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【人】 逃亡者 メルヤ [ ‟止めようとした”。 (214) 2015/05/21(Thu) 01時頃 |
【人】 逃亡者 メルヤ (218) 2015/05/21(Thu) 01時頃 |
[こんなことになるなんて
そんな声を聞きながら。
私が思い出していたのは遠い遠い昔のこと。
私の歯車はもうずっと昔から狂っていて。
ずれて軋んだまま、動かし続けてきたから。]
─二度と訪れない、あの頃─
[それはまだ、私が声を殺すことなく
幼馴染達と遊んでいた頃のことです。
私は男の子達と一緒に、野山を駆け回り遊んでいました。
私達のヒーローを追いかけて。
私は手を引かれて。
夕日に変わって、地平線が赤く染まっていても。
時を惜しむようにかけられる言葉。]
「もう少しだけ。
あと少しだけ、遊ぼう。」
…うんっ。
[まだ前髪の伸びていない私の瞳が
夕陽の色をたたえては、輝いていた、幼い時。]
…ただ、いま。
[家になんて、帰りたくはありませんでした。
それでも時間が来たなら、子供の私はその場所に帰ることしか出来ず
地獄の門を開けるような心地で、家の扉を空けていたように思います。
扉に鍵がかかれば、そこから拷問の始まりでした。
私を生んだ母親が、何を思っていたのかわかりません。
私を生ませた父親が、何を考えていたのかわかりません。
私に注がれるのは愛情ではなく。
暴力と、暴言と、嘲笑だけ。
見えない部分を叩かれては、大人たちの視線が見下ろしてきました。
真っ赤な、血の色をした瞳で。
「なんでお前なんて生んでしまったんだろうね?」
そんな風に、繰り返される毎日でした。]
[望まれたことなんて、ありません。
だから、望むことなんて、ありません。
メアリーさんのように。
『本当の』家族に愛されることは羨ましい。
ベネットさんのように。
守る誰かがいることは羨ましい。
けれど。
私は誰のヒロインでも、主人公でもないから。]
[───だから、みんな殺しちゃえばいいんだ。]
────コツリ。
[お父さんとお母さんは、足元に転がっていました。
靴が触れたのはお母さんの脛でしょうか。
それともお父さんの腕でしょうか。
夜になっても、次の日になっても、更に次の日が来ても。
両親が帰ってくることはありません。
──私は、二人のことが大嫌いだったから。
(──二人は、私のことが大嫌いだったから。)
それから私が帰る家は、いつだって独りきり。
いつだって、こうして独りきりなのです。]
[声を出さなくなったのは。
喉を絞めるようになったのは。
この頃からだということを、誰も知るはずのない、おはなし*]
ヒロインでも、主人公でもない。
殺されていく『魔女』。
お似合いじゃない。
[鈴の音一つ、ころりとたてて。]
キミはキミだよ、ラディスラヴァ。
『魔女』なんて肩書きでは括れない。
本当は優しい女の子だ。
[鈴の音に、低く堪えるような音を響かせ]
謂ったでしょう、私は餓鬼なんて嫌いだって。
そうやって勝手に、いいように受け取って。
世の中全てから愛されていると思ってるの。
[か細い、純粋な主張も
一蹴してしまう、嘲笑と共に。
“味方”といった彼が、幼馴染へ弁明してくれていても
『本当は』?
本当の私なんて、もう何処にだっていないの。
やめて頂戴、吐き気がするわ。
[ころり、模造品の音一つ。]
だって…。
寂しいじゃない。
みんなに苛められたままなんて。
[世界中のどこにも味方がいないだなんて、少女には
味わったことのない絶望や恐怖の話なんて
わからないしきっと話されても貧しい想像の安っぽい共感。]
[だから少女は謳う。
若い自己満足を。]
【人】 逃亡者 メルヤ― 幕間/『黒妖犬』の一族のはなし ― (245) 2015/05/21(Thu) 03時頃 |
【人】 逃亡者 メルヤ [ その光景に、 (246) 2015/05/21(Thu) 03時頃 |
【人】 逃亡者 メルヤ[ぼくたちは、そう呼ばれている、らしい。 (247) 2015/05/21(Thu) 03時頃 |
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