171 獣[せんせい]と少女
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――さあさ さあさ。
今年の祭は何時もと違う。
運が良けりゃぁ
蒼い空を過る 「なにか」が視えるかもしれん。
運が良けりゃぁ
祭りに紛れた 「なにか」に出会えるかもしれん。
(#0) 2015/10/11(Sun) 00時頃
御伽話や唯の伝承と揶揄される存在を
糞真面目に信じた旅人たちが
街にある少ない宿屋の客室を埋め
「なにか」をよく知る住人たちは、祝福を込めて
天使のオーナメントを屋根に括りつけ
草木を編んでマーケットを色とりどりに飾り付ける。
屋台にはパイや腸詰め肉、トイのような砂糖菓子が並び
広場の真ん中では 子供たちが噴水を背に歌を唄って
夜になれば
楽器を持った酔っぱらい達が
調律がズレたままの弦楽器で
その場限りの即興曲を奏でだす。
旅立ちの年の生誕祭はとりわけ盛大に、街と人を酔わせた。
(#1) 2015/10/11(Sun) 00時頃
「旅立ちの月」
真昼に浮かんだ1つと半のお月様は
まるで
ちいさな少女と、それに寄り添う獣のように
やわらかく 全てを見守っている。*
(#2) 2015/10/11(Sun) 00時頃
旧知の友よ、同胞よ。
我が主が、旅の幸せを願って守りを編んだ。
暇あらば発つ前に、手渡すことはできるだろうか。
喚ばれれば、何処へでも鷲が飛ぼう。
そうでなければ、まなびやの出口で待っている。
貴殿達と、唯一の主へ
私達も此処に居た思い出を贈らせて欲しい。
……、クラリッサへと、伝えました。
[獣にしか使えない響きを、短く返す。
と同時に、何か自分からも贈り物が出来ないだろうかと考えた。
贈り物になりえるようなものは、なかなか思いつけないけれど**]
ミツボシと星を見に行くことにした。まあちゃんと伝える。
[事前報告である。
いやしかし、贈り物か。
厨房で何かを残してもいいのだけどそれこそ野暮になりそうだ。
また、旅に荷物は多いよりは必要なものがあればそれでいいと考える自分からすれば…。]
……分かった。
必ず、向かおう…。
[応えて…。
少しだけ…、昨夜見た、ミッシェルの白い髪を、思い出す。
恐らくはもう…残されてはいない、時間…。
なぜこうも…少女たちの命は、短いのだろうか…。]
出口だな、わかった。ありがとう。
お守り……すごい喜ぶだろうな。
[簡潔な返事の後。
さっき、忘れられた家の端に、落ち葉で言葉のようなものが書かれた跡があったのを見つけたのを思い出して。
そんなことをしそうな、器用な風使いなんて…1人しかいない。
そのあとの言葉は…口下手だけれど、心からの感謝の言葉。]
……ありがとうな。コリンを励ましてくれて。
― 少し前 ―
……なんだ、バレたか。
[ くつくつ、と喉鳴らし。彼等が手を取り合って
「忘れられた家」の扉をまたぐとき
脇から入り込んだ風は、落ち葉の文字を吹き飛ばす。
くるくる、くるくる、つむじ風。
橙、山吹、焦茶に紅、まだ温かい秋の色。
風の遣い手の腕が鈍っていなければ
彼らの旅立ちを祝うように、
ちらちらと舞う秋色のライスシャワーが
ふたりの周囲を彩ったはず。*]
お守りか…。
昨日のアヤワスカといい、みんな本当に
良い子たちだね。
オズウェル君の手を煩わせるでもないよ。
僕らみんなそちらへ向かうのだから。
僕は、クリスマスと行くよ。
[聡明な鷲の声に返ってくる言葉に
それぞれの少女がそれぞれのせんせいを見つけ
それぞれの主人がそれぞれの従者と契約を交わしたと悟る。]
ユージン君。
よかったよ、君の少女はやっぱりコリンじゃないと、ね。
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