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【人】 捜査官 ジェフ[診療所の扉を軽く叩く。 (105) 2015/05/15(Fri) 21時頃 |
[憎いという感情は、確かに鼓膜を揺らしました。
憎い。
そう、…憎いの。
[大切な家族を殺されて。
憎む相手がこの子にはいるのです。
それはどこか。
どこか、羨ましくもありました。]
絶対に助かるなんて、謂ってあげられないけど。
手助けなら、喜んでしてあげるわ。
[バレなくても殺されるかもしれません。
それは、彼女も、彼も、私も、かわりません。
だから死なないための手助けなら、いくらでもしてあげましょう。
でなければ、昨夜殺されてしまった『味方』が
いったい何のために死んだのか。]
それが『私たち』が生き延びる道なら。
彼が望んでいたことですものね?
[殺意を芽生えさせる彼女に、私はそぉっと微笑みました。**]
―― 前夜 ――
[ルパートの苦笑
軽口に対する答えははぐらかされたけれど、
少しくらいは、届くものがあっただろうか。
大丈夫だよ、と
「ん」と短い応えだけ向けて。
彼の事を、彼女の事を、
グレッグの相談を受けながら思い出すのは
それが“家族”に関することだったからだろう。]
子供を置いて逝ったか。
――…否、望んでそうしたわけではないだろうけど。
ルパート。
[ぽつ、と零れた音色はかなしげなもの。]
[少女の声
呼ぶそのひとが昨夜選ばれたのだと知っていたが
それを伝えるのは忍びなく言葉がみつからない。
呼びかける相手がかわる
メアリー。
キミは如何したいの?
[きょうだいに語りかけるようにその心を問うけれど
ラディスラヴァの声
[その彼女からの訊ね
彼の親しい相手か。
僕は彼とそれほど親しいわけじゃないから
よくわからない、かな。
――…ああ、レオナルドに深い思い入れはないかな。
死ねば、もののように捨ておくのね。
[オモチャに飽きたこどもが、それを見向きもしないように。
言葉は汗と共に、ポツリと零れました。]
……、ああ ごめんなさい。
メアリーがどうしたいか、だったわね。
[我に返るように戻る、話題。
私は高く澄んだ声をやわらかくして答えました。]
さて、どうしましょう。
私がいく?
あなた(べネット)がいく?
それとも、あなた(メアリー)?
食べるのはレオナルドかしら。
[彼も、失わないための犠牲に見捨てられるのねと。
少しばかり話したことのある、あの顔を思い出しながら訊ねました。]
わたし…、アイツを殺したい。
でも、わたし一人じゃ…多分無理。
だから…
[手伝ってほしいのだけど]
その前に……。
ラディスお姉ちゃん。
見捨てるって…――
昨日言ってたのって…――
マーゴのことだったんだね。
[そこに悼みはあれど
友の死を泣き叫ぶことはなく。
父の死に直面した少女の精神は崩壊寸前で
感情に重りがついているみたいに
目の前の出来事への実感が乏しかった。]
[それでもふと浮かぶのは。
村に響いた、声。
私はレオナルドを食べることを勧めるけれど。
メアリー。
あなたがもし、危険とわかっていても
今すぐにでも彼(スティーブン)を殺したいというのなら。
私は『止めない』わ。
[私は私の考えを述べるけれど、それは強制ではありません。
強要してしまえばそれは、『この村』と変わらない。
我慢し、耐え、黙って従うだけの『共存』。
私たちは『味方』なのですから。
私以外の二人の願いも、思いも。
配慮、しなくては、ね?]
ええそう、私が食い殺したのはマーゴット。
[いつも、彼女の側には助けてくれる手がありました。
いつでも、私の側には助けてくれる手なんてありません。
目が見えぬこと
口がきけぬこと
似たようなものだというのに、
なのになぜ、あの娘の回りには人が集まるのでしょう。]
『知っていたら』止めたかしら?
[彼女もまた、マーゴットの側にあるひとりでしたから。]
[「止めたか」と聞かれて
きっと、昨日のわたしなら
「当たり前だよ!」って返したと思う。]
…わかんない。
わたし…
何かを引き換えにしないと
大事なものは守れないんだって…
そう思ってた。
でも違った。
[楽になりたくて、あの気持ち――オーレリアを殺めた罪悪感――から
逃げたくて、マーゴにネックレスを渡したのに。]
[大好きだよって言ったのに。
自分の大事なものはもっと別にあって。]
多分、わたし
マーゴを引き換えにしようとしたけど
お父さんも守れなかった。
わたし、どこで間違えたのか…――
わかんないよ。
[支離滅裂な返事が
今のせいいっぱいだった。]
ラディスお姉ちゃんも
マーゴが憎かったの?
[そう、自分の大事なものと
誰かの大事なものは同じじゃないのだ。
自分の憎んでいるものもまた
誰かの憎んでるものとは違うのだろうな
とぼんやり考えて。]
[瞳を診察する医師。
(口がきけぬことさえ、知ったのは昨日。)
手を繋ぐ無力な飼い犬(ナイト)。
(ヒーローは理由も謂わず離れ、差し出される手にも応えられない。)
側にいる、歳も近い友人。
(私はいつだって、独り。)]
[それから、少女はぽつぽつと伝えるだろう。
自分の考えた計画を。]
[教会にスティーブンを呼び出して
罪を背負わせるのだと。
大きな十字架を
“背負わせて”
その罪をしょってもらうのだと。]
[問い掛け
――…さあ。
気分次第かな。
[狩りの時間はまだ先とばかりに悠長な言葉。]
[少女の声
彼女が望むのなら動くのも吝かでなく。]
[二人の話題が移ろえば、意識は目の前へと傾く。**]
[思考に重なる声は、幾分と支離滅裂でいて
それでも子供ながらに、こどもだからか
確信を突いたような言葉が重なりました。
憎い?
……、…………そう。
[不自然なほどの間をもってして返るのは
くすくすと、笑いはじめる私の耳障りな笑い声。]
そう、憎かったの。
いいえ、憎いの。
[それはまだ終わっていないという暗示でしょうか。
過去を進行形に変えて、私は話しました。]
[その計画とは別に
二人が一抹の不安を抱いて
例えばレオナルドに保険をかけたとしても
少女には与り知らぬところだろう。
知ったところで、父親を失った不安感から
強まった信頼感に変わりはない**]
[気分次第と返る声は、余裕さえ感じさせるほどでした。
時はまだ先とばかりの言葉遣いに、ゆるうりと笑みを返します。
やがて聞かされるのは、少女の夢物語。
教会で、彼に罪を、十字を背負わせるのだと。
私ならば最後の最後まで、彼には生きて苦痛を味わわせてから
狂い壊れたところを美味しくたべてしまうところだけれど。]
あなたがそうしたいのなら。
私はいつだって『お手伝い』するわ。
[レオナルドは、またいつだって殺すことが出来るでしょう。
狙いはそうっと別へと変化しては、赤い瞳がキラキラと輝くのです。
厚いカーテンの下に隠した、その瞳が。]
[けれど私は、ひとつ保険をかけるでしょう。
それは別の相手を狙うのではなく、同じ相手へ。
上手く隠した牙を、爪を。
十字背負うべき、彼(スティーブン)へ。
命を奪う箱の中。
メアリーさんの名前が確かにあったのを覚えていたのです。
例えば彼女が夢物語を現実にしてしまうよりも前に
もし、『無慈悲な決定』で命を奪われてしまったら。
その時のための、保険と、なるように**]
[黒き獣の心は強き望みに傾く。
少女が望むならばその爪も牙もその者へ。**]
【人】 捜査官 ジェフ―→自宅― (188) 2015/05/16(Sat) 09時半頃 |
【人】 捜査官 ジェフ[瓶を片手に家の中へ、 (189) 2015/05/16(Sat) 10時頃 |
【人】 捜査官 ジェフ[獣の足は軽やかに住宅地を抜ける。 (261) 2015/05/16(Sat) 21時半頃 |
【人】 捜査官 ジェフ 兄さん、俺はおかしいのかな。 (273) 2015/05/16(Sat) 22時頃 |
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