人狼議事


237  それは午前2時の噺。 

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[ 悪い子になれば叱りに来てくれる? ]


[ 名前も知らないコードを握りしめて、名前も知らない機械が呼吸を止めるのを眺めて居た。
 眩しいばかりであったその建物も今は暗く冷たく、静まり返っている。安全な方向を教えるべき緑の人も目を背けて知らんぷり。

 ひかりを生むものをころしてしまっていた。]


【人】 地下鉄道 フランク

「じゃあ三割方さんは何度も殺されて何度も同じ日を繰り返してるんですね」

深夜のととら第一公園。街灯に小さな羽虫が集っている。砂場に設備されているドーム型の遊具の中で、三割方と六掛は息を潜めていた。繁華街を抜けて、逃げ道を探した。以前殺された大通りを避け、細い路地を駆け抜けると公園があった。「ここなら6割方は安全です!」と六掛はドームの穴に飛び込んだ。

「殺しにきたって一体どういうこと何なんですか!?」

六掛は三割方にしつこく詰め寄った。玩具を買って貰えない駄々っ子のように三割方の身体を揺さぶる。新人でも記者は記者。取材対象者に食いついたら意地でも離さない。誤魔化すのに妥当な言い訳も見当たらず、終いには「アタタァしますよ?」の一言でついに口を割った。

(9) 2018/03/25(Sun) 23時頃

【人】 地下鉄道 フランク

「でも、何で三割方さんは命を狙われてるんですか?」
「知るわけないだろ」
「誰かの恨みを買っているとか」
「んなもん買い溜めしてるわ」
「じゃあ誰なんですかね〜この町で三割方さんを殺したい人」

仕事柄、誰に恨まれていてもおかしくない。三割方は不倫を暴いた写真を撮った時に一度や二度殺されそうになったことはあるが、いずれも単独犯だった。だが、今回は明らかに組織的だ。サングラスの男が車を襲撃する。大通りに逃げれば別の者が車で衝突する。繁華街に逃げればモデルのような女が刺し殺す。どの場所に逃げても殺せるように仕組まれている。これだけの数の人を動かせるのだ。黒幕は相当な立場の人間に限られる。

「あれ? ……それって」

六掛と顔を合わせる。頭に浮かんだ共通の人物。
双六の賽の目が振り出しへ戻った。

(10) 2018/03/25(Sun) 23時半頃

【人】 地下鉄道 フランク

グラスに注がれた真紅のワイン。気分を高揚させるノリの良い洋楽。ピンク色の照明が煌々と光る店内。男は美味そうに煙草を吐いてソファに身体を預けていた。端麗な顔立ちをした美しい女性が、艶めかしく男の頬に触れる。豊満な胸を男の身体に押し付け、唇を重ねる。女は男の瞳を眺めた。黒だ。吸い込まれてしまいそうほど、どこまでも深い黒。

「気分はどう?」
「最高だ」

一條聖司は口角を上げた。目は一切笑っていなかった。斗都良町出身の国会議員。聖人君子とまで呼ばれるこの町のスター。
一條がこの店を行き付けにしていたのは3年前。店を貸し切り、1番人気の女を自分好みに仕上げて抱く。これが本当の一條。女は思う。何がスターだ、何が聖人君子だ。ここにいるのは税金で女を抱く傲慢な男。人のありのままの姿とは、ロクでも無いものだ。
チリンと鈴の音が鳴った。扉にぶら下がるヨムマジロ君のキーホルダーが音を立てたのだ。
店に入ってきたのは、七三分けの男。髭面で髪はボサボサ。服はシワだらけ。黒縁眼鏡の奥で光る瞳は濁っている。一見浮浪者にも思えるが、首にかかっている一眼レフがそれを否定していた。

(39) 2018/03/27(Tue) 00時半頃

【人】 地下鉄道 フランク

「誰かと思えば低俗雑誌のカメラマンじゃないか」

一條はくっくっ、と小刻みに笑う。店内のバックヤードにいた護衛が騒ぎを聞きつけた。男が2人。スーツを着ていても筋肉質な体格だと一目でわかる。2人は一條を庇うように前へ出た。

「どうした、迷子でもなったか?」
「スクープを撮りにきた」

それを聞いて、一條は腹を抱えて大笑いした。グラスのワインを飲み干した後、思い出し笑いをして口から吹き出した。

「三割方ァ、ジャーナリズムを気取るのは良いが、どうなるかわかってんだろうなあ?」

一條が合図をすると、三割方とは2倍近く体格差のある屈強な男2人がジリジリと距離を詰める。しかし、三割方は動じることなく、ただ壁に掛けられている時計だけを見ていた。

「お前こそ、わかってんのか」
「何が?」
「もう2時だぜ」

(40) 2018/03/27(Tue) 00時半頃

【人】 地下鉄道 フランク

ぶづ、ん──────

「な─────」

突然の暗闇に包まれる店内。一瞬にして鋭い光が差す。フラッシュだ。男がカメラを片手にシャッターを切り続けている。まずい、と声を漏らして一條は顔を伏せた。屈強な男達が光を頼りに三割方へ殴りかかる。チリン、とまた微かな音が鳴った。同時にけたたましい打撃音がした。

「アタタタタタタタタァァァ!!!」

男が真後ろにぶっ飛ばされ、カウンターに並べられたボトルが一斉に床に落ちる。ガラスの割れる音と男達の断末魔と女の悲鳴がハーモニーを奏でる。

「おい! 一体何が起……」

一條がわずかな光の中で見たものは、鼻先に迫る金属バット。三割方は歯を食いしばり、全身を躍動させ、渾身の力でバットを振り抜いた。一條の顔に直撃する。ゴキンッ、と前歯が折れて意識と共に何処かへ飛んで行った。三割方は金属バットを捨て、カメラのフォルダやを確認する。そこには、金属バットを振り抜く三割方と一條の顔がへこむ瞬間が激写されていた。

「どうだった? 俺のスイング」
「三割バッター、みたいですね」

カメラの光に照らされながら、2人は微笑んだ。

(41) 2018/03/27(Tue) 01時頃

[ 踏切が働く音はどこにも聞こえないはずなのに、いつも赤いランプがあるあたりがカンカンと鳴っているように聞こえた。学校へ行く車の中、窓から通り過ぎる時はいつも鳴っていない。あの音を聞くのは帰り道だけ。

 カンカン、カンカン。ごおごお、がたんがたん。
 ぎゅうぎゅう詰めの電車がとおってどこかへ行く。

 どこへ行くんだろう。どこまでいけるんだろう。この町を飛び出した先、どこまで向かうんだろう。発電所から急いで飛び出して、電車よりもっと遅い速さで坂道を下る。]


[ むねが、まだ、ドキドキしている。
  わるい、こと、してしまったんだ。

 街灯も消えて沈んだ町を駆ける。靴の音がやけに響いていた。目指して居るのは、「まんなか」公園。噴水と遊具と、花時計がある小さな遊び場。]


[ …………パパと二人きりの暮らしも、嫌じゃない。ママはきっと、ひとりでも大丈夫な人だから、わたしがいなくても大丈夫。ほんの少し寂しいかもしれないけれど。

 でもパパはそうじゃない。パパは、ひとりじゃダメな人だ。頑張り屋さんだから、ブレーキをつけてあげないといけない。
 わたしが一つのケーキを選んだ理由。パパもママも、大好き。


 下り坂もおしまいになったところでつまづいて、思いっきり転んでしまった。ぶつかった痛みと、擦った痛みが膝と、てのひらと。アスファルトのかけらが刺さって、痛い。喉の奥から声がのぼってきて、鼻の奥がツンとした。だけど、
 痛いけど、走らなくちゃ。
 いつまた、電気がつくかわからないから。

 暗いのに見辛くなった視界を袖でちょっと拭いて、走る。]


【人】 地下鉄道 フランク

一條聖司黒幕説を確証するのは簡単だった。取材は直接本人に聞くに限るという六掛の言葉を元に、ガールズバーへ足を運んだ。すると、一條は勝手に勝ち確だと思い込んでペラペラと真相を語った。元々、一條の親父はいわゆるフィクサーであり、莫大な資産と忠実な手下がいた。一條には総理大臣になるという野望があり、まずはメディアの情報源にクギを刺すことにした。一條を嗅ぎ回る者は例外なく始末された。
真相はわかったが、三割方は一條を出し抜くプランは思いついていなかった。一條の刺客からどうにか逃げ延びるので精一杯だった頃、ループのとある法則を見つける。それは午前2時に必ず大規模な停電が起きるということ。この謎の停電が、一條を出し抜く2人にとって唯一のチャンスだった。

「お前こそ、わかってんのか?」
「何が?」
「もうすぐ2時……あ、ちょっ、あと1分くらい待ぐふぉ」

試行錯誤を繰り返し、何度も死にながら一條と対峙した。六掛の動きから一條の台詞の長さ。停電後の対応までを計算に入れて動く作業は映像編集者さながらだった。こうして緻密に計算された時間と動きが全て一致し、ようやく2人は今に至る。

(42) 2018/03/27(Tue) 01時半頃

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