246 とある結社の手記:9
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[廊下には甲高い笑い声の残響があって、それに重なるようにもうひとつ]
……、 ………
[パトリシアの泣き声がずっと、聞こえている。]
う〜ん、
値段の評価はロイエのほうが得意そう。
でも、大人よりは珍しいし、
いい値段がついたんじゃないかしら。
子供ありますよ、っていったら、
食いつくお客さんはおおそうよねえ。
贅沢に贅沢を重ねちゃった気分。
ワンダも予定通りにつれてってもらえたし。
よしよし。さて。
なんでマリオが死んだかって。そりゃ。
ルパートさんがいったとおり、かもね。()
でも守護者だっけ。いるのかしら。
ルパートさんはモンドだと思ってるんだっけ。
だとしたら、…どんな気持ちなのかしら。
子供を守るようなタイプじゃなくってよかったけど。
いいじゃあねえか。
こんな時くらい贅沢をしねえでどうする。
ははは、そういえば遠慮したみてえに
上品に食ってあったな。 ()
[ それは。… 子どもが泣きじゃくるような
素直なその感情の発露は、]
─────…
[俯いて耳を傾けている男の胸に、
ぐさりと刺さった。
痛いような、悲しいような
古傷が疼くような、──そんな棘だ。]
… うん……
[やだ。と その言葉に。
聞き流して構わないような相槌をひとつ。]
─ 夜 ─
あれ?スージーの勝ちか。
へえ…おめでとうっス!
やっぱり人狼にも、年齢ってあるものなんスかねえ。
[夜半。人狼らの競争に聞こえた声に、ピスティオは暢気にそんな台詞を返している。それは可愛がってた弟分の死を知らせる言葉だったけど。でも、声はそれに乱れる風を見せなかった。
寂しいとは思う。ちょっと悲しいなとも思う。可哀そうにも思う。けれど自分は悪くない。自分のせいじゃない。仕方ない、仕方なかった。
………「狂人」と。結社に称される青年の精神構造の特殊さは、もしかしたらこの過剰なほどの自己弁護と自己肯定にあるのかも知れなかった。自分のせいじゃない、仕方ない。だって生きるために必要なんだから、と。
結局のところ、どこまでも自己本位である精神は、弟分の死に己の責任を問うことを放棄している。]
マリオはきっと…、
「人間だってバレたから襲われた」っスね。
…ふぁ…、
明日は忙しいなあ。
俺っち、色々びっくりすることばっかりだし……
寝よ。おやすみっス。
[欠伸交じりにそんな見通しを呟いて。
その後はけたたましく起こされるまで、それはもうぐっすり寝たのだ。*]
[人間が得た牙は、今日の襲撃先を定めたようだった。]
[死んでいる。死んでいる死んでいる死んでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんでいるしんで………
… ああ、うつろな 目だ。 ]
[そう考えるんだろう?ほんとうの「占い師」は。
ああ、血の臭いだ。気分が悪くなるような血の臭いだ。]
|
─ロビー─
[暫く廊下で立ち止まった後、スージーが 部屋に入っていくのも見はしたけれど。 それは止めずに、自分は中に入らずに、 男は黙って階下に降りた。]
[すでに開票は始まっていて、 ── その結果、ワンダが連れていかれる、 その背中を、黙って見つめた。
はあ。とまた溜息だけ落ちる。 それを止める権利は、自分にはない。 冷たく見えるだろうなと、頭の隅で思った。
ただ、彼女がどんな顔をしているのか。 それだけは、じっと最後まで。]
(99) 2018/07/30(Mon) 00時半頃
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はーー……
俺っち、どうしてもあの匂いだけは、
ダメなんだよなあ…。
生臭くない?
[だから「肉」を運ぶときには、ルパートにはきちんと梱包をして貰っていたものだけど。感覚の違いをぼやく嘆きが、一つ零れた。]
人間にとっちゃあそうらしいな。
おれもピスティオがそういうから"くさい"とわかる。
ははは。助かってるよ。
[血の臭いが苦手なピスティオ。対して人狼であるルパートには、その血のにおいとは、人間のスープのかおりだ。食事を拵えている台所からするいい匂いと然してかわりがない。]
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[>>89 イヴォンの視線がリンダとこちらに来るのに、黙って男は目を眇めた。]
…… それは、ローザスの奥方が 今、答えない理由には、 あんまり、ならないと思うかなー……
[何を聞きたがっているのかは、 だいたい察したけれど。 思ったことは、だいたい パトリシアが先に言っていた。]
…… それならオレだって 奥様の結果が先にしりたーいっていうけど。
言いたくない。ですか。
[イヴォンが答えない様子に、 眠たげな眼は、半眼に落ちる。]
(103) 2018/07/30(Mon) 01時頃
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()
さて、ワンダも予定通りだが……ああとも。
マリオは皆が守ってやらなかったから死んだんだ。
"嘘つき"が二人も出て、だあれもマリオが本当の人間と
真の意味では信じてやれなかった。
人間も、余計なことをしなきゃあよかったのにね。
薄情な大人たちばかりでマリオが割を食ったのさ。
……さあてどうだろうな。守護者についちゃあ、
リンダが結社員に答えさせたメモのかんじ、
居ると思うが。
おれたちが"三人"だって言い当てたくらいだ。
うん。おれはモンドだと思ってる――まあ違ったとして
それはそれ。"力になれるかも"なんて来た場所で
まんまといの一番に子供が殺されて、
どんな気持ち……なんだろうなあ?
おれとしてもきいてみたい。
…… 後悔したほうがいいぜ、モンド。
おまえがあっちでもこっちでも、
誰かが何かの力があるというたびに
「おまえが襲われる!」なんて騒ぎ立てたから
憐れなマリオは襲われたのさ。
まったくだぜ。
う〜〜〜ん、そうだよなあ………
だってほら、ルパートさんだって強烈なドブの臭いとか嫌いだろ?
[人狼と人間では、幾ら声が通じようとも味覚も感覚もまるで違う。”くさい”とは思わないらしいルパートに、考えながら例を挙げた。それなりであり、その程度でもあった。]
あっはっはっはっは
ピスティオにとっちゃあ、人間の血ってのは
どぶと比べていいもんなのか?
自分に流れているのにねえ。謙遜に聞こえちまうな。
[愉快そうにわらっている。]
守護者といっても、やはり一度に多くを救える……
というわけでは、ないようですね。
そして、結社からの情報がただしいのなら、
自分自身は……護ることができない。
なるほど……。
……へ???面白いかい?
そうだなあ。あまり変わらないんじゃないかな?
だって臭いし。汚いし。
あまり触りたくないってところまで一緒っス。
流したくはないけど──…、うん。
流れてる分には関係ないしさ。
[笑い声には少し不思議そうに、あっさりとしたこたえが返った。]
守護者といっても所詮は一人の人間、
あっちにもこっちにも
行けるわけじゃあないってことかねえ。
昨日の晩も誰かを健気に守ってやっていたのかな。
|
[はー。と息を吐く。首に当てていた手を、 腹のあたりでざりざりと拭って、 それから、他は全部みないで顔を上げた。]
…… 人間だよ。
[イヴォンをじっと見ながら。 そう、答えを渡して]
って。オレが言ったら。 続きは、お話してくださるんですか。
[要求に答えてから、イヴォンの顔を見る。]
(108) 2018/07/30(Mon) 01時半頃
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[言ってから、──頭痛がするように、 こめかみに拳を当てて、ぐりぐりとやった。]
……、……
[口の中に苦いものが広がったように 唇を左右に伸ばす。深々とした息が口から漏れた。]
…… 逆効果じゃー、…… ないですかねえ……
["ピスティオを守りたいなら。"
パトリシアの言葉が浮かんで、溜息しか出てこない。 この老婦人の行動のうち、── 使用人を敵視しない。 そこの点だけは、どうしようもないくらいに、 何も、変わっていないように、男には見えている。]
(111) 2018/07/30(Mon) 01時半頃
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それじゃあ、おれたちは
どぶを啜って喜んでる狼というわけだ。
なるほど殺してやりたいと思われるのも道理かな?
あれ???
今日は俺っちが格好良く、モンドさんは人狼だー!って告発する日だよな?
なんで変な雰囲気になってるっス??
[さっぱり良く分からなくて、首が傾いだ。*]
……丹精込めて、そのどぶを育てている身にもなっていただきたいものですね。
[ピスティオの物言いにぷりぷりしている。]
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[>>113 ピスティオまで迷いだす様子に、 男は、黙って天井を仰いだ。]
…… 情報は。
いつでもお待ちしてます。 黙っておいたほーがいい理由がないなら。 特に。
…… じらされすぎるとばくはつしそー。
[いろいろ。と、そんな風に遠い目をした。]
(115) 2018/07/30(Mon) 02時頃
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[あたしがユージンさんのもたらす結果が気にならないのは、もうひとつ理由はありますが。
それはあたしとユージンさんだけが今は知っていればいいのです。]
……リンダさまには、どう見えたのでしょうね。
[実際のところ、いろいろ爆発しそうで。
ちょっと困っていたところに、声がした。
泣きじゃくっていた声は、いつだかに止んでいて、]
……気になる、のは。 気になっちゃうよね。
[リンダの結果を気にする声に、同意を示す]
オレには、ホントのことはわかんないから。
うそつくって緊張するよねえ……
[後半最後だけ、ぼやきめいた。]
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