267 【突発】Sanatorium,2880【RP村】
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パンもスープも どれだけ口にしたことがなかったろう。
空の器を見下ろして、 不意、思ったものだから、
その夜、かたいもの を 食んでいた。
何れだけ噛んでいるのか、味蕾の在るべき部位が
欠けているものだから、全く解らず、
ぐっと 無理に飲み込めば ───のどに刺さるようで。
次第に綿を噛んでいるよな気分に陥り、
結局は、 薄紙にくるんで捨ててしまった。
味のない固形物、 パンの形をしていたなにか。
この世では食餌の調達さえも大変だというのに!
根で栄養補給ができたら良いのに。
食慾というものを喪って久しい男は、
しょくぶつの 機能美を思うだけ。
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君の思考を知るなら僕は まるで■かだと、■■さまとは程遠いかんばせで ■ってみせただろうになあ。 君が 結局この顔を拝めたのかは分からない。 海の生物に陸に住む人の姿は見えないだろう。 それと等しく。…………
(36) 2019/06/18(Tue) 04時半頃
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『 冷たいと云うのは 硝子や、氷や、雪や、死体の事を云うんです。 僕が冷たいのは、あなたの体温が僕のそれより 上回ッているからでしょう 』
(37) 2019/06/18(Tue) 04時半頃
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屁理屈ならいくらでも捏ねられると云うのに 被検体は被検体同士、仲間意識でもあるのか 大人には言えない秘密の話の類のものか…、 本心など如何でも良いものではあるけれど >>1:163僕の被検体に告げることには 聞いていたなら……いいや きっと耳に届いていても、 僕は顔色一つ変えなかったか。 良いも酸いも暑いも寒いもまるで僕には役立たない。 1ℓの無感動の中に、0.1㎖の塩が混ざるようなものだ。
(38) 2019/06/18(Tue) 04時半頃
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被検体に自由は無いと思っているから その分何を話していようと 語ろうと、 自分を 他人を 欺こうとも構わない。 時に僕を■■さまと崇めたて >>1:164 ■■し、敬愛し、捩じれても気にしない。 僕はそのすべてに■じないからだ。 他の同期に咎められたところで 心どころか耳すら痛むことはない。 子ども達は、それを怖いと冷たいと 僕の背に向け指差すことだってあるだろう。
(39) 2019/06/18(Tue) 04時半頃
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( 被検体は所詮被検体≠セった
完治しないのなら患者にすら成り切れない
僕にとっては消耗品で、籠の中の鳥だ。
箱の中の魚だ。
君の洞窟に光る碧海のような瞳の奥に
ちらりと存在を主張するモノが見えても…
────── 水底は見えないものだろう )
夜の帳が下りて来るより深い闇の中だった。
締め切ったカーテンは風に踊りもせず、
冷たい■の中に潜む息吹にゆらめいている。
生まれ落ちる頃に眠る籠より大きな箱を一瞥し
想像上に生きる深海ほどに昏くなった室内で、
ぼう、とため息にもならぬと息を吐き出した。
・・
それが人の眠りより長く 深く微睡むうち
僕は研究の為に棺のような箱を開いただろう。
或時にはガートル台を引っ張ってきて
人離れした身に 人らしい補給を施した。
閉じ切られた瞼がぴくりとも動かないのなら
はじめて見た時より小さくなった唇の上へと手を翳し
うっすらと、呼吸を確かめようとも。
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───── 矢張り、遠くで蠢く小波が 近くで聴こえてくるようだった。
(40) 2019/06/18(Tue) 05時頃
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過ごしやすいとは言え 蒸し暑い夏を通り過ぎ
葉が老いはじめて来た頃に、持ち上げた蓋の下
水から這い出た生物のように
薄いキャラメルの髪が濡れているのを見る。
折角合わせた服のサイズも
また指先が隠れるようになってしまったのか。
空気の悪い室内の、窓を少しばかり開きながら
僕は少し涼やかになった風を頬に浴びていた。
──────────
──────
ところで
体温が低ければ 心が冷たいと揶揄され
人情に乏しければ血は異色だと云われるが
心臓が赤色でないとの文句は聞くに珍しい。
大海原のまんなかの 青い部分を切り取って
もしくはブルーホールなんかを胸に埋めたような光が
僕の目に見えたのかは分からないが……
見えていたのだとしたら 僕は
僕より薄い体に埋めこまれたようなそれに
冷たいと指差される この手のひらを
そッと 重ねようとしたことがあった。.......
・・・・・・・
「 ......おかえりなさい。
食事の用意は出来ていますが
点滴の方が良いですか、153 」
被検体153が夏の眠りから覚めたとき
それが、彼に真っ先に届いた音だったろう。
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硝子に向けるにしては可笑しなものだったが 僕はそれきり、同じ言葉をくちにしなくなった。 それは少女が星の砂と成り果てる、 今日に至るまでも。変わらず。
(41) 2019/06/18(Tue) 05時半頃
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僕が153を魚や硝子のようだと示す度に まるでそうであったかのように成るのは 魚よりはカメレオンらしいと口にした時もあったが... ─────そのときは如何なったのだっけ。 海の生き物の中にも 擬態するものは居るらしいが 何故だか僕は 途端に彼を陸の生き物に喩えてみたくなった。 … 単なる気紛れとも言い換えられる。
(42) 2019/06/18(Tue) 05時半頃
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それから 少女が砂となって集められた頃 医務室の道に足を伸ばした、153に向けて 皮肉めいた声を掛けていた。
(43) 2019/06/18(Tue) 06時頃
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雪景色の中埋もれていた頃の大きさより どんどんと、消えいるように小さくなる君が 微笑みばかり咲かせるのを視界に収め.....、 「 そうなんですか 」 返す言葉は ──────── 呆気なく。
(44) 2019/06/18(Tue) 06時頃
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灰色の街に踏み込んだときに
ほとんどの確率で見る死体に、
情を沸かす暇はむしろ惜しい
僕が被検体たちに抱いているのは
それとよく似た■■だろう。
不治と揶揄されている病に侵された身は
いずれ冷たくなる躯と何が違うのだろう。
擦り寄られても微笑まれても手を握られても
僕には生きている筈の君たちこそが
まるで生きながらにして死んでいる■のように感じる。
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だからだろう。 打ち水を放たれたような気分になっても 僕の瞳は波打たない。ひとたちも。 人が歩むよりしなやかでない様な足取りを たんたんと無言で追う中で、 目にうつる彼の肌が 手のひらが 建物構造を描かれたみたいになり まさしく硝子に成ろうとしている君を見、....
(45) 2019/06/18(Tue) 06時頃
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