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[なんとか幾つかの洋服を着こなす事が出来た。
これで外に出ることも問題なく、部屋に戻ることも出来るだろう。
そうして、自分の格好に余裕が生まれれば、ようやくクリスの顔を見ることが出来た。]
………………。
[自分が強引に起こした行動の結果だ。
どう考えても自分が悪く、自分が何か言えることなど何も無い。
だから無言を貫く。貫くために押し込んだ布の塊だ。
引っ張り出された布を視線で追う。]
クリ…っ!?
[逃れられない、逃れるつもりのない唇に、その身体を抱き寄せたくなる。
離れた直後に呟かれる二言、別れの言葉…。]
…や…だっ…。
[そう漏れるのは自分の本音、薬のせい…言ってしまえ。
それで選んでもらえ、まだきっと…自分の中の悪魔が誘惑する。]
『わかった。すまない。』
[そうだ、自分のせいなのだ。自分の責任だ。
この責任は自分一人が負うべきものなのだ。
だから、その端末を押し当てて、喋り出さないように片手で必死に口を抑えた。]
[部屋を出て行くクリスの後ろ姿すらろくに見送る事が出来ずに身体は膝を思って折ってしゃがみ込む。]
……?あ…い、や…だ……。
[別れたくない。当たり前だ。いつの間にここまて彼女にほれこんでしまったのか?
それでも想いが変わることはない。]
だったら最後まで、もっと深く…全部聞いて知っていけよ…。
聞いて欲しかった…よ…。
[届けたい想いのあった言葉は、届けたくも届かない。
本音はそのまま空に消えて。]
—アイリスの部屋(昨日夜)—
あたしなら——うーん、悩むけどこっち!
イチジクの多い方がオススメかな。
[アイリスの悩んでいる様子を少女は楽しそうに眺める。
一人っ子であったため、大家族のジレンマを少女は知らない。
思い返してみればお茶を淹れる手際もとても良かったような気がするのは、
手伝いや気配りが必要とされる大家族ならではだろうか。
どちらが良いかと聞かれると真剣な様子で両方の皿に視線が行ったり来たり
しばらく考えてからオススメを答えて]
ああ、遠目から。
[心配そうな顔をしている理由が察せられて少女は得心がいく。
ぱんぱんに膨らんだ白衣のポケット、左目と右手首に巻き付く包帯型の端末。
その印象と学内の噂しか入らなかったら心配にもなるだろう。
一風変わった彼女のスタイルに子供のようにはしゃいで目を輝かせられるのは、
少女のような潜在的に目覚める可能性があるか、
宇宙の意志を受信するなどして既に一線を越えてしまった者だと思う。
クリスのことを知って貰えたらきっとアイリスの不安を取り除けるだろうと、
彼女の背景が分かれば自然少女の向ける笑みも力強く。
友人に対して思っていることを話すと、ほっと彼女の緊張が和らぐのを感じた]
まあ、最初はビックリするね。
[クリスを初めて見る人々の反応を思い出して、目を逸らし頬を指で叩いて言う。
少女も覚悟を示すものとか名乗っていたことは当分言わないでおこうと心に誓う。
——ケイイチ、頼むから忘れてて!
信頼と安堵がこもった言葉からアイリスがどんなに兄を慕っているかが、
少女の心にも届いて、また一つケイイチの印象が良い方向に転がった。
少し話しただけでも実直さが端々から伺えるアイリスがこんなに慕う兄なら、
友人が間違って惚れ込んだ(実際始まりは勘違いだが)ということもあるまい]
ね、アイリスも会いに行ってみたら!
案内するよ! 結婚前に話してみるのって大事でしょ。
[その後は理科室での話をしたり、礼を言われると照れくさそうにしたりして。
つついていたケーキがなくなる頃にはすっかり寛いでいた。
部屋に入ったとは逆に、落ち着いた様子で手を振り彼女の部屋を後にした**]
—食堂を去ってから—
[食堂での話が終わると端末に新たなメールが届いている事に気づいた。
一件は化学の——な、なんて名前だっけ!クロフォン?クロフォース?
少しずつ名前が頭に入りかけている先生から届いたメールで、>>3:@13
もう一件は、クリスからの返信だった。>>+35]
そう!クロフォード先生!
[十把一絡げに先生として認識していた一人を、ぴしっと人差し指を立てて
スクロールが名前に行き着く前に大きく声に出した。
周りの人が突然の独り言に驚いてざわざわと振り返る。少し恥ずかしい]
——あ。
[画面に走らせていた手が滑ってスクロールが下方まで飛んで行く。
追伸の一行目にあるおめでとうが飛び込んできて目を見開いた。
チップを提出した時の引きつった顔。
駆け込みってレベルじゃねーぞと激怒されても仕方ない日程で
大量のレポートを押し付けたのに、おめでとうが来るとは予想外だった。
少しずつ反省をしていたところでもあった少女は息を呑んで、
続きを読もうと指を動かし]
なんだそれ。
[むすっと頬を膨らませた。
ごめんだとは失礼な、言われずとも卒業も就職も勝ち取ってやると反骨心が疼く
だいたい、先生という人種は毎度一言余計なのだ。
分からず屋……でもないクロ昆布め。
ぽちぽちと端末に文章を打ち込んで行く。これは復讐なのだ]
件名:Re:Re:Re:レポート提出の件について
突然ですみません。
先生、甘いものは好きですか?
[少し浮いたポイントでプリンでも送ってやろう。もっと腹が出てしまえ]
[力を入れて送信を押して、次にクリスのメールを開くとどきりとした。
酷くはないと聞いていたが熱は出ていたのかと今更のように知って、
クリスも戻れないのでは心配だとそわと足を踏む。
知り合ったばかりで表情の変化も分かりにくい。
長々と語ることも少なかったアオイが特別だと伝えてくれたメールは
徐々に影響を及ぼしているとは少女本人も気づかない話]
冷蔵庫の食べ物とテーブルの上の解熱剤。
[頭の中に書き留めて、クリスに簡単な返信を送る]
件名:Re:
うん、任せられた!行ってくるよ。
[もうすぐお昼時かと時刻表示を見て、アオイの部屋に直接向かう**]
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィ紙の本はいいよー。とてもいい。 (85) 2015/03/08(Sun) 21時半頃 |
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィちょ……、大丈夫? (88) 2015/03/08(Sun) 22時半頃 |
—ホーム・アオイ、クリス部屋—
入るよ。
[倍速での移動はあっという間、ノックはしないで扉を開ける。
クリスとは理科室でばかり会っていたから部屋に足を踏み入れるのは初めてだ。
似た作りの二人部屋に同じように並ぶ対の机、一つには桃缶が積まれているか。
住む人によって同じホームの部屋でも味が変わるのだなと思った。
アオイは起きているだろうか、膨らんだ布団が見える方に歩み寄る]
おはよう? 来ちゃった。
[膝を折ってベッドサイドに笑みを向ける。
目を覚ましたならまだ無理に起きなくて良いよとアオイに言うだろう。
顔色はやはりあまり良くないように見えて心配そうに覗き込む。
おもむろにアオイの額へと手を伸ばし少女の体温と比べてみた——熱い]
あら、こりゃしんどいね。
お腹空いてる? 食べられるなら食べた方が元気でるよ。
[アオイのリクエストはあっただろうか。
少女は立ち上がり冷蔵庫の中身を物色する。ヨーグルトに杏仁豆腐。
銀色の袋は食堂の人気の一品、プリンをたくさん詰めると貰えるパウチか、
合間から見える白いキャップが主張する味はバナナミルク。
バナナは病人食に良いと聞く。バナナ味にその効能があるかは分からないが
薬学部のクリスらしい選び方だと少女は思った。
その中の一つとプラスチックのスプーンを携えて、再度隣に膝をつくだろう]
はい、どうぞ。
[蓋を開けてスプーンを差し出してみた]
[ぽちぽちと遅れて送られるメール。]
アーサーへ
気にしないで大丈夫ですよ。
あたしが何か貴方の役に立てたのなら嬉しいです。
いつか貴方に逢えたらいいなと思いながら。
モニカより
………………。
(完成させてどうするというのだろうか?
いつでも会えるように、距離を0にしたかったはずなのに…。
そのために時間跳躍ではなく、空間跳躍を優先させた…。
それなのに、その実験が元でこんなことになってしまっては全くもって意味がないな。
……それならいっそ…。)
[空間跳躍理論を見つめ直しながら、もう一つの、時間跳躍理論を改めて確認する。]
(時間跳躍を完成させて、この実験を行う前に戻ることはできないだろうか?
そして、その実験を止めて…。)
[そこまで思考を進めて首を横に振る。
きっとそれは意味がない、むしろうまくいかないのではないかと思ってしまった。]
杏仁豆腐ね、おっけ。
[脅かさないように早さには丹念に気を配りながら杏仁豆腐を取ってくる。
食べ始めると体育座りの格好で隣に控える]
ううん、食事はまた同窓会とかもあるもん。
楽しみだったけどこれが最後じゃないしさ。
アオイが倒れたって聞いたときは驚いたけどね。
水もいる?
[喋る様子の辿々しさに喉が痛いのかもしれないと推察して聞いてみる]
(もしそれが本当に可能であれば、俺は確実にやっているはずだ。
つまり、あの実験を行う前に、俺が俺自身に会っていなければならない。
だが、それがないということは……。)
[もう一度思考を進める。
考えられる可能性を仮定して、結論を生み出していく。]
(一つは、変えられた過去は別の未来を歩み出す。
つまり、そこでパラレルワールドが生まれるということ。
もしかすると、上手くいっている未来と、今の未来とが既に出来上がっているのだろう。
もう一つは、理論上、時間跳躍で過去を変える事が世界になんらかの危険を生み出してしまう、あるいは過去の改変が叶わないということ。
パラドックス的な要因があれば、その過去は変わらないのだろう。
どれも可能性の一つでしかないが…。)
[或いは、この事件でこんな風に考えてしまったことで、自分自身が時間跳躍理論を完成させないまま終わらせてしまう可能性もある。
考えれば考えるほど深みにはまっていく…。]
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィあたしだって数えるほどしか読んだことないけどね。 (99) 2015/03/09(Mon) 00時半頃 |
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィ繊細? (101) 2015/03/09(Mon) 00時半頃 |
[彼に言われた言葉が耳から、脳から離れない。
『選ぶのは、彼女だろ。
お前は、同じことをされて嬉しいか?』
言葉を反芻しながら端末のメール機能を起動する。]
『To:クリス
Message:
それでも俺は生涯、貴女だけを愛している。』
[送るつもりはない。どう伝えればいいのか分からないからだ。
文面を何度も打ち込んでは消して、もう一度打ち込んで、消して…。
それを繰り返す。一文だけは何度消して打ち直しても打ち込んでしまう。
結局言い訳はなにも出来ないし、自分の考えも伝えられない。
首を横に振って、おとなしく端末のメール機能を終了させる。
計算外だったのは、下書きで終わらせたつもりのメールが送信された事。]
[胃痛と戦いながら無理くり食事をしている横で、メールの着信に気が付いた。
アイリスから、随分長いメールが来ていたが、色々心配をかけてしまったようだ。
あの後は連絡をしていないのだから当然である。]
『To:アイリス
Message:
すまない、色々あったが、兄さんの名誉はなんとか守られそうだ。
俺の幸せは、間違いなくクリスと居られる未来なんだと思う。
だが、クリスの幸せは俺といる未来ではないのではないかと思う。
俺は好きな人に不要な荷物を背負わせたくないんだよ。
背負わないでいい苦労を背負わせたくない。』
[メールの返信は色々誤魔化そうとも思った。
だが、アイリスにまで誤魔化しの言葉を告げられない。
彼女は自分の大切な妹であり、家族なのだから。
だから、素直に思った事を書いて、最も、重要な所は多少なりともぼかしはしたが、それでもそこは変えないまま返信した。]
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィ………あ、うん、…趣味、でね。 (104) 2015/03/09(Mon) 01時頃 |
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィ………話すだけでいいんだ。 (105) 2015/03/09(Mon) 01時頃 |
[アイリスへの返信の直後、再び震える端末に目を丸くする。
その差出人を見て…だ。
メールの内容を見て、一度首を傾げて、それから何かを察して送信履歴を確認した。]
……しまった…。
[溢れた感想は素直なものだが、表情もまた、素直になっていた。]
『To:クリス
Message:
すまない、誤送信だ。
ただ、嘘は言ってない。本音だ。
今もそしてこれからも、俺はクリスの事が好きなままだと思う。
ただ、好きだから、君の幸せを祈っている。』
[そこまで打ち込んで、それから送信しようとして立ち止まる。
フィリップの言葉が反芻している。
だから…選んでもらおう。
長い改行を押し込んで、下へ、下へと…。]
『あの実験は、俺の身体に副作用をもたらし、障害を残した。
今後も無茶な実験を繰り返すだろう。
今後も無茶な副作用が俺を蝕むだろう。
仮に今後は無茶な実験をしないとしても、やはり今回の実験の副作用がさらなる障害をもたらすことになるだろう。
クリスは、そんな俺でも、苦労を背負う事になるとしても、
それでも俺を選んでくれますか…?
転校するまで、時間はまだあるから、即決なんかしなくていいから。』
[迷う、何度送ろうかと迷った言葉だ。
選ぶのは彼女だ。これで、自分の想いも断ち切れる。
そう納得すれば、諦めてメールを返信した。
見られなければ、それはそれでいいのだから。]
[送った後、そのメールを送ったのはやはり間違ってる気がした。
だから一旦は送信をキャンセルした。
でも、続いて返信のあったアイリスのメールを見て再送した。
アイリスにこれ以上余計な心配をかけるべきではないと思ったからだ。]
『To:アイリス
Message:
分かったよ。
もう一度だけ、ちゃんと伝え直してみる。
アイリスに叱られてしまっては、放置するわけにいかないからな。
兄さんはバカなんだろうから。』
[そう、バカなのだろう。
だから半ば笑いながら、アイリスへの返信を送った。]
もう一回、再計算が終われば、改めて実験だ…。
[卒業出来るか否か、教員に自分の理論の正しさを認めさせるために。
そのためにはこの実験は外せない。
再計算をなんと繰り返しながら、決戦の準備を着々と進め始めるのであった**]
はい。
[コップに水を入れ気をつけて持っていこうとしたが足の出る速度が速い。
少女が持ってくるまでにぱたぱたと淵から少し水が溢れてしまった]
あ、忘れるとこだった!
アオイ熱辛い?
[クリスに聞いた解熱薬をテーブルの上からぱっと取ってきてアオイに見せる。
熱が高いなら飲んだら楽になるかもしれないが下手に下げるのも考えものだ。
とりあえず少女はアオイに薬がいるか聞いてみることにする。
この薬は食後で良いのだろうかと考えながら飲食する様子を眺めていたら]
…………。あ。
[部屋の中にぐぅと腹の鳴る音が響いた**]
![]() | 【人】 覆面嫉妬団 ミルフィふふん。 (114) 2015/03/09(Mon) 22時頃 |
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