270 「 」に至る病
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[──同時に、思い知る。 この身体に流れる血の穢れの濃さを。 氏がまだ、彼女の死を吹っ切れていないこと。
唯一無二の、すべてを捧げた夫の腕の中で、 彼女がどれだけ幸せに逝ったか理解していない。]
教授にとっては辛い思い出、でしょうが 僕には解ります。奥様の気持ちが
[死んだ瞬間より、今の方が余程 未練を抱えているかも、とは流石に口にせず。]
(414) 2019/10/12(Sat) 01時頃
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[代わりに口にするのもまた、 これまで抱え続けてきた鬱憤。 本来、ぶつけるべき人物はここにいないのに。] でも、あなたたちは信じないでしょう 僕らの気持ちを、情をどれだけ訴えても そうやって全部、血が生むものだと片付けてしまう 信じてくれないから、… 血を捧げることでしか実感できないんです
必要とされてると……傍に、いてもいいって
[この瞬間も、脳裏にリフレインする。 重苦しい溜息。煩わしそうな視線。 いつかの夜に聞いた、断絶の台詞。>>0:276
何も言ってくれないから、信じてくれないから こっちは身体に聞くしかない。 理性の届かぬ本能に訴えかけることの何が悪いのか。]
(422) 2019/10/12(Sat) 01時頃
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……ごめんなさい、これは八つ当たりです 僕らと言ったけど娘さんの本音は解らないし
教授は眷属想いの、立派な吸血鬼だと思います
[愚痴だと自嘲し、何を言っても受け止めてくれる 氏の態度に甘え過ぎたと、銀糸を垂れ 誰に対しての文句かは言わずもがなだろう、 続くフォローに、眉を下げた。>>380>>382
元より、彼の評価を下げたくなくてここへ来たのに。 厄介な眷属を抱えているなんて、 想われたくなかったのに。]
(423) 2019/10/12(Sat) 01時頃
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[みるみると自己中毒に陥る悪癖へ、 優しい一言が降ってきて、顔を上げる。 我ながら情けない表情を曝している気がした。
あれだけ文句と不満をぶちまけて、尚 心は既に、白亜の建物に向かっている。 彼が淹れる苦くて不味い珈琲の味を恋しがりながら お代わりの紅茶をゆっくりと胃に収めて。]
お守り、ですか…? 100年後のことは、想像がつきませんが……
僕の生きる指針は、20年前から変わりません
[暫し考えた後、答えは黙して、ただ、頷いた。 それがお守りとなるか否かは 叶えられる相手次第であるから。]
(426) 2019/10/12(Sat) 01時頃
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[他にももっと、例えば学生時代の彼のことや 奥様との馴れ初めも聞きたかったが 気づけば随分と時間が経っていた。 ──平然と座っているのも限界に近い。]
貴重なお話をありがとうございました また、お会いできる日を楽しみにしています
[審査の結果も、"次"の機会の有無もさておき。 この瞬間の素直な感想と共、別れの握手は此方から。]*
(427) 2019/10/12(Sat) 01時頃
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[400年も時を経た吸血鬼教授から見れば たかだが20年しか眷属なぞ、赤子に等しかろうに。
真摯に意見を受け止めてくれたことを やや重くなる口と表情に感じて "彼" が、氏を敬う気持ちが分かった気がした。
直後には、己の未熟さを憂い だから本音を明かしてくれないのだろうと気が沈む。]
(445) 2019/10/12(Sat) 02時半頃
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[それでもなんとか、笑って別れを告げられた。 良い眷属だと褒められたから。 これで、彼との約束も果たされるだろう、と。]
お土産もありがとうございます 教授もミルフィさんと、お幸せに
……どうか、彼女と奥さんを混同しないであげて
[最後の最後まで差し出口が過ぎたが、 心からの願いだった。 自分の代わりがいると、誰かの代わりだというのは 眷属にとって酷で辛いことだと思うから。]
(447) 2019/10/12(Sat) 03時頃
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[もし、自分がそうなったとしたら───… 想像するだけで内側から灼けつきそうであるし、 可能性ですら耐えられる気がしない。]
(448) 2019/10/12(Sat) 03時頃
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[ともあれ、問題なく審査を終えられたことに安堵して お辞儀を重ねて邸を後にするだろう。
教授が下した診断がやや見誤っていても仕方ない。>>443 氏には知りようのないことだから。 普通の会話が成立したのは、冷静さを保てたのはなぜか。
己が唯一、理性を失い感情を制御できず 顔色を伺い、思うことをうまく吐露できない相手は この世にたったひとりだけ。]
(449) 2019/10/12(Sat) 03時頃
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[一刻も早く帰りたいのに 長らく引き篭もり、また元より虚弱な痩躯は 思うように足が進まず、息を切らす。 教授との時間は充実したものではあったが その分、反動も大きかった。
駅のベンチに腰をつき、時計台を見遣る。 うちに来ている筈の眷属はもう帰っただろうか。 小さな子どもが連れてきた、小さな子。 もっとも、うちひとりは保護者で、吸血鬼で 有名な菓子会社の社長と知って驚いたっけ。>>1:365
屈託ない笑顔に圧倒されながら、 嗚呼、自分がもし吸血鬼だったのなら 問題なく跡を継がせてもらえたのかもと考えて。]
(458) 2019/10/12(Sat) 03時半頃
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[そうならなかった、己の運命に感謝したのを覚えている。]
(462) 2019/10/12(Sat) 03時半頃
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[──駅前の交差点を行き交う車を眺める。 もし、教授の言う通り己との別離が 彼に何かしの影響を及ぼすことがあるとしたら。
このまま帰らないのも一興だろうか。 なぞと、できもしないことを想像しては嗤って 軋む身体に鞭打ち、ベンチから立ちあがった。
仮令そうだとしても この眼でそれを拝めなければ意味がない。]**
(465) 2019/10/12(Sat) 04時頃
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