207 愛しの貴方を逃がさない。
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かみさま……
神蔵にいらっしゃる、かみさま。
今日の献上の品は、如何ですか?
[ずるずると片足を引き摺りながら。
かみさまを想う。]**
[考えて。心配して。安心して。
こんな時間は好きだった。
今はもう、繋がらない連絡先を冷えた指で辿る。
何かが間違っていたのかもしれない。
何を間違っていたのかは分からない。]
[仕事でなくたって。
あの人にプレゼントを贈った時、あの娘に料理を作った時、あれも、これも。]
[これではまた、お礼をしなくてはいけないな。**]
やっと、大学を出たんだね、待ちわびたよ…。
[零す独り言は、誰も居ぬ夢幻に響き渡る。]
[なにより、彼女がそれを好んでいることが
一番、腹立たしい。]
[今日はまだ何もしない。
彼女はきっと両親が帰ってくるまでこの家に居るだろう。
否、そう己に頼むだろうと打算。
今焦らずとも彼女は逃げはしない。
これでいい、今はまだこれでいいのだ。*]
[喉元に、指が伸びた。
がり、がり、と、短く切った爪が、喉の皮膚を裂いていく。
何本もの蚯蚓脹れから、血が滲んだ。
やけに、目頭が熱い。
きっと、傍から見たら
今の俺は、相当滑稽なんだろうね。
けれど、こればかりはどうしようもない。
喉が、渇いた。]
[1年前。
レストラン《エルブダムール》の料理人にコンビニ料理を試食して貰おうとする機会があった。
機会はあったというだけ。
白い容器に入れて渡した、トマトベースのスープ。
結局、そのスープは店頭に並んでいない。]*
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