246 とある結社の手記:9
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─── あんたは、人間だと思うよ。
[横に置かれていた問いに対して、
あっさりと、男はそう結論を出す。]
まともだし、オレとかよりよっぽど信用に足る
おねえさんじゃないか。
……
ただしくあれ、って、御使いの言葉ってことかあ。
うん。
…………なるほど。
[言われたことを、じっくりと吟味して、
噛みしめるような声があって、]
ふ、……っくく
うん。……うん。なるほど。
そういう風には考えたことはなかったんだけど
なるほど。
これも、お導きなのかもしれんもんね。
[いくらか、──思わぬ拾いものをしたというように、
おかしそうな少し楽しそうですらある笑みが、声には混じった。]
なら、じゃー。
そういう気持ちになるように、してみよーか。
せっかく、二人いるんだしね。
──誰かといることに意味があるって思えたら、
ちょっとステキな感じだから。
[そんな風に、舟守は気軽い調子で導きを信じることにしたようだった。]
そうそう。……無自覚かもって不安はね。
これまでそっちの声が流れてきた限りで
おかしいトコはなかったってのは、
それこそ、オレはしっかり証明できるから。
他のみんなよりは、
安心してていいと思うよ。
[そんな風なことを付け加えて、]
― 少し前 ―
[甘えたい年ごろ。それは娘も同じかな。そう思ってみなくても、なんのかんのと頼られて感じるのは、そう悪いものではない。]
もう年だからな。
あちこちガタがきてやがる。
若いおまえにゃわからねえだろうなあ。
どうだかねえ。もうよぼよぼさ。
[と、やれ腰が痛いだのなんだのと言ってみせた。()]
ほらな、ロイエのお墨付きだ。
人狼でも人間でも、
生きていくのに支障がないってなりゃあ
メシなんざなるようになるさ。なぁ?
[続くロイエの言葉に、ううんと唸ったあと、困っているとも、照れ臭がるともとれる笑い声を伝えた。()]
止してくれ。そんな立派なモンじゃあない。
宿の仕事と変わらねえのさ。
すこしだけ世話をやく。おれは対価をもらう。
ロイエの言う通りにたとえ恩を売ったのだとして、
何かの形で結局は返してもらったりするもんだ。
[慣れ合いだけよりは、対価というルールがあるほうがより波風立たずに過ごせるものとルパートは考えている。]
おまえにも、すこしだけ世話をやいたことがあったな。
随分と懐かしい話だが。
[お父様と呼ばれて、その畏まったもの言いに「パパ」と呼ばれ慣れてしまった人狼は、むず痒そうに喉を鳴らすようにして笑ってから、うんと頷いた。]
何ばかなこと言ってんだい。
おれの宿が必要なくなって
離れることが親不孝なもんかよ。
そっちでの仕事に誇りがあるんだろう。
結構なことだ。立派だよ。
あのチビスケが、とも思うけどな。
……親不孝とも思わない。
ウチを使わなくても生きていけるなら結構だ。
ただ、たまに帰ってきた時くらい
もう少し寛がれたいモンだけどね。
[と冗談めかす。それから少しの間ののち。]
おかえり、ロイエ?
[と、今更な挨拶をするのだった。**]
[それから。 流れてくる声に、うん。とひとつ同意を示して]
……オレの知ってる限りだけど。
人狼っていうのは何をどうしたって、
"食事"は必要なんだと、思ってる。
人を食うような生き物とは暮らせないって
そういう線引きは、ありだと思う。
推測だけどね。
人狼が、三人もここにいたなら。
…… たぶん、裏でもっと数が死んでる。
オレは。"それでも"この村の生活を、
これまでを許せちゃう。
…… だから、逃げてくれればなァって思うけど。
だけど、それはねえ。いいことじゃない。
知らないところの知らない人の犠牲を、
オレが気にかけないってだけのことだよ。
だから、
──── そんなのダメだと思うのも、
受け入れられないっていうのも。
それはきっと、
"人間"として、正しい反応だと思う。
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