158 Anotherday for "wolves"
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[己の為に、家族の為に、
獲物を狩る事に何の躊躇いがあろう。
そう思いながらも、
脅威となる力を持つ彼女を、
“味方”を疑う隻眼の友を、
その夜の狩りの選択肢からはずし、
より縁の薄いものから選ぶは、甘さ。]
[ジョスランに一瞬の隙を見つけると、
ベネットは獣へと姿を変えて、彼に飛び掛る。
前脚を肩に掛け押し倒し、咽喉に喰らいついて
助けを呼ばれぬようにまずは声を奪う。
牙は白い首筋につぷりと埋まり、
強靭な獣の顎が圧をかけ、その咽喉骨を噛み砕く。
口腔に広がる味は甘く馨しく、
漆黒の獣は、グル、と嬉しげに咽喉を鳴らした。
同じ村に住む同胞に牙を剥く。
一族を率いる族長を屠り、家族の為の糧とした獣は、
禁を犯し同族の味を覚え、また罪を重ねる。]
――…。
[ジョスランを見下ろす獣は双眸を細める。
獲物が女であればもっと楽しめたのに。
ふと浮かぶよこしまな思いは、
女性に聞かせるべきはないとわかるから音にはしない。
彼の首筋からドクドクと流れ出す血の量は多く、
このまま血を失えば死に至るだろう。
糧としての鮮度を優先し、息の根止めるは二の次で。]
ジョスラン、
迫るのが色気のない僕で済まないね。
[届くかどうかも知れぬまま軽口染みた声を向ける。]
[獣は鋭き爪でジョスランの衣服を破り、その肌に傷をつける。
肌に描かれる爪あとからは、じわと赤い珠が浮かんだ。
鼻先を近づけその血を、ざらりとした舌で舐めとり、
更なるを求めるように牙を剥き、肉を抉り隠された中を暴く。
熱き血潮に漆黒が濡れ、深みを増す。
獲物を狩るは本能。
栄養価の高そうな部位を選びそれを抜き出す。
ジョスランの心臓があるべき場所はぽっかりと空洞が口をあけ。
末の妹に与えるための糧を剥ぎ取り終えることには、
すでに息絶えていると知れる。
流れた命は床を濡らし彼の見事な金をも染めて。
別れの言葉を獣は口腔で転がし、立ち去り、
其処に残されるのは物言わぬ彼――。**]
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─ 自宅 ─
[頭の奥が、鈍く重い。 そういや一睡もしていないせいかと納得しながら、家へと戻った男はまず、こべりついた片腕の血を落とし、ついでに身体も適当に洗っていた。 布についた時と同じように、皮膚についた乾いた血も落としづらいという余計な知識を覚えながら。
着替え、眠る前にジョスランからの借り物を洗ってしまおうか。 ドナルドの来訪があったのは、そんなことを思った時だった>>115]
──っ
[変わらず姿があり、借り物を返せるとどうして信じていたのだろう。
とっくに日常は壊れていると知っていたのに、まさか、彼まで喪うとは思っていなくて。
嘘だろう、と。 そう告げたくて開いた口は、それでも声を奏でることはなかった。
今ある状況を思えば、そんな嘘なんて口に出来るわけがないと、鈍く回る頭でも理解出来るから]
(140) 2015/05/20(Wed) 17時頃
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──判った。 マーゴん時は役に立たなかったからな。 せめてダチん時くらいは、働くさ。 ドナルド、お前さんは大丈夫か?
[眠っていないせいか、少しばかり顔から血の気が引いたような感覚。 それでも、ドナルドの申し出にはしかと頷いた。
布は家にあったシーツをいくつかドナルドに渡し、布袋は確か教会にあった筈と己の行き先を決め。 合流を約束して、ジョスランの家へとドナルドを行かせた]
(141) 2015/05/20(Wed) 17時頃
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─ →ジョスラン宅 ─
[布袋を抱え、重い足取りを叱咤して駆けるようにしてジョスランの家へと向かう。 渡した布で、ジョスランは包まれていただろうか。
家に立ち込める死臭は、気づけば嗅ぎなれてしまったような気がして、知らず重い溜息がこぼれてしまう]
──そういや兄さん、どこ行ったんだろうな? もう、会えねぇのかな。 ……ジョスランみたいに。
[ジョスランの傍らにいた、黒い獣。 友人である一匹の姿が見えないことにドナルド同様気づけば、サイラスは首傾げながらぽつりとこぼす。
喋ることはなく、動くことはなく。 ただ死臭を漂わせることとなったジョスランと同様、その傍らにいた獣との別離も予感して。
痛いくらいに目許が乾いていた筈なのに、じわりと視界が滲むことに気づいた]
(142) 2015/05/20(Wed) 17時頃
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っ、何で──!
何でまだ死体が出るんだ!
グレッグ殺せば終わるってのは、甘い考えだって判っていたさ!
でも、でもよぉ……。 同じ一族の仲間ぁ、手にかけたんだ。 終わってくれって願うくらい、許されるだろ──……っ! 終わってくれたって、良かったじゃねぇか……!!
[ぐしゃりと己の前髪を掻き混ぜた片手は、グレッグの血の匂いが、まだわずかに残る腕。
滲む視界を誤魔化すように髪を掻き混ぜ、喉が引きつるような痛みを錯覚しながら、そう叫んでいた]
(143) 2015/05/20(Wed) 17時頃
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──わりぃ、ドナルド。 ちぃとばかし色々ありすぎて、取り乱した。 お前さんより大人げねぇなぁ。 ま、年下だから許してもらえるだろ。
[すんっと鼻を啜り上げたのは一度。 髪を掻き混ぜた手で目をぐしぐしとこすり、そうしてドナルドへと、無理やり笑ってみせた]
兄さんがいてくれないのは残念だが。
ちゃんと、ジョスランを眠らせてやろう。
[言えば引っ込んだ筈の涙がまた出かけ。
無理して浮かべた笑みは、友人を亡くした事実に、くしゃりと歪んだ]
(145) 2015/05/20(Wed) 17時頃
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─ 墓地へと ─
[そうしてドナルドと二人で、ジョスランであった遺体を埋葬するために墓地へと運んだ。 やはり兄さんは現れなくて、それがほんの少しばかり淋しかった。
空が白み始めたばかりの頃に出来たグレッグの墓に視線をやれば、ジョスランの為の墓穴を掘る片腕が重くなる錯覚をする。
まとった血の感触、貫いた肉の感触、そうした時の温度をむざむざと腕が思い出し、少しばかり背筋が寒くなった気がした。
それを溜息と共に追い出し、そうしてドナルドと二人、ジョスランの埋葬を終える。
喪った友人を埋めるための穴を掘る作業は、男二人の手を緩慢とさせたかもしれない]
(146) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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[ジョスランの埋葬を終えれば、安らかに眠る祈りの言葉を捧げる。
マーゴの墓には男が添えた花束が。 スティーブンの墓には、クラリッサから受け取ったもの>>29が添えられている。 クラリッサが土を払ってはいたが、少しばかりよれていたりするのは、供える前に男が指先で直したりして。 思いのほか、見栄えはマシになっただろう。
それでもやはり、売り物にはならない見目には変わりないのだが]
(147) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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……ドナルド。お前さんは、これからどうする? 俺はこれから、宿屋へと向かうつもりだ。 メアリーにグレッグの墓を作ったこと、言ってやりたくてな。
[一通りのことを終え顔を上げれば、隣にいるであろうドナルドを見た。 自己満足なこれからの行動は当然、メアリーに詰られるのを折り込み済みで。
まさか彼女の記憶が混濁しているなんて思いもしない]
(148) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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あと、さ。 クラリッサの力、どう思う? 俺には、ちぃとばかし信じがたい。 ただ、それを警戒してグレッグがああいう行為に出たってんなら、納得出来るんだ。
メアリーの無実を証明しても、クラリッサを生かしておいたら、グレッグを告発する恐れがある。 まぁ、グレッグがいわゆるクロってヤツ前提の話だけどな。
……グレッグがメアリーの傍らにいたかったかどうか、俺が判ずることじゃないけどよ。 告発っつうカタチで疑いの視線がいったら、グレッグはメアリーの傍にいられなくなる可能性もあるって思えば、納得がいくんだ。
……あの娘、大丈夫なんかね。
[告げて。 まだ信用しきれはしない力の持ち主をふと、案ずる言葉を洩らした]
(149) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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あと一個、少し引っかかってることがある。
俺があんま話してねぇからかもだけど、ベネットって誰を疑ってんだろうな? それは、ラディスラヴァにも言えるんだが。
[己の引っかかりをドナルドに告げ、ラディスラヴァについても言及していく。
ただ、サイラスの中のあるラディスラヴァの印象は。 マーゴが生きていた頃、宿屋で見た弱っていた優しく儚げな姿で。
宿屋の裏手で起きている凶行寸前のやり取りを知らない男には、彼女に対する疑念など持ちようがなかった。
まだ、この時は──……]
(150) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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と、長く付き合わせてわりぃな。
取りあえず、俺は宿屋へ行くよ。
[ドナルドとの会話を終えれば、そう口にして。 眠っていない身体の重さに苦笑しながら、宿屋の方へと向かっていく。
まるで呼びつけられるような吼え声>>137を耳にしたのは、宿屋へと続く道が見え始めたのと同時。 ふらつきかけている身体に鞭打ち、男は駆け出すことにした。**]
(151) 2015/05/20(Wed) 17時半頃
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薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2015/05/20(Wed) 17時半頃
薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2015/05/20(Wed) 21時半頃
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─ 宿屋へと ─
[ドナルドと話し終えた男は、その足で宿屋へと向かっていた。 彼と言葉を交わしていると、誰かと話している時に覚えた引っかかりみたいなものは感じられず、気づけば疑わなければならないかもしれない、といった不安の対象外になっていた。
宿屋へと向かう道のりで、誰の声か判らぬ呼び声のような吼え声を聞けば、足は駆ける動きになる。
そうして辿り付いたのは宿屋。 心落ち着く場所だった筈なのに、数日前からどこか億劫な気分になる場所と変わっていたそこ。 建物の方は客もいなければ、働き手もいなくなり、すっかりと静かである。 けれど確かに人の気配や、喧騒は耳に出来──……]
(185) 2015/05/20(Wed) 23時頃
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裏手かよ。 ──……嫌になるなぁ、ちくしょう。
[グレッグの何かが露になった場所。 己がグレッグを手にかけた場所。
それを思えば足も身体も重くなる気はするが。
耳に入る物音は、ただ事ではない。 だからやはり、そこへと足を向けた]
(186) 2015/05/20(Wed) 23時頃
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[そうして向かった宿屋の裏手。]
───!?
[足を止め、飛び込んできた光景に男は両目を瞠らせる。
いたのはメアリーの手を握るベネットと、クラリッサもいたならば彼女の姿も確認し。
次に視線が向くのは、 一頭の影を纏ったような色をした狼と その鉤爪が揮われようとしていた、ラディスラヴァの姿。]
──っ、今度は一体、何が起きてんだよ……?
[そんな男の独り言を拾う者は、いただろうか。
事態が上手く飲み込めない男は、ただ、事のなりゆきを暫し静観しようと立ち尽くす]
(187) 2015/05/20(Wed) 23時頃
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薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2015/05/20(Wed) 23時半頃
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[メアリーに駆け寄るクラリッサと、ベネットの場所が入れ替わる>>190>>191。
メアリーに起きたことを知らぬ男は、どこか心配そうな視線を少女に投げかけるだけに留めておく。 一瞬だけ、落とした筈のグレッグの血の感触がまだ腕にあるような気がした。
ゆるりと首を振るベネットを認めれば、今眼前における光景の詳細が彼にも判らないと知る]
(194) 2015/05/21(Thu) 00時頃
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俺もよく判んねぇし、先に来てたベネットにも判らんらしい。
[ドナルドがこちらに来るのを確認すれば>>198、男はゆるりと首を横に振った]
今いる連中確認すると、あの黒いの。アルカイドか?
[そう独り言を洩らし、視線は黒い狼とラディスラヴァのほうへと]
(199) 2015/05/21(Thu) 00時半頃
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止めてって、一体何があったんだクラリッサ!?
……また何か、『視た』のか?
[クラリッサの叫び>>200を聞けば、はたと気づいたように彼女に問いかける。
止めろと言われたサイラスに、ラディスラヴァは何か言っただろうか。
黒い狼の様子を窺いつつ、ラディスラヴァの隙があるならば、後ろから羽交い絞めにしてみようと。 いつでも駆け出せるように、足をじりと一歩踏み出していた]
(202) 2015/05/21(Thu) 00時半頃
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[元に戻ったアルカイドから、状況が説明される>>210。
それからラディスラヴァに視線を移すが、彼女からは何か聞けただろうか。 暫し男は、やり取りを静観して。 何かあるならば、ラディスラヴァを取り押さえる心算を持って状況を見守る。**]
(212) 2015/05/21(Thu) 01時頃
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薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2015/05/21(Thu) 01時頃
[こんなことになるなんて
そんな声を聞きながら。
私が思い出していたのは遠い遠い昔のこと。
私の歯車はもうずっと昔から狂っていて。
ずれて軋んだまま、動かし続けてきたから。]
─二度と訪れない、あの頃─
[それはまだ、私が声を殺すことなく
幼馴染達と遊んでいた頃のことです。
私は男の子達と一緒に、野山を駆け回り遊んでいました。
私達のヒーローを追いかけて。
私は手を引かれて。
夕日に変わって、地平線が赤く染まっていても。
時を惜しむようにかけられる言葉。]
「もう少しだけ。
あと少しだけ、遊ぼう。」
…うんっ。
[まだ前髪の伸びていない私の瞳が
夕陽の色をたたえては、輝いていた、幼い時。]
…ただ、いま。
[家になんて、帰りたくはありませんでした。
それでも時間が来たなら、子供の私はその場所に帰ることしか出来ず
地獄の門を開けるような心地で、家の扉を空けていたように思います。
扉に鍵がかかれば、そこから拷問の始まりでした。
私を生んだ母親が、何を思っていたのかわかりません。
私を生ませた父親が、何を考えていたのかわかりません。
私に注がれるのは愛情ではなく。
暴力と、暴言と、嘲笑だけ。
見えない部分を叩かれては、大人たちの視線が見下ろしてきました。
真っ赤な、血の色をした瞳で。
「なんでお前なんて生んでしまったんだろうね?」
そんな風に、繰り返される毎日でした。]
[望まれたことなんて、ありません。
だから、望むことなんて、ありません。
メアリーさんのように。
『本当の』家族に愛されることは羨ましい。
ベネットさんのように。
守る誰かがいることは羨ましい。
けれど。
私は誰のヒロインでも、主人公でもないから。]
────コツリ。
[お父さんとお母さんは、足元に転がっていました。
靴が触れたのはお母さんの脛でしょうか。
それともお父さんの腕でしょうか。
夜になっても、次の日になっても、更に次の日が来ても。
両親が帰ってくることはありません。
──私は、二人のことが大嫌いだったから。
(──二人は、私のことが大嫌いだったから。)
それから私が帰る家は、いつだって独りきり。
いつだって、こうして独りきりなのです。]
[声を出さなくなったのは。
喉を絞めるようになったのは。
この頃からだということを、誰も知るはずのない、おはなし*]
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