［まだ足りない。
　もっと欲しいと、桜が嘆く。

　その声が、頭に直接響いてくる。］

　……チッ、うるせぇなあ！

　だったら好きなだけ食えばいいだろ！

　　　　　　『　　　　　　　　　　』



[一瞬、全ての音が止まったように感じた。
そして、耳元で囁く声だけが、ハッキリと聞こえる。]

[風に吹かれ、揺れる枝。
　　　同時に、桜の樹が妖しく嗤い出す―――]


　　　　　　　　　　　　　　　　　『全て喰らってやる』

　　　『だから早く、お前の魂を』





　　　　　　　　　　　　『　　よ　　　こ　　　せ　　』





[―――その声は一部の耳にしか届かない*]

　　　　　　　　　　　　『　　よ　　　こ　　　せ　　』



［声が聞こえた。
　魂を寄越せと、桜が呼ぶ。］

　……あーぁ。

　気に入られ、ちまったか？

［人知れず、視線を向けたのは、おそらく自分と同じように、この声が聞こえているであろう───銀の髪の少女。］