246 とある結社の手記:9
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[やっぱり、仲間が泣き叫んでいるのはとても堪える。
悲しくて、悲しくて、痛くて、苦しくて、いやだな、いやだ。いやだいやだいやだ。やだ。どうして。なんで。ごめんね。どうして?イヴォンさんの名前を書く理由なんて本当になかったのに。苛々する、苛々する、いらいらする。そうだ、今は、涙よりも衝動の方が強い。なんで?なんで。ああ、ああ。ああ──……あ〜あ…。]
[あたしが大声で泣くのは、頭の中でだけです。
わあわあと鳴き声をあげました。誰も聞いていない、ひとりだけの空間で、今までで一番に声を上げて泣きました。
こんなこと、言いたくなんてありませんでした。
それはきっと、ユージンさんがよく知っています。
霊能者が結社に連れて行かれた人の霊を見るみたいに、狼に食べられた人の霊を見られたなら、ユージンさんのことも見えたのでしょうか。
それは、とてもうらやましく――狂おしいほどに、せつない心地でした。]
[もう、あたしの泣き言を聞いて相槌を打つ声も、そっと撫ぜるように響いてくる声も、ありません。
あたしがあの人の弱気に、聞こえないふりをすることも、やっぱり聞こえていて手を伸ばすことも、できません。
独り言も鼻歌も、聞こえてきません*]
[想像して、思うのだ。そうだったら、良かったのにな。
ノアさんが人狼仲間だったら、きっと楽しかったと思うのに。]
かんがえることが、
たくさん、ありすぎる…。
[こんがらがってるのは本当だった。]
[わかるわけがない。
そうじゃない存在だっているが、
その当人たちは言いたがらない。
名乗り出て、自分たちが死んで、それで終わりなんて――
人狼という生をうけた以上、あまりにもばかばかしいじゃないか。それでは死ぬために生まれたようなもの。
人殺しだからどう、なんて。今更じゃないか。]
かわいそうにな。
おれたちが「おれだぜ」と言ってやれば
こんなに。つらい思いをせずに済んだろうにな。
言えなくしたのも結社でしょ?
こーんな状況で言えるわけないじゃない。
[状況が違ったらと言うのはまた別の話だ。]
[口ではなんとでも言えた。
わからねえよ?
まさか。わかっていたさ。
マリオを殺したのは誰?
あの子にしようと最初に言い出したのは、おれだったかもしれねえな。
ユージンを殺したのは?
ごめんな、そいつも話し合って決めたことだ。]
はははははは。なにびびってんだ。
胸をはりな。
別におかしなこといっちゃあねえよ。
あいつはもう、本当に信じてもらうには――
殺されるのがてっとりばやいんだから。
[――さて、こうしていけしゃあしゃあと御託を並べるルパートに、人らしい心は果たしてあるといえるのだろうか?
――誰なら心がねえっていうんだ?
どういうものなら、人間らしいと言って貰えるのだろうか。]
だあって頭の中がこんがらがってるんだもの。
たいへんだもん、考えるの。
それは私もほんとに思うんだけど、でも。
…死んでも。
信じてもらえないかもしんないけどね。
イヴォンさんみたいに。
そういやあ、昨日、モンドと飲んだよ。
あいつ、今日生きてたら笑ってくれってさ。
……ずいぶんまあ、弱りきっちまって。
可愛げがありすぎて、笑うに笑えねえよ。
そんなに誰も守れないことが辛いのかねえ。
……昨日おれはあいつに
思い付きで、マリオが死んだのは、
おまえのせいだぜって言ってみたんだ。
……聞き入れて貰えているのかもなあ。
[それは穏やかにわらうような声音だった。]
そうだな?
けどまあ…… そこまできたらもう
いよいよなんでもアリだしなあ。
……
助けにきてくれたってのに、悪いな、モンド。
おまえは昨日『人狼』と一緒だったら……
おれとは飲みたく、なかったかい?
そんっ、な 事、
いってたの? ひっどお。
[自分も今似たような事を言ったんだけど]
私には、守る力がないから解んないわ。
今だって、言い返したらいいのに。
[何か言いたげで、でも言葉を飲み込む姿。]
ぶちまけちゃえばいいのに。
素直になれないと、絶対損するんだから。
ははははは。だけど、事実だぜ?
守れた、守れてないじゃねえ。
あいつが守護者だっておれに分かってたから
マリオは実際、死ぬことになっちまったんだろ?
ちょっとは気に病んでもらわなきゃ。
[スージーも似たようなことを言った上で、死ねなどとは、まあ大概である。
こうしてみるにパティが"誰ならひどいとするか"なんて、まるで正しい指針のようだった。]
言い返せ――ねえんじゃねえか?
ほんとにわるいと思ってて。
ああ。
明日死ぬとも分からねえこんな状況で、
やりたいこともやらねえのは、バカをみるよな。
[だから――いまのこの状況になってしまえば
人食い宿の主人として、暮らすことが
ルパートにとっての、やりたいことだ。
"性分"どおり、いまこうして暮らしている。
だから宿屋の仕事も手放さない。
人狼として食事をすることを手放さない。
邪魔なものを暴力でどけてしまうことを手放さない。
人の親であることを手放さない。
慎ましやかな暮らしの延長を望んでいる。
この状況に、なって尚。]
[だから、こうやって。皆を食べて、疑いをふっかけて。
皆でここを出ようとしてる。
ささやかな日常。もう完全には戻ってこないけど。それを取り戻すためだけに。]
あ〜あ……
ロイエのおべんとう、壊れちまったんじゃねえのか?
[リンダ達を眺める。ロイエはきっと今も尚、リンダのことばかり考えているのだろう。そう思うからこの声は今彼女の耳には届かないんだろうな、なんて想像した。]
それもそっか。
気に病みすぎって気もするけど、
まあ人間だから仕方ないか。
[ここにきて三人直接手にかけているのに、
全然気に病んでない声で言いながら。()
それは全くだ。
でも、感情がないわけじゃない。
方向が、構造が違うだけで、多分心はあるんだと思う。たぶん。]
あーあ。
ね〜、本当に。
誰が死ぬかなんて、本当に解んないんだから。
[性分と言ったルパートが、今も全ての事を続けているのは、それがやりたい事なんだろうな〜と何となく理解はしている。現在も続けられてるのは少し羨ましい。手伝いはしないけど。
ピスティオだって、ロイエだって、やりたい事の為の今だ。
疑われるんだったら、もういっそ、さっさとリンダ食べちゃえばいいんじゃない?とすら思っている。]
そーーーーーーーーだった、
もうそんな人数になってたんだっけ?
[素で忘れてた。]
あっはっはっはっはっは
気の抜けてるこった!
忘れてたのかよ?
[爆笑した。だから隠れ蓑がすくない、すくないって、いってたじゃないか…!]
いやね、隠れ蓑が少ない事は解ってたのよ。
知ってたわ。
でも今日もう駄目だって事に気づいてなかっただけなのよ!
き、気付いてたらモンドとの会話で言ってたわ!
ベッキーが占われたときだけ、
こうなる予定だったろ?
で、うちのかわいい娘が占われた。
そういうことさ。
まあノアを生かしておく限りは、
こうなるんだから、しょうがねえ。
ロイエが今日になっちまったのも――まあ
あんまり、信じられてねえところだ。
ノアを信じるやつは多いぜ?
……さあ、どうしたい?
確かに。
しかもベッキー占えって言ったの私だわ。
いやユージンも私占うなとか言ってたけどさあ。
[気軽に言ってしまった。]
でも、まだ確定はしてないだけ、こう、
まし…マシじゃない?
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