246 とある結社の手記:9
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[ピスティオ、と叫び声がして、跳ね起きました。 昨夜はあれからかぶのスープとバターの香るローストを少しいただいてからというもの、部屋に戻ってもほとんど眠れずにベッドの上に転がってばかりだったのですが、その声は警鐘のようによく響いたものですから、寝不足などすっかり打ち払ってしまいました。 まさか。ピスティオが。それはあたしの中で、一番あってほしくはないことでした。 いいえ、誰であってもあってほしくはないのですが、それでも昨日の話の中から、ピスティオがいなくなるのは本当に喜ばしくないことだったのです。
あたしは身支度も整えずに部屋の扉をあけて――]
……マリオ?
[隣の部屋から、ひどく嫌なにおいがする気がして、足を止めました。 ほんの少しだけ開いたドア。僅かに赤いものが、隙間から見えて、見えて、見え]
(5) 2018/07/29(Sun) 14時頃
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パティは、その場にかくりと、膝をつきました。
2018/07/29(Sun) 14時頃
子守り パティは、メモを貼った。
2018/07/29(Sun) 14時頃
[マリオに襲い掛かった時、きっとそんな風に軽い言葉を暗闇にのせた。
小さな手、小さな身体、食べ出はないけど、
保存ができないから丁度いいか。
子どもを食べる機会なんて、もともと多くはなかった気がする。うまくいってよかった。]
― 夜 ―
[ 『私の 勝ち〜』
年をとった獣は脚をとめ、ユージンの部屋へ伸ばしかけた手を止めた。]
――……ああ。
命拾いしたなあ、ユージン。
スージーとマリオに感謝することだね。
[憐れなマリオが死ぬ羽目になるおかげで、鷲鼻の聡い青年は、助かることとなった。]
はははは。
だめだな、やっぱりおまえには敵わない。
[つやのない毛並みが、夜を引き返す。]
あーやれやれ、走った走った……
……
やっぱり、役割分担ね。
今日の夜もまた競争しましょうか。
[なんて、どうなるかも解らない先の話に笑うような響きをのせながら。
やっぱり全然悪びれず、罪悪感もなく、感慨も無く、大事な友人の弟を黒い狼は喰ったのだ。サイモンの時よりは、遺体は綺麗だったかもしれない。だってマリオに恨みなんて、これっぽっちもなかったんだから。*]
[ 『私の 勝ち〜』
自室でこれからの算段をつけていると、
スージーの明るい声が耳に入った。]
……やれやれ。
[いい気なものだ、と、首を振って溜息をひとつ。]
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[あたしはただ、呆然としてしまっていました。 そこで何が起こったのか、もう、すっかりわかっていました。 だってそこに流れているのは血です。血液です。隣の部屋に眠っていたのは、小さな子供です。 子供がたくさん血を流したら……どうなるか、わかっています。
駆けつけてきたラルフさんが肩を叩いて、あたしはようやく、人がいることに気がついたのです。]
あ……マリオ、マリオが、
[それ以上は口にしたくなくて、縋るように彼の胸に頭を押し付けました。 ラルフさんだっていい気分ではないでしょうに、勝手です。 人肌の温度に滲んできた涙を手の甲で拭って、あたしはゆっくり、顔を上げました。]
(12) 2018/07/29(Sun) 16時半頃
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だいじょうぶ、
[きっと大丈夫には見えなかったでしょうが、あたしは立ち上がって、階段を降りることを選びました。 このままここにいては、真実に直面しすぎてしまいます。
まっすぐ歩けていた自信はありませんが、それでも落ちずに下まではいけました*]
(13) 2018/07/29(Sun) 17時頃
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[スンスンと鼻をならし――]
……甘味はありますが、ややコクに欠けるというか。
[そんなことを呟いた。]
…………さようなら。
ワンダ様の死は、"無駄"には致しません。
せめて、安らかに……
[どこまでも冷たい声。]
―― かわいそうになあ。
[ユージンの代わりに、はたまた全ての大人たちのかわりに死んでしまった憐れなマリオの死に顔をみる。]
昨日はおなかいっぱい食べられたかよ。
ちいさな勇気ある子どもは、
無事ワンダおばさんを退治できたぜ。
なあマリオ。
守ってもらえなくて、かわいそうにな。
[優しく、マリオには聞こえない声で話しかけた。]
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[1階に降りていくあたしの顔を見て、下の人たちはどう思ったでしょう。 降りる前にルパートさん>>33とちょうどすれ違ったのですが、その様子に気を配るほどの余裕は、その時のあたしにはありませんでした。
甲高い声が、聞こえてきます>>28。狂ってしまったように声を上げるのが誰かは、わかりました。イヴォンさまです。 笑える気持ちが、わかりませんでした。あたしも子を持てば、わかるのでしょうか。]
(39) 2018/07/29(Sun) 20時頃
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[あたしはキッチンに向かって、昨日までの手伝いを思い出しながら、ミルクを温めました。 砂糖をもったいないくらいに入れて、マグカップに注ぎます。 甘いにおいがしました。……甘いにおいが、しました。]
……ワンダさん?
[カップを持ってロビーに戻ると、結社のお人がワンダさんを連れて、出て行くところでした。 はじめ、その行為が意味するところがわからなくて、なにか個別に、面談やご様子伺いがあるのかと思って、じぃと見つめてしまいました。]
(40) 2018/07/29(Sun) 20時半頃
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どうして。
[意味を理解したのは、取りすがるロイエさん>>25を見た後のことでした。 彼女は、ワンダさんは、みんなの票を集めた結果、ここから連れ出されるのだと、ようやく理解したんです。 けれど、その理由までは理解できませんでした。 確かにマリオは、彼女に入れると言いました。彼女から、反対の意見も特になく、受け入れる様子でありました。 だからといって、だからといって! 彼女がそれだけで、喪われていいわけではないと、思います。
湯気の立つカップを持ったまま、一連の様子をぼうっと見ていました。]
(41) 2018/07/29(Sun) 20時半頃
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[上から降りてきた人影に、すいと視線を向けます。 それがモンドさんだとわかると、どこか現実味を失っていた感覚が、戻ってくる気がしました。]
モンドさん。 ……モンドさんって、甘いものは、平気です?
[それは、素っ頓狂な質問に聞こえたでしょうか。 あたしはマグカップを持ったまま、問いかけます。]
(48) 2018/07/29(Sun) 21時半頃
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あたし、……あたし、今朝になったら、昨日たくさんみんなの前で話をしたご褒美に、それとこれからがんばりましょうって気持ちで、ホットミルクをあげるつもりだったんです。 お砂糖のたくさん入った、甘いミルク。
けど、でも、飲んでくれる人……いな、くて
[言葉はだんだんと、絞り出すようになっていきました。 カップの中のミルクだけが、平然とした様子でぬるくなっていきます。]
(49) 2018/07/29(Sun) 21時半頃
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だいじょうぶ、です。だいじょうぶ。
[大丈夫かと聞かれました>>50ので、ラルフさんにも答えた言葉を繰り返しました。 大丈夫です。あたしは。大丈夫。そう繰り返すことによって、落ち着きたかったのかもしれません。 けれどどうしてか、この時あたしは頭の中は静かだったのです。 いろいろなことがありすぎて、真っ白になってしまっていて。 なので、錯乱しておかしくなってしまうようなこととは、無縁でした。 それがいいことかは、わかりません。]
……あの、飲んでくれません、か。
[手元のカップを差し出してみますが、受け取ってはもらえたでしょうか。]
(55) 2018/07/29(Sun) 22時頃
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[ノアさん>>46が、ラルフさん>>61が、戻ってきました。 上はどうなったのでしょう。戻る気は、しません。
それから、イヴォンさまもやってきます>>45。 ラルフさんに話しかける口ぶりは穏やかではありましたが、けれど先程の笑い声が、その裏側で聞こえるような錯覚がします。]
ああ……
[あたしは息を吐きながら、頭を抱えました。]
(70) 2018/07/29(Sun) 23時頃
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もう……やだぁ……
[口に出さない思いは、口に出さない代わりにずっと素直に、こちら側の声に乗りました。
涙は出ていないくせ、子供みたいに泣きじゃくる声が聞こえたことでしょう。
まるで昨日の船頭さんのような泣き言でしたが、その本質はまるで違っていました。]
あの人、占い師じゃなかったの?
楽しそうに、喰われたって。
はあ。ふうん?
旦那さんを食べられてるのに、
他の人が食べられて、あんなに喜べるものなんだ。
だったら、いいことしたわね。
[誰かに対して、敵意が芽生えてしまうのが、嫌なのでした。]
やっぱりみんなの部屋が近いから、
すぐににおいに気付かれちゃうのね。
別にいいんだけど。
血の匂いがする…。
やっぱりまるまるは食べれなかったものね。
ごめんね。
[マリオの肉はロイエ曰く()]
やわらか甘美だったか?
……まあ、普段おれたちが食ってる量を考えたらな。
無理だよ、人間一人ってのは、子供だろうと。
…私が味の評価苦手なの知ってるくせに。
でも柔らかかったのは確かね。食べやすかったわ。
こんな時でもなかったら、保存したのにね…。
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