88 めざせリア充村3
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……いつでも…いいよ。
[こちらへと向けられた、
少し濁るミナカタの目に音を投げかけたのは。
実験の後で、箍が緩んでいたから。
疲れていた。こんな歪んだ生き方に。]
[なおも食い下がり続けるポプラの様子に
すぅっとその双眸は細められる。]
死にたかったか?
あそこで、死にたかったか?
……悪かったな。死なせてやらなくて。
お前をずっと縛り付けて。
お前が、
[ポプラを抱く腕をゆらりと揺らす。
大丈夫だ、まだ耐えられる。
まだ――]
お前が、悪いんだ……
[立て続けに見せられた子供達の実験。
それは自身の心をも酷く苛んでいて。
零された、ポプラの言葉には
耐えられなくて、その身体を――
床にたたきつけるように 落とす。]
――っ……!
[自身のしたことには
ポプラが落ちた音と同時に気がつき。
慌てて駆け寄って、小さな身体を抱き上げた。]
すまんっ……! 大丈夫か、どこか壊れて――
[誰を心配しているのだろう。
何を心配しているのだろう。
これはただのぬけがらなのに。]
[叩きつけるような声。
こんな声を向けられるのは、
「ポプラ」として目覚めてからは初めてだろうか。
体を支えていた手が消えて、
重力に流されるまま、床へと落ちる。
研究所の技術で作られた擬体は、
この程度の高さから叩きつけられたところで
傷ひとつつかないが。
再度抱えるミナカタの頬に、手を伸ばす。]
……わたし…が……願った……から。
[おかえりを言いたかった。それだけ。
その願いは確かに叶って、
そしてその願いが「今」の「研究所」を生み出した。]
………みぃちゃんは…わるくない。
[落としたことか、実験のことか。
“あの時”あの場にいなかったことか。
ぺたりと頬に手をつけて。
笑ったように、見えただろうか。]
[小さな手が頬に触れる。
これは紛い物の手。
偽物の手。
それでも、それは伸ばされる。]
……俺も、共犯だろう……?
[掠れた声で答えながら。
感情の浮かばないポプラの顔を覗き込む。]
[そうやって守られて。
あの時だって彼女はそう言った。
自分がいれば止めれただろうに、と
そう後悔する己に。彼女はそう言って。
それから、何度も言い聞かせるように。
まるでそれが事実であるかのように。
本当は、彼女の方こそ何も悪くないのに。]
……ぃ
[ギリと奥場を噛む。
細いポプラの手を掴む。]
[いっそ折ってやろうか。
もう、心を揺らされないように。
彼女と同じ色の髪も
補色になっている瞳も
ぜんぶ。目の前から消してしまったら。
――きっと、何も考えずに狂えそう。]
[腕にかかる圧力を検知する。
人の力でどうこうできる強度ではないが、
内部で鳴る警告音は無視をして。]
……みぃちゃん。
[ただ、紡ぐ。
今も昔も、同じように。]
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[聞こえた鼓動は確かなもの。 ちゃんとひとつひとつ刻んでいる。
その音に、涙は更に溢れて。
謝罪の言葉に首を横に振ると、 目元を擦って少し笑った。]
(13) 緋灯 2013/07/06(Sat) 05時頃
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……なあ、教えてくれ。
お前はどっちなんだ?
――カリュクスなのか。違うのか。
元に戻るのか。
俺はいつまで待てばいい?
俺が死ぬ前にお前は、目を覚ますのか……?
[聞いてはいけないことが。
ぽろぽろと口から零れる。
危うすぎる均衡。
よくもこんな長い年月もったものだ。]
――「みいちゃん」と呼んでいいのはカリュクスだけだ。
[指先を、ポプラの細い喉に。
これを壊したところで彼女は
死ぬことなんて絶対にないだろうけど。
この長い年月で己の心に根を生やした
この存在を心から消し去ることは出来るだろう。]
――答えるな。
だから代わりに、そう呼ぶな。
[ポプラにはそう告げる。
まだこれを壊すわけにはいかなかったから。]
……俺は
[腕をつかむ力を緩めて
喉に当てた指も離して。
いつものようにポプラを抱き上げて。
ただし声の温度は低く。]
俺は、籠の鳥でよかった。
カリュクスを失うぐらいなら――
[ただもう一度あの紅を見つめたいだけなのに。
その望みはこんなにも――遠い。]
[答えようと開いた喉に指先が添えられる。
力はほとんど込められていない。
悲鳴のように突きつけられた通牒に、
機械の顔の内側で嘲った。
あの時の願いは、叶えてはいけなかったもの。
この擬体は、望んではいけなかったもの。
一番望んでほしかった人に、
誰よりも何よりも、疎まれている。]
[抱えられ、ミナカタの望むとおりに無言のまま。
腕の中で低い呟きを聞く。
彼の望みはまだ、叶えられなくて。
これからも、叶えられるかは知れなくて。
自分の望みは悪循環ばかりを招いて。
それでも、自分はまだ動いている。
階段をのぼれば、
地下への入口ともども、揺れる感情に蓋をする。]
[片手で抱きかかえれる身体。
本物の彼女よりずっと、ずっと軽い。
それでも迎えてくれてうれしかった。
同じ言葉で「おかえり」をくれて
本当は、よくできた紛い物などと思っていない。
カプセルの中ずっと目覚めない彼女のほうが
今では人形のように思えてしまう。
嗚呼――そんなことを言ってしまったら
ポプラの中に居るカリュクスをどれだけ傷つけるだろうか。
擬体の中にまで入って待っててくれた男は
もう己を待ってもいないし、必要ともしておらず
作り物の中にいる存在を]
[だから名前を呼ばない。
呼べば本当にカリュクスが過去になってしまう。
それを何より恐れて
その後に彼女が目覚めることを何より恐れて
愛しく――憎い擬体を抱えて
階段を上って地上へと。]
――な、ぁ
[掠れた声での囁きは。
絶対にポプラの耳でも拾えないだろう。]
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― 夢の終わり ― [鳴り響く電子音。 ソフィアが目覚め、ライジが近寄っていくのを見守った。 ゆっくりとチアキが眠っていたカプセルに近づけば、 目覚めたチアキが怯えた顔をするから>>11]
おはよう、兄様 悪い夢は、終わったのよ……
[涙した痕を隠すように微笑んで そっと手を伸ばして、髪を撫でた。]
(14) kasuga 2013/07/06(Sat) 08時半頃
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[きょろきょろと周りを見回していれば、近付いてくる人>>14 伸ばされた手にびくりと身を引いたが、その手が髪を優しく撫でれば
安心したようにふにゃりと笑って]
ええっと……
(15) kaisanbutu 2013/07/06(Sat) 09時頃
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[抱いた頭をゆるく撫ぜて。
あの悪夢の中でずっとこうしたかった事、 それはきっと叶わないだろうと諦めていた事、 最期に会えた刹那の喜びと、 遅すぎたんだという絶望が蘇る。
最期に向き合った彼女の顔を思い出し。 朝焼けの中の彼女の姿を思い出し。 もう二度と、あんな顔はさせたくないと、 あんな未来を歩ませたくはないと切実に願う。
離れる間際の震える手に触れ、 かわりに彼女の目元を指先で拭う。]
あの夢は…戦場は、ひとつの可能性なんだと…―
[それからようやく ナユタとミナカタ先生から聞いた説明を、 ソフィアへも。]
(16) onecat69 2013/07/06(Sat) 14時頃
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[起き上ったチアキに>>11志乃が近づいていく。>>14 少しだけ、少しだけ離れたところでその様子を見つめて。 何と声をかければいいのかと、ヤニクにしては珍しく迷いながら。
チアキの異変に気がつくのは、もう少し、先。]
(17) moggyu 2013/07/06(Sat) 14時頃
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[手を取られ、涙を拭われれば、 瞬きをして最後の一粒を落とす。]
…………。
[少しずつ覚醒する頭で、 あれが実験であったことを理解した。 科学者達の荒唐無稽な妄想ではなくて、 十分にありえるひとつの未来の道筋であることも。]
けど、今はみんな一緒……なんだよね。
[この場所がいつまでも穏やかに暮らしていける 安息の場ではないと知ってしまったけれど。 あれが決められた絶対でないのなら、 他の未来を選ぶことだってできるはず。]
(18) 緋灯 2013/07/06(Sat) 14時半頃
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今は、…な。
[明日はどうなるか解らない。 大切な物は唐突に失くなってしまうのだと 虚構の戦場へと続く道すがら知った。
だから今この瞬間だけは。 ソフィアの目元を撫でる指先に 持てる限りの優しさを込めて。]
みんな、一緒に居るよ。 ………会いにいっておいで。
[笑ってくれる彼女へは、 努めて穏やかに笑うまま肯いて。
チアキのカプセルの電子音が鳴ったのは きっとその直後。**]
(19) onecat69 2013/07/06(Sat) 15時頃
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―― 制御室→実験室 ――
[ポプラを抱えて、子供たちのいる実験室へ。 扉を開ければ、 いくつかの眼がこちらへ向けられただろうか。]
……おかえり。おはよう。
[迷った結果いつものように。 チアキとソフィアに声をかける。*]
(20) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 15時半頃
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― 実験室 ―
[実験室へと入れば、 そこに集っている子供達を見て。 外見上は、ほぼ変わらない姿に安堵する。 見えない部分での変化はきっとあるのだろうが。
口はまだ閉じたまま。 最後に目覚めた二人にかかるミナカタの声>>20を聞く。]
(21) あけひー 2013/07/06(Sat) 15時半頃
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[「今」は一緒。 だけど、明日は、明後日は。 そう考えれば不安にもなるけれど。]
うん。行ってくる。 ……あとで、またね。
[当たり前と思っていた幸せが、 一番尊くて有り難いものだと知れたのは、 あの悪夢の中で得られた数少ないもの。
笑ってくれるライジに、 できるだけ、眠りにつく前と同じ笑みを返して。 少しだけ強く手を握る。
カプセルを出れば、電子音の先へ。 夢の中で最後まで一緒にいた彼と、 その目覚めを待っている、着物姿の少女のところへと。*]
(22) 緋灯 2013/07/06(Sat) 16時半頃
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― チアキが目覚める前 ― [目覚めたら、何と言おうか。 謝罪すべきか、褒めるべきか。
ぐるぐると思考を巡らせて、チアキの目覚めを待っていれば。 先に目覚めたソフィアが傍らに>>22]
……ソフィ、おはよう
[夢の中で、最期に見た光景。 悪夢が終わる前のソフィアの姿。 脳裏に過る光景のせいで、言葉に詰まったけれど。
いつもの微笑みを浮かべれば、 労わる様に肩に手を添えた。]
(23) kasuga 2013/07/06(Sat) 18時半頃
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