ 照れくさくて、風に掻き消されそうな小さな一言が、 みんなに届いたかは、知ーらない ]*
(209) 2017/03/19(Sun) 16時半頃
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[ぱちり。目を瞬く。 それから、へへっ、て情けない声で笑ったんだ]
通に怒られンのは、もう御免だなァ。
[>>216 ともだち。 案外そういうのって、中々口にしねェよな。 暗黙の了解みたいなところがあるから。
でもいざ耳にすると、恥ずかいけど、 ちょっと、いや結構、嬉しいもんだな]
(228) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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[それから、通の手も取って、 立ち上がったら、腹パンが飛んできた]
ちょ……俺、両手塞がってンのに その仕打ち酷くない?
[なんて、冗談めかしながら咎めるけど、 前髪の奥の目と口元がちゃんと笑えてたから、 まァいいか、許そう、とか偉そうな事を思う。>>220]
(229) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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[ 思ってたんだ。けど、]
上履きは結構痛ェからやめようなァ……?
[>>225 さらっと入間が笑顔で言ってのける。 コイツ、多分、マジだ。
いやもう、アンタらさ、 こんな奴らだとは思ってなかったよ。 ここに来るまでサ。
でも、それも悪くねェなって、 俺は入間に返すように笑うんだ。
接客するには、赤すぎるお揃いの目元を向けながら]
(230) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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[でもサ、アンタらホント耳聡すぎンだよ。
ほとんど独り言のつもりで言った言葉に、 那由多はこっち見て笑うし、 通と入間からも返事があったし、さァ。
俺はバッチリ聞いてたのに、 照れくさいから聞こえないフリをして、 誤魔化すように鼻をすすった。
そして、みんなが着てるものの 物々交換をしているのを見ながら、 俺はふと、通の方を見遣って手を引く]
(231) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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通。
俺、分かったよ。 俺を俺たらしめるもの。
[さっきは「そんなもんねェ」って言ったけど、 その答えを手に入れられたから。 俺は通を見て、笑った]
(232) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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―――――― アンタらだよ。
[この先、生き返っても、 俺はきっとまた間違ったり、悩んだりするだろう。
でも、那由多や通や入間から貰った言葉があるから、 その言葉を芯にして、俺はこの先も立ってられる。
無いものねだりしなくても、もう大丈夫だ]*
(233) 2017/03/19(Sun) 22時頃
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[みんなと一緒にこの校舎を出よう。 現実世界に帰るために。
―――― そう思っていたんだけどさァ。
校舎の中に戻るために 屋上の階段に近づいて、気付く]
…… ヤベ。階段、崩れてる。
[電飾とか廊下の電気が壊れて、イカレた時から、 もうこの世界長く持たねェなァって思ってたけど もう少し持ってくれてもいいジャン。 頑張れよ、俺]
(238) 2017/03/19(Sun) 22時半頃
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[ …… なんて、言ってる場合じゃねェ。
このままだとみんなと一緒にお陀仏だ。 それだけは絶対に止めねェと。
だけど、中に戻れねェなら……どうする? 考えるまでもなかった。一つしかない。
掴んでいた右手と左手に力を込めて、 それから入間の方を見て、 こっちって言いながら、足を進める。
その先は、フェンスも柵もない、屋上の淵。 察しのいいヤツなら気付くだろう。 このあと俺がなんて言うか]
(239) 2017/03/19(Sun) 22時半頃
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―――――― よし、飛べ。
[そんな無慈悲な宣言を一言。
躊躇するようなら背中を押してやろうかって、 そんな事を思いながら、三人を見据える。
大丈夫だって。死ぬためじゃなくて、 生きるためにここから出るんだからサ、 きっと上手くいくって、へらり]*
(240) 2017/03/19(Sun) 22時半頃
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[屋上から飛べ、なんて言ったらさ、 那由多も通も面白い顔してた。 こんな状況だけど、その顔、ウケる。
ひひって笑ったの、バレなきゃいい。 バレたら殴られそうな気がする。
入間は平気そうに見えた。 のは、気のせいで、ちょっと引き攣ってたかな。顔]
心配すんなよォ。 ちゃんときっちり全員帰してやっから!
[主がこう言ってんだから、 何とかしろよな、俺の世界。
入間と那由多と俺と通。並んで屋上の淵に立つ。 びゅうびゅう吹き上げる風は、あの日と似てた]
(260) 2017/03/19(Sun) 23時半頃
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はいはーい、りょーかーい。
[>>253 通の言葉に、敬礼を返したかったけど、 両手が塞がってたから、返せたのは軽い返事だけ。
俺やっぱヤバイのか?まァしゃーねーな。 でもちゃんと帰ってくるからサ。もう説教はごめんだし]
(261) 2017/03/19(Sun) 23時半頃
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[那由多と通が帰ろうって言って、 入間が頷くのを見た。
それを合図に、誰ともなく、 宙に重力を預けて背中から落ちていく。
雪風を受けながら、 校舎がどんどん遠ざかっていく]
(262) 2017/03/19(Sun) 23時半頃
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[ あの時は一人で、 微かな希望と、諦念を抱えて飛んだけど、
今はちゃんと帰るために、 みんなと生きるために飛ぼう。
さよなら、俺の世界。
…… って言いたいところだけど、 これからも俺は俺の世界を抱えて生きてくンだろ ]
[ だからさ、]
(263) 2017/03/19(Sun) 23時半頃
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[ 俺はこいつらと生きていくから。
またな、これからもよろしく。
――――― 俺のクソッタレで愛しい世界 ]
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[ 両手をしっかりと握ったまま、 俺は心から笑った。
―――― ちかり。 白い空に瞬く光を、瞳に宿して ]**
(264) 2017/03/19(Sun) 23時半頃
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