18 Orpheé aux Enfers
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――……。
[先に行ったカルヴィンを追いかけようとしたけれど、やめた。 あまり長く顔をつき合わせていると、空気が悪くなりそうだと思ったから]
今日は、そんなことばかりだな。 こんなんじゃ、スコアが出てきたってまともな演奏が出来るはずが無い。
[奏者が100人いれば100つの音があり、音楽がある。 それをまとめるのが指揮者の役目。 言ってしまえばプレイヤー同士がどんなに仲違いしたところで関係ないのだ。 その楽器が、奏者本人の物か否かなんて観客には関係ないのと同じように。 だから、この状態だってやろうと思えばできるはずだけど]
そんなのを勉強しに来たんじゃないんだけどな、俺は。
[しかしそれも、多くの人間が集まる組織の側面か。 小さく息をついて、部屋へと戻った]
(59) Cadenza 2010/09/09(Thu) 01時半頃
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― 部屋A ―
[先に戻ったカルヴィンとは必要以上の話をしようとはせず、 制服からジャージに着替えたりシャワーを浴びたり。 世も更けていれば眠気だって普通にやってくる]
おやすみ。
[一言カルヴィンに声をかけ、目を閉じる。 頭の中では昼の合奏での曲が流れ続けていた。
楽器のケースはベッドの下、足元の脇に荷物と一緒に**]
(60) Cadenza 2010/09/09(Thu) 02時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 02時頃
[離れた温もりは冷たさを引き寄せる。
増大させる。
だけど、暗澹の嵐はいつしか
哀しみを連れて雨を降らせた。
だからだろうか。
カルヴィンに盗難を話した時、壊して欲しいだなんて印象を与えたのだろう。]
安心しろよ。
ぶち壊しにしてやるよ?
粉々に、さ。
[くしゃみを我慢している姿に笑って。
なんなら煙草に火をつけて、煙を顔に吐いて遊んだりもしたかもしれない。]
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― 部屋A ―
[朝。 朝食だと呼ぶ声に大きな欠伸をひとつして起き上がる]
ふぁい。今行きます!
[扉の向こうへ返事をして、 髪をくしゃくしゃとしながら着替えをしようと荷物の方へ目を向けた]
―――……………????
[瞬間、ものすごい違和感]
あれ?
[首を傾げ、もう一度荷物―いや、その手前の空間を見て]
ない?!
(65) Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
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[ばっと床に這いつくばってベッドの下を見る。 ――ない。 ふと、カルヴィンの使っているベッドを見る。 ―――見当たらない]
え?あれ?俺、持って…来たよな?
[部屋にカルヴィンはいただろうか? いたとしても彼に気を向ける余裕はない。 Tシャツにジャージ、髪もとかさぬままバタンと部屋を飛び出して 練習室の方へと駆け下りる。
A―ない。 B―ない。 C―ない。 D―ない。 E―ない。 ないない。 ―――――――ないっ!!!!
(66) Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
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― 練習室→食堂 ―
[ピアノの裏も見た。 重なった椅子の下も、向こう側も見た。 カーテンの後ろとか、どこも、かしこも、全部。
けれど、相棒はどこにもいなかった]
―やっべ…。まだ、残ってるのに。 あと3年はあいつしかいないのに…!
[全身から冷や汗が噴き出る。 食堂へ駆け込んで、開口一番]
俺の楽器、知りませんか!
[荒い息のまま、叫ぶように。 きっと形相は必死で、この世の終わりを見たようなものだっただろう]
(68) Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
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― 廊下→練習室A ―
[誰も楽器の行方を知らないと見ると、朝食には見向きもせずに駆け出した。 ばたばたとドアを開閉する音が廊下に響く。
開けられるところは開けた。見えるところは見た。 それでも、楽器は見つからない。 たどり着いた屋上で大の字に倒れこむ。
「盗まれた」
考えたくはなかったが、もうそれしか―]
何で油断したんだよ…。
[普段、一人で泊まる時は楽器は必ず枕元に置いていた。 嫌な予感がした時は、ストラップを手首に巻いていたりもする。 けれど、今回は同室者もいるしそこまで用心をしていなかったのだ。 くそっ。拳を思い切りコンクリへ叩き下ろす。 ―――半端なく痛いだけだった**]
(69) Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
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ヤニクは、そのまま屋上でしばし放心状態**
Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 12時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 15時頃
[携帯は持ってないから
帽子の男には時間と場所だけ指定した。
慣れない場所で初見に近い楽譜。
疲れたのだろうと目に見えてわかるほど、熟睡している楽器の主]
……。
[心は、多分痛まなかった。
重いケースを手に部屋を出る。
残念なことに、誰にも合わなかった。
楽器を渡す際に、少年はクライアントに尋ねた]
…何で楽器盗ろうと思ったわけ。
[理由はさておき、ただ少年は肩を竦めた]
じゃ、俺行くんで。
[今になれば、どう考えたって疑われるのはまず自分。
まあ、今更どうでもいい。
部屋に戻って寝台にもぐる。
何も夢は見なかった気がした]
何でだろうなぁ。
大切なものを奪いたい。
奪われた時の表情が見たい。
それもあるけど。
勝手なエゴ、だろうな。
[楽器を持ち運んできた依頼相手には、笑ってそう告げていた。]
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― 屋上 ―
[「連続で盗むようなやつだから、スコアも楽器も―」 食堂を出たときのバーナバスの声がさっきから頭を回る。
正直、スコア自体に何の価値があるかというと、多分ない。 それが例えば指揮者であるあの部長の熱烈ファンで、 彼の指紋と直筆の文字があるなんてなんてお宝!という話なら別だけど。 破損してしまったとしたら、部長の心理状態のほうがよほど心配だ。
単純に練習をさせないとか、オケの妨害が目的ならばそれで十分だろう。 それでもいずれは新しいスコアで練習は始まる―のだろうけど。
しかし楽器となると話は違う。 楽器の盗難は、転売や破損に直結するうえに、持ち主へのダメージも相当だ。 大体が、盗られた楽器が五体満足で帰ってきましたなんてことがあるか? 聞いたことがない。 あるのは大抵は、実は置き忘れでした、勘違いでしたというものだ]
(106) Cadenza 2010/09/09(Thu) 17時半頃
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もう、どっか行っちゃったかな…。 それとも、木っ端微塵かな…。 あいつ売ったらいくらで売れるんだろう…。
[空を見つめてぽつり呟く。
あの楽器を買ったのは高校に入る少し前。 入学を機に大人サイズの楽器に買い換えたのだが―。
多くは言うまい。 ただ一つ言うなら、「何日も、何週間もだだをこねた」、ということだ。 その代わりとして両親から提示されたは条件とても厳しかった。 しかしそれを飲んでもいいとすら思ったのだ。
だから、自分の楽器にはとても執着をしていた。片時も手放さなかった。 どうしてそんなにそれに拘るのかを聞かれたこともあるが、 音がいい、とか手にしっくり来るのだとか言って、その裏にある本当のことは言わなかった。
―言えなかった。あまりに馬鹿馬鹿しくて。 けれど、自分にはあの楽器意外何もないのは事実]
(108) Cadenza 2010/09/09(Thu) 17時半頃
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一年半しか一緒にいれなかったな……。
[カルヴィンがゆうべ言ったように、奏者がどんな楽器を使おうと観客には関係ない。 でも、奏者は楽器を持たねば仕事ができないわけで。 代わりの楽器なんていくらでもあるだろうし、 その時だけというなら自分もそれで構わないのだけど、 この苦悩にさらに苦悩を増してなお音楽を続ける― そこまで根性が座っているかといえば微妙だ]
俺も、辞めようかな。音楽なんて。
[はは、と軽く笑う。 ちなみに新しい楽器を買うという選択肢は自分に限っては存在しない。 つまり、もうプレーヤーとして仕事はできないということだ。 これから先、数年の間無償で借りられるというのなら話は別だが―負った苦悩は残る]
(109) Cadenza 2010/09/09(Thu) 17時半頃
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あーあ。ばっかばかし。 もうどうでもいいや。やめたやめた!!
[ゆうべの熱はどこへやら。 あまりの心痛に笑うしかなかった。 からからと、ココロの無い音が空へのぼっていく。
涙はとうに枯れ果ててしまった。 ごろんと横になれば、今は雫が伝った跡が頬に残るだけ**]
(112) Cadenza 2010/09/09(Thu) 18時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 18時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 18時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 19時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 19時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/09(Thu) 22時頃
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― 屋上 ―
[意識?ってなんでしょう。もうずいぶんと何も考えていなかったから、 あるのかどうかも忘れていたくらい。 じりじりと熱を増すコンクリートに寝そべったまま、このまま溶けてしまえばいいと思った。 もうここに居たって、何の―。
意味もない]
最後、一緒にできなくなっちゃったな…。 まさか俺の方が先にThe ENDになるとはなあ。
[はは、は――。 口を開くと喉が渇く。 だから目も口も閉じて黙り込んだ。
やがて、屋上の扉が開く音。 それからゆっくりと誰かが近づいてくる。 知ったことか。そのまま寝た振りをしようとした―が]
(165) Cadenza 2010/09/10(Fri) 00時頃
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[聞こえた声に思わず目を開く。 視界に入った光が思ったより強くてすぐに目を細め、 逆光の中に人影を見る。 それが誰かなんて、見ずともわかったけど―]
―大丈夫ですよ。 人間、案外頑丈らしいです。
[へへと笑って、ラルフを見上げる。 体はまだ、起こそうとはしなかった]
いえ、別に。 もうだいぶ、吹っ切れましたから。
[小さく笑んで、そこで漸く半身を起こした]
(166) Cadenza 2010/09/10(Fri) 00時頃
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[接地面積が狭くなると、体感温度は高くなるものなのだと気づいた。 というよりも体を起こした分、風を受けたからだと思うけれど]
いっそ溶けちゃえばいいのにって、思ってました。
[そう言ってくすくすと笑う。 表情に浮かぶのはどうしようもない諦めの色]
え?いや、先輩のせいじゃないですから。 俺が、油断してたのがいけないんです。 カルヴィンが居るから大丈夫だとか思ってたんですけどね。 ―あいつ、番犬にもならなかった。
[あははと笑って空を見る。 ラルフの顔は、さっきから見ようとはしなかった。
―もう一緒の音楽は出来ないとわかっているから、見れなかった]
(174) Cadenza 2010/09/10(Fri) 00時半頃
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[からからと笑っていた口が、ふ、と閉じる。 顔は空を見上げたまま、表情がす、っと抜け落ちる]
だって、ないものはないんですから。 吹っ切るしかないでしょう? 足掻いたって、代わりのものは出てこないし、それに―
[ふっと小さく笑って、そこで漸くラルフの方を見た。 泣きはらして真っ赤だった瞳は、今はおさまっているだろうか―?]
先輩、俺がどうしてあの楽器に固執してたか、知ってます? 聞いたら、くっだらなくて笑っちゃいますよ?
[ふふ、ふと笑みを含んだ]
(175) Cadenza 2010/09/10(Fri) 00時半頃
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だからっ! 関係ないって…言ってるじゃないですか。
[自分のせいだと言うラルフの言葉に、自分の未熟さを痛感した。 結局最後の最後まで心配かけて、困らせて― 伏せた瞳を見て八つ当たりで語気が荒くなるが]
―あ、すいません。でも本当に、先輩のせいじゃない。
[今度は自分が目を伏せ、詫びた]
もう、いいんです。 見つかろうがなかろうが、変わらないものは変わらないから。
[見つかると信じている。そんなラルフの言葉が胸に刺さる。 捨てたはずの希望を揺り動かす。 もう、いい。首を振ってラルフを見る。 泣きそうな表情に一瞬はっとしてその頬に手を伸ばした]
(183) Cadenza 2010/09/10(Fri) 01時半頃
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どうして先輩がそんな顔してるんですか。
[まるで、俺みたいに―
もし、頬に指先が触れたならそのまま掌で覆うように撫でる]
理由?呆れないでくださいよ? 本当にくっだらないんですから。
[くす、と笑って耳元へ口を寄せる]
(184) Cadenza 2010/09/10(Fri) 01時半頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 01時半頃
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え?
[まだ、先輩として関わっていたい。 その言葉に瞬いて、俯いた。
何かを言いたそうにしたが、それも僅かのこと。 その後で、泣き顔のようにも見えるラルフの頬に触れ、 秘密にしていた理由を告げ―]
確かに、思い出の品―ではありますけど。 プロは楽器に執着しないって、カルヴィンにも言われちゃったし。 何のために音楽しているんだろうって思ったら、よくわからなくて。
それに、先輩は―。
[ふ、と少し前の言葉を思い出し、俯いた。]
先輩、ずるいんだもん。
[口調は軽いが、その表情は見せない]
(193) Cadenza 2010/09/10(Fri) 02時頃
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俺、ずっと追っかけてたのに― 届いたと思ったらするって抜けて手の届かないところに行っちゃうし。
そうかと思ったら、もう最後だなんて言って、 俺が追いかけられないところに行こうとするし―。
で、今度は関わっていたい、だなんて。 俺、どこまで追いかければよかったんですかね?
[俯いたまま、顔は上げない。 ただ、想いを口にした勢いで呼吸はやや荒くなっていた]
だから、楽器無くなったのもいい機会だなって。 たまには、俺のほうから逃げたって、いいでしょう?
[楽器が見つかったとしても、追い続けるのは同じ影なのだから]
(194) Cadenza 2010/09/10(Fri) 02時頃
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―いいん、ですか?俺、逃げちゃっても。
[好きにして、いい。その言葉をそう捉えて、問い返す。 俯いたままの口元が、はは、と乾いた笑みを浮かべた]
先輩にとって、俺なんてそんなもんだったんですか。 追いかけているのを知ってて、逃げて。
立ち止まったら手を伸ばすような、真似して―
[もう一度、乾いた笑み]
もう、先輩の背中は、見飽きたんです。 そろそろ、顔を見せてください。 ちゃんと、俺の方をみてくださいよ―
[俯きっぱなしだった顔を、ゆるりと上げる。 面にはいつものような薄い笑みが貼り付いていた。
(202) Cadenza 2010/09/10(Fri) 03時頃
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好きにして―いいんですよね?
[多分、ラルフはそういう意味で言ったのではないだろう。 わかっていたがわざと歪曲して言葉を捉え、にこりと笑む。
一度ラルフの頬に触れ、今は離れていた手を再び頬に添えて、 ぐいとこちらを向けさせようとした]
ずっと、俺だけを見てください。 今まで見えなかった先輩の顔、ちゃんと見せてください。
[そう言って、ゆっくりと唇を寄せていく]
(203) Cadenza 2010/09/10(Fri) 03時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 03時頃
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――……。
[寄せた唇は、拒まれることなく重なった。 片手をラルフの顎に添え、片手を彼の肩に伸ばして引き寄せる。
始めは重ねているだけだった唇。 しかしやがてはその中心をこじ開け、さらに奥へと]
先輩……っ。
[呼ぶ声を染める熱は、降り注ぐ日差しよりもずっと熱い。 このまま溶け合ってしまえばいいのに。 そんな言葉も重ねたままの唇からでは音にはならない。
何も、考えなくていい。 ただ俺だけを見ていれば、それでいい。
瞳に浮かぶのは、今まで抑えこんでいた欲望の色。 このままいっそ― 干乾びそうだった体が、満ちてゆく]
(212) Cadenza 2010/09/10(Fri) 03時半頃
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[息をすることさえ許さぬような、貪欲な口付け。 それはどのくらい続いただろう。 唇を離した瞬間に、息を大きく吸い込んで荒い呼吸を繰り返す]
先輩。俺―ずっと、好きだった、先輩のこと。 だから―もっと一緒に、音を紡ぎたいんだ。
[ラルフの瞳をまっすぐ見る。 ジャージにぼさぼさの髪のままでは告白もへったくれもないけれど―]
もっと一緒に、居たいんだ。
[肩を抱き寄せたままの至近距離で落とす声は囁きとなって零れた]
(215) Cadenza 2010/09/10(Fri) 04時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 04時頃
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[揺れるラルフの瞳を見るたびに、鼓動が早くなる。 押し寄せるような鼓動の波に、気付けば恍惚とした笑みを浮かべていた。
縋るように服の裾を掴まれたのを契機に一度離していた唇を再び重ね、 コンクリの床へ押し倒す。 そこはちょうど貯水タンクの影。照りつける日差しが途切れ、空気の温度が僅かに下がる]
先輩がそんな顔するなんて―知らなかった。
[いやらしい人。まるで俺を煽ってるみたい。 耳元で低い囁きを落とし、目尻に溜まった涙を舌で掬う。 どろりとした欲が、身体を伝って降りて溜まってゆく]
こんなことしたら…嫌われちゃう、かな。
[そっと片手で抱きとめ、片手を下肢へ伸ばす]
こっち、向いて。俺だけ見てないと、だめ。
[伸ばした指先であやすようにしながら、啄ばむように口付けた]
(232) Cadenza 2010/09/10(Fri) 05時頃
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先輩、好き―…。
[理性はとうに消え去っていた。 そうでなければ、物陰とはいえこんな行為に及べる筈がない。
繋がった部分を揺らせば、ラルフの口から甘い声が漏れるか。 それをうっとりとした表情で聞き、耳朶を噛む]
は、あ、うっ…せんぱ、い……す、き…… もっと、お、れに……らる、ふ……
[感情と本能に操られるままに腰を叩きつける。 二人の息と肌が絡み、コンクリにぽたぽたと雫が落ちた―。 若い交わりは、興奮した欲望が収まるまで続くかと思われたが、 不意に訪れた空腹によって理性を呼び戻されてやがてフェードアウトした]
(233) Cadenza 2010/09/10(Fri) 05時頃
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