160 東京村
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[アイリスのもとに得体の知れない赤ん坊が現れたのは、それからすぐのこと。 唯一人『真実』を知るであろう人を、見張っていたんだ。 呼ばれるようにそれ以上の何かも起こっていたかもしれない。 彼女が『さんかく』に渡りをつけたのは、おそらくそれらから匿ってもらうためだったろう……。]
(23) hull 2015/06/12(Fri) 22時頃
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― それから ―
[数日の間に起こった東京の異変。 それらがおさまって、ネットで騒がれていた話題もすぐに静かになって。 坂下ひなこを見た人はいない。彼女のやさしい両親はおおいに悲しんだが、ほとんどの人間は坂下ひなこという女の子のことを忘れてしまった。
しかし、都市伝説を報告するようなスレッドで新しく見かける話題があった。 いわく、「赤ん坊を探す女子高生」。 都内のある決まった場所を巡るように散見されている。 赤ん坊の声がするコインロッカーを探しているだとか、赤ん坊はそもそも抱いているだとか目撃情報は様々だった。 その赤子が異様な姿をしていること、奇妙な甘い匂いがして泡のように消えていくことから都市伝説や怪談話として扱われることとなる。 彼女は誰に危害を加えることもなく、目が合うと消えていくらしい。]
(24) hull 2015/06/12(Fri) 22時頃
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[ひなこは今も赤ん坊を抱いて、やさしげに歌を唄っているのだ。]
(25) hull 2015/06/12(Fri) 22時頃
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ーエピローグ トヨタの場合―
[東京の街は相変らずどこも人が多くて、俺はその中で今日も人波に揉まれながら働き続けている。 駅前の通りを抜けて路地を曲がり、飲食店の立ち並ぶビルの群れを横目に見ながら次の目的地へ。 途中横断歩道の赤信号の向こう側に“彼女”によく似た後ろ姿を見かけた気がして、立ち止まる。]
[あの日、“多分もう、大丈夫”と彼女は言った。きっとその言葉の通りだったのだろう。 彼女は消え、俺は消えなかった。もう誰も、俺を追いかけてくることはない。]
《あの子も、パパに会いたかっただけだろうから……》
[理解できることなんて数えるほどもない。ただ、これだけはわかった。 あっけないほど簡単に、“俺を追いかけ続けていたもの”を彼女は持っていってしまった。 あとには何も残らない。携帯の着信が止まらなくなったりもしない。]
(26) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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[あれから何度も考えた。 俺はあのときもう一度、“あの子”を否定してしまったのではないだろうか? 生まれることを許されず、実の親に否定され、それでも俺に会いたがった“我が子”を。
俺がするべきことは逃げることではなく、あの子を、認めてあげることだったのではないだろうか。 今度こそ、生まれておいでと言ってあげるべきだったのではないか。 今度こそ抱きしめてあげるべきだったのではないだろうか。 それが例えどんな形だとしても。
[あるいは、それが“答え”だったのかもしれない。 けれど、俺はそれを選べなかった。 勘違いして、最後まで悪戯だと決め付けて、挙句逃げ回って……そして彼女に助けられた。 きっと俺は間違えたのだろう。]
[横断歩道の先の“彼女に似た誰か”が振り返る。彼女はもうきっと何処にもいない。]
(27) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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《だから、いつか、どこかで 自分のことも 許してあげて……》
[横断歩道が青に変わる。彼女の最後の言葉が何度も、何度も頭のなかで繰り返し響いている。 彼女は俺を救おうとしてくれたのだろう。俺の選んだ道が間違いだとしても、俺がこれ以上傷つかないように。]
……ありがとう。
[思い出す。音のしなくなった新宿で、ひとりでなにもかもを背負い込んだかのように言葉を連ね、彼女は微笑んだ。 彼女がなにを考え、なにに悩み、なにを知り、そして何になったのか。俺は知らない。]
…………。
思えば君は昔から、自分ひとりで抱え込んでしまう子だったね。
[頭の中に繰り返す声。気のせいか、どこか悲しみの混じったような声。 いつの間にかなにかをひとりで抱え込んで、そして消えていった、近所に住んでいた引っ込み思案な女の子の声。 君がなにを抱えて消えたのか、君がどこへ消えたのか、君が今何をしているのか、俺はしらない。 けれど、だからこそ俺は思うんだ。]
(28) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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《だから、いつか、どこかで 自分のことも 許してあげて……》
……それは、その言葉は、
本当は君が欲しかった言葉なんじゃないのか。
(29) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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ひな @tin_dorothy @toyoyota5 @A_i_lice ごめんね もうすぐ終わると思う
[twitterに残された彼女の痕跡。確証なんてない。けれど、彼女のような気がした。] [あれから何度携帯電話に連絡をいれてみても、ひなこが通話にでることはなかった。だからきっと、これが最後の彼女の痕跡なのだろう。]
[せめてなにか伝えなければならない気がした。悩んだ末に文字を打ちこむ。]
[書いて。消して。また書いて。消して。] [伝えたい言葉を選んでいるうちにどんどん文字が無くなっていって、残ったのは結局とても簡素な文章だけ。]
[……伝わるだろうか。] [少し考える。伝わらないかもしれないし、的外れかもしれない。]
[ただ、それでも。 君がこれを見てどこかで微笑んでくれたならそれでいい。そう思って、送信ボタンを押した。]
――もしも、君が自分を許せるときがきたのなら
(30) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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トヨタさん @toyoyota5 @tin_dorothy いつでも戻っておいで。待ってるから。
(31) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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[携帯電話を胸ポケットに仕舞う。ふと誰かに見られている気がして振り返る。 猫が一匹、にゃあと鳴いて細道へと消えていった。 不意に苦い笑いが込み上げてくる。まぁ、そんなもんだよな。普通、そんなもんさ。 正解なんてわからない。ただ、間違った道だとしても歩いていくしかない。 ……トヨタは街の喧騒へと向かって歩き始める。足音が横断歩道の向こう側へと消えていく。]
(32) titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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トヨタは、この街で今日も歩き続ける。**
titi66 2015/06/12(Fri) 22時半頃
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—三鷹・自室ベランダ―
[一瞬。一瞬だけ我を忘れて、祈りをささげた。
硬く握った拳を開き、恐る恐る目を開ける。 振り子型の爆弾はその規則正しい揺れと音を止めていた。目の前には黒いコードが切断された信管。]
終わっ………た……?
[その場に座り込みながら呟く。もしこれが間違った答えを選んでいたら……どうなっていたのか。それは今となっては分からない。ただ、自分はこうして無事に生きている。それだけが救いだった。座り込んだまま立ち上がれずいるうちに、目頭から知らず涙がこぼれていた。]
(33) (so) 2015/06/12(Fri) 23時半頃
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そ、そうだ。みんなに連絡とらないと…
[石動や智恵美にLINEで連絡を送る。それに、twitterでも。]
『@mysteryhunter-mayu 大丈夫?私の方は無事に終わりました。謎も解き終わったし。ええと、答えは……』
[振り子爆弾の中に小さなステッカーが貼られている。そこにはこう書かれていた]
「おめでとう」
「あなたが『力士シールからの脱出』に成功しました」
[ただ、そうとしか書かれていないメッセージが貼られていた。]
(34) (so) 2015/06/12(Fri) 23時半頃
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『……ごめん、結局何もわからなかったみたい。あなたが脱出に成功しました、としか書いてないの。あなた「が」って何だろうね?普通あなた「は」でしょうに。
ま、ともかくそっちは無事だったかな?また明日にでも会ってお話しできるといいのだけれど。おやすみなさい。』
[そうとだけ連絡を残す。スマホを切って家の中に戻り、厳重に鍵をかけた。明日にでも管理会社に連絡して、モデルルームの見直しを行ってもらおうか。そんな風に考え、バスタブにお湯を張りながら服を着替え、何気なくテレビをつける。テレビの中では、ひな壇芸人がいつもと変わらず身内ネタで盛った面白くもないトークを繰り広げていた。 明日も明後日も、みんな東京で何が起こっていたのか知らずに平和に暮らし続けるのだ。私はそこに完全に馴染むことはきっとこれからもできないだろう。だからと言って深淵をこれ以上のぞき込んではいけないと本能が警鐘を鳴らしている。私もおそらく、何が起こっていたのかほんの一部分しか知らなかったのだ。 そう、運が良かったのだ。もっと悪い事にだってなりえたのだ。]
(35) (so) 2015/06/12(Fri) 23時半頃
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[忘れよう。何もかも。できればアイリスの事も。智恵美や石動、会えたらエリ、彼女達とも事が済んだらもう会わない方がいいかもしれない。 そう考えながらテレビをつけっぱなしにしたままで、服を脱ぎ捨て湯船につかる事にした。緊張が解けたせいか、湯船の中でうつらうつらと白河夜船。いつしかテレビの音も意識から遠ざかり、暖かなまどろみの中、至福を感じていた―――――――]
(36) (so) 2015/06/12(Fri) 23時半頃
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……………
………
――――――臨時ニュースです。先ほど午後9時過ぎ、渋谷区笹塚の3階建てのアパートで爆発事故が起こり、1人が重い火傷を負って病院に搬送されましたが、間もなく死亡したとの連絡がありました。警察は事故の原因を調査中とのことです。繰り返します。先ほど午後9時過ぎ………**
(37) (so) 2015/06/12(Fri) 23時半頃
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[ワタヌキの開いた鏡を、智恵美は見る。 『りーくは もうすぐ おちつきます』 『ただ わたしよりまえから ちかづきすぎたひとは』 『わたしには わかりません ごめんなさい』 目をみはる。眩暈がした]>>8-130
そう、です、か……。
[予め、それが書かれていたはずがなかった。 手品のように、その場で書いたはずもない。 それは間違いなく『向こう側』から書かれていた。こちらに向けて]
ありがとう、ございます……。
[智恵美はハイの状態が途端に解け、よろめきながらつぶやいた。その言葉は行動を促すワタヌキに向けてでもあり、鏡の中に向けたものでもあった]
それじゃあ、私も、行きますね。 お邪魔しました。
[その虚脱感に、智恵美は既視感を感じる。それは初めて『リーク』に触れた夜。池袋の路地。彼氏を殺した、あの夜に抱いた虚脱感。取り返しのつかないことをしてしまった、どうしようもなくなってしまった、その絶望]
(38) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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[智恵美はドアを開ける。そこに繋がっているのは、あの黒ずんだ白いタイルの階段ではなかった。コンビニの袋、べとついたアルコールを漂わせる、凹んでこぼれたビール缶。 からからと回る、油に汚れた換気扇。黒く、埃の積層したエアコンの室外機。
雨上がり、冬の夜、その冷気。 温度と湿度のこめられたにおい、血のにおい。
智恵美は少し躊躇って、ドアをくぐる。後ろ手に閉じられたそのドアは、恐らくまた開けば、元通りの階段へと繋がるだろう]
(39) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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―『リーク』―
[男の死体が横たわっている。 呼気は、夜の闇に白く]
……。
[智恵美は焦燥していた。心のうちも、悲しみも、あのときのまま。すでに背後にはドアはなく、まるで彼が死んだそのときから、わずかたりとも時間は立っていなかったかのようにすら感じられる。日常を損ない、歩んできた逸脱の日々は偽りであったかのように、巧妙に縫い合わされている]
[スマホは圏外だった。ネットも見れなかったし、電話もできなかった。ビルとビルの間から、月だけが見えている。耳を澄ますと、風が細ぎれになる音の間に、ザアザアと、擦れるようなノイズが断続的に混じる]
(40) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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で、来たはいいけど……。どうすれば、いいんだろう。
[路地はここで行き止まりだが、反対の方に進めば、問題なく表に出ることはできる。しかしそうしたところで、結局、何も変わらない。日常が壊れたまま、私はあの、正しくない生活を続ける]
どうすればよかったのかな……。
[動かない彼の横に、智恵美は座り込んだ。膝を抱えて、そこに顔を押し当てた。場違いの薄着で既に凍えていたが、冬の地面から来る冷たさは、すぐに芯まで浸透してゆく。お尻が痛かった]
……。
[彼氏の、開いたままになっている手に、手を重ねる。血と共に体温は流れ出て、ただ、夜の冷たさだった。自らの熱も同様に、触れているところから流出していくような気がする]
そうだ。好きだったんだよなあ。
[目を閉じる。凍えた身体に、感覚がなくなっていく。もう、止め処ない違和感の中で生きていくのは嫌だった。何をしても違う、どこにいてもそうじゃないと、自分の中のエラーサインを切ることができないままの日々]
(41) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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ああ、このままでいたら、私――。
[意識が失せていく――喪失感に、踏みとどまることなく身をさらわせようとしたその瞬間、スマホが振動する。少しの逡巡ののち、智恵美はスマホを取り出して、それを見る。相変わらずの圏外だったが、それは、マユミが成功を告げるメッセージだった]
[一緒に過ごした時間は短い。もう二度と会うことも、ないかもしれない。けれど]
[おめでとう、くらいは送りたいな]
[智恵美はそう思って、のそのそと立ち上がる。冷え切った身体が軋んだ。脚がしびれて棒のようだった。どうすればいいか、なんて決まっていなかった]
[しかしそれでも路地を出た。 真っ直ぐ進んで、池袋の北口の方面の路地――ラブホ街のすぐ近くに出る。 スマホを見ると、通信機能が元に戻っていた。智恵美はマユミに、]
おめでとう! 私も『リーク』に行けました! 今から帰って寝ます。 [というメッセージと、ナイトキャップをかぶったリスが、枕を引きずって歩いているスタンプを送る]
(42) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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[振り返れば、そこに路地はない。 冷えた体は、本来の空気の温度で、緩やかに戻ろうとする。雨上がりの地面に座り込んで、濡れたスカートは、気持ち悪くお尻に張り付いてくるのが恥ずかしい]
まあ……いいか。
[と、智恵美は思った。どうしようもないことはある。でも、]
――死んだらさ、ダメだよね。死んだらさ。
[エリの言葉を思い出し、口にする]
帰ろっと。
[タクシーを使っても良かったけれど、なんとなく、歩きたい気分だった。『リーク』に到達したことで、何か変わったわけでもないようだった。あの時に戻ることはできても、何もできなかったし、特別の何かに出会うこともなかった]
[あの死体は永遠と、あの時のまま、あそこに残されるかもしれない]
[でもまあ、いいか、と智恵美は思った**]
(43) 37m0 2015/06/13(Sat) 11時半頃
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―エピローグ 2016年・夏―
[三省堂書店・東京駅一番街店。 夏にあわせた怪談本をまとめた特設コーナーの隅で 石動太郎はその本を手に取った。
表紙は、黒地に割れた林檎が大きく配置された写真。 林檎を中心に散る砕けた鏡がきらめき 歪ではあるが東京の路線図の複雑さを描いている。
記された“結末のない”いくつかの怪奇譚たちは、 筆者の名が記されない本の異様さも合わさってか それなりに話題になっているようだ。 売れ行きも好調らしい。
頁を捲りながら引き結んだ唇裏をもごもご噛む石動の隣で 女子高生の二人組がその本を買い求めていく。]
(44) onecat69 2015/06/14(Sun) 20時半頃
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――続きは、そのうち誰かが書いてくれるやろ。 まだまだ、なんも終わってへんからな。
[楽しげにレジに向かう女子高生たちの背を ……正確には揺れるスカートの裾を眺めて、 胸元から万年筆を取り出しながら独りごちた。
そろそろ出発する時間が差し迫っている。
表紙裏に“印”を書き付けた本を山の一番上に戻し 石動は表紙に掲げたタイトルを指先で撫でた。
『東京村』の文字を。**]
(45) onecat69 2015/06/14(Sun) 20時半頃
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―都市伝説『東京村』―
[初版のみの流通でブームが去った著者名の無い怪談本は、 後にひとつの都市伝説となる。
“結末のない”いくつかの怪奇譚の端々には “結末をみる”ためのヒントが隠されている。
表紙に散らばる鏡の破片の中に、 かつて消えた少女の面影が見える。
表紙の林檎は作中多く描写されているiPhoneの暗喩で Siriに“ある言葉”を問いかけると答えが見える。 キーワードは【アイリス】ではないか。 あるいは【またきてさんかく】ではないか。]
(46) onecat69 2015/06/14(Sun) 20時半頃
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[表紙裏に手書きのメモが入っている本が数冊ある。 そのメモは【1054834・・・】という数字の羅列。 公衆電話からその番号に発信すると 関西訛りの男が出る。
ほかにも、様々。
――……そんな噂話を信じるものの中から、 次の『東京村』を描く者がきっと現れると 僕は信じて、待っている。**]
(47) onecat69 2015/06/14(Sun) 20時半頃
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[―――目を覚ました先は、白い天井に 消毒液の匂いに溢れていた。]
(48) bou 2015/06/14(Sun) 22時半頃
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[腕、足、肋骨、その他諸々の骨折、打撲。 頭は強く打っており、出血も少なくはなかった。 運ばれるのが少しでも遅ければ危なかったという。
…いや、むしろ遅かった筈。 「死んでいた」筈だった。
青年が階段から落ちた日と、 運び込まれたという日は二日のずれがあった。
二日、あの状態で放置されていた筈なのに。 命を落としかねた「異常」達に 不思議と救われた、という事なのだろうか。
ともあれ奇跡か、はたまた異常を起こした青年に 医師が下した診断は「三ヶ月以上の入院」であった。]
(49) bou 2015/06/14(Sun) 23時頃
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[暇を持て余すように本を読む青年は、 病室のベッドの上、包帯だらけの痛々しい姿をしている。]
『散々な旅行になっちゃった』
『別にいいって言っただろ… 好きに遊びに行けって』
[大阪とかいいんじゃないか。知らないけど。 いつか来た客の故郷を上げて興味も薄そうに言う青年に、 見舞いに来た妹は実に不満そうな顔で、 布団の上に新品の携帯を投げて寄越す。]
(50) bou 2015/06/14(Sun) 23時頃
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[持っていた携帯は、ここで目を覚ました時には 失くしてしまっていた。 新しい携帯を用意しなくてはいけなくなった この際に、電話番号は変更する事に決めた。
あの番号を使い続ければ、 次は妹が危ない目に会うかもしれない。 バイト先には警察も来ていると聞いた。
これ以上リスクを抱えて 「異常」を垣間見て遊ぶのは危険だろう。 今でさえ「行き過ぎた好奇心」の代償は高くついている。 しばらくは大人しく暮らすしかなさそうだ。
…もっとも、逃げる事さえ満足に出来ない、 大人しく暮らすしかできない身体ではあったが。]
(51) bou 2015/06/14(Sun) 23時頃
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[暇つぶしに、と妹がコンビニで 買ってきた本に目を落とす。
「本当に怖い怪談・都市伝説」などと怪しげに書かれたタイトルと血しぶきの舞ったデザインの表紙。 大怪我した入院患者に贈るには随分な品に思えて、 青年は妹の心情を察した。これはきっと怒っている。
中をめくれば、 ドッペルゲンガーだの鏡の国だのメリーさんだの 信用の薄い噂話が軒を連ねていた。
その内のドッペルゲンガーのページに目が留まる。 医学的には自己像幻視。本人が見たもうひとりの自分の姿は、ある程度説明出来得るものらしい。
…やはりあの時、階段に居た自分は、 追い詰められていたが故の幻覚だったのだろう。]
(52) bou 2015/06/14(Sun) 23時頃
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