267 【突発】Sanatorium,2880【RP村】
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── 洋菊はあるけど、 ほんとは 茎の太いスッとした菊が 欲しいよね。 ポンポンみたいのもかわいい ───……
[ 反らすよに、アーチの向こうを示し、 地面近くに密集するしろの花たちを 菊 と 呼ぶが、 茎から 根まで 一本で立ち、 半円にこんもりと咲き開いた そのイメージとは すこぅしばかり異なるようで。
あんな仲良しが居る花なら良かったのに。 ───── 誰の話でも ないさ。**]
(81) 2019/06/12(Wed) 01時頃
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[ 奇病を引き起こすウィルスが発見される迄に 如何なる軌跡を辿ってきたのか知る為には、 いずれ医学書や歴史書を読む必要があるだろう。 精神疾患が嘗ては悪霊憑きなどとされたように、 当初は多くの偏見が患者に向けられていた。 “ 亡国病 ” と称される程に広く猛威を振るっても 待ち望まれる万能薬の存在は天よりも遠い。 ]
(82) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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サナトリウムには 僕よりも歳の幼い、小さな子もいれば、 もっと大人びた、落ち着いた人もいました。 外に降り積もる真っ白な雪と違っても、 衛生的で閉塞感のある冬を思わせました。 僕たち患者は会えば言葉を交わしますし、 具合の良い人は簡単な運動療法もしていますが どこか仄暗さがつきまとっているのです。 しんしんと静かにいのちの匂いが漂いました。 そしてそれはみんなが集まる食事の時間に 特に強くなるように僕には感じられました。
(83) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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みんなの食べる、湯気の上る温かな食事を、 羨ましいと思うことはありません。 ぐつぐつと煮え滾る熱湯と同じだと言ったら 凍らせた食事を用意してもらえました。 だけど今度はフォークに刺さらなくて、 お昼はみんなより遅れて食事を始めました。
(84) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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[ 緩やかな曲線で書き記される墓標には、 例えば澄んだ冬空を見上げて星を探すような 抜粋するには至らない、他愛ない日々が殆どだ。 ───── けれども、病である以上 そして患者の病状が非常に不安定である以上、 確実に侵蝕は進み… 決壊する時はやってくる。 ]
(85) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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僕のとなりで、女の子が砂になりました
(86) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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[ 私が遡ることが出来る限りに於いて、 それはある少女の死が引鉄となったらしい。 春が近づくほど雪崩が発生しやすくなるように、 緩やかだったヨリックの病態曲線は急降下した。
然し乍ら、これが手記である以上 書き手が文字を書く余裕を失ってしまえば当然 軌跡を正確に辿ることはより困難になっていく。 ]
(87) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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* * *
(88) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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それはすぐ隣で起きたことなのに、 僕は呆然と、挨拶を交わしたばかりの女の子が 砂になって崩れていくのを見ていました。 春の陽気を遠くへ遮ってくれる曇り空は、 天に煌めく星さえも阻んで、地に落としていく。
僕の隣の席にぽっかりと 白い床に夜空を描いたようにも見えました。
(89) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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ざわめきの波がどっと寄せて、 泣き声や、叫び声や、走る音が周りに溢れても 僕は影ごと縫いとめられてしまったように 女の子がかたちを失っていくのを見ていました。 傍に来てくれたせんせいにその糸を切られて、 ようやく僕は自分の隣で起きた出来事が どういったことかを理解しました。
(90) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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「 ……ごめんなさい、せんせい せっかく包帯が取れたところなのに 」
────── …… カラン、と スプーンが床をたたく空虚の寸前、 弾かれたスープの飛沫が白いガウンにかかって じくじくとした痛みとして染み込んでいました。 汚れた袖を捲れば、少し融けた左腕が光沢を放ち 歪になってしまった硝子のような有様だった。
(91) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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だけどそれより、
床に散らばって広がった藍色の星の…
女の子のくちびるが崩れていく寸前の囁きを、
僕は拾いあげてしまった。
スープと砂の付いたシルバースプーンよりも先に。
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・・・・・ こんな世界になってしまっているのに、 それでもあんな言葉を零した理由は何でしょう。 言葉ごと、もう星砂として散らばってしまって 拾い集めて尋ね返すこともできません。 … 僕は疵口の処置の為に 医務室へ向かわなければいけなかったから。 ガウンを汚したスープの染みが血に見えたけど あの子も、僕も、一滴たりとも流していない。
(92) 2019/06/12(Wed) 12時頃
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──── ぴしり…、と
ぶつかって出来たヒビが消えたばかりだったのに 僕の身体は随分と脆くなってしまったようです。**
(93) 2019/06/12(Wed) 12時半頃
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[ 器を、ベンチに置き、 仲良しの集う真白の花へ歩み寄った。
──── 此とはまるで似ていないけれど、 "わたし"、 ]
(94) 2019/06/12(Wed) 13時頃
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「 だって貴方がそう言った。 」
(95) 2019/06/12(Wed) 13時頃
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[ はじめてのとき " "と 名乗った気はすれど、 貴方 覚えてないでしょう。
どうせ何処かに全部、 いっそわたしより詳しい "わたし"の何かが管理されているのでしょうし、
今更 なにを。 ]
(96) 2019/06/12(Wed) 13時頃
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[ アーチの下、また、笑った。 ……嫌味ったらしい顔の自覚は、あって。 ]
欲しいなら育てれば良いのに。 白菊の意味を誰かに押し付ける前に、 種でも見つけたら?
[ せいたいけい、とか。 そうでなくても他のなにか、とか。
苗床しか知らないわたしだったから、 難しいかもしれない何もかもを無視して。 ]
(97) 2019/06/12(Wed) 13時頃
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でも せんせい、 ─── しらぎくってこんなに話すのかしら。 黙って美しく咲く方がよっぽど、
[ そう思わない?って ゆびさき、唇をなぞった。
閉じてしまう 仕草。 ]**
(98) 2019/06/12(Wed) 13時頃
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[ アーチの向こうに散らばる其れ等は、 何事もないよに にんげんの齎す風に揺れている。 ちぃさな花を寄せ集め おんなじみたいに
揃いの しろいろ。
なかまはずれなんてひとつもない。 ]
(99) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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[ 数字 で呼ばれる子等であったが、 その中には本来の なまえ を 持っている者が殆どで、
identity ( いくつかまで親が居た、確かな証拠 。 )
呼名、というものに関して、 なまえを求める声も少なくなかった。
のろいは いわいである。 この世に産み落とされた証である と、 ]
(100) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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[ のろいを持たない子は しあわせなのか、 いわいを持たない子は ふしあわせなのか、
Tredici 持たざる者には わからない。 無くしものを探すよに、 迷い子の囁き。]
(101) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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「 だれにも■われたことなんて、 」
(102) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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[ ──── 一度、Karteを見直さないといけない。 先ほどのアイリスさんが 誰、だったのか。 そう、 覚えちゃいないから。 そのひとの何もかも、そのひとより詳しいのに、
今更、何なのだか。
花言葉の図鑑と照らし合わせて見てやろう。 ]
(103) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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ほしいタイプの菊は種から育てるのがたいへんなの。
[ うつくしく咲かせるにはそれなりの労力が…と、 アーチまで付き合うままにぺちゃくちゃ、 騒々しく告げるも、 納得させるつもりもない。
結局この中庭の、庭師みたいな仕事をして居るのは、 仕事をしないせんせい たったひとりなので。
せいたいけい も 諸々のbalanceも、 大体はこの男がどうするか ではある から。 ]
(104) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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花だって喋るのかもしれないじゃない。 視力はなくても 光は みえる んだし。
[ 人工の光降り注ぐ中、真上を向いて誇る、 スプレーマムを見下ろして、
己の唇を、逆になぞってみたりして。 chuckを開ける 仕草。]
(105) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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・・・ みんなきこえなくなっちゃったなら、 流石のおれでも さみしいのかな。
[ 無頓着で 無責任な男であれ。
風もなく うごくもののない庭は きっと おれのものじゃあ ないだろう。**]
(106) 2019/06/12(Wed) 16時頃
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「ミサ と、言います」
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(107) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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「父が遠くの国から来たみたいで」 「分からない言葉が今でも多いです」 「……発音、合ってますか」 「でも、きっと死ぬまで此処に居ると思うので」 「これから覚えるのだと思います」 「今、XX歳で、───知っていますよね」
「せんせいたちは、頭が良くて偉いのでしょう」
「……これ以上何を話せば良いのでしょうか」 「わたしとおなじ名前の妹の話でもしますか」 「病気のことなんて、いきなり言われたから」 「わたしだってなにが悪いのかわからないんです」
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(108) 2019/06/12(Wed) 22時頃
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