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おれを 殺すなよ
(363) birdman 2018/10/23(Tue) 01時頃
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[それが可能か否か、はやってみないとわからない。 と 夢見がちな男が残していたので それに乗っかってみようと思ったわけだ。
可能なら、押し下げた服の下、 火傷痕ののこるそこに、強くはない、歯を立てる。 できないのなら服の上から、なので そんなに違いはない。
けれど、噛みついて すぐ息漏らすようにして 笑ったのが感じられるかどうかの違いくらいはある。]
(364) birdman 2018/10/23(Tue) 01時頃
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―――、ふ ふ、
[これは、この後無事についたのなら。の話だけど。 というかすでに、「どこで怒られるのか」の話だけど。
しおらしく話を聞き、謝罪の意を示したのは 最初の十数秒だけで げらげらと、後先考えずにある高校生らしく 蓮が笑い始めるので 怒るならそれなりにやさしく怒ってほしいものである。 馬鹿な犬っていうのは、 馬鹿なりのしつけ方があるので*]
(365) birdman 2018/10/23(Tue) 01時頃
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[眼前の背中にあった緊張>>366のことなど さして知ることも慮ることもなかったあたり、 蓮の頭は寝不足の犬のままだし、 だからこそ、噛んだのだ。 事態は起こるべくして起こった。
身を寄せて、肌に触れる と描くことに多少の誇張はあれど ただしく、蓮の牙は、爛れた痕のある肌に触れた。 触れて、傷つける、つもりはなかったんだ。 このときは。本当に。 人相悪が情けない声を上げる と背の裏で笑ったときに、 風が横切る――]
(382) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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や っべ ……
死んでねえ……
[……ノーへルで死んでも慰謝料ってもらえるわけ。 そう、つづけた蓮の腕は、 噛みつく前に葛の腹側に回したはずの左手は いつの間にか、 しがみつくように、かき抱くように、 その胸部を絞めている。 速度を殺せるわけもないのに、きつく。
ひたりと隙間なく身を寄せたそこで、 持続的にあがるエンジン音よりも なおなお煩い鼓動は、同じ、音をして、 同じ速度で、生きている。生きている!]
(383) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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[眼前に死が通り過ぎ、立ち尽くして、 鼓動を震わせて 昼に戻れない、生き損ない2匹生きている。
風のただなかを、死に近づく速度で駆けて それでなお、こうして生きて、 腕の下で心臓が震えている。 身を投げた女子生徒と同じ、 生きたところでその先に続くのは、 昨日を再生産する現実と知っていて、なお。 この男は、死なないために、速度をとめるのか。
それを知って蓮はわらい、悪趣味な気づきを得>>-613、 回した腕のままだ、運転手には見えないだろうけど 天使のステッカがあった方へ中指を立てた。 お前には殺させねえぞ、と。そういうつもりで。]
(384) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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[急停車のせいだ。と言い訳をするのは簡単だが (言い訳をするつもりもないのはおいといて) 歯を柔らかくたてたはずのそこ>>368は 血がにじんでいる。 もう動かす気もない腕を言い訳に、 血を拭ったのは犬の舌だったので、 ―――まあこれは、いいわけをしよう。
そんなのは、再出発の前の 本当に少しの時間のことだったろう。
再度速度を上げていくバイクのうしろで 蓮はひとり愉快気な気分になり、 くつくつと震えだす喉の音を隠し、]
(385) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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[そういうわけなので >>371怒鳴られはじめたときも しおらしく俯き、笑いを隠した―― が、すぐに隠しきれなくなって笑い出し、]
、 ひ、 ふ、ふふ
聞いて、聞いてるぅ
[こうして胸倉をつかまれたうえで 真面目なお話を聞くことになるのだ。 ド派手なバイク乗り回しといて 面白いお話をする葛に、 ゆるゆる笑う蓮は、別に怒らせたいわけじゃない。]
(386) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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そうだなあ、 九十九だけって話じゃなかったわ
でもさ、 おまえだけならいいって話でもないのでぇ
[言葉のあげあしをとるように、わらい、 蓮はヘルメットから 解放された葛の髪の毛をかき混ぜるために手を伸ばす。 いきてたね、よかったね。とでも言いたげに、 先日>>11も、今日も相手の胸元にしがみついた手を。]
(387) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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お前、 きっと俺がいないと死んでたぜ
[などと、目を細めて 昨日のことも、 一人で走る葛の夜のことも、 何も知らないくせに蓮は嘯くのだ。 睡眠不足に蕩けた目玉は弓なり 数歩先の浅海の照り返しを吸い込んで、
でもきっと胸倉をつかむ葛には見えるだろう。 ちらちらと朝を借り受ける中に隠しきれない、 人間の、 わらい、我欲のもえるを散らばらせるのを。
昨夜の夢を引きずった朝になお、 犬をおしのけて、人がうそぶく。ああ やっぱり!]
(388) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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[だから、『今』がいいといったのに。 昨日の続きの、やわらかな犬のままの 『今』いきたいといったのに。 どんなに、どんなに、 一度踊り場で口をつぐんだ『また』を 文字にするのがどれほど、時間が必要だったのか。 期待を、鬼胎を、はらんでしまっていたのか!
だというのに、 こんなに簡単に 響く胎動のように、人間が生き始める。 それもこれも、全部、おまえのせいだ。 責任者はあなたですよ。と主張したい*]
(389) birdman 2018/10/23(Tue) 21時半頃
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[少し先を車が走り抜けて>>382 確かにその時蓮は気づいたのだ。 いまなら、この手に、手の中に、熱があると あの時屋上でつかんだもの>>11がまだある。]
[これって、いまなら。 と思ったときに、悪趣味な自覚を得た。]
(396) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[掴めなくとも。などとはもう、思っていない。 死ぬなら、これがほしい。 死んでもいいけど、これがほしい。]
(397) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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―― 海 ―― [殺せるわけがないだろう>>393―― そう思われたことも知らず、 蓮は、殺そうと思った。 自分が死ぬときに、 この男の背中をつかみ、蒼い機体から引きずり落とそう。 引きずり落として、手にいれなければ。と。
そのための手指でいま、 やわらかく>>390髪をかき回し、 生きていたことを褒めるように、犬猫を褒める仕草で。]
わりぃけど、やめねーし 見るんだなあこれが
(398) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[おとなしいとかわいいじゃん。いぬみたいで。 などと嘯く通り、 随分と大人しくなった犬がもつ赤い柄は、 ささやかな、なにより大切な自覚を得た蓮には まえよりもっと好ましくみえる。
欲目ってやつかしら。 などと思う蓮は、きっと浮かれている。 「これがほしい」と我欲が滲む目をして笑い、 ほしいもののもつすべてが じりじりと蓮の内臓から燃え焦がすようで、 夢うつつの酩酊よりももっと、ずっと 脳みそが蕩けるのに 目をどこまでも覚まさせる。]
(399) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[>>392>>393毒づく調子の言葉は途切れたので、 蓮は、おちてくる頭を捕まえて、 目玉を覗き込んでやろうかと思ったが、やめた。 その目の奥に何があるにしろ、 飲み込んでしまった言葉を探すにしろ、 なんだかとても勿体ない。
なんたって、昨日と地続きの明日は 腐るほどある予定なのだ。 いつ何時蓮が死んだっていいように、 そのときに手が伸ばせるよう 飼い主よろしく犬の後ろを歩く心づもりなので。
だから、飲み込まれた言葉も知らないまま、 頭をぐしゃぐしゃに撫でた手でぽんぽんと叩く。 触れた個所が、どうにも熱く、 むず痒いのを吐息だけの笑いに変えて逃がしながら]
(400) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[言葉のない数分のうち、 寄せて返す波の音の合間にあった穏やかな鼓動は 静寂をやぶる犬のうなり声>>394に 至近距離の、慟哭にも似た感情のほとばしりに、 容易く跳ねた。
心臓をわし掴まれるにも似た悪寒が背筋を走るのは、 これは、よろこびにも、似てるのかもしれない。 あ、こいつも生きてる。 当たり前の事実に瞠目した。 生き損ないが、死を恐怖し、生きている。 さっき知覚したはずのそれに、 なんで鼓動が今更早まるのか、知れず
――、なぜ、いつか、 その背をつかむ日がくることに 期待をはらんでしまうのか。]
(401) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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―― 、 いって ぇ !
[ばちん、といい音がする直前の顔が その目に映らなくてよかった。 「いつか」を待ち遠しく思った顔は それなりに情けなく、 すこしばかり、泣き出す前ににていたので。
蓮が額を抑えてうずくまった間に、 リードもないまま犬が歩き出す。
まじ、くそでは。あの犬には躾が必要。 と毒づいてから、蓮は立ち上がり、歩きかけ、 やっぱりやめて片手を秋空に掲げた。
かしゃりと、チープな音を立てて シャッターが切られる。]
(402) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[赤くなった額と わらい、中指をたてた蓮の向こう、 先を行く白い背中には >>395かすかに赤く痕がある。
あれが、蓮の目印だ。 いざ死ぬときに、掴み、引きずり落とすための。]
(403) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[だから あのステッカーの天使には 今よりここより楽であろう天国に あいつを連れて行ってもらっちゃあ困る。 九十九については蓮が先行予約することに決めた。
手始めになにかかわりの ステッカーを貼れと付きまとってみようか。 そうだなあ、やっぱりハスがいいのでは。 仏様のおわす蓮の台座。 引きずり下ろすための手で それを作り上げたような、悪趣味なやつが。]
(404) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[そんなことを考えながら、 蓮は多少距離の空いてしまった、 犬の後をついていく。
そうだな、少し機嫌が直った頃合いで ステッカーの話をしてみようか。 せっかくだから、 もっと別の話をしてもいい。]
(405) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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[俺ばっかりのせいにするなよ、なんて。 俺を生き返したのは九十九なので、 責任取れよ。なんて。
言っておきたいことはたくさんある。 なんたって蓮の腹は黒いらしいから、 そのたぐいの 言葉だったら あとどれくらい残っているかわからないくらいだ。
そういったものが全部なくなってから いつか、きっといつか、 言ってみてもいいかもしれない。 「俺が死ぬとき、一緒に落ちて」*なんて*]
(406) birdman 2018/10/24(Wed) 03時半頃
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