82 【薔薇村企画】 Contagio ―共鳴―
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[抱き寄せたケヴィンの身体は、昨夜よりずっと冷たかった。>>377 けれど、まだ確かに、体温を感じることができた。 それは、まだ腕や胸元の硬化が浅いのだということと同時に、ケヴィンにまだ息があるのだという証でもあった。]
…………。
[こんな際になってまで、弟に甘え、馬鹿な願い事をしてしまった。 なのに彼は、笑ってくれた。 それだけで胸が熱く、苦しい。
ちらりとだけ、キリシマに視線を向ける。 向けられた背中に、感謝を示すかのように。]
(405) 2013/05/16(Thu) 12時半頃
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[顎に触れられ、寄せられれば。 傷に触れぬよう、けれど精一杯の想いを込め、抱きしめて]
………愛してる。
[重ねた唇も、まだ温かさを感じられた。]
ケヴィン………… ……
(406) 2013/05/16(Thu) 12時半頃
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[いっそこのまま、時が止まってはくれないか。 病の進行も、弟の脇腹から流れ出る血も、もうここまでで……]
…………。
[その時、ふっと、腕にかかっていたケヴィンの重さが消えた気がした。 重さが消えたわけではなく、己の腕が硬化したのだということには、すぐに気付いてしまったけれど。
時は、やはり止まってなどくれないようだ。]
ケヴィ……
[困ったような笑みをケヴィンに向ける。 最期まで、ずっと、抱きしめていたいとは思ってはいたが。 こんな形で叶ってしまうだなんて。]
(409) 2013/05/16(Thu) 12時半頃
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……。
[ずっと、ケヴィンを見つめ続けていた左眼が動く。 誰かが、こちらへ駈けてくる。 音が、声が、いつもと違って聞こえるのは、症状が右耳にまで及んだ為か。]
攻芸に、チア、キ……。
[緩やかに首を擡げる。]
どうした、チアキ……そんな顔をして。
[いつものように髪を撫でてやろうにも、腕が動かない。]
(411) 2013/05/16(Thu) 13時頃
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[弟は、こんな時でも、師であった。 言葉が紡がれるたび、おそらく、命も削れてゆくのだろうけれど、それを止めることなど、できるはずがなかった。
だからただ、静かに。 弟が、チアキと攻芸に欠ける最期の言葉に。 しずかに、耳を傾ける。]
(412) 2013/05/16(Thu) 13時頃
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[ケヴィンの手が力を失い、するりと地に落ちるのが見えた。 チアキの慟哭が響く。]
……あぁ……
[そうだ、弟にはまだ、ラーマとして生まれ変わり、彼らを見守るという選択が残されていた。]
…………。
[告げるべき、と思いながらも、声にならない。 手放したくない。
こんな時、どうしても自分本位となってしまうあたり、弟とは違い、やはり自分は師には向いていないなと、苦笑する。]
(415) 2013/05/16(Thu) 13時頃
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!!
[不意に響いた、弟の大きな声に、びくりとする。 そして、チアキへ向けた遺言があまりにも彼らしくて、おかしくて。 泣きたいのに、笑ってしまった。]
まったく。 他にもっと、言うことはなかったのか……。
………。
[けれど自分でも、他に、何を言うべきなのか浮かばなかった。 笑いながらも、左眼からは涙が止め処なく流れ、今度こそ本当に体温をなくしてしまったケヴィンの頬へ、胸へ、ぽたぽたと零れ落ちる。]
(421) 2013/05/16(Thu) 13時半頃
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[弟が、これだけ気丈に、笑いながら逝ったのだ。 ならば自分も、兄として、恥じぬように……]
チアキ。
ケヴィンは、黒玉病で死んだわけではないから。 だから、ラーマになれる。
大丈夫……。
きっと、また………
[また会える。 その声は、掠れてしまったかもしれないけれど。]
(423) 2013/05/16(Thu) 13時半頃
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それと、ひとつ。 頼み事をしても、いいかな?
[視線で示すのは、ケヴィンの手。]
私は、もう、動けないから。
掴んで……重ねて、くれないかな。 ……手を。
[できれば、手を握り合って逝きたかったが。 それができないのならば、せめて、重ね合わせて……]
(425) 2013/05/16(Thu) 14時頃
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………ありがとう。
[重ねられた弟の、血塗れの手は、きっと、冷たかっただろう。 けれど、黒色に変化した己の手は、そんなことも感じ取れない。]
攻芸、チアキ……。
[心中見透かされたか、攻芸に言われた>>424 チアキの声は、涙に振るえているのが分かる>>427]
……っふは。 まったく。
私が一番、大人げない。
[あまりに情けなくて、自嘲した。]
(430) 2013/05/16(Thu) 14時頃
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[硬化は既に、肩まで達した。 髪ももう、殆ど風に靡いていないだろう。
喉と、唇がまだ健在なのは、アメノマの、せめてもの慈悲か。]
眠れ 主にありて 憩え 其の御手に 妨げるものは 何処にもなく
恐れることは 何もなく
眠れ とこしえの朝が おとずれるまで───……
[紡ぐのは、鎮魂歌《レクイエム》
まだほんの僅か、頬に感じる風に、乗せるように。]
(431) 2013/05/16(Thu) 14時半頃
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───……
[頭がぼーっとする。 思考力の低下は、侵蝕が脳差し掛かった証か。]
……。
[左眼の光も消えかける。 一瞬、そこにチアキがいることを忘れ、ケヴィンに唇を重ね合わせた。
緩やかに、途中まで身を起こしたところで、背も首も黒く染まりきった。]
─── …… ……♪
(436) 2013/05/16(Thu) 14時半頃
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春の朝 露に匂う 花よりなお美しく
秋の宵 空に澄む 月よりなおさやけし
夏の夕暮れ 青葉わたる 風よりなおかぐわしく
冬の日に 降り積もる 雪よりなお清けし
我が 愛しき───……
[……ぱりん。
何かが砕けたような、乾いた、高い音が響いた。]
(437) 2013/05/16(Thu) 14時半頃
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─────。
[風が止めば。
そこにもう、歌声は、ない**]
(438) 2013/05/16(Thu) 15時頃
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