278 冷たい校舎村8
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[ なんて、思ったんだけど、]
(726) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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──現在──
[ 階段を上ってく。教室目指して。
……の、はずだったんだけど。 二階まで、でよかったはずなのに、 三階に続く階段を見て、 礼一郎は、友人の言葉をふと思い出して、]
(727) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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「 招かれたんだったら、 向き合わなくていいのかなって──、 」>>312
(728) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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[ 本当にそうだな。って、 礼一郎はあのとき思ったんだよね。]
(729) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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[ 礼一郎がこの世界で見たものなんて、 変わり果てた校舎と、塗りつぶされた扉。 それから、友人の死めいた光景。そのくらい。
昨日、教室で聞いた意味不明な言葉。 黒板に書き足されていた不可解な文字。 そういうものを、ふと思い出して。
……少しだけ。って、 言い訳をするみたいに礼一郎は思う。
良い子に戻ったばっかりなんだけどな。 ……愛宮に悪いなって思って、
でも、あの囁きを言い訳に、 辰美には心の中で謝るのを保留する。]
(730) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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[ ……とたたっと足早に上っていく。 三階。そこまで上っても階段は続く。 四階。見たことのない場所を目指して────、]
(731) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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──現在/踊り場──
[ 少し見るだけだからって、 言い訳みたいに唱えながら進んでいて、
……礼一郎は名前を呼ばれた気がした。>>714 その瞬間まで、そいつに気づかなかった。
ペンキの散った壁をバックに、 カメラを構えた男が立っている。]
(732) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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──…… れ、 レイ?
[ 素っ頓狂な声を上げた。 ?というより?!って感じに。
向こうも呆けたような顔をしていて、 礼一郎にはそれがなぜかはわからない。
……というか、 素っ頓狂な声を上げた次の瞬間には、 残り数段の階段を数段飛ばしで駆け上がって、
カメラを構えたそいつのもとに、 勢いよくたどり着くから、 驚いて落とさないよう、 カメラはちゃんと持っててくれよ。]
(733) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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おまえっ……その恰好! どうしたんだよ、レイ、おまえ、 学校では女装やめないんじゃ──、
[ 正確には、礼一郎が聞いたのは、 ふたりで会うときは女装はしない。>>1:975って、 そういう内容の言葉であって、
礼一郎はそのときも、 フツーの恰好って表現に微妙な顔をして、 それでも、なんでふたりのときだけ? とか、 気になったこと、聞けないままでいて、 それでも別にいいって思ってて────、]
(734) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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[ どんな格好してても態度変えない。 そのことを氷室が良しとするなら、>>1:976 礼一郎は、理由なんて聞かなくてもいいかなと思った。
そいつがどこでどんな格好をしていようが、 礼一郎の前で態度を変えないのは、 氷室だって、中学からずっとそうだった。
それだけで完結する話だとも思っていた。]
(735) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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[ けど、あんまり急なことだから、 礼一郎は心底驚いた顔を向けていた。
その衝撃がやわらいで、ようやく、 思考や記憶が一足遅れて追いついてきて──、]
……つーか、心配、したじゃん。 どうしたんだよ、急に、いろいろ……
[ 恰好のことにもうひとつ加えて、 昨日、教室を飛び出してったときのこと。
何とは言わないが、それを指して、 礼一郎は、ごくあたりまえに、 友人を心配する。という声色で言葉を紡いだ。*]
(736) 2020/06/19(Fri) 21時頃
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──現在/踊り場──
……ちげーわ。
[ 冗談にしては悪趣味だって、 礼一郎は眉をひそめた。
口には気を付けろよって、 礼一郎はたびたび思うし、 ……ほんとそういうとこ、 こいつはいつまでも変わらない。
視線の先でカメラを下ろして、 氷室怜が満足げに笑っている。>>742]
(764) 2020/06/19(Fri) 22時頃
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俺が言ったから? いや、言ったけど、だからって……、
[ 自分のせいなんだろうか。 ──って、礼一郎は一瞬不安になる。
だからって、そうしろって意味じゃない。 そう言おうとして、口を開きかけて、 氷室が続けた言葉に、いったん閉ざした。]
(765) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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──そっか。
[ 今まで聞かなかった理由の断片。>>742
それを氷室の口から聞いて、 礼一郎はそれだけ、一言だけ相槌を打った。
逃げるのは良くない。 ……理由によるんじゃないかな。 って礼一郎は思ったりもするけど、
それは、この友人がもし今度、 やっぱり辛いなって思うことがあれば、 「 逃げてもいいんじゃない? 」って、 礼一郎が気づいて、言えればいいなと思う。]
(766) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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……まあ、癪だけど、 腹立つくらい似合ってるわ。それ。
(767) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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[ でも一番は、そういうことがないと良い。]
(768) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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[ 心配した。というのは、 真面目な言葉だったつもりなのに、 からかってくるんじゃねえよ。って、 礼一郎はむっとした顔で言い返す。]
うるせえ。つっつくな。
……音楽室で寝てた。ってのは、 ユキから聞いたから知ってる。
今、おまえが平気なら、いいけど。 冗談扱いしてんじゃねえよ。 ……心配、したわ。マジで。
……するに決まってんだろ。
[ 肩をすくめるしぐさが似合っていて、 それがかえって腹立たしかった。でも、]
(769) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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……ま、ちょっとは安心した。
[ しゃべってる氷室はいつも通りに見える。 から、礼一郎は少しは安心できる。]
……だから、そういうの、 全然笑えねーって。
[ ……そういう冗談は、やめてほしいけど。>>745]
(770) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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……早未も?
[ 早未がいなくなった。 って、氷室は淡々とした口調で言う。>>746
飛び降り。死に方の、名前。 そっか。って礼一郎は言う。同じように返す。]
俺、喜多仲なら見つけた。 体育館の舞台袖にいて……、 首が折れてたから、それかな。
[ 死因の話。人形が模してる死の形。 ずっと自分の中で引っかかっていること。
不器用だからじゃないかって、 そうだと信じたいことについて、ぽつりとこぼす。]
(771) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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……なんで、死んだみたいな、 ああいうふうになっちゃうんだろうな。
この世界つくったの、 俺らの中の誰かじゃないかって、 そういう話なのに。なんで……、
[ 礼一郎は信じたかった。 でも、こいつならなんて言うのかなって、 礼一郎は友人に聞いてみたかったのかもしれない。*]
(772) 2020/06/19(Fri) 22時半頃
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──現在/踊り場──
[ 氷室が清々しいまでに笑むのを、>>775 礼一郎は、いつも通り呆れたふうに、 一匙の安堵を混ぜた目で見ていた。
ハイハイそーですね。って、 学校でも、ファミレスでも、どこでだって、 二人顔を合わせればしていたみたいに。
そいつが笑えてんならいいかな。って。]
(829) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ だって、友達だし。]
(830) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ ……友達なんだから、 たまには頼ってほしいけど。]
(831) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ なんて、言う必要もないくらい、 君の今後が晴れやかでありますように。]
(832) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ ……でも、こんな状況だから、 ずっと笑ってるわけにもいかない。
名前を挙げれば翳った顔に、>>778 礼一郎は小さくうなずいた。 喜多仲郁斗の死体、じゃなくて。人形。
なんでだろう。 考えても答えの出ない問い。
礼一郎が求めてたのは、 悪気なんてないんだよ、とか、 自分と似たような意見。……だったのかな。]
(833) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ あるいは、そうじゃなくって……、]
(834) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ 氷室は今日も、 礼一郎の思ったのと違うことを言う。
みんな死にたかった。
まっすぐに見つめられながら、 礼一郎はその言葉を頭の中で反芻する。]
(835) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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……イクトは、 帰りたいって、言ってたよ。
[ 反論になってねえな。礼一郎も思う。 その説を肯定したくなかっただけだ。
みんな死にたいなんて、 そんなのって、救いがなさすぎない?
それなのに、氷室はあっさりと、 軽やかなくらいに、自分にはあると言う。>>784]
(836) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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[ ……躊躇いがちに、口を開く。]
……あるかも、な。
[ そんなさらっと言ってんじゃねえよ。 ──って、礼一郎は思った。口が乾く。 口をついて出たのはあいまいな肯定だった。
でも、認めたくないなあ。なんて、 礼一郎はまだ思ってる。思って、 友人の顔の上で、視線をさまよわせて、]
(837) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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……もし、そうだったら、 すげえショック、なんだけど。
死にたがってるやつなんて、 この世界つくった一人きりで、 もう、十分、キツイじゃん。
[ なんでおまえ平気そうなの? って、 口に出せなかった部分を舌の上転がして、 こくん、と一度、唾液を飲んだ。*]
(838) 2020/06/19(Fri) 23時半頃
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