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【人】 類感呪術師 ヘリンヘイモ……ソラ! (49) 2020/08/25(Tue) 21時頃 |
【人】 意匠造形 シルク[ それから、どれくらいの時が過ぎただろうか。 (50) 2020/08/25(Tue) 21時頃 |
【人】 消防隊長 トルドヴィン― 艇内放送より少し前・個室 ― (52) 2020/08/25(Tue) 22時頃 |
【人】 消防隊長 トルドヴィン 『母』よ。わたしはあなたを喪った。 (53) 2020/08/25(Tue) 22時頃 |
【人】 消防隊長 トルドヴィン「――さようなら、いとしいわがこのさいごのひとり。 (54) 2020/08/25(Tue) 22時頃 |
【人】 消防隊長 トルドヴィン[特にすることもなく寝台に腰を下ろすと、あまり上等ではないシーツがふくらはぎの棘に引っかかった。やれやれと屈んで絡まった繊維を外していると、ふと昼間足元にすり寄ってきた獣の声がよぎった。 (55) 2020/08/25(Tue) 22時頃 |
【人】 消防隊長 トルドヴィン ここには、生きる意味を持っている者が、多いな。 (56) 2020/08/25(Tue) 22時頃 |
[不意に、背後に気配を感じた。
振り返る間すらなく、首筋の外殻の隙間から何かが這入り込んでくる、ぞわりとしたおぞましい感覚が襲う。]
……――!?
[反射的に、トルドヴィンの顎が大きく裂ける。
地球人で言うところの耳の辺りまでがば、と裂けた顔の内部から、隠れていた一対の大顎が飛び出す。"Vespa"という物騒な呼称の由縁たるそれは非常に強力で、相手の肉体を噛み千切ることも容易だ。
――しかし、今回の相手には分が悪い。
何せ相手は宇宙クラゲ、体内に這入り込み神経を侵す寄生生物だ。
急所とも言える首筋から侵入された時点で、為す術はない。
それでも、トルドヴィンは机の上のナイフを掴んだ。]
[自分の命が惜しいと思ったことはなかった。
ここに女王はいないが、この船の乗客は皆、目的を持ってここに集っている。
意味も意義も見つけられない自分が標的となったのは、好都合だ。]
『母』よ、命令に背くことをお赦しください――
[祈るように呟いて、トルドヴィンは自らの首にナイフを突き立てた。]
[――がり、という鈍い音が、一度だけ響いた。]
[躊躇なく叩き込まれた一撃は、首を斬り落とすのに十分だっただろう。
例え戦闘用でない小さなナイフでも、女王の側近、近衛兵として生まれたトルドヴィンの膂力ならば、それを為すことはできたはずだった。]
…………。
[からん、と音を立ててナイフが落ちた。]
[その刃先が致命的な位置に届く前に、宇宙クラゲの触手はトルドヴィンの脳に到達した。
どれほど強靭な精神も、守り続けた忠誠も、神経を侵す彼等から逃れることはできない。
開いた大顎が何度か断末魔のように痙攣して、やがてぴくりとも動かなくなる。]
……。
…………。
[男はゆっくりと首を動かして、壁に固定された身繕い用の鏡を見た。]
[立ち上がってゆっくりと歩き、鏡の前に立つ。
出しっぱなしになっていた大顎を慎重に収納する。もう一度出す。収納する。
次いで両手の指を動かしてみる。
頑丈そうな外骨格の連なりが滑らかに動く。
そうして新しい体の動かし方を一通り確認して、トルドヴィンだったものはひとつ頷いた。]
[生存に必要なのは、強靭で頑丈な鎧である。
この宇宙クラゲの一個体は、そう考えていた。
だからこの男にとりついた。
女王を守る盾、あるいは剣として生まれたトルドヴィンの肉体は、鎧としても武器としても申し分ない。きっと狩りもスムーズに行えることだろう。]
[しかし、この傷はまずい。
喉元の外殻に残ってしまった傷を指で撫でる。
一切の躊躇なく振るわれたナイフは、恐るべき力で外殻を深く抉り、刃こぼれして使い物にならなくなっていた。
脳に到達するのがあと少し遅れていたら、首ごと斬り落とされていたかもしれない。
つくづく、自分の命を顧みない種類の生き物は厄介だ。
あちこち顔を傾けて、傷がどの角度からも見えにくい位置にあることを確認して、男はようやく鏡の前から離れた。
齟齬が出ないように記憶の方も一通り確認しておかなければならない。
後はそう、他に乗り込んでいる同族が2体いるはずだ。
全部で3体。まあ、船を乗っ取るには十分な数だろう。
うまく寄生できたか?と声を送ろうとしたところで、艇内放送
その内容に対しての、
【人】 竜騎兵 アーサー おっとすまないね、吾輩はアーサー。 (58) 2020/08/25(Tue) 22時半頃 |
【人】 新製品 モナリザ――自室―― (59) 2020/08/25(Tue) 22時半頃 |
[だが、機械におけるスリープモードとは、就寝ではなく待機である。]
[メモリは起動している。回路も動いている。
"脳"が作動していると言えた。]
[そうあるように作られたプログラムというのは、ある種の本能であり、機械にとっては避けられない行為だ。
ヒューマノイドは宇宙クラゲのことを知らなかった。
ヒューマノイドは宇宙クラゲのことを知ろうとした。
ヒューマノイドは、宇宙クラゲを探し、カメラ・アイで捉え、接触し、情報を得ようとしてしまった。
一般的な寄生生物であれば、機械に対し寄生を選ばない。
そこに生存における利点がない。構成物に有機物が少なく、エネルギーも糖や脂肪ではなく、栄養素を得ることも難しい。
しかし、"脳"を得ることが目的の宇宙クラゲにおいて、これほど適した寄生先はなかった。]
【人】 消防隊長 トルドヴィン― 談話室 ― (61) 2020/08/25(Tue) 23時頃 |
[生存に必要なのは頑強な鎧かもしれないが、『死なない』ことは無限の生と同義だ。
その上、無防備にも宇宙クラゲを迎え入れるような姿勢を見せたヒューマノイドに寄生するのは、百利あって一害もない。]
【人】 意匠造形 シルク ねこ ではない 、あー さ あ。 (62) 2020/08/25(Tue) 23時頃 |
[その時、モナリザはただおもむろに腕を伸ばしただけであった。
宇宙クラゲという存在を知覚することが出来るのならばどういったものだろうか、触れることは叶うだろうか、と、思考の果てに腕を持ち上げた。
それが、迎え入れるかたちになったとも、知らずに。]
! 知覚異常。メモリにノイズ。
修復・デフラグを開始します。
[望むとおりに、感知は可能であった。
だが、宇宙クラゲは意識に滑り込み、一体化し、隠れるものだ。
"異常"はすぐに"正常"にかわる。
宇宙クラゲがいることそのものが正常になるからだ。]
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