41 アンデッドスクール・リローデッド
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お前の意識がなくなってからじゃあんまり意味ないけど。
まあ、解剖は暫くがまんしてやるさ。
血を抜くのは、注射器かなんかで軽く抜くだけだから、ちょっとで終わるよ。
[そう告げながら、餌に対して考えるのは…]
男と女、どっちがいい?
えっと……
[名前を聞いていない事をおもいだしながら、名前を覚えていないと言われれば]
確か研究資料には、実験番号『イ-陸捨捌號』としか書いてなかったな。
………イロハ、彩葉でいいんじゃないか?
[女みたいだけど、と、安直な理由で名前をつけた。]
[表で話すベネットと入れ違いになるようにアンデッドの意識が脳裏を占める。
ナマエの流れに少しセシルを見つめて]
いいヨ。そノナマエでも。
[実際、生きていた時は男か女かすら忘れているのだ。
今、偶々青年の体に憑依しているからこそ、
この口調なのだけども]
「暫ク俺は引っ込ムヨ」
「「彩葉」に出てきて欲しカっタラ」
「言うトイイ」
[ベネットの頭が壊れない内はまだ暫く同居予定。そして、セシルと分かれ、「ベネット」が職員室で物色した後のことを少しだけ]
[強い拒否反応と戻った記憶が頭にマーブルを描き出す。
人である意識が当然混ざるわけがない。
冷や汗をだらだらと流し、いよいよ熱に浮かされたような様子はまるでゾンビのそれと同じ。
校舎をうろうろとさまよっているうちに、
一つ、腕や足を半分噛み千切られた、けれどまだ息のある生徒が転がっていた]
………
[生徒は、「ベネット」を見て、口の動きだけで助けを求めてきた。
当然、もう助かる見込みのないその生徒
けれど…その傷口の赤さを。その生肉を見て]
「ぐる、る……」
「きゃああああああっっ!!!」
[凄まじい悲鳴が聞こえた。
勿論、それは記すまでもなかろう。
切れた理性は他のゾンビと同様に、
その生徒の体を生きたまま食いちぎり、
生ぬるい血をすすった。
水を飲むように細胞が血肉を吸収していく。
体からメリメリ、と音がする。
泣き喚く生徒にお構いなくその内臓に顔を突っ込んでぐちゃぐちゃと食い散らかしていた]
はっ……、は……
[旨い。どうしてこんな鉄臭い血が旨いのだろう。
留められない。下品に音をたてて、むごたらしく生きたまま食い散らかす
不幸だったのは…それを見てしまったアリカワだっただろう]
……ミタ、ネ……?
[アリカワに投げる視線はドブ川のような腐った目の色。
彼へ伸ばす手は血で真っ赤だった。
アリカワの悲鳴は、聞こえまい。
しかし、その場所に残された彼の遺体は燦燦たるものだった。
ただのゾンビではありえないようなその遺体からは、意思のあるゾンビがいると推測するものはいるだろうか
指や手足は食いちぎられているのは当然で、
生きたまま頭皮や皮膚を剥がされている様子。
舌や目玉を引き抜かれただろうその顔は、
苦悶の表情のまま事切れている。
階段からへし折った鋭い鉄パイプを彼の腹に突き刺し、壁に縫いとめるようにたたきつけた]
……ぐ、フ、へ、へ……
[満足したように、壁に縫いとめた彼の死体を眺めやるとまたふらりとその場を後に**]
―生物学教室の前で―
た、田原先生……
[彼の姿を見かけた瞬間、男は確かに安堵した。
それは、間違いない。彼の無事は大きな喜び。
けれど同時に抱いた感情は……]
……欲し、い?
[体が何かを求めている。
震えの症状が出てきてから、初めて遭遇した触れえる生きた人間に対し、確かに欲望を抱いている。
彼が、欲しい。異様な魅力に引き付けられる、不思議な感情。
同性である彼に対して、なぜこんな気持ちが湧いてくるのか。
いや、そんなレベルの話ではない。
その体に齧り付き、肉を貪り、己の内に摂り入れたい……]
俺には、近付かないようにしてくだ、さい……。
[男は、とっさに田原を遠ざけた。
せめて、時間が欲しかったから。欲望を、おさめる時間が。
衝動に駆られたまま、己があらぬ行為に及んでしまうことを、自ら防ぎたかったため。
……まだ、体は意思どうりには動く。
けれど、肉体の実感は徐々に遠ざかっているように感じる。
もしかしたら今の体では……仮に傷ついたとしても、痛みを感じないかもしれない。
麻痺した下半身だけでなく、男の体、全て、が]
―生物学教室の前で・了―
[混ざり合わない「彩葉」の食った所までは青年の意識は浮かび上がらない。
けれど、意識が戻った瞬間、食った肉の生臭さが胃からあふれてきて。
吐き出したものを確認する余裕はなかった。
昼にあれだけ食べたのだから、それだと信じて疑わなかったのだ。
それが真っ赤であっても、「ベネット」が死肉を食ったなんて想像すらできないから]
ふふ、変な感じだね。
ちょっと前まで、顔も知らなかったのに。
[温かな彼の手を引いて、思い切って抱きついてしまおうか。眩暈がしたとかそんな理由を挙げれば問題ないだろうか。頭の中で何とかして考えるもあまり良い案は浮かばない。]
顔も名前も知らなくたって、私は知っているさ
ロゼットの事は、誰よりも信じられるって事を
[彼女の思案までには、想いは至らない
けれど、私も考えていた
どうすれば、彼女を抱きしめても怒られないだろう
いっそ、購買部に行くと言って、二人で外に出ようか]
あたしも知ってるよ。
グロウさんは絶対信じられる。
あなただけは、絶対に。
[手をそっと離し、その熱を逃がさぬようにと手のひらを握り締める。誰かの目があっては長く触れることも出来ない。その時間がとても辛い。]
そうだな
だからこそ、こんな状況でもこうして
恐怖に慄くより先に、愛を囁く事が出来るのだろう
[どうにかして、二人きりになれないものか
いや、こんな事を考える事が既に、不純なのか]
ほんとはね、怖いよ。
とっても怖いんだけど……
[愛という言葉は少し恥ずかしく、僅か視線を逸らしたが]
グロウさんと一緒だから。
[自分でも驚くほど、穏やかな笑みを浮かべた。触れようとする手を無理やり押さえ込む。]
私も、今は怖いよ
何が怖いって、ロゼットと離れる事が一番怖い
[穏やかな笑みに、私もつられて笑う
こんな状況で、可笑しいかもしれないけれど]
外に出るらしいが、大丈夫か?
怖く、ないか?
同じだね。
[笑みを浮かべる彼を見上げて]
大丈夫、怖いけど……一緒だもん。
ここで頑張らなきゃ、グロウさんに抱きしめてもらえないから。
[恥ずかしくて最後には顔を赤くしてしまった。]
…――――
[顔を紅くする、ロゼット]
そうだ、な
[ここから、早く移動しよう
そして、彼女を抱きしめよう
一緒にいられる時間は、永遠とは限らないのだから]
頑張って、移動しよう
そして、必ずロゼットを抱きしめるから
「ふぅン……」
[意識の底で「彩葉」が興味深そうに聞いていた。
一度は研究の対象となっていた人間だ。
きっと、それは面白いこととなるだろう
人を食うだけだったアンデッドが、
少し別の興味を持ち始めているのは
人の体を転々とした結果だろうか]
[親友だった彼の血も、漏れなく小瓶に移す。]
ちょうどよかった。
研究資料として、普通の人間が噛まれた直後の資料が欲しかったんだ。
どういう変化してるとか、見れるかもしれないだろ?
さすが親友、役に立つわ。
[満足そうに、嬉しそうに笑いながら、彼の携帯で音を鳴らし、その場に置き捨てる。
当然ながら、ついでに犬の血も小瓶に移しておいた。
彼にとって、その全てが研究材料に過ぎないのだから。]
[隣にいるクロエに、意識の底がぐるる、と喉を鳴らす。
あぁ、旨そうだと。勿論今は食う気はない。
まだ「ベネット」の意識がそれなりに残っているから。
あまり弄りすぎるとこの意識がつぶれる。
完全に戻るまで、もう少しこの生徒を隠れ蓑とするには、静かにしていたほうが良いだろう]
―セシル・フォローの研究日誌―
『初日
学校内をゾンビが急襲。理由、原因ともに不明。
これによる見解を以下に記録するものとする。
・ゾンビの性質について(人型)
動きは緩慢で、バランス感覚に乏しい。
腕力、握力は人間のソレを超えており、恐らくは不死による脳のリミッターが解除されたことが要因と思われる。
但し、視覚は無い、もしくは極端に悪く、音を頼りに行動すると予測される。
意識、感情はおそらく存在せず、本能だけで行動しているようである。
痛覚は不明だが、体を傷つけても、問答無用で襲ってくることから、おそらく無いと予測される。
頭が弱点、頭を砕かれると動きが止まる。ゾンビとしても死を迎える。
不老であるかは不明だが、頭を砕かれない限りは不死と予測。
ただし、意識は無く、感情もないようなので、これによる不老不死は無意味。原因を探り、これを進化させることが今後の課題となる。
サンプルとして、いくつかのゾンビの血を収集済み。』
「上手くヤッタものだネ…」
「モッタイナイ」
[テツと呼ばれたモノを見て口だけの動きで彼へ]
―セシル・フォローの研究日誌―
『初日その2
職員室にて、車の鍵、購買部にて食糧を入手。
但し、直後に新たなゾンビの襲撃。
以下に新種のゾンビの特徴と見解を記す。
・ゾンビの性質について(犬型)
動きは人型と異なり、すばしっこい。捕らえるのは難しい。
こちらも、恐らくは不死による脳のリミッターが解除されたことが要因と思われる。
(この事から、おそらく噛み付いたときの力なども非常に強力と想定される。)
視覚は不明だが、音よりもむしろ嗅覚を頼りに行動すると予測される。その嗅覚も通常よりもさらに優れていると予測される。
人型と同じく頭が弱点、頭を砕かれると動きが止まる。ゾンビとしても死を迎えるが、耐久性は人型よりも強力で、叩いた程度では停止しない。
厄介なのは、匂いで探り、発見すると吠える事により、人型も集まってきてしまう。
こちらも不老であるかは不明だが、頭を砕かれない限りは不死と予測。
同じく原因を探り、これを進化させることが今後の課題となる。
サンプルとして、1対のゾンビの血を収集済み。』
……、グロウさん。
[何を話すべきか、わからない。
少しいらだっているように見える彼の服の裾を掴んだ。]
…――――
大丈夫、大丈夫だ
私だって、ロゼットの為なら何だってする
だが、あれは…―――
ロゼット、誰にも心を許すな
たとえ、どんなに仲の良い相手でもだ
……あたしが信じるのは、グロウさんだけだよ。
もう、誰も……
[傍を歩くレティーシャに向けてすらその思いは芽生え始めている。
そんな自分が嫌だと思う己と
どうしようもないと諦める己が犇きあい]
[それから口の動きを見ながら、小声でしゃべる。
アンデッドの研究成果である彼なら聞こえるであろう小声。]
全部真実さ。人間である彼を人間のまま殺しただけ。
サンプルは勿論とったけどね。もったいないし。
[本音なんか誰にも見せない。
自分さえ良ければそれでいい彼は、誰にだって壁をつくる。]
私も、ロゼットしか信じない
人は命の危険がある時、どんなにでも非情になれるんだ
[だから、私もそうなるかもしれない
ロゼット以外の人間に対して、優しくある自信がない]
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