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ワレンチナ! 今日がお前の命日だ!
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[コンピュータールーム通路の緊急隔離シャッター。それを降ろすことで、ハッチの外にもうひとつの小さな密室を設けることができる。まずコンソールルームからハッチの手前に侵入し、シャッターをおろす。できあがった密室にオゾンを吸入。内部のオゾン濃度が十分に上がった状態で、ハッチを開き、ヤンファを救助。脱出する際は、その逆を行う。コンピュータールーム内のオゾン濃度が自然に安全値を下まわるよりかは、はるかに早い。しかし、どうしても時間はかかった。 (6) 2016/05/18(Wed) 01時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 現在 / 医務室 ― (8) 2016/05/18(Wed) 02時半頃 |
『じゃあ……もしも僕が、男の子になったら。
きみはずっと、僕と一緒にいてくれるの?』
[目の前には、瞳に涙を溜めた恋人がいる。
彼女は何も言わずに、ただ肩を震わせている。
ワレンチナは眉尻を下げ、諦めたように微笑んで見せた。]
『うん……いいよ。大丈夫。……さようなら。』
[言って、席を立つ。彼女は声を立てずに泣いた。]
(泣きたいのは僕の方だ――
先に好きだと言ったのは、君の方じゃないか。
今さら。今更だ。
"やっぱり女の子同士で付き合うのは間違ってた"だなんて。)
[幼い頃から、女の子らしいものを欲した事がなかった。
かといって、嫌悪もなかった。単純に、それよりも好きなものが多かっただけだ。
学会の重鎮を両親に持つエリートで、かつ性別を感じさせないワレンチナは、幼い頃から周囲の少女達にこう持て囃されてきた――『王子様』。
そんな王子様に初めての恋人ができたのは、14の時。相手は取り巻きの一人だった。女同士。けれどもそんなことは障害でない。今日日LGBTは珍しいものでもなんでもないし、社会的にも認められている。しかし、最初は遊び半分だったワレンチナが彼女に対して幼いながらも真剣な愛情を抱き始めた頃、夢見がちに目を潤ませていた少女の表情には、逆に陰りが射し始めた。
二人の付き合いは、そう長くは続かなかった。]
[初めての恋人と別れた後、ワレンチナはしかし再び女性と付き合った。そうしてまた、ダメになった。
そうして、その次は男性の恋人ができた。ワレンチナは自身が女性であることの喜びを、初めて感じることができた――が、それなりの時間を共に過ごした後、どこにでもありがちな理由で、彼とも別れた。
そうして悩み、次はまた女性、男性、女性、男性……。
そんな事を繰り返すうちに、ワレンチナは性別というものを気にしなくなった。
僕が女だろうが男だろうが、僕はただ、恋をする。男にも、女にも。遊びと割り切った関係さえ持つ。
それでいい。それが僕の、『在るがまま』の姿なのだから。
そうして、長いことそのようにして過ごしてきた。
自由に、飄々たる『王子様』として。]
[そして。
突然投げかけられたシルクの言葉は、ワレンチナの深く柔らかな部分を緩やかに刺した――最も、それが奇病の感染した瞬間であるということに、ワレンチナは無論気がつくことはない。
けれども、何れにせよ。
『もし、ボクが男の子になったら』。
『交際相手もしくはそれに類するものに』。
それはワレンチナにとって、一番古く、消えない傷をなぞる言葉だった。未だ幼かった自身の、それでも真剣だった初恋において、戸惑いと葛藤とを打破せんと溢れた、祈りのような言葉だった。
それを投げかけた、男でも女でもない――それ以前に、まだほんの子どもだったシルク。
けれども、そうして。
ワレンチナは、無意識にシルクの事を『彼』と呼んだ。]
(馬鹿馬鹿しい)
[想像してしまったのだ。弾かれるように。
他種のパートナーを得る事で性別を決定し繁殖するボムビークス種、そのシルクが自身を女性のパートナーとして選び、成人し、自分と子を成す。その未来を。]
(あんな、子ども相手に)
[無論、これまで生活を共にしてきた期間の中で、シルクを異性として意識したことなど全くなかった。
自身と同じように、曖昧な性を生きるボムビークス種。その若き天才児の選ぶ未来がどういったものか、ただ単純に楽しみだった。名も知らない花の生長を見守るような、そんな心地だった。けれども。]
(僕は、期待したのだ。
自分の性について、浅ましい期待を。)
[胸が痛かった。この痛みは何のための痛みか?
しかし妙な事に、思考は非常に冴え冴えとしている。]
[ワレンチナは、溜まった涙を振り払うように瞬きをした。
金の睫毛に小さな水球がまとわりつき、やがてふわりと宙に放たれてゆく。]
(このやりきれない気持ちをどうしたらいい?)
(シルク、君のことを。自分自身のことを)
(ひとり。誰かひとりだけに、吐露するならば)
(相手は、そう――――)
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[追憶に勤しんでいた意識が、不意にかけられた声(>>12)で現実に引き戻される。目を向けると、医務室の入り口に立つワレンチナが見えた。] (15) 2016/05/18(Wed) 15時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 倉庫 ― (20) 2016/05/18(Wed) 20時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバオーケー。俺とお前の仲だ。 (21) 2016/05/18(Wed) 20時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[ワレンチナの横に立ち、水槽の中で揺れるクラゲをみつめる。] (25) 2016/05/18(Wed) 21時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[ワレンチナの口から紡がれる言葉に耳を傾ける。 (36) 2016/05/19(Thu) 00時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[目をつぶり、一呼吸おく。記憶の中に潜る] (37) 2016/05/19(Thu) 00時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ水急不渡月 (38) 2016/05/19(Thu) 01時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ悔しいがよ、俺には、おまえの辛さをわかってやることができねぇ。どんなに気張っても、想像するのが精いっぱいだ。だからよ、気に障ったら、馬鹿の世迷言だと思って、忘れてくれ。 (39) 2016/05/19(Thu) 01時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[不意にセキュリティパスを告げられ、反射的にそれを頭の片隅に刻み付ける。ワレンチナと視線が合った。切れ長の目に、吸い込まれるような瞳。感情が動いた。自然と口が開き、足早に去ってゆくワレンチナの後姿に、声をなげかける。] (50) 2016/05/19(Thu) 03時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[水槽脇の壁に背を預けて、ほっと一息ついた。ワレンチナとは、決して浅い付き合いではない。にもかかわらず、こうしてまったく知らなかった側面を垣間見たことに、心が震えていた] (53) 2016/05/19(Thu) 03時半頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ― 食堂兼レクリエーションルーム ― (69) 2016/05/19(Thu) 15時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[山盛りのプリンキューブの前に陣取るアシモフの軽口に、笑い声をあけた。] (70) 2016/05/19(Thu) 15時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[子供に言い聞かせるように、ゆっくりとわかりやすい言葉を紡いでいくエスペラント。じっとその言葉に耳を傾けるミツボシ。ワクラバの眼には、そのミツボシの姿に、幼い頃の自分が重なって見えた] (94) 2016/05/19(Thu) 21時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバおぅ、すぐに行くぜ。 (95) 2016/05/19(Thu) 21時頃 |
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[エスペラントの船外活動ユニットに、ワクラバからの通信がはいる] (101) 2016/05/19(Thu) 22時半頃 |
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![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[全身のバネと推進剤を駆使して、船体を回り込む。眼前にはデブリの霧が広がっていた] (119) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
(――これは吊り橋理論か?ワクラバ。
そうでないなら単純な情けか。それとも好奇心か?
どちらでもいい。投げかけたのは僕の方だ。
そうして君は応えた。それだけ。結果論でいい。
『王子様』はもう居ない。
ほんとうの自分の心に――言わば本能に従ってみれば。
僕は、女という名のけだものだったのだ。
それを認めさせてくれ。
どうか無事に帰ってきてくれ。今夜、僕の元へ。
僕が今――祈るのは、そればかりだ。)
![]() | 【人】 鉱滓地区 ワクラバ[デブリの霧の中、遠方へと漂う見慣れた姿があった] (122) 2016/05/20(Fri) 00時頃 |
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