191 The wonderful world -7 days of MORI-
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[その時のイベント、― 一度きりのサイン会は、 僕に改めて様々なことを感じさせてくれました。
老若男女、出会ったこともない様々な人が、僕の絵本を読んでいる。 僕の描いた世界に魅力を感じてくれている。
何だか、少しだけ認められたような気がして、 そして、更に頑張らないと、とも。 立派な、一人の作家にならないと。そうも思えたのです。
親の七光りなんかじゃない、僕だけの力で。]
(515) 2016/06/06(Mon) 19時頃
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こちらこそ、このような機会を設けていただいて、 なんとお礼を言えばいいか。 ……えぇと、今日は、北見さんや、読者さんたちの感想を いっぱい聞けて、本当に良かったです。
[たどたどしい感謝の言葉の後、 ありがとうございました、とか、 また何かあったらよろしくお願いします、と、頭を下げて、 僕は、この日のために練習してきたサインを、絵本の裏表紙に記しました。
そうして、それを受け取ったビジネスマンの恭しい挙動>>273に、 まだまだ子供の僕は、少しだけ羨望の眼差しを向けたのでした。*]
(516) 2016/06/06(Mon) 19時頃
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―回想:とある少年のとある夏の日―
[その日は、夕日がとてもきれいでした。 遠くで聞こえる、セミの鳴き声。家へ帰ろうと急かすような、烏の鳴き声。 どこか現実味のない、オレンジ色に染まった教室で、僕はスケッチブックに向き合っていました。
家が嫌いとか、用事があったとか、特に理由があった訳ではなかったと思います。 ただ、気が向いたから。それだけのこと。
ですから、ぺた、ぺた、聞きなれない足音を響かせて、 見慣れたクラスメイトの顔が見えた時には、少しばかり驚いたものでした。
聞きなれない音>>455は、苦笑を零して、聞こえないふり。 彼女の言う>>457通りに。 そうして、目の前に座って、僕の絵をじっと見るその表情を伺うのです。]
(522) 2016/06/06(Mon) 20時頃
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[その眼差しは、まっすぐに、絵へと ――赤い軍服を着た、おもちゃの兵隊たちへと向けられています。
バカにしてやろう、とか、子供っぽい、とか。 そういった、いやな気持ちがあるようには思えませんでしたから、 僕は、伸ばされた指>>458を止めることもしませんでした。 すぐに、それもひっこめられてしまったのですが。]
(523) 2016/06/06(Mon) 20時頃
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「僕ら、まだ、中学生じゃない」 「大人になったら、きっと」 「僕や、君がいなくちゃ、成り立たない世界も、あるよ」
[気を抜いたら泣いてしまいそうな、そんな顔だと思いました。>>459 それに静かに耳を傾けてから、訥々と語った言葉は、 ひょっとしたら、彼女でなく、自分に言い聞かせたかっただけかもしれません。 頭を過った著名人の―父の顔を振り払って、僕もへらりと笑って見せました。]
(524) 2016/06/06(Mon) 20時頃
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[ちゅうがくせーの放課後というには、些か重すぎる夕暮れ。
あれから、数年の時を経ましたが、 あの時の彼女は、自分にとっての大切なものを ―“すばらしいせかい”を、見つけられたのでしょうか。 ふと、そんな事を思うのです。
尤も、今の僕には、そんな大それた事を聞く勇気はありはしないのです。 ただ、あの夕暮れ、彼女に投げかけた言葉が、 自分をちくちくと突き刺す痛みに、黙って耐えるしかないのですから。*]
(532) 2016/06/06(Mon) 20時頃
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童話作家 ネルは、メモを貼った。
2016/06/06(Mon) 20時半頃
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[恐怖は、冷静さを失わせます。 兵隊ががむしゃらに狼を撃ち抜き、切りつけていきますが、 僕本人には戦うすべはありませんし、未だ、手足の先に痺れも残っていました。
それを狙ってなのか、はたまた偶然か。 一羽の烏が僕に向かって、その嘴を向けたものですから、咄嗟に僕は目を瞑って、頭を抱えました。
黒い鳥の横腹に直撃する、光の弾>>526。 目の前で炸裂したそれは、ばちばちと音を立てていたので、きっと電撃か何かなのでしょう。]
あ、ありがとうございます……!
[壁の向こうかららしい助太刀に、僕は一瞬だけ目線をそちらに向けて。 丁度その時でしょうか。あれほどいたノイズが、あらかた片付いたことに気付いたのは。]
(577) 2016/06/06(Mon) 22時頃
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[先程まで立ちふさがっていた壁は、見る影もありません。 ですから、僕は、その場にぺたりと膝をついて、はぁ、と大きく一つため息を吐きました。]
僕は、大丈夫なんだけど……。 その、ルイの方が、
[僕の方に駆け寄ってきてくれた>>530彼の腕を、小さくさすります。 何せ、建物の2階ほどの高さから落ちていたのですから、到底無事だったとは思えません。
その手を借りて、立ち上がって。 そうして、空を見上げれば、昨日のメリー・ポピンズがいたものですから、 きっと、僕ら二人は少しだけ、それを警戒するように眺めていたでしょうか。]
(578) 2016/06/06(Mon) 22時頃
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なんだか、今日は機嫌が良さそうな、気がするし……。 いいんじゃないかな?
[多分、と小声で付け足して、そうして、彼と共に周囲を見回しました。>>563
本屋という単語には、あ、と小さく声をあげました。 そんな我儘のようなことまで覚えていてくれて、 それを僕自身がすっかり忘れていただけに、余計に申し訳なさが募りました。]
出来れば、だけど。 時間も、あまり残ってないし。
[だから、気にしないで、と言えば、彼はどんな反応をしたでしょうか。 手の甲の赤い数字は、いつの間にやら薄くなっていましたが、 それでも、カウントダウンを続けています。]
それじゃあ、うん。
[扉を指し示す彼の服の裾を引いて、 そうして、一緒にいこう、と示したでしょうか。*]
(580) 2016/06/06(Mon) 22時頃
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―ロイヤルホテル九曜―
わぁ……!
[きらびやかな照明に、ふかふかした絨毯。 いかにもなその場所に、僕は感嘆の声を上げて天井のシャンデリアを見上げました。]
僕よりも、ルイの方が……。 大丈夫?怪我は……
[かなりの高さから落ちたにもかかわらず、 僕の事ばかり心配する幼馴染>>621に、 小さく手を振って、僕はそう答えます。
出来るなら、次のミッションまで休んでいてほしいくらいなのに、 それでも、僕の我儘を覚えていてくれている彼に、 嬉しい、というより、なんだか申し訳なさが勝ってしまいます。]
(636) 2016/06/06(Mon) 23時半頃
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でも、ルイに無理はしてほしくないよ……。 だって、ミッションは7日間もあるんでしょ?
[彼に無理をさせてもしものことがあってはたまりません。 だから、ね?と首を傾げて、暗にこの場にとどまりたいという意思を示しました。
そりゃあ、出来る事なら、行きたい、と。 その気持ちがないわけではありませんが、消耗しているであろう幼馴染に無理をさせるほどのことでもありません。
ですから、僕らは、少しの休息を得るために、きらびやかな様相のその場にとどまることにしたでしょうか。 かつて、一緒に眺めた絵本。ガラスの靴を履いたお姫様のお城に似ているなぁ、なんて。 そんな他愛のない言葉を交わしながら。**]
(641) 2016/06/06(Mon) 23時半頃
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童話作家 ネルは、メモを貼った。
2016/06/06(Mon) 23時半頃
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