278 冷たい校舎村8
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─── 廊下 ───
[ 辰美君の足跡を見下ろしている。 黒い、黒いな。掃除できるのかな……。
踏まないように、滑らないように、 あたしは上履きの音を鳴らしながら、 ぴかぴかしている廊下を歩いている。 ]
(169) 2020/06/14(Sun) 10時頃
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……辰美君、 行くあて ある あったりする?
[ 背中に問う。二度目の冒険。
あたし、色々な作品で触れはすれども、 実際、昇降口以外からの、 帰る方法とか、そういうもの、ぴんときてない。 ]*
(170) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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始業の合図。
(171) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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-- 8時50分/教室 --
[ 3年8組、以外の教室には誰もいないはず。 チャイムの仕組みなんて知らないけど、 毎日設定された時間に鳴るのか、なんて、 千夏は考えて、考えて。 他に入ってくる情報に気を取られる。 匂いに、音に、振動に、 ]
……なあに、
[ 気が付けば、何人かは教室を飛び出したよう。 困ったな、怖いな。 あ。また気持ちが悪い。と千夏は思う。
開いた扉の先。 振り返って見えたものは、 文化祭その日の光景だった。 ]
(172) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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[ どうにか情報を整理しようとして、 振動したスマホを開く。>>1 わあ、春ちゃんかわいい、だなんて、 呑気に思えなくて、待ち受けからすぐに 受信したものを開いて見詰める。 ] ……誰?
[ 差出人はスマホの故障か、読み取れず。 死にます。ごめんなさい。 ……みんなとの文化祭の思い出は、 そこまで読んでくらくらした。 ]
(173) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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みんな。 人間のみんな。への言葉。
(174) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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[ こみ上げてくる気持ちは一旦置く。 落ち着いて。落ち着こう。 廊下に広がっていた文化祭。 夢にも思えるような現象に、遺書。
なんだか、ぱちり、と頭の中で線が繋がる。 小さな声で線の先の答えがもれる。 ] 誰かの、頭のなか……?
[ 児童書から始まった読書は、 カテゴリーを超えて、様々なジャンルに多岐した。 その中で、読んだことあるような、気がして。 ]
(175) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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ホストに招かれた者は、 無事に帰れる、と思った。
(176) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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[ 千夏がスマホを握っている間に、 きっと教室では様々な話が進む。 窓が開かれて、それから捜索隊が組まれる。
なんとなく、そうなんだ、と妙に冷静。 非日常を受け入れる。 教室をでていく捜索隊に、静かに告げる。 ]
電波は見つからない、と思う。
[ 人の頭の中に受信塔も送信塔もない。 あるとすれば、テレパシーだけ。 ]
(177) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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私も、ちょっと探検してくるね。
[ 誰かの頭の中。誰だろう。 もしかしたら、と思って、 千夏は返事も聞かずに教室をでる。
向かう先はどこにしよう。 まずは階段に向かって、歩く。* ]
(178) 2020/06/14(Sun) 10時半頃
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— 回想;打ち上げのこと —
先生イケメン! ひゅーひゅー!
[かんぱーい、とジュースの入ったグラスを掲げ、 虚構の終わりを労い合った、打ち上げの日。>>1112
出資してくれた先生や、準備してくれた委員らに感謝しつつ、 わたしも輪の中に溶けて談笑したり、記念撮影に興じたのであった。>>1142
クラスのお揃い衣装は最終的に、 ふりふりレースを取り外し可能なものになった。>>1461 上手くまとまったことに感心する。 わたしは可能な限りいっぱいのふりふりを付けて、ふりふりしていた。
そんな楽しい時間も、長続きはしないもので]
(179) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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「葉野さん、ほらほら」 「辰美くんと記念撮影してきなよ」
[女子グループにまたしても捕まって、 何かを期待するような、いや、疑惑を確かめるような目線を向けてくる。
辰美くんとは文化祭期間中、 お願いして手を繋いで貰ったり、近い距離にいてもらったり、 いろいろと無理を聞いてもらったりもしたけど、 今日はもう文化祭が終わりの日。 つまり、約束も終わる日だ。]
(180) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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……ごめん、実はCG研のほうでも打ち上げやってるから、 そろそろ抜けて、そっちにも顔出したいんだよね。
[非情に残念そうな顔をしつつ、ごめんねーごめんねーと頭を下げて、 逃げるように打ち上げの会場を後にする。 当然ながら嘘だ。CG研で打ち上げなんて企画していない。
食べ物も飲み物も、わたしが取った分は中途半端に残してしまった。 チョコカステラだけはもう少し食べておきたかったな。仕方ないけど。
辰美くんのほうをチラリと見ようとして、やめる。 今まで嘘に付き合ってくれて本当にありがとう。 最後のお願い、なんて図々しいし、いろいろともう限界らしいから。 ごめんなさい。何か言いたいことがあれば後日承りますので。]
(181) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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[その日以降、辰美幸俊との関係について尋ねられたら、 「もう別れた」と答えるようにしている。*]
(182) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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— 回想:イケメンとの喫茶店 —
……男子の格好もするんだなって。 ちょっと思っただけ。
[ジェンダーのことでそういう格好をしていたわけではないのなら、 オンとオフを切り替えていることなのかな、とぐるぐる。 今までの印象とか、言わないようにしてきたこととかが、沸き上がっては消える。
>>135エスコートされるように喫茶店へついていく。 何やら雰囲気がおかしかった。 これじゃあまるでデートみたいじゃない。]
(183) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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[かっこいいイケメンといい雰囲気になること自体は、 わたしだって嫌いじゃないけれど、 さすがに動揺を隠せなくて、動きはぎこちないまま。]
……そのおすすめで。
[メニューを眺めても頭の中に入って来なかったので、 >>137言われるがままにおすすめを注文した。]
(184) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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う……。
[>>138切り出された本題に、またか、と正直思った。 噂になったことに興味を持ってあれこれ聞いてくれる人たちはいても、 嘘と決めてかかって呼び出してきた人は多くない。 だからこれも、辰美くん本人に聞いたんだろうなって察しがつく。]
辰美くんと仲がいいんだね。 委員長もそうだったけど。
[あんな怖い顔をして——いや実際に接したら顔以外は怖くない人だってよくわかったけど——辰美くんは、友達に愛されている。 それが一番意外だった、といえば失礼かな。 てっきり、孤独な一匹狼だとばかり思っていたから。]
(185) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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嘘っていうか……。 付き合ってるなんて言ったつもり、ないし……。
ちょっと気になってるーって言ったら、 いつの間にかそれが付き合ってるってことになっちゃったから、 わたしだって不本意だったんだもん……。
[——すらりと口から吐き出される、更なる嘘の上塗り。
辰美くんには「恋バナから逃げるため」と説明し、 委員長には「冗談のつもりだった」と説明し、 そして今、氷室くんには「付き合ってるとは言っていない」と説明する。
三者三様に理由が違うので、 その3人の間で情報が共有されれば、必然的にメッキが剥がれていくわけで、 そんな簡単なことをわたしは考慮できていない。]
(186) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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……仕返し、はいいけど。
これって、氷室くんにだって変な噂が立つんじゃ……? あ、そんなことないか……。
[遠目に見て、今のイケメンが氷室くんだと分かる人がどれだけいるだろう。 なんて巧妙な罠なんだ。むむむ。
それにしてもこの社会、人の会瀬に興味を示す人がなぜこんなに多いのだろう。 めんどくさいな、と思いながら、 テーブルの下で汗まみれの手を握り締めた。]
(187) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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[実際、仕返しとしては大成功だったんだと思います。]
(188) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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[駅前の往来の中、喫茶店の窓際に視線を向ける人々の中に、 おそらく、“あの子”もいました。
CG研が終わるきっかけの一つには、なってしまったんだと思います。*]
(189) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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— 回想:因果応報 —
[正体不明の超絶イケメン男子高校生Xと喫茶店で話した日の後から、 今度はそっちの噂が絶えなくなってしまった。 みんな暇だな、まったく。 数学の方程式を解くよりも、恋愛の人間模様を解くほうがお好きらしい。
「あれは氷室くんだよ」と説明をしてみたりもしたが、 「そんなわけないでしょー」と信じてもらえずに受け流される。 イソップ童話のオオカミ少年の話が頭によぎった。
そんな中、終わったはずの辰美くんとの話をしてくる子もいて。>>146 ……いや、わたしの中では終わったつもりでも、 噂の中では全然終わっていないんだよなぁって、頭を抱える。]
(190) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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誠香ちゃん、辰美くんのこと気になるの?
[カウンターとばかりにそんな前置きをしつつ。]
……態度はいつも通りだけど、やさしいよ。 何も言わなくてもこっちのしたいことを察してエスコートしてくれる。 寡黙な執事タイプって感じでかっこいいの。
狙うなら今だよ。 ……別れたから。
[さて、どこまでが本当でどこまでが嘘だったやら。自分にもわかりません。 だって辰美くんのことは語れるほど付き合っていたわけじゃなかったから。
もう別れました、関係ありません。 という態度を残して、一旦口を閉じる。 にこにこ見守るような表情を直視するのが、つらい。*]
(191) 2020/06/14(Sun) 11時頃
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――現在/昇降口――
…………ならいいけど。
[辰美は礼一郎に頷いた。>>147
子供の頃に読んだようなSF小説。 あるいは、まことしやかにささやかれた噂。 集団失踪というワードが出て、>>148 ああ、確かにそういう話もあったと思い出し
喜びでも悲しみでも、恐怖でもなく ただぼんやりとした色を持った 綿津見の声が耳に残る。>>157]
(192) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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…………あるのかな
[人間の狭い頭の中に人間を閉じ込めるだなんて
三年八組の文化祭を知っている人物から 遺書めいたものが送られてくるなんて
どちらも現実味のない話だ。 目の前のペンキや降り積もる雪のように。 辰美はぽつりと、ただ、相槌を打った。]
(193) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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ドッキリだったら、いい。
[若林先生あたりが「大成功」のプレートを持って 出てこないかな、と辰美は少し現実逃避をしたが、 我らが若林がそんな奇行に走るのも それはそれで嫌だな、と思い直した。>>150]
(194) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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[楽しい雰囲気で彩られた校舎の中を、 ぺたぺたと黒い足跡が這っていく。
どうしたって違和感を覚えるそれを 辰美もまた、綿津見の隣でぼんやりと見て、
通信は遅延中。 数分遅れで返ってきた答えに、 辰美は「おう」と頷き、汚れたスマホをしまう姿に一言。]
……ティッシュ貸そうか?
[ポケットティッシュならあるけど。
そんな会話も、なんだか、 この異世界とは釣り合っていない。*]
(195) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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――いつかの舞台裏――
あ。 ……あー。いや、いいけど。どうも。
[舞台裏。緞帳が揺れる薄暗い中。
差し出されたペットボトルの中で 炭酸の泡がふわふわと浮いていて その向こう側で綿津見が神妙な顔をしている。>>161
辰美が演じる役の相手役、 つまりは七星夏美は今は退席中。 他に誰かがいたかもしれないが、 現在舞台裏はほとんど二人きりであった。
おかけになったテレパシーは (あなたが)電波の悪いところにいるので届きません。]
(196) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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[この前の詫びをいれてくれているのだろうか、 そう辰美は理解したが
神妙な顔をした彼女に対し、 代官様めいて「苦しゅうないちこーよれ」と返すだけの ユーモアセンスを母親の胎内に置いてきた。
ので、単純にうぇーいでもいぇーでもなく 「どうも」と返して炭酸を受け取ろうとして
辰美が受け取る前か後か、 それ>>163が、 正確にはどのタイミングで発されたのかによるが――]
(197) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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[ポニーテールの少女が、 案内役の紳士に言う台詞。>>164
そこに七星はおらず、 紳士にとっての少女はいなかったが、 よく似たポニーテールの少女がいれば、 薄暗い中で、ぱちんと役のスイッチが入り
紳士は微笑んでこう返す。]
(198) 2020/06/14(Sun) 11時半頃
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