207 愛しの貴方を逃がさない。
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[むかし。母は不治の病だと宣告された。
手足が痺れ、満足に言葉が喋れなくなった。]
[けれど。奇跡が起こった。
あの方が母を選び、あの方が御手を伸ばし、あの方が触れて、あの方が祈って下さったから。
母は病におかされる前の母に、戻った。]
[ありがとうございます。
ありがとうございます。
…――あぁ。かみさま。]
[カツ、カツ、と足音を鳴らしながら、
歩きたばこすらをも忘れるように軽かった足取りは、
徐々に早歩きになり目的地へと辿り着けば、
―――――そこは。**]
[この人を可愛くしたいから、まず、俺を覚えて貰わないと。]
気持ち長めに、待つぐらいがちょうど良いんですって。
焦らず、じっくり――…完成を楽しみに待つ時間は、良いものですよね。
[店長の手には常に手袋が嵌められていた。
性別を隠すように。
年齢を隠すように。]
[そして今は傷を隠すように………]
かみさま。かみさま。
あなたを想うとき、痛みがスーっと引いていくんです。
かみさま。かみさま。
…――わたしの、わたしだけの、かみさま。
[よし。思った通りだ。あの人が追いかけてくれた。
笑みを隠して、今気がついたように振る舞おう。]
――ああ、そっすね。
じっくり待ってる時間は、じれったくなりますけど、完成したら嬉しくなりますよねぇ。
[鋭い犬歯があれば、どんなに良かっただろう。
時折、そう思うことがある。
幼いころの記憶もそうだ。
家を飛び出した先で見つけた、
白くて、赤い目をした、小さなウサギ。
何も警戒する様子などなく、自分の膝の上へ
ちょこんと乗った生き物を、
この上なく愛おしい、かわいらしい、と。
そう思った子供は、殆ど無意識のうちに、]
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