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[ジョスランに一瞬の隙を見つけると、
ベネットは獣へと姿を変えて、彼に飛び掛る。
前脚を肩に掛け押し倒し、咽喉に喰らいついて
助けを呼ばれぬようにまずは声を奪う。
牙は白い首筋につぷりと埋まり、
強靭な獣の顎が圧をかけ、その咽喉骨を噛み砕く。
口腔に広がる味は甘く馨しく、
漆黒の獣は、グル、と嬉しげに咽喉を鳴らした。
同じ村に住む同胞に牙を剥く。
一族を率いる族長を屠り、家族の為の糧とした獣は、
禁を犯し同族の味を覚え、また罪を重ねる。]
――…。
[ジョスランを見下ろす獣は双眸を細める。
獲物が女であればもっと楽しめたのに。
ふと浮かぶよこしまな思いは、
女性に聞かせるべきはないとわかるから音にはしない。
彼の首筋からドクドクと流れ出す血の量は多く、
このまま血を失えば死に至るだろう。
糧としての鮮度を優先し、息の根止めるは二の次で。]
ジョスラン、
迫るのが色気のない僕で済まないね。
[届くかどうかも知れぬまま軽口染みた声を向ける。]
[獣は鋭き爪でジョスランの衣服を破り、その肌に傷をつける。
肌に描かれる爪あとからは、じわと赤い珠が浮かんだ。
鼻先を近づけその血を、ざらりとした舌で舐めとり、
更なるを求めるように牙を剥き、肉を抉り隠された中を暴く。
熱き血潮に漆黒が濡れ、深みを増す。
獲物を狩るは本能。
栄養価の高そうな部位を選びそれを抜き出す。
ジョスランの心臓があるべき場所はぽっかりと空洞が口をあけ。
末の妹に与えるための糧を剥ぎ取り終えることには、
すでに息絶えていると知れる。
流れた命は床を濡らし彼の見事な金をも染めて。
別れの言葉を獣は口腔で転がし、立ち去り、
其処に残されるのは物言わぬ彼――。**]
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[私が声を出せたことに、きっと驚いたのでしょう。>>97>>98 (127) 2015/05/20(Wed) 14時半頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ すぐにみんなのところへ、つれていってあげる。 (128) 2015/05/20(Wed) 14時半頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[冷たい、氷の瞳。 (129) 2015/05/20(Wed) 14時半頃 |
[こんなことになるなんて
そんな声を聞きながら。
私が思い出していたのは遠い遠い昔のこと。
私の歯車はもうずっと昔から狂っていて。
ずれて軋んだまま、動かし続けてきたから。]
─二度と訪れない、あの頃─
[それはまだ、私が声を殺すことなく
幼馴染達と遊んでいた頃のことです。
私は男の子達と一緒に、野山を駆け回り遊んでいました。
私達のヒーローを追いかけて。
私は手を引かれて。
夕日に変わって、地平線が赤く染まっていても。
時を惜しむようにかけられる言葉。]
「もう少しだけ。
あと少しだけ、遊ぼう。」
…うんっ。
[まだ前髪の伸びていない私の瞳が
夕陽の色をたたえては、輝いていた、幼い時。]
…ただ、いま。
[家になんて、帰りたくはありませんでした。
それでも時間が来たなら、子供の私はその場所に帰ることしか出来ず
地獄の門を開けるような心地で、家の扉を空けていたように思います。
扉に鍵がかかれば、そこから拷問の始まりでした。
私を生んだ母親が、何を思っていたのかわかりません。
私を生ませた父親が、何を考えていたのかわかりません。
私に注がれるのは愛情ではなく。
暴力と、暴言と、嘲笑だけ。
見えない部分を叩かれては、大人たちの視線が見下ろしてきました。
真っ赤な、血の色をした瞳で。
「なんでお前なんて生んでしまったんだろうね?」
そんな風に、繰り返される毎日でした。]
[望まれたことなんて、ありません。
だから、望むことなんて、ありません。
メアリーさんのように。
『本当の』家族に愛されることは羨ましい。
ベネットさんのように。
守る誰かがいることは羨ましい。
けれど。
私は誰のヒロインでも、主人公でもないから。]
[───だから、みんな殺しちゃえばいいんだ。]
────コツリ。
[お父さんとお母さんは、足元に転がっていました。
靴が触れたのはお母さんの脛でしょうか。
それともお父さんの腕でしょうか。
夜になっても、次の日になっても、更に次の日が来ても。
両親が帰ってくることはありません。
──私は、二人のことが大嫌いだったから。
(──二人は、私のことが大嫌いだったから。)
それから私が帰る家は、いつだって独りきり。
いつだって、こうして独りきりなのです。]
[声を出さなくなったのは。
喉を絞めるようになったのは。
この頃からだということを、誰も知るはずのない、おはなし*]
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ─宿屋裏口─ (230) 2015/05/21(Thu) 02時頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ 慕っていたはずの長様への裏切り。 (231) 2015/05/21(Thu) 02時頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[やがて彼は、裡に禍々しいものをたたえ。 (232) 2015/05/21(Thu) 02時頃 |
ヒロインでも、主人公でもない。
殺されていく『魔女』。
お似合いじゃない。
[鈴の音一つ、ころりとたてて。]
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[肩への閃き。>>136 (236) 2015/05/21(Thu) 02時半頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[それでも、私の幼馴染は「なにか」と言葉をうながしてきたでしょうか。 (241) 2015/05/21(Thu) 02時半頃 |
![]() | 【人】 村娘 ラディスラヴァ[それから、どのくらいしてでしょう。 (243) 2015/05/21(Thu) 02時半頃 |
キミはキミだよ、ラディスラヴァ。
『魔女』なんて肩書きでは括れない。
本当は優しい女の子だ。
[鈴の音に、低く堪えるような音を響かせ]
謂ったでしょう、私は餓鬼なんて嫌いだって。
そうやって勝手に、いいように受け取って。
世の中全てから愛されていると思ってるの。
[か細い、純粋な主張も
一蹴してしまう、嘲笑と共に。
“味方”といった彼が、幼馴染へ弁明してくれていても
『本当は』?
本当の私なんて、もう何処にだっていないの。
やめて頂戴、吐き気がするわ。
[ころり、模造品の音一つ。]
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